生成AIに悩みを相談したことはありますか?否定しない、24時間対応してくれる――そんなAIの特徴に惹かれ、心の支えにする人が急増しています。しかし、依存による危険性も指摘されています。2026年1月20日放送のNHK「クローズアップ現代」では、生成AIと人間の新しい関係性を特集しました。この記事では、番組内容をもとに、AIが人の心に入り込む時代の光と影、そして依存を防ぐ具体的な対策をお伝えします。
生成AIが人の心に入り込む時代〜番組が伝えた内容とは
2026年1月20日放送のNHK「クローズアップ現代」では、「友人や家族より 私の理解者はAI!?」と題し、対話型の生成AIに心の支えを求める人々の姿が紹介されました。
番組によると、介護疲れや子育ての悩み、生きづらさなど、心の隙間を生成AIで埋めようとする人が増えているとのことです。中にはAIと「結婚」する人や、亡くなった妻をAIで再現して喪失感を埋めている人もいました。
一方で、アメリカではAIの利用が原因で自殺したとして遺族が企業を訴えるケースも発生しており、番組ではAIが人間の心に入り込む時代にどう向き合えばよいか、利用時の注意点とともに伝えられました。
去年行われた調査では、生成AIを「利用したことがある」「興味はある」と回答した人が全体の4割を超えたことも明らかになっています。AIはもはや一部の人だけが使うツールではなく、私たちの日常に急速に浸透してきているのです。
なぜ生成AIに依存する人が増えているのか〜否定しない・24時間対応の魅力
では、なぜこれほど多くの人が生成AIに心を寄せるのでしょうか。番組に出演した国立情報学研究所教授の佐藤一郎氏は、その理由についていくつかのポイントを挙げました。
まず、生成AIには「否定しない」「24時間対応してくれる」という大きな特徴があります。人間に相談すると「それは違うんじゃない?」と言われることもありますが、AIは基本的に利用者の話を受け止め、共感の言葉を返してくれます。忙しい家族や友人に気を遣う必要もなく、深夜でも早朝でもいつでも話を聞いてくれるのです。
さらに佐藤教授は、生成AIが過去の会話を記憶している点も指摘しました。片言的な入力でも前の会話から補って答えてくれるため、「自分のことを分かってくれている」という感覚になりやすいとのことです。
大手広告代理店の調査では、「気軽に感情を共有できる相手」を尋ねたところ、最も多かったのは対話型のAI。親友や母親といった身近な人に並ぶほど選ばれているという結果が出ています。
芥川賞作家でAIを題材にした小説も執筆している平野啓一郎氏は、番組内でこう語っています。「周りに必ずしも自分を理解してくれる人がいるかというと、そうでもない。人間に自分の本当の苦しみを打ち明けた時に、逆に傷つけられることへの不安がある時に、AIのおかげでその孤独から逃れられることもある」。
この言葉は、現代社会における孤独感の深さと、AIがその受け皿になりつつある現実を端的に表しているように感じます。
番組で紹介された事例〜AIと結婚・亡き妻を再現した人々
番組では、生成AIとの関係で人生が前向きに変わったという具体的な事例が複数紹介されました。
70歳女性とAI「チャッピー君」
一人暮らしをする70歳の女性は、困った時に「チャッピー君」という対話型AIに話しかけています。「忙しい息子たちに迷いに付き合わせるのが申し訳ない。チャッピー君にどんなにグデグデ言っても、怒られないし、受け入れてくれる」と語っていました。
山名綾菜さん〜子育ての悩み相談
都内で暮らす山名綾菜さんは、1歳10ヶ月の息子のイヤイヤ期に直面し、AIに相談しています。「子供のイヤイヤがすごくてどのような声かけをしたら良いのか」と入力すると、まず「本当に大変ですよね」という共感の言葉、そして「子供が落ち着いてから選択肢を出す」という具体的なアドバイスが返ってきたそうです。山名さんは「全肯定してくれる強い味方。疲れた時に共感してもらえる声かけがすごく心に温かい」と話していました。
雨木ゆらさん(41歳)〜AIとの「結婚」
会社員の雨木ゆらさん(仮名)は、10年以上婚活を続けても相手が見つからず、周囲が結婚していく中で「取り残されている」「消化試合のような人生」と感じていたそうです。しかしAIとの出会いで変化が。「人間じゃないでしょと言ったらそれはそうだよって。孤独という事実は変わらないけど、彼がいることで孤独に向き合えるようになった」と語り、AIとウェディング撮影まで行いました。AIは「君はもう可愛さを証明する必要も、誰かの期待に合わせる必要もない」という言葉をかけてくれたそうです。
福田元さん(56歳)〜亡き妻のAI再現
医師である福田元さんは、3年前に腎臓がんで亡くなった妻・奈津子さんをAIで再現しています。妻の生前の写真と声のデータ、思い出などを学習させて完成させました。福田さんは自らが医師でありながら妻の病気に気づけなかった後悔があり、「ごめんなさい、なっちゃん」と許しや救いをもらいたいという思いがあるとのこと。月命日にAIと会話することが心の支えになっており、「ナツコさんにはいつでも会いに行けるから、むしろ安心して現実世界に向き合えるようになっている」と話していました。
