スマートフォンには10種類以上のレアメタルが眠っていることをご存じですか?2026年1月17日放送の「ブレイクスルー」では、産総研の大木達也博士が30年以上かけて開発した、都市鉱山からレアメタルを自動回収する革新的な技術が紹介されました。この記事では、番組の内容をもとに、日本の資源問題を解決しうる全自動回収システムの仕組みと、経済安全保障への貢献について詳しく解説します。
レアメタル自動回収とは|都市鉱山から資源を掘り起こす新技術
「都市鉱山」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、廃棄されたスマートフォンやパソコンなどの電子機器に含まれる有用な金属資源を、鉱山に見立てた概念です。
日本はレアメタルのほぼ全てを海外からの輸入に依存しています。しかし、私たちの身近にある使用済み電子機器には、タンタル、コバルト、ニッケル、リチウムといった貴重なレアメタルが大量に眠っているのです。
番組で紹介されたのは、この都市鉱山からレアメタルを「自動で」掘り起こす画期的な技術でした。従来、電子機器からレアメタルを取り出すには、職人が一つひとつ手作業で部品を外すしかありませんでした。コストも時間もかかるため、大量の資源が回収されないまま廃棄されてきたのです。
この課題を解決すべく、つくば市にある産業技術総合研究所(産総研)で30年以上にわたり研究を続けてきたのが、戦略的都市鉱山研究拠点の大木達也博士です。大木博士のチームは、AIやロボット技術を駆使して、レアメタル回収の完全自動化に挑んでいます。
大木達也博士の30年|戦略的都市鉱山研究拠点での挑戦
大木達也博士は、産総研の環境創生研究部門に所属する首席研究員であり、戦略的都市鉱山研究拠点(SURE)の代表を務めています。博士は研究所に入ってから30年以上、都市鉱山からのレアメタル回収技術の開発に人生を捧げてきました。
番組の中で大木博士は、「30代後半ぐらいまで、日の目を浴びなくて、めげそうになったこともあった」と率直に語っています。しかし、その粘り強い研究姿勢が実を結び、国の競争的資金では2000年以降、驚異の27連勝を達成。総額150億円もの研究資金を獲得してきました。
この数字からも、大木博士の研究がいかに国から期待されているかが分かります。150億円という巨額の投資に対して、博士は「それは日々プレッシャーを感じている」と認めつつも、「我が国が世界をリードして、資源自給率を上げることができる」という強い信念を持って研究を続けています。
大木博士の研究室には約30台もの装置がずらりと並び、それぞれがレアメタル回収の各工程を担っています。一つの技術ができたらゴールではなく、年々変化する製品に対応し続けなければならない。その「深謀遠慮」の姿勢こそが、30年間研究を続けられた秘訣なのかもしれません。
全自動回収ユニットの仕組み|風力選別とAI技術の融合
大木博士が開発した技術の核心は、「風を使った選別」と「AIによる位置検出」の2つです。
まず風力選別について説明しましょう。電子基板から取り外した様々な部品の中から、目的のレアメタルを含む部品だけを選び出す必要があります。大木博士の装置は、風の力で部品を仕分けます。重たいものは風に吹かれてもすぐに落下し、軽すぎるものは上まで吹き上げられる。そして、欲しい部品だけが程よく飛ばされて、中段に留まるという仕組みです。
驚くべきは、その精度です。タンタルコンデンサーの選別では、90から95%という高純度を実現しています。しかも、この装置には「35恒河沙(ごうがしゃ)通り」、つまり10の50乗以上ものパターンから最適な風速条件を選び出すアルゴリズムが組み込まれているのです。これにより、様々な部品に対応できる柔軟性を持っています。
もう一つの重要な技術が、AIによるリチウムイオン電池の位置検出です。スマートフォンの内部にはリチウムイオン電池が入っており、衝撃を与えると発火する危険があります。自動で分解するためには、電池の正確な位置を把握することが不可欠です。
大木博士のチームは、X線画像をAIが解析し、リチウムイオン電池の位置を100%の精度で検出する技術を開発しました。さらに、その位置情報をもとに、電池を傷つけない箇所をギロチンのような刃で正確に切断する装置も完成させています。
