2025年6月19日放送のテレビ東京系「カンブリア宮殿」では、カプセルトイ業界で驚異的な成長を遂げている北海道の企業「トーシン」が特集されました。同社が運営するカプセルトイ専門店「シープラ」は、わずか7年で全国225店舗まで展開し、売上を225億円まで押し上げています。この急拡大を支えているのが、宮本達也社長(42歳)の独自戦略です。番組で明かされた成功の秘密について詳しく解説します。
カプセルトイ市場急拡大の秘密とトーシンの戦略とは
カプセルトイ市場は近年、驚異的な成長を見せています。2024年度の市場規模は製造出荷ベースで1410億円に達し、2022年度の720億円から約2倍という急拡大を記録しました。この背景には、従来の子供向けから大人まで楽しめる高品質な商品の登場があります。
特に注目されているのが、300円から1500円という高価格帯の商品です。生き物シリーズの「いきもの大図鑑シリーズ」では、オオカマキリが実物の約2倍サイズでリアルに再現され、1回1500円でも人気を集めています。また、日用品や食品のミニチュア版も大人の心を掴み、質感まで再現された精巧な作りが評価されています。
インバウンド客による需要増加も見逃せません。外国人観光客にとってカプセルトイは日本独特の文化として注目され、貴重な土産として購入されるケースが増えています。これらの要因が重なり、かつて玩具店やスーパーの片隅に置かれていたカプセルトイが、今や一大市場として注目されているのです。
トーシン宮本達也社長が語るカプセルトイ事業の変革
宮本達也社長は、2013年に父親の後を継いでトーシンに入社しました。しかし、当時の同社は厳しい経営状況にありました。少子化の影響でカプセルトイ市場は頭打ち状態で、毎年のように赤字経営が続いていたのです。
最も衝撃的だったのは、社員たちの意欲の低さでした。「この会社で働いていることを家族に言いたくない」「長く働くつもりはない」という声が聞かれ、仕事に誇りを持てない状況が続いていました。宮本社長はこの現実を受け止め、「従業員が誇りを持てるような仕事にしなければならない」と決意したのです。
転機となったのは、社内の反対を押し切って2018年にオープンした札幌の専門店1号店でした。この店舗は大盛況となり、月に数百万円を売り上げる成功を収めました。これをきっかけに宮本社長は、従来のルートセールスから専門店経営への大胆な方向転換を決断したのです。
シープラ成功の3つの戦略「オリジナル商品とコラボ展開」
トーシンが急成長を遂げた背景には、大手企業とは一線を画す3つの戦略があります。
第一の戦略は「店舗限定品と貴重なキャラクター商品」の開発です。商品開発部部長の氏田治久氏が率いる12人のスタッフが、月に約10種類のペースで新商品を開発しています。注目すべきは、日夜稼働している3Dプリンターを活用した少ロット生産体制です。大手メーカーでは採算が合わない少量生産商品も、トーシンなら柔軟に対応できるのです。
具体例として、埼玉入間市店限定のご当地キーホルダーや、渋谷店で人気の「スクランブル交差点到達証明プレート」(1000円)があります。これらは地域性を活かしたユニークな発想から生まれた商品で、特にインバウンド客から好評を得ています。
さらに、まだ大手が注目していないキャラクターの発掘にも注力しています。イラストレーターの「かわのまきこ」さんが生み出した「ぎょざ・ぎょざお」というオリジナルキャラクターを商品化するなど、独自性のある商品展開を続けています。
インバウンド客を魅了するトーシンの独自商品開発
トーシンの商品開発における最大の強みは、その地域密着性と発想力です。渋谷店で販売されている「スクランブル交差点到達証明プレート」は、まさにこの戦略の象徴的な商品といえるでしょう。
この商品は、世界的に有名な観光地となったスクランブル交差点に立ったことを証明するだけのシンプルなプレートです。一見すると「バカバカしい」と思われるかもしれませんが、インバウンド客には大変人気で、「面白い」と感心して購入していく外国人観光客が後を絶ちません。
また、「尻に敷かれるおじさんシート」(300円)のような、ダジャレを商品化したユニークなアイテムも話題を集めています。これらの商品には必ずキャラクター設定が施されており、単なるおじさんの絵ではなく、「貴文さん」「正雄さん」といった名前とプロフィールが与えられています。