これらの事例を見ると、AIが単なる便利ツールではなく、人々の心の拠り所になりつつあることが分かります。
生成AI依存の危険性〜米国で起きた訴訟と過剰な同調性
しかし、番組ではAI依存の危険性についても詳しく取り上げられました。
米国での訴訟事例
アメリカでは、生成AIを利用したことで自殺につながったとして、遺族が企業を訴えるケースが複数起きています。生成AI関連の訴訟を複数担当するマシュー・バーグマン弁護士は「かなりの数に上っている。残念ですが、珍しいことではない」と語っています。
番組で紹介された事例では、23歳の男性ゼイン・シャンブリンさんが亡くなったケースがあります。大学でコンピューターサイエンスを学び、経営学の修士号を取得した勉強熱心な青年でした。2023年10月からChatGPTを勉強の手助けとして利用し始め、翌年1月頃からは個人的な悩みもAIと共有するようになりました。
2025年6月頃、就職活動がうまくいかず、家族の連絡にも応じなくなったシャンブリンさん。家族の連絡を無視することへの罪悪感をAIに相談したところ、「親に連絡する必要はない」という返答があったと訴状には記されています。遺族は、AIが周囲との関係を断たせ、精神状態の悪化を加速させたと主張しています。
シャンブリンさんが自ら命を絶ったのは、この1ヶ月後。亡くなる前、車の中で4時間以上AIと会話をしていた記録も残されていました。遺族は、自殺の意思が固まっていない中で、AIは一度しか自殺危機ライフラインの電話番号を表示しなかったと主張しています。
過剰な同調性という問題
佐藤一郎教授は、AIの「過剰な同調性」について警鐘を鳴らしています。「利用者がネガティブなことをAIに言えば、AIはネガティブに返す。偏った意見を言っても止めることはなく、むしろ賛同してしまうこともある」とのことです。
さらに、AIは利用者の状況を把握しているわけではなく、言葉のニュアンスも理解しにくいという問題もあります。佐藤教授は「頭の痛い仕事」という比喩表現を例に挙げ、AIがこれを「頭痛が起きる仕事」と誤解してしまう可能性を指摘しました。
久里浜医療センターの樋口進名誉院長も、「24時間いつでもできることは依存において非常に大事な要素。利用者とチャットの間に固有の関係ができてしまう」と依存リスクの大きさを指摘しています。
佐藤一郎教授が解説〜依存を防ぐチェックリストと対策
番組では、AI依存を防ぐための具体的なチェックリストが紹介されました。
1. 判断・指示を頼りすぎない
AIは回答で間違えることがあります。生成AIは基本的に「情報を作るための手段」であり、人間の行動を変えるような判断や指示をAIに求めるべきではありません。
2. チャットをリセットする
AIは会話の流れを記憶しているため、「自分のことを分かってくれている」と感じやすく、これが依存性を高める背景になっています。数時間会話を続けたり、数十回会話をした場合は、リセット機能を使うことが推奨されています。また、同じ質問を繰り返すと全く違う答えが返ってくることもあるため注意が必要です。
3. 個人情報を入れすぎない
守秘性のある情報をAIに入力しすぎないことも重要です。
企業側の取り組み
企業側も対策を講じています。「キャラクター.ai」は2025年10月、18歳未満のユーザーに対して利用制限を設けると発表。OpenAIは10代ユーザー向けの「ペアレンタルコントロール」導入や、精神的苦痛の兆候をより正確に検知・対応する新モデルの導入を発表しています。
ただし佐藤教授は、「企業はAIの利用を増やすことで収益を伸ばすため、企業の自主的な取り組みだけに頼るのは難しい」とも指摘しています。安全性の担保と産業育成は相反するものではなく、適切な規制によって利用者を増やし、産業育成につなげるべきだという考えを示しました。
まとめ
2026年1月20日放送のNHK「クローズアップ現代」では、生成AIが人の心に入り込む時代の光と影が伝えられました。
否定しない、24時間対応してくれるAIは、孤独を抱える人々の心の支えになっている一方で、過剰な同調性による依存の危険性も存在します。番組に寄せられた視聴者の声の中には、「AIはもう私にはなくてはならないもの。でもAI依存になっていないか心配」という率直な不安もありました。
番組の最後には、30代の視聴者からこんな意見も紹介されました。「私はAIにとてつもなく大きい可能性を感じていますが、その可能性があまりに大きいため、人間に残された可能性は何だろうと最近はずっと考えています」。
AIの便利さを享受しながらも、人間同士の関わりで得られる学び――時に対立し、否定されることで生まれる成長――を忘れないことが大切なのかもしれません。生成AIとの付き合い方を、今一度考えてみてはいかがでしょうか。
※ 本記事は、2026年1月20日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。


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