スポンサーリンク
広告がブロックされています
テレビ番組・情報

【クローズアップ現代】短時間正社員の課題と可能性「賃上げの切り札に」

tanjiikan-seishain
スポンサーリンク
広告がブロックされています

2025年12月1日放送のNHK「クローズアップ現代」で取り上げられた「短時間正社員」という働き方。人手不足が深刻化する中、賃上げと非正規の待遇改善の切り札として注目されています。この記事では、短時間正社員のメリットと課題、イオンモールやIKEAの成功事例、そして筑波大学名誉教授・田中洋子氏の提言まで詳しく解説します。新しい働き方の可能性を知れば、あなたのキャリア選択も変わるかもしれません。


スポンサーリンク
広告がブロックされています

短時間正社員とは|人手不足と賃上げを解決する新しい働き方

短時間正社員とは、正社員のように期間の定めのない無期雇用でありながら、勤務時間は短時間という新しい働き方です。最大の特徴は、パートのような短い労働時間であっても、正社員並みの賃金や福利厚生が得られる点にあります。

番組で紹介された訪問看護師の奥島凛さんは、週4日勤務の短時間正社員として働いています。以前は総合病院でフルタイム勤務していましたが、夜勤明けに4時間も残業するなど過酷な労働環境で心身ともに疲弊し退職。その後パートとして働いていましたが、常勤時代と比べて収入が7〜8万円も減少してしまいました。

そんな中、短時間正社員の求人を見つけ転職。現在は2歳と5歳の子供を育てながら、収入も安定し、社会保険などの福利厚生も充実した環境で働けています。「ライフワークバランスを保つために週4のお仕事を探していたので、母親としても嬉しい」と語る奥島さんの姿が印象的でした。

今、医療現場では最大27万人の看護師が不足していると推計されています。一方で、資格はあるものの働いていない潜在看護師は70万人にも上ります(厚生労働省推計)。この大きなギャップを埋める鍵として、短時間正社員という働き方が期待されているのです。


スポンサーリンク
広告がブロックされています

短時間正社員のメリット|働く側と企業側の双方に利点がある理由

番組に出演した筑波大学名誉教授の田中洋子氏は、短時間正社員のメリットを分かりやすく整理しています。

働く側のメリットは大きく3つあります。第一に、フルタイムの正社員が育児や介護などで勤務時間を短縮しても、会社を辞めることなくキャリアを継続できる点です。介護離職を減らせる可能性も秘めています。第二に、パートとして働いていた人が、自分の生活に合った短時間勤務のまま、正社員並みの賃金と待遇を得られます。第三に、子育て中や介護中、あるいは体力に自信のないシニア層も、これまで諦めていた正社員としての就労が可能になります。

一方、企業側のメリットも見逃せません。人手不足が過去最多となる中、短時間正社員制度の導入により離職者を減らすことができます。また、これまでパートだった優秀な人材に意欲的に活躍してもらい、戦力として確保できるのです。

訪問看護事業所代表の長谷川巨樹さんは「週3日でも週4日でも働いていただけたらありがたい。働ける能力があって働きたい気持ちがあるのに、ライフワークの中で働けなくなるのはもったいない」と語っています。設立時わずか5人だった従業員は現在113人まで増え、そのうち4割が短時間正社員です。


スポンサーリンク
広告がブロックされています

イオンモールとIKEAの成功事例|短時間正社員で業績向上を実現

番組では、短時間正社員制度で成果を上げている企業の具体例が紹介されました。

イオンモールの挑戦は3年前から始まりました。従業員約12万人のうち8割以上がパートという同社は、社内試験の合格を条件に、パートの時給、賞与、退職金を正社員と同等にする取り組みを開始しました。

17年前からパートとして働いていた土生(はぶ)紀子さんは、2025年2月に試験に合格。賞与が以前の3倍に上がり、現在はベビー用品売り場のリーダーとして活躍しています。「売り上げに貢献したいという気持ちが強くなった」と語る土生さんは、ベビーカーとチャイルドシートをセットで陳列するなど、積極的にアイデアを提案するようになりました。

店長の大久保淳一さんは「地域に住むパート社員は子育て世代が多く、お店のメインターゲット。経験に裏打ちされたトークはお客さんに刺さり、接客による購買率は飛躍的に上がる」と評価しています。人事総務本部長の近藤健司さんは「現在160人だが、早く1000人を超える体制にしたい」と意欲的です。

IKEA(イケア)の先進事例はさらに興味深いものです。11年前、非正規のパート全員を短時間正社員にするという大胆な改革を実施しました。当時、パート従業員の離職率が非常に高く、人材確保が課題だったのです。

代表取締役社長兼CSOのペトラ・ファーレさんは「採用した従業員が辞めることは企業にとって大きな痛手。従業員を定着させるには対等な処遇と昇進の可能性を提示する必要があった」と語っています。

Petra fale

イケア・ジャパンのペトラ・ファーレ社長                         (引用:「日本経済新聞」より)

11年前にパートから短時間正社員になった坂本由紀子さんは、現在フルタイムの正社員として物流部門のチームリーダーを務めています。子供が大学生になり時間に余裕ができたタイミングで週40時間勤務に変更し、コロナ禍でオンライン販売拡大の方針が出された際には、増設されたチームリーダーの社内公募に手を挙げました。「これはチャレンジしない手はない」という坂本さんの言葉が印象的です。

IKEAでは全員が正社員として研修や訓練を受けてスキルアップし、新事業にもスピーディーに対応。正社員化からの10年間、世界経済が落ち込んだコロナ禍を経ても売上高は順調に伸び続けています。


