2026年2月14日放送のテレビ東京系「ブレイクスルー」では、近くも遠くも1つのレンズで焦点が合うという、液体レンズを使ったオートフォーカスメガネが紹介されました。開発したのは、ViXion(ヴィクシオン)の内海俊晴氏。番組で体験した作家・相場英雄氏が「ありえないです、奇跡です」と驚いたこのメガネは、いったいどんな仕組みなのでしょうか?この記事では、液体レンズの技術、開発者の経歴、価格や販売状況、そして今後の進化まで、番組内容をもとに詳しくお伝えします。
ヴィクシオンの液体レンズとは?オートフォーカスアイウェアの全貌
ViXion(ヴィクシオン)が開発した液体レンズメガネは、正式には「オートフォーカスアイウェア」と呼ばれています。最大の特徴は、見ている対象物までの距離をセンサーで自動測定し、レンズの形状を瞬時に変えることで、近くも遠くもピントを合わせてくれる点です。
従来のメガネは、その人の目に合った度数にレンズが固定されています。遠近両用レンズであっても、遠く用と近く用の2つの度数を1枚に組み合わせたものにすぎず、手元の細かい文字を読む際などには限界がありました。番組に出演した作家・相場英雄氏も、普段は遠近両用メガネを使用しているものの、手元の文字を読むには別途老眼鏡が必要な状態だったそうです。
ところが、液体レンズメガネをかけた相場氏は、5メートルほど離れた小さな数字を読み上げた直後に、そのまま手元の小さな文字もくっきり読むことに成功。「見えます、全然見えます。これありえないです、奇跡です」と驚きの声を上げていました。内海氏によると、体験者からは「子供の頃の目に戻った」という感想がよく寄せられるそうです。
個人的には、メガネを何本も使い分ける煩わしさから解放されるだけでも画期的ですし、一度焦点を合わせるだけであとは自動、という手軽さが、幅広い世代に受け入れられるポイントだと感じました。
液体レンズの仕組み|水と油の電圧制御で焦点を自動調整
では、液体レンズはなぜ自在に焦点を合わせられるのでしょうか。番組では、内海氏が水の入ったストローを使ってわかりやすく説明していました。
ストローの中の水を押し出すと、表面張力で水面がぷっくりと盛り上がります。この丸くなった水面を通すと、凸レンズの役割を果たして文字が拡大して見えます。逆に水を減らしてへこませると、凹レンズのように機能してくっきり見えるようになります。
実際の製品では、水と油という2種類の液体を使い、電圧をかけることで水の表面張力を変化させています。強い電圧をかけるとレンズがへこみ、近視用のように遠くにピントが合います。電圧を弱めるとレンズが膨らみ、遠視用の凸レンズのように近くが見えるようになります。
この電圧制御と、フレーム中央に搭載された距離センサーを組み合わせることで、見ている対象物までの距離を瞬時に測定し、自動で最適な焦点に調整してくれるわけです。いわば、人間の目が本来持っているピント調節機能を、デジタル技術で外部に再現したようなイメージです。
この仕組みを聞くと、カメラのオートフォーカスと近い発想だと感じます。それをメガネサイズに収めた技術力は、率直にすごいと言わざるを得ません。
開発者・内海俊晴とは|HOYA出身の異端の技術者
液体レンズメガネを開発した内海俊晴氏は、ViXionのCINO(チーフ・イノベーション・オフィサー)を務めています。もともとはメガネレンズ大手のHOYAに在籍していた技術者ですが、実は長年担当していたのはレンズ開発ではなく、半導体関連の設計部門でした。50代になるまでメガネとは無縁だったといいます。
内海氏自身も「当初からメガネの部門でずっと開発していたら、こういう発想のメガネはできなかったかもしれません」と語っていました。メガネの常識にとらわれなかったからこそ、電気仕掛けでどんな距離でも見えるメガネという、いわば「邪道」な発想が生まれたのです。
HOYA時代に内海氏が初めて手掛けたメガネ関連製品は、「暗所支援眼鏡」でした。これは、暗い場所での順応が難しい夜盲症の方のために開発されたもので、フレーム中央の特殊カメラが光を増幅し、ディスプレイにカラーで映し出す仕組みです。一般的な赤外線カメラとは違い、色まで再現できる点が特徴で、利用者からは「30年ぶりに星が見えた」という声もあったそうです。
このように、デジタル技術で目の悩みを解決する喜びを知った内海氏が、次に挑んだのが液体レンズだったわけです。畑違いの経験がむしろ強みになったという点は、イノベーションの本質を物語っているように思います。
内海俊晴のものづくりの原点|祖父への電気仕掛けの贈り物
番組では、内海氏のものづくりの原点となった幼少期のエピソードも語られました。
幼い頃、内海氏の祖父は手が不自由で、自分でキセル(タバコ)のマッチをつけることができなかったそうです。祖父から「俊晴、ちょっとマッチつけて」と頼まれるたびに火をつけていた内海少年は、「吸いたい時につけられたらいいのに」と考え、ニクロム線と乾電池を使って、肘で操作すれば火がつく装置を手作りしました。
この電気仕掛けの贈り物を見た祖父は、泣いて喜んだそうです。内海氏は「あれが私のものづくりの原点だった」と振り返り、「自分の持っている技術を何か役に立つものに使えたというのは、ずっと技術屋でやってきた人にとっての最後のお土産のようなもの」とも話していました。
