11月28日、日本大学がアメリカンフットボール部の廃部を突如発表した。違法薬物事件に伴う部員逮捕が要因となり、83年の長きにわたる部の歴史に幕を閉じることになった。甲子園ボウルで21回もの栄冠を手にした強豪校の幕引きに、学生やOBを含む関係者からはショックとともに残念な声が漏れている。
部の消滅という厳しい決定の裏には、大学当局の混乱ぶりも見え隠れする。今後は他大学での再出発を希望する学生への支援が急務となる。反省すべき経緯を踏まえ、悲劇の繰り返しを防ぐためにも、大学の体質改善が改めて問われたといえる事態である。
日大フェニックス
違法薬物事件で部員3人逮捕、日大がアメフト部の廃部を決定
日本大学が28日、違法薬物事件に揺れるアメリカンフットボール部について、廃部を決定した。大学の競技スポーツ運営委員会が同日開かれ、部の存続を認めない判断を下した。背景には、今年8月から続く麻薬取締法違反容疑による部員の逮捕が相次いでいたことがある。
部員の初めての逮捕は8月5日。3年生のA選手が大麻取締法違反で逮捕されたのを皮切りに、10月には別の3年生部員も逮捕。さらに直近では11月27日に、新たな3年生部員が覚せい剤取締法違反容疑で逮捕されている。大学当局は8月8日の会見で、複数の逮捕者が出た場合、部の存続を見直さざるを得ないとの認識を示していた。
21回の学生日本一を誇る名門が消滅 関係者からは混乱と落胆の声
日大アメフト部は、学生日本一を目指す甲子園ボウルで歴代2位となる優勝21回を誇る名門チームだ。過去には社会人とも対等に戦う強豪として知られ、全日本選手権であるライスボウルでも4度の優勝を飾っている。
しかし今回の違法薬物事件を機に、83年の歴史に幕を閉じることに。OBからは「どうしてこうなってしまったのか」と落胆の声が漏れ、在籍選手からは「混乱している」とショックを隠せない反応があがっている。名門チームの崩壊に、アメフト界からも驚きと残念さを抱く声が上がっている。
監督から部員へ突然の廃部通達、背景に大学トップの対立
廃部の決定当日、中村敏英監督から部員に対し、LINEのグループチャットを通じて突如として「廃部」の旨が通達された。「経緯や理由の説明は今後大学からある」とだけ述べられ、学生たちへの丁寧な対応はなかった。
この対応の背景には、大学執行部の内紛も絡んでいる。違法薬物事件を受け、学長や副学長の辞任が迫られる状況にあった。副学長は辞任圧力に対し、パワハラ被害を訴えて理事長を提訴する事態に。一方で学生へのケアは後回しにされるなど、大学執行部の体制混乱が見え隠れしていた。
在籍選手の行方は? 他大学やクラブチームでの再出発に期待
部の突然の消滅により、部活動に取り組んでいた学生たちをどうするかが課題となる。違法薬物事件と直接関係ない選手については、他大学や実業団のクラブチームでの再出発が期待される。周囲の受け入れ支援があれば、競技生活を続行できる可能性がある。
一方で部員全員が今回の問題の当事者でもあるという見方は根強い。問題を内部で止めることができなかった集団責任が指摘されており、就職活動などでの不利益が心配される。
反省すべき点を振り返り、二度と繰り返さぬ構造作りを
日大廃部の決定には、反省点が多分にある。過去の悪質タックル事件で外部委員会を起用したものの、内部改革が不十分な状態が続いていた。学生のメンタルケア不足や世論に即した迅速な公表ができない対応力の低さも、破綻の一因と言える。
名門チームと学生の望む明日を共に護るべき大学の体制が、十分に機能していなかったという痛恨の教訓を残した。関係者一同で反省点を踏まえ、二度と悲劇を繰り返さぬ学内構造を作り上げていく必要がある。
大学の対応の誤りが重なり、長年培われたアメフト部の輝かしい歴史に幕を下ろす結果を招いてしまった。苦い教訓として記憶に留め、新たな安心・安全な部活動文化を築いていかなければならない。
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