スポンサーリンク
広告がブロックされています

短時間正社員導入の課題|企業が直面する3つの壁

多くのメリットがある一方で、導入に踏み切れない企業も少なくありません。番組では導入を阻む3つの壁が指摘されました。

第一の壁は人事制度の見直しです。みなし残業代が含まれた給与体系を採用している企業では、短時間勤務の場合の給与計算方法を再設計する必要があります。採用側企業の担当者は「簡単にはいかない問題」と懸念を示していました。

第二の壁は人件費の増加です。短時間正社員になった人への給与アップや社会保険料など、福利厚生のための人件費が上がることを危惧する声が聞かれました。

第三の壁は社員間の不和への懸念です。フルタイムの正社員と短時間正社員の間で勤務時間に差ができるため、フルタイム社員に業務のしわ寄せが行くのではないかという心配があります。

人材紹介会社営業部取締役の藤田祥子さんは「制度がない、導入した実例がないことで、どう扱っていいか分からないという声が多い。求職者のニーズに比べると圧倒的に数が足りない」と現状を語っています。

実際、ある人材サービス会社が働く意欲のある主婦を対象に行ったアンケートでは、65.9%が「短時間正社員で働いてみたい」と回答しました。しかし厚生労働省の調査では、制度を導入している企業はわずか15.9%。しかもこの数字は育児や介護を理由とした法的条件付きの時短勤務を含むもので、人材確保を目的とした短時間正社員制度に限れば、導入率は数パーセントレベルにとどまっているのが実情です。


スポンサーリンク
広告がブロックされています

課題克服のポイント|田中洋子氏が語る短時間正社員普及の鍵

では、これらの課題をどう乗り越えればよいのでしょうか。田中洋子氏は具体的な解決策を提示しています。

tanakayouko

筑波大学名誉教授の田中洋子さん                      (引用:「リクルートワークス研究所」より)

人事制度の見直しについては、初期費用はかかるものの、それを上回る中・長期的なメリットを取ろうとする姿勢があるかどうかが問題だと指摘します。

人件費増加への懸念に対しては、興味深いデータを示しています。看護師の場合、人材紹介会社の紹介料が一人あたり平均100万円前後かかっているのが現状です。それならば短時間正社員制度を導入してより多くの人を集める方が、実は安上がりになるというのです。「導入して良かったという満足感が大きい」と、実際に導入した企業の声を紹介しています。

社員間の不和については、「誰でも、いつでも、いろんな事情で入れ替わりながら短時間正社員になれる制度として広がれば、不満は消えていく」と述べています。一部の特定の人だけが優遇されている状態では不満が出やすいですが、全員が必要に応じて利用できる制度であれば、むしろ働きやすい職場として評価されるというわけです。

IKEAの事例がまさにそれを証明しています。誰でも、どのタイミングでも、ライフステージに応じて短時間正社員を選べる仕組みにすることで、社員間の不公平感や不満が生まれにくくなっているのです。

田中氏は「日本は過去の成功体験や前例踏襲に閉じ込められているところがある。変革の勇気が少し足りていない」と指摘しつつも、「労働力不足の時代に、それぞれの事情に合わせて時間を調整しながら意欲的に働き続け、スキルアップしていくことで日本経済の底上げにつながる」と期待を込めています。


スポンサーリンク
広告がブロックされています

ドイツに学ぶ短時間正社員制度|労働者の4割が選択する働き方

田中氏が研究するドイツでは、短時間正社員という働き方が社会に広く浸透しています。

2001年に制定された「パート法」により、どんな人でも正社員として働く時間を短くして働くことが権利として保障されました。その結果、現在では労働者全体の実に4割が短時間正社員として働いています。

しかも、あらゆる職種が対象です。管理職、取締役、さらには裁判官まで、短時間正社員という選択肢があるのです。最近では子育て世代の若い男性も短時間正社員を選ぶケースが増えているといいます。

注目すべきは生産性への影響です。ドイツは2023年、GDPで日本を追い越しました。人口は日本の3分の2であるにもかかわらずです。田中氏によれば「短時間正社員の割合が上がれば上がるほど、ドイツは一人当たりの生産性が上がっている」というデータがあります。

働く時間を短くすることで生産性が下がるのではないかという懸念は、ドイツの事例を見る限り杞憂に終わっています。むしろ、柔軟な働き方を認めることで、優秀な人材を確保し、モチベーション高く働いてもらうことができる。その結果、企業の業績向上と国全体の経済成長につながっているのです。


スポンサーリンク
広告がブロックされています

まとめ|短時間正社員の可能性と非正規の待遇改善への期待

短時間正社員という働き方は、人手不足と賃上げという日本が抱える二つの大きな課題を同時に解決する可能性を秘めています。

働く側にとっては、ライフステージに合わせた柔軟な働き方を選びながら、安定した収入と福利厚生を得られます。企業側にとっては、離職を防ぎ、優秀な人材を確保し、結果として生産性向上と業績アップにつながります。イオンモールやIKEAの成功事例は、その可能性を具体的に示しています。

確かに人事制度の見直しや初期投資といった課題はあります。しかし田中洋子氏が指摘するように、それを上回る中・長期的なメリットがあり、実際に導入した企業の満足度は高いのです。

非正規の待遇改善という観点でも、短時間正社員制度は大きな意味を持ちます。パートとして働いていた人が、同じ勤務時間のまま賃金や福利厚生が大幅に改善されるのですから。

ドイツで労働者の4割が短時間正社員を選択し、経済成長にもつながっている事実は、日本にとって大きなヒントとなるでしょう。「変革の勇気」を持って、柔軟な働き方の選択肢を整えていくこと。それが今、日本に求められているのではないでしょうか。

※ 本記事は、2025年12月1日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

スポンサーリンク
広告がブロックされています
スポンサーリンク
広告がブロックされています
シェアする
スポンサーリンク
広告がブロックされています

コメント

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました