【クローズアップ現代】能登記録的大雨で再び被災「復興への課題」

2024年9月24日、NHKの看板番組「クローズアップ現代」で、能登半島を襲った記録的大雨による被災状況と復興への課題が取り上げられました。今回の放送では、地震からの復興途上にあった能登地方が、再び自然災害に見舞われた実態と、その影響について詳しく報告されています。

【目次】

能登半島を襲った記録的大雨の概要と被害状況

2024年9月21日、能登半島は観測史上最大となる記録的な大雨に見舞われました。輪島市では24時間雨量が400mmを超え、20を超える河川が氾濫。この大雨により、仮設住宅の浸水や土砂崩れが発生し、115か所もの集落が孤立する事態となりました。

人的被害は7人が死亡、2人が行方不明、5人が安否不明という深刻な状況に。また、1744戸が断水するなど、ライフラインにも大きな影響が出ています。

今回の大雨の主な要因となったのが、線状降水帯の発生です。線状降水帯は、発達した積乱雲が同じ場所で次々と発生し、激しい雨を降らせ続ける現象です。

気象庁は危機感を持ってもらうため、半日前の予測を目指していますが、今回は予測情報を出すことができませんでした。実際、2024年の時点で線状降水帯は17回発生していますが、そのうち9回は予測情報が出されていません。

名古屋大学の坪木和久教授は、「ある程度の雨が降ることは予測できたが、100mmで終わるのか、300mm、400mmと降るのかという量の予測が難しい」と指摘しています。

能登半島は2024年1月1日に発生した地震からの復興途上にありました。その矢先の大雨被害は、住民たちに大きな打撃を与えています。

輪島市の仮設住宅に住む橋本幸子さんは、「地震で自宅は全壊し、仮設住宅に身を寄せたその矢先、再び被災しました。ショックで言葉も出ません」と心境を語っています。

今回の大雨では、県内6カ所の仮設住宅が床上浸水の被害を受けました。輪島市中心部の宅田町第2団地では、約140棟のほとんどが浸水被害に遭いました。

浸水した仮設住宅

問題は、これらの仮設住宅の多くが洪水の浸水想定区域内に建設されていたことです。NHKの調査によると、6月の時点で67カ所の仮設住宅がハザードマップ上の危険区域に建設されていたことが判明しています。

しかし、多くの住民はそのリスクについて十分な説明を受けていませんでした。静岡大学の牛山素行教授は、「災害リスクの情報提供は一回だけでなく、繰り返し行うことが重要」と指摘しています。

能登の伝統工芸である輪島塗りも大きな打撃を受けています。箸職人の鮓井辰也さんは、地震で工房と店舗が全壊し、仮設の工房で再出発を果たしたばかりでした。しかし、今回の大雨で床上浸水し、新調したばかりの道具のほとんどが使えなくなってしまいました。

鮓井さんは「地震の後、ただ走ってきたんやけどね。ちょっと今、片付ける気力がわきませんわ」と、二重被災の苦悩を語っています。

能登半島の先端に位置する珠洲市では、大雨の後、1744戸が断水しました。狼煙地区では、1月の地震でも断水が発生し、住民の8割が集落外に避難していました。ようやく2月に水道が復旧し、住民が戻り始めたところでの再度の断水は、地域の復興に大きな影響を与えています。

大雨警報が出た時の珠洲市

東北大学災害科学国際研究所教授の姥浦道生さんは、今回の大雨被害が復興計画に大きな影響を与えると指摘しています。特に、生活再建の柱である住宅再建や、仮設工房・店舗の計画が振り出しに戻ってしまった可能性があります。

また、今回の被災を機に、より安全な場所への移転を望む声が高まる可能性も指摘されています。これは、復興計画の「新たな町への再生」という柱にも大きく関わってくる問題です。

姥浦教授は、「泥かきなど、できることは何でもあります。金銭的な支援もあるでしょう。一つ一つの支援が、心が折れそうだという地元の方々を支えることになる」と語っています。

私たち一人一人にできる小さな支援の積み重ねが、能登の人々の心の支えとなり、復興への大きな力となるのです。

能登半島は地震と大雨という二重の災害に見舞われ、復興への道のりは一層厳しいものとなりました。しかし、この困難を乗り越えるためには、地域の特性を活かした長期的な視点での復興計画が必要です。

災害に強いまちづくり、伝統産業の継承、そして何より住民の生活再建を最優先に考えた取り組みが求められます。同時に、私たち一人一人が能登の復興を長期的に支援し続けることも重要です。

能登の復興は、日本の地方創生のモデルケースともなり得るでしょう。この困難を乗り越え、より強靭で魅力的な地域として再生することを、私たちは願ってやみません。

（注：この記事の内容は2024年9月24日時点の情報に基づいています。最新の状況については、公的機関の発表等をご確認ください。）