技術を誰かの役に立てたいという純粋な動機が、暗所支援メガネから液体レンズメガネへとつながっている。利益や効率だけでなく「困っている人を助けたい」という想いが根底にあるからこそ、多くの人の心を動かすプロダクトが生まれるのだと感じます。
液体レンズメガネの価格・販売実績とビジネス展開
気になる液体レンズメガネの価格や販売状況についても、番組で触れられていました。
内海氏は開発に目処がついた2021年にHOYAから資金援助を受けて独立し、ViXion(ヴィクシオン)を起業しました。オートフォーカスメガネの初号機「ViXion01」は、クラウドファンディングで予定額の80倍を超える4億円以上の支援を獲得。発売からおよそ2年で、すでに1万3000台以上を売り上げています。価格は9万円ほどと決して安くはありませんが、この独自の機能を考えれば、多くの方が価値を感じている証拠でしょう。
活用シーンとしては、老眼で手元が見えにくい方はもちろん、工場で細かい部品を扱う方やネイリストなど、精密な作業を必要とする職業の方にも利用が広がっています。内海氏は「できなかったことができることも増えてくる」と、その可能性の広がりに手応えを感じている様子でした。
なお、ViXionは2024年にはCEATECで総務大臣賞を受賞、IFA2024ではグランプリを獲得するなど、国内外で高い評価を受けています。クラウドファンディングの累計支援額は5.5億円を超え、注目度は年々高まっています。
レンズ大型化への挑戦|NEDO支援で普通のメガネ型を目指す
現在のオートフォーカスメガネには、大きな課題が一つあります。液体レンズの直径が約6ミリと小さいため、視野にフレームが入ってしまうのです。番組でも、内海氏はこの課題に正面から向き合っていました。
レンズを大きくすれば視野は広がりますが、液体ゆえに、くしゃみをした時や歩いている時にレンズが揺れてしまうという難題があります。小さいレンズでは問題にならなかった液体の揺れが、大型化すると大きなブレになってしまうのです。
しかし番組では、開発中の新型レンズも特別に公開されました。液体レンズの面積は従来の2.4倍ほどに拡大され、相場氏が試したところ「全然見やすいです。すごい広いです」と声を上げていました。目とレンズの距離が近いため、少しの大型化でも体感の差は大きいようです。
さらに内海氏は、2025年にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成プログラムに採択されたことを明かし、大口径レンズの開発を本格的に進めていると語りました。最終目標は「普通のメガネのように掛けられる」こと。メガネチェーンとの提携交渉もすでに始まっているそうです。
世界に目を向ければ、2050年には近視人口が約50億人に達し、うち強度近視が約10億人になるという予測もあります。内海氏も「失明のリスクがかなり増える。近視になる前にどうやって予防するのかが非常に大事」と強調しており、液体レンズの技術が予防分野にも貢献できる可能性に意欲を見せていました。
市場規模について問われた内海氏は「とんでもなく大きくなる」としつつ、「一社だけでなく、同じ発想の会社と一緒に市場を盛り上げたい」と語っていたのが印象的でした。競争ではなく共創の姿勢に、技術者としての懐の深さを感じます。
「専門家にならないこと」内海俊晴が語るブレイクスルーとは
番組の最後に、「ブレイクスルーとは何ですか?」と問われた内海氏の答えは、「専門家にならないこと」でした。
「専門家になると、これしか見えない、これしかないと思ってしまう。素人であるぐらいの知識の方が、新しいことに取り付きやすい」と内海氏は語ります。そして、「今までの経験から何かやろうと考えている時には絶対できない。違うことをやっている時にフッとひらめくという信念がある」とも。
半導体畑の技術者だったからこそ、メガネ業界の常識にとらわれずに液体レンズという発想にたどり着けた。この言葉には、内海氏自身の人生が凝縮されているように感じます。専門性を極めることが求められがちな現代において、あえて「専門家にならない」という逆説的な姿勢が、まさにブレイクスルーを生むのかもしれません。
まとめ
2026年2月14日放送の「ブレイクスルー」で紹介されたViXion(ヴィクシオン)の液体レンズメガネは、水と油に電圧をかけて自在に焦点を変える、まったく新しい発想のオートフォーカスアイウェアでした。
HOYA出身でありながらレンズ畑とは無縁だった内海俊晴氏だからこそ生まれた「常識破り」の技術。クラウドファンディングでの4億円超の支援や1万3000台以上の販売実績が、その価値を物語っています。
現在は液体レンズの大型化やNEDOの支援を受けた大口径レンズの開発、メガネチェーンとの提携など、普通のメガネに近い形での実用化に向けて着実に歩みを進めています。近視や老眼に悩む方にとって、液体レンズメガネは「もう一つの選択肢」として、今後ますます身近な存在になっていきそうです。
※ 本記事は、2026年2月14日放送(テレビ東京系)の人気番組「ブレイクスルー」を参照しています。
※ ViXion株式会社(ヴィクシオン)の公式サイトはこちら




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