「噛む力」が弱いと、死亡率が1.87倍、要介護リスクが2.25倍に高まる――。2026年1月14日放送のNHKクローズアップ現代では、島根大学などの最新研究から明らかになった衝撃の事実が紹介されました。本記事では、番組で取り上げられた噛む力と健康寿命の関係、そして今日から実践できるトレーニング法まで詳しく解説します。噛むことを意識するだけで、あなたの未来が変わるかもしれません。
噛む力が弱いと死亡率1.87倍・要介護率2.25倍|島根大学の衝撃データ
番組で紹介された島根大学と島根県歯科医師会による最新研究は、多くの視聴者に衝撃を与えました。この研究は75歳以上の高齢者約2万人を対象に、歯科検診で噛む力を測定し、その後6年間にわたって健康状態を追跡調査したものです。
測定方法はとてもシンプルで、専用のグミを15秒間でいくつに噛み砕けるかを調べます。その結果、噛み砕けた数が3個以下の人は、22個以上の人と比較して、要介護状態になるリスクが2.25倍も高いことが判明しました。さらに驚くべきことに、死亡リスクは1.87倍高いという結果も示されたのです。
島根県歯科医師会の齋藤寿章歯科医師は番組内で「噛めている方は長生きできる」と述べ、この研究結果を「革新的」と評価しました。
私個人としても、この数値には正直驚きました。歯の本数や歯周病の程度よりも「噛む力」の方が、要介護・死亡リスクとの関連性が高いというのは、これまでの常識を覆す発見ではないでしょうか。1989年から推進されてきた「8020運動」(80歳で自分の歯を20本以上保つ目標)の重要性は変わりませんが、今後は「歯を残す」だけでなく「噛む機能を維持する」という視点がますます大切になってくるでしょう。
なぜ噛む力が健康寿命を左右するのか?口腔機能と全身の関係
では、なぜ噛む力がこれほどまでに私たちの健康と密接に関わっているのでしょうか。
物を噛むと、咀嚼した食べ物を舌でまとめる働きや、消化作用を持つ唾液の分泌が促進されます。これによって、食べた物の栄養を体内に吸収しやすい状態にすることができるのです。ところが、噛む回数が減り噛む力が弱くなると、舌の働きや唾液の分泌も低下。体の維持に必要な栄養を取り込みにくくなってしまいます。
大阪歯科大学付属病院高齢者歯科の川本章代科長は、番組で口腔機能低下の影響について詳しく説明しました。「疲れやすくなったり、筋力が低下したり、活動量が減少する。さらに人と話す機会が減って社会的なつながりも間接的に影響を受ける」とのことです。
加えて、番組に出演した歯科医師・歯学博士の照山裕子さんは、噛む力の低下がもたらすリスクとして、口腔内の汚れやすさによる歯周病リスクの上昇、頭痛や肩こり、そして誤嚥性肺炎などを挙げました。免疫機能が低下すると、汚れたものを誤って飲み込んでしまい肺炎につながる危険性もあるのです。
つまり、噛む力の衰えは単なる「食べにくさ」の問題ではありません。栄養不足、体力低下、社会的孤立という負の連鎖を引き起こし、最終的には寿命にまで影響を及ぼす可能性があるということです。
噛むことでストレス軽減・集中力アップ|グミ売上過去最高の理由
番組では、噛む力が集中力やストレス耐性にも影響を与えることが紹介されました。
自然科学研究機構の坂本貴和子特任准教授は、噛むことと脳の関係について神経科学の視点から研究を続けてきた専門家です。坂本さんによると、グミなどをリズムよく噛む動作は、脳の「CPG(中枢性パターンジェネレーター)」というシステムでコントロールされています。このCPGが働くと、覚醒を促す部位である脳幹網様体が活性化。さらに、顎の筋肉の動きや咀嚼音など多様な刺激が脳に伝わることで、集中力が高まるというメカニズムです。
「噛むことによって得られる刺激は思いのほか多い」と坂本さんは指摘します。リズム的な動作を加えることで、疲れるのではなく逆に脳の活動を活性化させるという点は非常に興味深いですね。
