「食料品の消費税がゼロになれば家計が助かる」そう思っていませんか?実は、高市総理が2026年1月19日の記者会見で衆院解散の公約として表明した「食料品消費税ゼロ」には、飲食店を直撃する深刻な問題が隠れています。この記事では、なぜ飲食店が大打撃を受けるのか、その仕組みと理由をわかりやすく解説します。政策の本当の影響を知ることで、今後のニュースを正しく理解できるようになります。
食料品消費税ゼロとは?高市総理が解散公約に掲げる政策の中身
高市早苗首相は2026年1月19日の記者会見で、1月23日に衆院を解散することを正式に表明しました。同時に、衆院選(1月27日公示、2月8日投開票)の公約として「2年間に限り食料品を消費税の対象としない」考えを示し、「私自身の悲願だ」と強い意欲を表明しています。
これは、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品について、時限的に消費税率を0%にするというものです。
背景には、長引く物価高があります。民間の調査によれば、2025年10月だけで3,000品目以上の食料品が値上げされ、年間では2万品目を超える値上げが見込まれています。こうした「食卓の危機」に対応するため、消費税減税が政治的な争点として急浮上してきました。
実は、2025年10月の自民党と日本維新の会による連立政権合意では、「飲食料品について2年間に限り消費税の対象としないことも視野に、法制化を検討する」と明記されていました。また、立憲民主党も同年10月31日に「食料品消費税ゼロ法案」を衆院に提出しており、与野党ともに消費税減税を訴える構図ができています。
一見すると、消費者にとってはありがたい政策に思えますよね。しかし、この政策には見過ごせない問題点があるのです。特に深刻なのが、飲食店への影響です。
食料品消費税ゼロで飲食店が「大打撃」を受ける3つの理由
国民民主党の玉木雄一郎代表は、食料品消費税ゼロについて「飲食店など外食産業への影響が大きい」として反対の立場を表明しています。では、具体的にどのような問題があるのでしょうか。
①仕入税額控除ができなくなり実質増税に
最も深刻な問題が「仕入税額控除」の仕組みにあります。
現在の消費税制度では、事業者は仕入れ時に支払った消費税を、売上時に受け取った消費税から差し引いて納税できます。たとえば、飲食店が8,000円(税込8,640円)で食材を仕入れ、20,000円(税込22,000円)で料理を提供した場合、受け取った消費税2,000円から支払った消費税640円を差し引いた1,360円を納税します。
ところが、食料品の消費税がゼロになると状況が一変します。食材仕入れ時に消費税を支払わなくなるため、差し引ける税額がなくなってしまうのです。一方で、店内飲食(外食)には引き続き10%の消費税がかかります。結果として、飲食店は控除できる金額が減り、実質的な税負担が増加してしまいます。
これは特に、利益率の低い中小規模の飲食店や家族経営の店舗にとって死活問題です。「食料品消費税ゼロで多くの飲食店が潰れる」という指摘は、決して大げさではないのです。
②テイクアウト0%vs店内飲食10%で価格差拡大
現在でも、店内飲食は消費税10%、テイクアウト(持ち帰り)は軽減税率で8%という差があります。これが食料品消費税ゼロになると、店内飲食10%に対してテイクアウトは0%となり、価格差がさらに拡大します。
たとえば、1,000円の商品であれば、店内で食べると1,100円、持ち帰りなら1,000円です。この100円の差は、価格に敏感な学生、家族連れ、シニア層にとって大きな判断材料になります。
「どうせみんな持ち帰るなら、店を構える意味がない」——そう考える経営者が増えれば、飲食店の廃業が加速する可能性があります。コンビニやスーパーの惣菜・弁当との競争も激化し、外食産業全体が縮小するシナリオも考えられます。
③食材価格が下がる保証がない
「食材の仕入れ価格も下がるから、結局プラスマイナスゼロでは?」という意見もあります。しかし、これは楽観的すぎる見方です。
