2025年11月23日放送のTBS系「がっちりマンデー!!」で、日本ハムが開発中の「培養肉」が紹介されました。茨城県つくば市の中央研究所で研究されているのは、家畜の細胞を培養液で増やして作る「細胞性食品」。300億個の豚の細胞を固めた試作品は、焼くとお肉の匂いと焼き目がしっかり再現されていました。まだコストの課題はあるものの、将来の食糧問題に備える日本ハムの戦略として注目されています。
日本ハムの新たなチャレンジ「培養肉」
茨城県つくば市の中央研究所で研究中
日本ハムは日本のお肉の2割、全タンパク質の6%を生産している巨大企業ですが、今、そのお肉絡みで全く新しいチャレンジをしています。
番組スタッフが訪れたのは、茨城県つくば市にある日本ハムの中央研究所。こちらでは日々、豚や鶏などをどうすればもっと良く育てられるかなどを研究していますが、今回紹介された「新しいチャレンジ」は、従来の畜産とは全く異なるアプローチでした。
細胞性食品という新しい食の形
研究担当の長谷川隆則さんが見せてくれたのは、厚みおよそ1センチくらいの弾力のある物体。「これは細胞性食品です」と長谷川さん。
細胞性食品、いわゆる「培養肉」。これが日本ハムの新たなチャレンジの正体でした。従来のように家畜を育てるのではなく、細胞を培養して食品を作るという画期的な技術です。
培養肉はどうやって作られるのか?
豚の細胞を培養液で増やす技術
長谷川さんによると、「家畜の細胞を、培養液の中でですね、増やして、集めた細胞を固めて作った食品になります」とのこと。
具体的な製造プロセスは次の通りです。まず、豚のお肉から細胞を取り出します。その細胞をアミノ酸や糖が入った培養液の中に入れることで、細胞をどんどん増やしていくのです。
この技術により、少量の細胞から大量の細胞を生み出すことが可能になります。
300億個の細胞を固めて作る
培養液の中で増やした細胞を、遠心分離機で凝縮させます。そして凝縮させた細胞を固めたら出来上がり。番組で紹介された試作品には、なんと豚の細胞が300億個も入っているとのこと。
見た目は本物のお肉とはやや異なりますが、弾力があり、確かに食品としての形状を保っています。
実際に焼いてみると驚きの結果
お肉の匂いと焼き目がしっかり再現
この培養肉が本当に「お肉」なのかを確かめるため、番組では焼いてみることに。豚の細胞をくっつけた塊なので、どんな香りがするのか。
焼き始めると、スタッフから驚きの声が。「あ、すごい!すげえこれ!お肉ですね」
長谷川さんも「そうですね、あのー……ま、焼き目も匂いも」と確認。培養した細胞とはいえ、焼くとしっかりとお肉の匂いと焼き目が再現されたのです。
法律的にはまだ実食できない段階
では、その味は?スタッフが「いただきます」と食べようとしたところで、長谷川さんが「……ちょっとまだ……はい。あのー……」と制止。
実は、法律的には実食はまだできないとのこと。現在の日本の法規制では、培養肉を食品として販売・提供するための承認プロセスがまだ整っていないため、試食することができないのです。
しかし、すでに結構美味しそうな状態にまで開発が進んでいることは確認できました。
課題はコストの高さ
大量生産するにはコストが高すぎる
培養肉の技術は確立されつつあるものの、大きな課題が残っています。長谷川さんは「家畜でお肉をあのー生産するというのに比べると、まだどうしても値段が少し、高い、まあ……値段が高いと」と説明し始めました。
しかしスタッフが「なぜ言い直したんですか?」と尋ねると、長谷川さんは「(値段が)”少し高い”ではなかったので……”かなり”なので」と正直に告白。
そう、理論的には作ることができているけれど、大量生産するにはどうしてもコストが高すぎるのが現状です。
安全で美味しい製品を目指して研究継続
コストの問題はあるものの、日本ハムは研究を継続中。現在、どう安全で美味しい細胞性食品のお肉を作ることができるか、さらなる改良を重ねています。
培養液の成分の最適化、培養効率の向上、細胞の凝縮プロセスの改善など、コストを下げながら品質を高める研究が進められています。
タンパク質供給の未来を担う使命
植物肉と細胞性食品でタンパク質を供給
加藤浩次さんが「肉っていうのが、やっぱ必要だ、足りないよってなってきた時、その辺は日本ハムさんはどうお考えなんですか?」と質問したところ、井川社長から重要な答えが返ってきました。
「あの、まあ植物肉を使った食品であるだとか、こういうものをですね、えー使うことによって、タンパク質をですね、供給する役割として、我々担っていこうということで今取り組んでます」
日本ハムは現在、日本人のタンパク質摂取量の6%を供給していますが、将来的に従来の畜産だけでは世界的なタンパク質需要を満たせなくなる可能性を見据えています。
将来の食糧問題に備える日本ハムの戦略
培養肉や植物肉の開発は、単なる技術的チャレンジではありません。世界人口の増加により、将来的に動物性タンパク質が不足する可能性が指摘されています。
また、畜産は環境負荷が大きいという課題もあります。培養肉は、従来の畜産に比べて土地や水の使用量を大幅に削減でき、温室効果ガスの排出も抑えられる可能性があります。
日本ハムは、タンパク質供給企業としての責任を果たすため、従来の畜産と並行して、培養肉や植物肉といった新しい選択肢の開発に取り組んでいるのです。
まとめ:未来の食卓を変える可能性
日本ハムが茨城県つくば市の中央研究所で開発中の培養肉は、豚の細胞を培養液で増やし、300億個の細胞を固めて作られています。焼くとお肉の匂いと焼き目がしっかり再現され、技術的には実用化に近づいています。
現在の最大の課題はコストの高さ。「少し高い」ではなく「かなり高い」というのが正直なところですが、研究を継続することで、安全で美味しく、そして手頃な価格の細胞性食品を実現しようとしています。
井川社長が語ったように、培養肉や植物肉は将来のタンパク質供給を担う重要な選択肢です。世界人口の増加や環境問題を考えると、従来の畜産だけでは限界があります。
日本ハムは、現在日本のタンパク質の6%を供給する企業として、未来の食糧問題に備えた新技術の開発に挑戦し続けています。培養肉が食卓に並ぶ日は、そう遠くないかもしれません。
※ 本記事は、2025年11月23日放送(TBS系)の人気番組「がっちりマンデー!!」を参照しています。
※ 日本ハム株式会社の公式サイトはこちら





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