こうした噛むことの効果が注目される中、グミ市場は急成長を続けています。番組によると、グミは過去最高の売り上げを更新し続けており、放送日に発表されたデータでは2025年1年間で150億円以上売り上げを伸ばしたとのこと。実際、調査会社インテージのデータでも2024年のグミ市場は1138億円と初めて1000億円を超え、7年前の約2倍にまで拡大しています。
特に注目すべきは、働き盛り世代の男性がグミブームを牽引しているという点です。30代・40代男性のグミ購入金額は10年で4倍近くにまで増加。番組に登場した30代会社員の男性は「噛みしめて頭が集中する、冴える」と、仕事中のグミ活用法を語っていました。
かつてガムが担っていた「噛んでリフレッシュ」という役割を、今やグミが代替しているとも言えます。噛み応えがあり、食べきりやすく、捨てる手間もないグミは、現代のビジネスパーソンにとって最適な「脳活性化ツール」なのかもしれません。
子どもの噛む力が危機的状況|口腔機能発達不全症が180万人
噛む力の問題は高齢者だけの話ではありません。番組では、子どもたちの噛む力が年々弱くなっているという深刻な現状も取り上げられました。
専門家によると、現代人が1回の食事で噛む回数はおよそ620回。これは戦前と比べて半分以下にまで減少しているといいます。
山口県の幼稚園では、給食で野菜の繊維質をうまく噛み切れない子どもたちの姿が映し出されました。徳山めぐみ幼稚園の村田佳奈園長は「硬いものは時間がかかるので残しがちになる。種のある食べ物を丸ごと口に入れて、口の中でより分けることができない子がいる」と語りました。
この噛む力の低下は、子どもたちの口に深刻な影響を与えています。大阪などで17のクリニックを運営する医療法人真摯会では、歯列矯正を受ける子どもがこの5年で4倍に急増し、2025年はおよそ1000人に達したとのこと。松本正洋総院長は「硬いものを食べないので、お口が成長しなくて小さい。歯が生えてくるスペースが足りず、歯並びが悪くなる」と原因を説明しています。
さらに深刻なのが「口腔機能発達不全症」の増加です。これは2018年に保険適用となった疾患名で、食べる・話すなどの口の機能が十分に発達していない状態を指します。番組では全国に約180万人の子どもが該当すると紹介されました。
照山裕子医師は、昔と比べてあまり噛まなくても食べられる西洋式のメニュー(ハンバーグやオムライスなど)を子どもが好む食生活になったことが一因ではないかと分析しています。
子どもの口腔機能は骨格の成長とともに発達するため、成人してからの改善は非常に困難です。松本総院長も「子供さんのうちにトレーニングしないと、骨格の成長が終わってしまう」と警鐘を鳴らしていました。お子さんをお持ちの方は、ぜひ今から噛む習慣を意識させてあげてください。
噛む力を鍛える方法|照山裕子医師直伝「カミカミリズム体操」とガムトレ
では、具体的にどうすれば噛む力を鍛えられるのでしょうか。番組では、すぐに実践できるトレーニング法が複数紹介されました。
まず、照山裕子医師が提案したのが「カミカミリズム体操」です。やり方はとても簡単で、グミを1粒口に含み、337拍子のリズムで噛んでいきます。
具体的な手順は以下の通りです。
- グミを右側の奥歯で337拍子(タン・タン・タン、タン・タン・タン、タン・タン・タン・タン・タン・タン・タン)で噛む
- グミを左側に移動させ、同様に337拍子で噛む
- 再び右側に戻して337拍子
- 次は左→右→左の順で同様に行う
このトレーニングのポイントは、リズムよく噛むことと、左右バランスよく噛むことの2点です。照山医師によると、多くの人には噛み癖があり、片方でしか噛まない傾向があるそうです。左右バランスよく噛むことで、口腔機能を総合的に鍛えることができます。
