アトピー性皮膚炎のつらいかゆみや肌荒れに長年悩んでいませんか?2026年1月28日放送のBSテレ東「いまからサイエンス」では、京都大学の椛島健治教授が、約20年ぶりに登場したアトピーの新薬や、皮膚が「人体最大の臓器」である理由を分かりやすく解説しました。この記事では、番組で語られた新薬の仕組みや皮膚の最新研究、そして日常の肌ケアに役立つ情報まで、たっぷりお届けします。
椛島健治教授が開発した20年ぶりのアトピー新薬とは
番組で最も注目を集めたのが、椛島健治教授が開発に携わった2つのアトピー性皮膚炎の新薬についてのお話です。
1つ目は、塗り薬のコレクチム軟膏です。アトピー性皮膚炎の塗り薬としては、1999年のプロトピック軟膏以来、実に約20年ぶりとなる新薬で、2020年に発売されました。この薬はJAK阻害薬と呼ばれる新しいタイプの外用薬で、壊れてしまった肌のバリア機能を回復させながら、炎症とかゆみの両方を抑えるという、これまでにない切り口のお薬です。ステロイドのように免疫を軒並み全部抑えるのではなく、アトピーの原因をピンポイントで狙い撃ちできるのが大きな特徴です。
2つ目は、かゆみを抑える注射薬のミチーガです。椛島教授は番組の中で、アトピー性皮膚炎で発生する特別なタンパク質(IL-31)に着目し、それを抑えることでかゆみを減らす薬を開発したと語りました。ミチーガは2022年に発売された世界初の抗IL-31受容体A抗体で、中外製薬が創製しマルホが製造販売を手がけています。
椛島教授は番組で「ステロイドしか選択肢がなくて、うんざりだと感じていた患者さんにも、今はいいオプションがいっぱいある」と語り、この5年でアトピー性皮膚炎の治療が劇的に変わったことを強調していました。世界に2億人以上いるとされるアトピー患者さんにとって、まさに「救世主」とも言える研究成果ではないでしょうか。
個人的に印象深かったのは、「ターゲットが見つかれば3ヶ月以内にそれをブロックする抗体は作れる」という椛島教授の言葉です。もちろんそこから安全性を確認する治験に長い時間がかかるわけですが、病気のメカニズムさえ解明できれば新薬開発のスピードは格段に上がるという事実は、多くの患者さんに希望を与えるものだと感じました。
皮膚は人体最大の臓器!その驚きの役割とバリア機能
番組の冒頭で街頭インタビューが行われ、「人間の一番大きい臓器は?」という質問に、多くの方が「肺」「肝臓」「腸」と答えていました。正解は「皮膚」なのですが、そもそも皮膚を臓器だと思っている方は少ないのではないでしょうか。
椛島教授によると、皮膚は体重の約16パーセントを占めています。体重70キロの方なら、皮膚だけで10キロ以上にもなる計算です。脳よりもはるかに重い、まさに人体最大の臓器というわけです。
皮膚の構造は大きく三層に分かれていて、一番外側の「表皮」、その内側の「真皮」、そして「皮下組織」で構成されています。この三層構造の中に、汗を作る汗腺、脂を作る脂腺、温度や痛みを感知する神経、そして鳥肌を立てる筋肉まで備わっているのですから驚きです。
中でも最も重要な役割が「バリア機能」です。皮膚は外から侵入しようとする細菌やウイルス、アレルゲンなどの異物を跳ね返してくれています。さらに、体内の水分が外に漏れ出すのも防いでくれています。椛島教授は「皮膚の3割がなくなると命に関わる」と話しており、火傷で広範囲の皮膚を失うと体液が漏れ出し、電解質のバランスが崩れて命の危険があるとのことでした。
また、チンパンジーから人間に進化した時の一番大きな変化は、脳ではなく「皮膚」だったという話も衝撃的でした。毛がなくなって汗をかけるようになったことで長距離を走れるようになり、生存競争で優位に立てたというのです。体の外側に面している部位ほど皮膚が厚く、内側は薄いという違いも、進化の過程で形成されたものだと考えられています。
アトピーのかゆみはなぜ起きる?蕁麻疹とは違うメカニズム
番組で椛島教授が特に力を込めて語っていたのが、「かゆみ」のメカニズムについてです。
実は、蕁麻疹のかゆみとアトピーのかゆみは、全く異なるメカニズムで起きています。蕁麻疹のかゆみは「ヒスタミン」という物質が原因で、抗ヒスタミン薬を飲めば治まります。ところが、アトピー性皮膚炎の患者さんに同じ抗ヒスタミン薬を使っても、かゆみは治まりません。つまり、アトピーのかゆみはヒスタミンとは別の原因で起きているということです。
椛島教授はここに着目しました。アトピー性皮膚炎は免疫の誤作動によって、本来攻撃しなくてもいい相手を攻撃してしまうことで起こります。その際に発生する特別なタンパク質(IL-31)がかゆみの正体だったのです。
アトピー患者さんの苦しみは、かゆみによるQOL(生活の質)の低下が非常に大きいと椛島教授は指摘します。夜かゆくて眠れない、勉強や仕事に集中できないなど、日常生活への影響は深刻です。しかもかゆくてかいてしまうことで、肌がさらに悪化するという悪循環に陥ってしまいます。
だからこそ、かゆみそのものを抑えることが治療において非常に重要なのです。椛島教授が開発に携わったミチーガは、まさにこのかゆみの悪循環を断ち切るために生まれた薬と言えます。
