2025年6月17日放送のテレビ東京系「LIFE IS MONEY ~世の中お金で見てみよう~」で特集された回転寿司チェーン「魚べい」の値段のカラクリが大きな話題となっています。物価高の中でも110円の価格を維持し続ける魚べいの経営戦略には、驚くべき企業努力と独自のコスト削減策が隠されていました。この記事では、番組で明かされた魚べいの価格戦略と原価率の秘密について詳しくご紹介します。
魚べい110円維持の値段のカラクリ!回転寿司チェーンの原価率40%戦略
魚べいを運営するGenki Global Dining Conceptsの山村佳史総務部長は番組内で「本当は110円よりも値上げをしたい所ですが、できる限りお客様にその値段で食べて頂きたい」と、110円維持への強いこだわりを語りました。
魚べいでは商品の原価率の平均がおよそ40%に設定されており、これが利益を確保できるギリギリのラインだと明かされています。回転寿司業界では他の外食チェーンと比較して競争が熾烈で、日本経済新聞の原田亮介論説フェローによると、ファミレスなど他の外食チェーンの平均原価率が30%であるのに対し、魚べいは40%という高い数値を維持しています。
首都圏を中心に展開する魚べいは、年間4600万人という膨大な来客数を誇ります。レギュラーメニュー94品のうち、110円のネタが43品と半数近くを占めており、価格帯は110円から180円までとなっています。スシローが最低価格を120円、くら寿司が115円に値上げする中、魚べいだけが110円を死守し続けているのです。
この価格戦略の背景には、他社との差別化を図りながら顧客満足度を最優先に考える経営方針があります。山村総務部長は「お客様にその値段で食べて頂きたいって、頑張れるところまで頑張りたい」と企業の姿勢を示しており、この理念が魚べいの競争力の源泉となっています。
原価率65%でも提供!魚べいの赤字覚悟メニューとその理由
番組では魚べいの赤字覚悟メニューについても詳しく紹介されました。最も原価率が高いのは「大切り活け〆ハマチ」の110円で、なんと原価率65%という驚異的な数値を記録しています。これは平均原価率40%を大幅に上回る、まさに赤字覚悟の価格設定です。
人気メニューのマグロ130円は原価率53%、北海道産ホタテ130円は原価率54%となっており、いずれも平均を大きく上回っています。特にホタテについては、山村総務部長が「今世界的に寿司を食べる文化が普及しており、各世界にその食材が流れている。特にホタテが取れる量も減っているってこともあり価格が上がっている」と説明したように、グローバルな需要増加と円安の影響で原価が上昇している状況です。
大切り活け〆ハマチの原価率が65%と極めて高い理由は、四国や九州で取れた後に生きたままの状態で特別な活魚車に乗せて加工場まで運ぶため、輸送費が非常に高額になることにあります。それでも魚べいが110円で提供し続けるのは、ハマチが寿司ネタとして大人気であり、「絶対死守したい」価格帯だからです。
これらの赤字覚悟メニューは、顧客にとって圧倒的にお得な商品となっており、魚べいの集客力向上と顧客満足度向上に大きく貢献しています。原価率65%というのは、食材費だけでほぼ販売価格に達してしまう水準であり、人件費や店舗運営費を考慮すると明らかに赤字となる商品です。
魚べいの利益確保術:期間限定メニューによる回転寿司チェーンの戦略
魚べいがレギュラーメニューで薄利もしくは赤字を出しながらも事業を継続できる秘密は、期間限定メニューによる利益確保戦略にあります。番組では栃木県宇都宮市で行われた期間限定フェアの企画会議の様子が紹介されました。
藤尾益造社長の前で商品部長の小柳明氏がプレゼンを行い、秋の期間限定メニューとしてタイ270円、牡蠣190円、北海道産サンマ230円などの価格設定が検討されました。これらの期間限定メニューはすべてレギュラーメニューより原価率を低く設定し、旬のネタだからこそ魚べいに利益をもたらす戦略商品として位置づけられています。
期間限定のネタは3週間に1度全て入れ替えられ、その都度原価率と販売価格のバランスが慎重に検討されます。浜谷知弘執行役員は「定番品と言われるグランドメニューに関しては少しお値打ちな100円台を中心に売ってるんで、客単価をアップしたいって言う思いもあるんで少し値段の高いものを中心に入れてる」と説明しており、明確な価格戦略が存在することがわかります。
