2026年2月21日放送のブレイクスルー(テレビ東京系)では、位置情報をAI解析で進化させる開拓者・柴崎亮介さんが登場しました。「位置情報なんて今さら?」と思うかもしれませんが、その”当たり前のデータ”にこそ、ビジネスや安全保障の未来を左右する巨大な価値が眠っています。この記事では、番組で紹介された柴崎さんの技術と事業戦略、そして位置情報AIが私たちの社会をどう変えるのかを、わかりやすくまとめてお届けします。
柴崎亮介とは?東大発ロケーションマインドが挑む位置情報AIの価値の発掘
今回のブレイクスルーで取り上げられた開拓者は、東京大学発のスタートアップ「LocationMind(ロケーションマインド)」のCTO、柴崎亮介さんです。
柴崎さんは、東京大学の空間情報科学研究センターでセンター長を務めた空間情報工学の第一人者で、地理情報システム学会の会長も歴任した方です。いわば、日本における位置情報研究のパイオニアともいえる存在ですね。
ロケーションマインドは2019年に創業され、「位置情報ビッグデータをAIで解析して社会課題を解決する」という明確なビジョンを掲げています。番組では柴崎さん自身が「我々の会社は人の活動に焦点を当てて、位置情報を使って有効な情報を取り、課題解決に使う。そのときにAIを使う」と、事業の核心をシンプルに語っていたのが印象的でした。
注目すべきは、その成長スピードです。創業直後にコロナ禍が到来しましたが、逆に人流データの需要が急増したことで事業を拡大。累計で約67億円もの資金調達に成功しています。さらに2025年5月にはアメリカの位置情報企業「Irys」を買収し、150以上の国と地域のグローバルデータを自社で保有する体制を構築しました。
個人的に驚いたのは、「位置情報」という一見ありふれたデータを、ここまで大きなビジネスに育てているという点です。柴崎さんは番組の中で「位置情報はどこにでもある副産物。副産物であるがゆえに、捨てられる。まともな調理をされない」と語っていました。つまり、宝の山が足元に埋まっていたのに、誰もちゃんと掘り出していなかったということです。この着眼点こそが、まさにブレイクスルーの真髄だと感じました。
位置情報の「純度」をAI解析で高める独自技術とは
位置情報の収集や活用は多くの企業で進められていますが、ロケーションマインドの技術は何が違うのか。番組で柴崎さんが強調していたキーワードが「純度」です。
スマートフォンから得られるGPSデータは5分ごとに記録されるため、地図上には飛び飛びの点でしか表示されません。さらに、通信が不安定だったりスマホの電源が切れていたりすると、データの質はどんどん下がっていきます。柴崎さんはこの状態を「純度が下がる」と表現していました。
ロケーションマインドのAIは、この荒いデータをまるで料理の下ごしらえのように丁寧に加工します。具体的には、移動速度をもとにAIが「停止」「徒歩」「電車」といった移動手段を判別し、さらに線路や道路のデータと組み合わせて、点と点の間の行動を推測し「線」にしていくのです。
番組では池袋周辺の人の動きを早送りした映像が紹介されていましたが、電車や車に乗っている人は速く、歩いている人はゆっくり動くのがリアルタイムで可視化されていて、非常にインパクトがありました。しかも個人情報は識別されないとのことなので、プライバシーに配慮した仕組みになっています。
柴崎さんいわく「料理で言うと前処理をものすごく、仕込みを丁寧にやって、そこから料理を作り出す。プロの味は違うんですよという状態になる」とのこと。この”仕込みの技術”こそが、他社との決定的な差になっているわけですね。
位置情報にさまざまなデータを掛け合わせれば、商業施設にどの電車で来たのかも把握できるそうです。これは広告戦略に直結する情報で、「山手線に広告を打つべきか」といった判断を、勘ではなくデータで裏付けられるようになります。マーケティングの世界が根本から変わる可能性を感じますね。
日野自動車トラック25万台のデータで物流業界を救う
番組では、位置情報AIが物流業界の課題解決にも活用されている事例が紹介されました。
ロケーションマインドは日野自動車と協業し、GPS機能付きの日野トラック約25万台の走行データをリアルタイムで監視・分析するシステムを構築しています。青や緑はスムーズに移動、渋滞や事故でスピードが落ちると赤やオレンジに変わるという、直感的にわかりやすい仕組みです。
このデータが特に威力を発揮するのが、いわゆる「2024年問題」への対応です。トラックドライバーは4時間経過したら30分の休憩を取る必要があり、長距離輸送では途中でドライバーを交代しなければなりません。番組に登場した日野コンピューターシステムの重藤崇志部長は、「荷物は止めてはいけないので、トラックのヘッドだけを切り離して別のトラックに乗せ替える。そのためにどこに中間デポを作るべきかを分析している」と説明していました。