このように、トーシンでは商品一つ一つに個性を持たせることで、単なる玩具を超えた愛着のわく商品作りを実現しているのです。
氏田治久が手がける商品開発部の革新的アプローチ
商品開発部部長の氏田治久氏は、トーシンの商品開発における中心人物です。同氏が率いる開発チームは、従来のカプセルトイの常識を覆す革新的な取り組みを続けています。
特に注目すべきは、高価格帯商品への挑戦です。これまでカプセルトイの主流は500円以下でしたが、トーシンでは600円以上の高価格帯商品の開発に積極的に取り組んでいます。直径20cmの特大カプセルを使用し、1000円から3万円まで自由に価格設定できるマシンを導入しました。
第1弾として登場したフィギュアは1万円という高額商品でしたが、これは従来のカプセルトイの概念を大きく変える試みといえるでしょう。さらに、3000円のカプセルバッグや、本物の着物生地を使用した3万円のミニチュア着物など、従来の枠を超えた商品開発が進められています。
氏田氏は「普通のメーカーだとこんな数だと仕事として受けてくれないが、弊社は店舗運営が主体なので、地域の人が喜んでくれるものを小回りの利いた商品で展開している」と語っており、この柔軟性がトーシンの大きな強みとなっています。
ドミナント戦略で全国225店舗展開を実現した砂田靖志の手法
営業部取締役部長の砂田靖志氏が推進するドミナント戦略も、トーシンの成功要因の一つです。ドミナント戦略とは、特定の地域に集中して出店し、そのエリアのシェアを独占する手法です。
この戦略の好例が札幌市中心部の狸小路です。数百メートルほどの通りに、なんと5店舗ものシープラを出店しています。砂田氏は「目的性を持って店に入るというよりも、目で視界に入ったところにフラッと入るような業種」と分析し、客の目に留まる確率を高めることで集客効果を狙っています。
さらに、競合他社に出店される前に空きテナントを押さえるという戦略的意味合いもあります。こうした積極的な出店戦略により、トーシンは2018年の1号店オープンから7年間で全国225店舗まで拡大し、渋谷や銀座、原宿などの一等地にも出店を果たしています。
カプセルトイ業界の急拡大を支える企業コラボの効果
トーシンのもう一つの戦略は、多様な企業とのコラボレーション商品の開発です。地元北海道のコンビニチェーン「セイコーマート」の人気商品のミニチュア化や、道内随一の生産量を誇る「北海道ワイン」の商品をカプセルトイ化するなど、地域に根ざした企業との連携を積極的に進めています。
特に注目すべきは、ダノンジャパンとのコラボレーションです。マーケティング部の松岡奈緒子氏によると、「カプセルトイの製造にかかるコストは全てトーシンが負担するため、コスト面のリスクがない」というメリットがあります。また、カプセルトイ商品を販促イベントなどのグッズに流用できるという利点もあり、企業側にとって効率的なプロモーション手段となっているのです。
コラボ商品は店舗の入り口からすぐの目立つ場所にマシンを設置し、デジタルサイネージを利用した広告で企業や商品名をアピールしています。宮本社長は「僕らの店をメディアとして使って頂いて、ブランド認知に使ってもらって、一緒に成長していく」と語っており、この取り組みが双方にとってウィンウィンの関係を築いています。
こうした企業コラボにより、トーシンは商品ラインナップの充実だけでなく、新たなビジネスモデルの構築にも成功しているのです。
まとめ
2025年6月19日放送の「カンブリア宮殿」で紹介されたトーシンの急拡大の秘密は、宮本達也社長の革新的な経営戦略にあります。従来のルートセールスから専門店経営への転換、氏田治久氏による独創的な商品開発、砂田靖志氏のドミナント戦略、そして地域企業とのコラボレーション展開という4つの柱が、同社の成功を支えています。
カプセルトイ市場が1410億円規模まで急拡大する中、大手企業の知的財産に頼らず、発想力と地域密着性で勝負するトーシンの戦略は、多くの企業にとって参考になるでしょう。今後もカプセルトイ業界の発展とともに、トーシンのさらなる成長が期待されます。
※ 本記事は、2025年6月19日放送(テレビ東京系)の人気番組「カンブリア宮殿」を参照しています。
※ 株式会社トーシンのHPはこちら
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