また、都心部と郊外での価格差も考慮されており、都心店舗でも200円を超えないよう10円単位での価格調整が行われています。「たかが10円されど10円」という考え方で、顧客心理を細かく分析した価格設定が実施されているのです。
魚べいのコスト削減策を徹底分析!寿司ロボットと省人化の効果
魚べいの低価格維持を支えるもう一つの重要な要素が、革新的なコスト削減策です。同社では業界に先駆けて様々な省力化技術を導入しており、その効果は絶大です。
最も注目すべきは直線型レーンの導入です。従来の回転寿司とは異なり、注文を受けた分だけをお客に届けるシステムにより、食品ロスを大幅に削減することに成功しています。廃棄率を数%以下まで削減でき、これまで廃棄されていた食材費を寿司ネタの品質向上に還元することができています。
省人化も徹底されており、注文はタッチパネル、レジも無人の自動化システムを導入しています。厨房では寿司ロボットがシャリを製造し、コンベアでシャリが運ばれてくると、そこにネタを乗せてすぐにレーンに流すという効率的なシステムが構築されています。このため、ホールにはほとんど人がいない状態で運営が可能となっています。
さらに、オーダーが入った際のみレーンが稼働するため、他のチェーンと比較して電気代を大幅に節約できています。営業時間帯にどのネタがどれだけ売れたかをコンピューターにより全て数値化しており、混雑時に特によく出るネタはあらかじめ増やした人員でカットしておくことで、スピーディな提供を実現しています。
これらの省力化により浮いたコストの一部を寿司ネタに還元し、業界トップクラスのネタのサイズを実現しているのが魚べいの特徴です。店内の衛生面も向上し、顧客満足度向上にも直結している点が評価されています。
回転寿司業界の価格競争と魚べいの差別化戦略
回転寿司業界では激しい価格競争が続いており、魚べいの110円維持戦略は業界内でも注目されています。最近、スシローが最低価格を120円、くら寿司が115円に値上げする中、魚べいだけが110円を維持している状況です。
魚べいを運営するGenki Global Dining Conceptsは2024年に社名を変更し、経営の多角化を進めています。同社は国内で魚べいブランドを178店舗展開しており、海外展開も積極的に行っています。
女性客の取り込みも重要な戦略の一つで、午後2時から5時のアイドルタイムにチョコレートパフェ350円などのスイーツメニューを提供しています。このカフェ利用をきっかけに昼や夜の来店につなげる戦略により、女性に人気の回転寿司チェーンとしても評価されています。
また、魚べいブランドは全店が「回転しない寿司」に転換されており、これまでの回転寿司の概念を覆す新しい業態として注目されています。この「回転しない寿司」システムにより、食品ロス削減、電気代節約、衛生面向上など多くのメリットを実現しています。
まとめ
「LIFE IS MONEY」で紹介された魚べいの値段のカラクリは、徹底したコスト削減策と戦略的な価格設定により成り立っています。原価率40%という業界でも高い水準を維持しながら、赤字覚悟の人気メニューで集客し、期間限定メニューで利益を確保するという巧妙なビジネスモデルです。
寿司ロボットや省人化システム、直線型レーンの導入により大幅なコスト削減を実現し、その効果を顧客還元に回すことで競合他社との差別化を図っています。110円維持への強いこだわりは、単なる価格戦略ではなく、顧客満足度を最優先に考える企業理念の表れといえるでしょう。
物価高が続く中でも、企業努力により低価格と高品質を両立させる魚べいの取り組みは、回転寿司業界の新しいスタンダードを示していると言えるでしょう。今後も魚べいの革新的な経営戦略から目が離せません。
※ 本記事は、2025年6月17日放送(テレビ東京系)の人気番組「LIFE IS MONEY ~世の中お金で見てみよう~」を参照しています。
※「魚べい」(株式会社Genki Global Dining Concepts)のHPがこちら
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