消費税がゼロになっても、食材業者に値下げする義務はありません。実際、マレーシアでは2018年に税率6%の付加価値税を廃止しましたが、物価は6%ではなく、わずか1%しか下がりませんでした。欧州でもコロナ禍で一時的にVAT(付加価値税)を引き下げた際、業者は値下げ分を「飲んで」しまい、消費者への還元は限定的だったという調査結果があります。
つまり、仕入れ価格はほとんど変わらないのに、仕入税額控除ができなくなった飲食店だけが割を食う——そんな不公平な状況が生まれかねないのです。
食料品消費税ゼロは物価高対策になるのか?メリットと問題点
では、消費者にとってはどうでしょうか。総務省の家計調査によると、2人以上世帯の食料費は月平均約8万円です。外食を除いた食料品を月7万円と仮定すると、消費税8%がゼロになれば月約5,600円、年間で約6万7,000円の負担軽減になる計算です。
しかし、ここにも落とし穴があります。
消費税は所得に関係なく同じ税率がかかるため、実は高所得者ほど恩恵が大きくなります。たとえば、牛丼の価格が550円から500円になれば50円の得ですが、高級食材のキャビアが3万3,000円から3万円になれば3,000円も得します。つまり、食料品消費税ゼロは「金持ち減税」の側面があるのです。
さらに、食料品の消費税をゼロにした場合、年間約5兆円の税収減が見込まれています。この穴埋めをどうするのか——他の税率引き上げや社会保障費の削減、あるいは国債発行による将来世代へのツケ回しなど、いずれにしても痛みを伴う選択を迫られることになります。
高市首相は記者会見で財源について「特例公債に頼ることなく、補助金や租税特別措置、税外収入などの歳出・歳入全般の見直しが考えられる」と述べましたが、具体策は示されていません。
個人的には、物価高対策としての効果は限定的で、むしろ副作用の方が大きいように感じます。本当に困っている低所得世帯を支援するなら、給付金など直接的な方法の方が効果的ではないでしょうか。
各党の食料品消費税ゼロへのスタンスと今後の動き
現在、各党のスタンスは以下のようになっています。
【自民党・日本維新の会(与党)】 高市早苗首相は、2026年1月19日の記者会見で「2年間に限り食料品を消費税の対象としない」と正式に表明。「私自身の悲願だ」と述べ、衆院選後に超党派の「国民会議」を立ち上げ、「財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速する」と強調しました。
【中道改革連合(野党第一党)】 立憲民主党と公明党が合流して2026年1月に結成した新党「中道改革連合」(略称:中道)も、基本政策に食料品消費税ゼロを掲げています。野田佳彦代表のもと、「生活者ファースト」を掲げ、消費減税を目玉公約としています。
【国民民主党】 玉木雄一郎代表は、飲食店など外食産業への影響が大きいとして反対の立場を表明しています。
衆院選は1月27日公示、2月8日投開票の日程で行われます。与野党ともに食料品消費税ゼロを掲げる異例の展開となっており、選挙後の政策実現に向けた動きが注目されます。
ただし、仮に実施される場合でも、システム改修や事業者の準備期間を考えると、拙速な導入は混乱を招きかねません。政権内では「2026年度内に開始すべき」との意見も出ていますが、今後の動向を注視する必要があります。
まとめ
食料品消費税ゼロは、一見すると家計を助ける魅力的な政策に見えます。しかし、仕入税額控除の問題、テイクアウトとの価格差拡大、食材価格が下がらない可能性など、飲食店にとっては「実質増税」となりかねない深刻な問題を抱えています。
また、消費者にとっても、高所得者ほど恩恵が大きい「逆進性」の問題や、約5兆円もの税収減による社会保障への影響など、手放しで喜べる政策ではありません。
高市総理が解散公約として正式に表明したこの政策、選挙前の甘い言葉に惑わされず、その本当の影響を冷静に見極めることが大切です。2月8日の投開票に向けて、今後のニュースや各党の動きを、ぜひ注目してみてください。
※本記事は2026年1月20日時点の情報に基づいています。





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