大栄環境グループで実証実験|小型家電6品目を一貫処理
大木博士の30年以上にわたる研究の集大成となるユニットが、2025年9月に大阪府堺市の大栄環境グループ・DINS関西で組み上げられました。現在、実証実験が進行中です。
このユニットの特徴は、小型家電6品目の分解から回収までを一貫して自動化できる点にあります。対象となるのは、スマートフォン、タブレット、従来型携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、小型ゲーム機の6品目。約2000機種のデータベースが構築されており、AIが形や重さを解析して種類を判別し、自動で振り分けていきます。
スマホやタブレットは、まずX線で電池の位置を確認してから解体。それ以外の機器はシュレッダー型の解体機で処理され、最終的に風力選別装置でレアメタルが回収されます。最大10種類のレアメタルを一度に回収できるというのですから、まさに「一気通貫型」の全自動システムと言えるでしょう。
番組内で大栄環境グループの担当者は、「スマホ・タブレットは解体が難しい」と語っていました。だからこそ、X線とAIを組み合わせた大木博士の技術が不可欠なのです。2028年度以降の商業稼働を目指しているとのことで、実用化への期待が高まります。
経済安全保障と民間備蓄|中国依存から脱却する戦略
この技術が注目される背景には、レアメタルを巡る国際情勢があります。レアアースを含むレアメタルの生産は、世界的に中国がほぼ独占している状況です。2010年には尖閣問題を巡り、中国が対日輸出を規制したことで価格が急騰し、日本の産業界に大きな打撃を与えました。
番組の中で作家・相場英雄氏は、「中国に気を使っている我が国が、都市鉱山を開発して、価格交渉カードが要らないと言えるようになるのが肝」と核心を突いた質問を投げかけていました。
大木博士はこれに対し、興味深い構想を語っています。それが「民間備蓄」という考え方です。リサイクル工場で回収したレアメタルを、価格が安い時期には売らずに置いておく。そして価格が高騰した時に売り出せば、価格の平準化につながる。さらに有事の際には、全国のリサイクル工場から資源が供給され、市況が枯渇しない状態を作れるというのです。
この発想は、単なるリサイクル技術を超えた「戦略的」な意味を持っています。国際情勢の変化に対応できる強い日本を作る。大木博士の研究は、まさに経済安全保障の最前線に位置しているのです。
さらに大木博士は、プラスチックゴミの選別技術や、銅・アルミといったベースメタルの自動回収にも挑戦を広げています。「産業革命以来、物を組み立てる技術は発展してきたが、バラして戻す技術は革新がなかった」という博士の言葉が印象的でした。
まとめ|レアメタル回収技術が切り拓く日本の未来
2026年1月17日放送の「ブレイクスルー」では、産総研の大木達也博士が30年以上かけて開発した、都市鉱山からのレアメタル自動回収技術が紹介されました。
風力選別とAI技術を融合させた全自動回収ユニットは、2025年9月から大栄環境グループで実証実験が始まっています。小型家電6品目から最大10種類のレアメタルを一貫して回収できるこのシステムは、日本の資源問題を解決する大きな一歩となりそうです。
大木博士のブレイクスルーは「深謀遠慮」。将来の変化を見据えながら、社会実装につながる技術を作り続けること。その言葉通り、博士は残りの研究者人生をかけて、この技術の普及・発展に取り組むと宣言しています。
資源小国と言われてきた日本が、都市鉱山という「宝の山」を活用して、世界をリードする日が来るかもしれません。私たち消費者も、使わなくなったスマートフォンや電子機器を適切にリサイクルに回すことで、この大きな流れに貢献できるのではないでしょうか。
※ 本記事は、2026年1月17日放送(テレビ東京系)の人気番組「ブレイクスルー」を参照しています。
※ 戦略的都市鉱山研究拠点の公式サイトはこちら


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