興味深いのは、アトピー性皮膚炎と喘息はメカニズムがかなり似ているという点です。番組で加藤浩次さんが「小児喘息からずっと喘息」と話すと、椛島教授は「アトピーに効く薬は喘息にも効くことがある」と説明していました。皮膚を通してアレルゲンに暴露されると、肺に行けば喘息、腸に行けば食物アレルギーにつながることもあるそうです。皮膚のバリア機能を守ることが、全身のアレルギー予防にもつながるというのは、とても重要な知見だと思います。
皮膚研究のきっかけはラウジ先生の驚異の能力
椛島教授が皮膚研究の道へ進んだきっかけも、番組では詳しく語られていました。
もともと医学の道を志したのは、北九州で育った少年時代にさかのぼります。町にたった一人の開業医が、昼夜を問わず住民を診療する姿を見て、「あんな先生になりたい」と思ったことが原点だったそうです。
その後、京都大学に進学し医学研究に興味を持った椛島教授ですが、皮膚の世界に本格的に引き込まれた決定的なきっかけは、アメリカ留学時代にワシントン大学で出会ったラウジ先生の存在でした。
ラウジ先生は驚くべき能力の持ち主で、患者さんの皮膚を見るだけで、その人の職業、子供の頃どこで育ったか、どんな治療を受けているかまで言い当てることができたというのです。番組で加藤浩次さんが「インチキ占い師みたい」と笑っていましたが、それは膨大な症例を診てきた経験に基づくものでした。
この出会いによって「皮膚はすごい」と感じた椛島教授は、皮膚をもっと深く理解したいという思いから研究の道へと進んでいきます。皮膚は自分の人生の歴史を刻んでいる臓器であり、生き様そのものが表れるというラウジ先生の教えは、研究者としての原動力になったと言えるでしょう。
ちなみに椛島教授自身は「ラウジ先生のレベルには全然行けていない」と謙遜していましたが、患者さんが診察室に入ってくる時に、年齢や職業、どんな悩みを抱えているかをある程度想像するようにしているとのことでした。研究だけでなく臨床の現場に立ち続けているからこそ、患者さんの声からアイデアが生まれ、新薬開発につながったのだと感じます。
椛島健治教授の著書と皮膚ケアの常識が覆る話
番組の終盤で椛島教授が紹介していたのが、ご自身の著書『人体最強の臓器 皮膚のふしぎ』(講談社ブルーバックス、2022年12月刊行)です。この本は第39回講談社科学出版賞を受賞しており、山中伸弥教授も推薦するなど高い評価を受けています。番組の内容をさらに深く知りたい方には、ぜひおすすめの一冊です。
また、番組では皮膚に関する「常識が覆る話」もいくつか飛び出しました。
まず、乾布摩擦について。かつては健康に良いとされていた乾布摩擦ですが、椛島教授によると「バリア機能を破壊しまくっている」とのこと。皮膚にとっては良くないそうです。
次に、傷の治し方。昔は傷を乾燥させてカサブタを作るのが常識でしたが、現在は「ウェットドレッシング」と呼ばれる湿潤環境を保つ方法の方が傷の治りが早いことが分かっています。いわゆるハイドロコロイド絆創膏(パワーパッドなど)で傷を密閉するのが今の正解です。
保湿の大切さについても強調されていました。年を取ると皮脂の分泌量が減り、特に冬場はエアコンの使用で湿度が下がるため、皮膚のバリア機能が低下しやすくなります。温度だけでなく湿度もチェックし、冬場はより丁寧に保湿をすることが大切とのことです。
椛島教授自身は、シミやシワの特別なケアはしていないそうですが、皮膚癌のリスクを避けるため、長時間の外出時には日焼け止めを塗るようにしているとのこと。皮膚科医として最低限のケアは欠かさない姿勢が印象的でした。
「僕が今日言ったことも、10年後には違う話になっているかもしれない」という椛島教授の言葉は、科学が常に進化し続けていることを示しています。だからこそ、最新の正しい知識をアップデートし続けることが、自分の肌を守る一番の方法なのだと思います。
まとめ
2026年1月28日放送のBSテレ東「いまからサイエンス」では、京都大学の椛島健治教授が、皮膚は人体最大の臓器であること、約20年ぶりのアトピー性皮膚炎の新薬(コレクチム軟膏・ミチーガ)の開発経緯、蕁麻疹とアトピーのかゆみのメカニズムの違い、そしてラウジ先生との出会いが研究のきっかけになったことなどを語りました。
アトピー性皮膚炎の治療はこの5年で劇的に進化しています。もし長年ステロイド治療だけで改善を感じられずにいる方がいたら、ぜひ一度皮膚科を受診して、新しい治療の選択肢について相談してみてはいかがでしょうか。
また、アトピーでない方にとっても、皮膚のバリア機能を意識した日常のケア、つまり保湿や紫外線対策は、健康を守るうえでとても大切です。皮膚は毎日触れる、自分で見える唯一の臓器です。もっと大事にしてあげたいと感じた放送回でした。
※ 本記事は、2026年1月28日放送(BSテレ東)の「いまからサイエンス」を参照しています。



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