また、唾液量も増え、ストレス解消効果も期待できるとのこと。ただし注意点として、グミは細かく砕けるため虫歯のリスクが上がる可能性があります。トレーニング後はしっかりゆすぐか、できれば歯磨きをセットにすることが大切です。また、部分入れ歯がある方や糖尿病などの持病がある方は、医療機関に相談してから行ってください。
子ども向けには、山口県歯科医師会が幼稚園で実施している「ガムトレ」が効果的です。子どもたちはまずガムを3分間しっかり噛み続け、その後ガム風船を作ります。風船を膨らませる際に舌でガムを潰したり、唇をすぼめたりすることで、遊びながら舌や口周りの筋肉を鍛えられます。
山口県歯科医師会の小山茂幸会長は「訓練だということだけでやると終わったらやめてしまう。継続しないと成長が止まるので、遊びながらやることがすごく大事」と強調していました。2ヶ月間のトレーニングで半数以上の園児に噛む力の向上が確認されたというのは、非常に心強い結果です。
口の衰え「オーラルフレイル」チェックリスト|あなたは大丈夫?
番組では、口の衰えをセルフチェックできるリストも紹介されました。オーラルフレイルとは「口腔機能の軽微な低下」を意味し、健康と機能障害の中間にある状態です。日本老年歯科医学会、日本老年医学会、日本サルコペニア・フレイル学会の3学会が2024年4月に合同ステートメントを発表するなど、近年注目が高まっています。
以下の6項目のうち、2つ以上該当すれば口が衰えている可能性があります。
- 滑舌が悪い
- 食べこぼしが多い
- 噛まずに食べられるメニューが好き
- よくむせる
- 口の渇きが気になる
- ブクブクうがいができない
いかがでしょうか?照山医師が言うように、オーラルフレイルは「今の令和のキーワード」です。早期に気づいて適切な対応をすれば改善可能というのが大きな特徴ですので、心当たりのある方は歯科医院での検査を検討してみてください。
また、番組では普段の食生活でできる工夫も紹介されました。たとえばラーメンを食べる際にメンマやネギを加えるだけで、噛む回数は自然と増えます。特別なことをしなくても、日々の食事にちょっとした「噛む食材」をプラスする意識を持つだけで、口腔機能の維持につながるのです。
福岡市では「噛む活」プロジェクトとして、市内の歯科医院で全市民を対象にガムを使った噛む力の無料診断を開始しています。プロジェクトの予算は約2000万円で、噛む力を鍛えることで健康寿命を延ばし、将来の医療費削減につなげたいとしています。こうした自治体の取り組みが全国に広がることを期待したいですね。
まとめ
2026年1月14日放送のNHKクローズアップ現代では、噛む力と健康寿命の深い関係が明らかにされました。島根大学などの研究で示された「噛む力が弱いと死亡リスク1.87倍、要介護リスク2.25倍」という数値は、私たちに口腔ケアの重要性を改めて突きつけています。
番組で照山裕子医師が述べたように、「口は生命の源。食べないと健康でいられない」という言葉は非常に重みがあります。歯の本数を維持する8020運動に加えて、これからは「噛む機能」を意識した生活習慣が求められる時代です。
高齢者の方は日々のオーラルケアと口腔トレーニングを、働き盛り世代の方はグミやガムを活用した集中力・ストレス対策を、そしてお子さんをお持ちの方は子どもの噛む習慣づくりを、それぞれ今日から始めてみてはいかがでしょうか。
毎日の「噛む」という何気ない動作が、あなたの健康寿命を左右する――。そう考えると、一口一口を大切にしたくなりますね。
※ 本記事は、2026年1月14日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。
※ YouTube照山裕子公式チャンネルこちら




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