つまり、25万台分のリアルな走行データから、最適な中継拠点の配置をAIで割り出そうというわけです。これは物流の効率化だけでなく、ドライバーの働き方改革にも直結する取り組みですね。
さらに、自治体向けには水素スタンドの効率的な設置場所を分析するサービスも提供しているとのこと。また番組では直接触れられていませんでしたが、バス会社のダイヤ改正に位置情報データを活用し、運行本数を増やさずに利用客を3割も増加させた実績も紹介されました。これはすごい成果です。限られたリソースの中で最大の効果を出す、まさにデータドリブンな社会課題解決の好例だと思います。
インバウンド分析からサウジアラビアへ!グローバルデータで海外市場に進出
位置情報AIのポテンシャルは国内にとどまりません。番組では、柴崎さんが取り組む海外展開の最前線も紹介されました。
まず注目したいのがインバウンド分析です。ロケーションマインドは2025年にアメリカの企業「Irys」を買収したことで、150以上の国と地域の位置情報を自社で取得できるようになりました。これにより、訪日外国人がどの国のどのエリアから来て、日本でどこを訪れ、何をしたのかまでAIで詳細に解析できるようになったのです。
番組では静岡県との取り組みが紹介されていました。例えば香港から静岡空港に来た旅行者が、日本平やスカイウォークなどの観光地を回った軌跡が可視化されていました。しかもデータを遡れば、その人が普段どのエリアで活動しているかまでわかるそうです。
静岡県はこのデータを「世界中から人が来ているエビデンス」として、海外の航空会社や旅行会社に新規路線を売り込む材料にしたいと考えています。2025年の訪日客の旅行消費額は約9.5兆円を突破して過去最高を記録しましたので、こうしたデータに基づく戦略的な集客は、地方にとって大きなチャンスですね。
さらに注目すべきは中東への展開です。2030年に万博を控えるサウジアラビアは、莫大なオイルマネーを観光産業に投資しています。柴崎さんは位置情報をもとに、世界中の観光客をサウジアラビアに呼び込む広告展開を提案しているとのこと。実際に経済産業省の「グローバルサウス未来志向型共創等事業」にもロケーションマインドの中東向け事業が採択されています。
世界の位置情報サービスの市場規模は2034年には25兆円になるという試算もあります。国内で培った技術をグローバルに展開するこの戦略は、日本発のスタートアップとして非常に野心的であり、同時に理にかなった方向性だと感じます。
GPSスプーフィングとは?みちびき衛星で安全保障に挑む位置偽装対策
番組の中でも特に衝撃的だったのが、位置情報の偽装「スプーフィング」のデモンストレーションです。
番組では、東京の神田にいるはずの相場英雄さんのスマホの位置情報が、突然パリのノートルダム大聖堂に変わってしまうという実演が行われました。スプーフィングとは英語で「騙す」という意味で、GPSなどの衛星信号を偽装して受信機の位置情報を狂わせる技術です。柴崎さんは「騙されている側はまったくわからない」と説明していました。
これは単なるイタズラでは済まされない深刻な問題です。たとえばドローンはGPSに頼って飛行しており、スプーフィングによって本来と違う場所に誘導される危険があります。自動運転車も同様で、わずかな位置のズレが大事故につながりかねません。実際にロシア・ウクライナ紛争でもスプーフィング技術が使用されているとされ、安全保障上の脅威として世界的に注目されています。
こうした脅威に対抗するために、柴崎さんが開発に携わったのが日本独自のGPS衛星「みちびき」の信号認証技術です。この技術は2024年4月から本運用が開始されています。
仕組みを簡単に説明すると、みちびきの信号に「本物だと証明する認証データ」を暗号化して埋め込み、地上の受信機が事前に発行されたパスワードで暗号を解読してデータを検証します。偽装された信号の場合は「認証NG」と警告が出る仕組みです。柴崎さんは「証明書も定期的にどんどん変わるようになっている」と説明しており、ワンタイムパスワードのような方式で安全性を高めています。
ロケーションマインドの公式サイトによると、同社の信号認証技術は「みちびき」に採用されており、日本政府に特許供与を行っているとのこと。世界でもこの技術を持つ企業はごく少数だそうです。
柴崎さんは「位置情報が重要になれば、騙したい人が増えることは間違いない」と指摘した上で、「みちびきだけでなく別の衛星を使えばアフリカでも中南米でもヨーロッパでもできる」と、グローバルな位置情報の安全保障に取り組む姿勢を見せていました。位置と時刻という社会インフラの根幹を守るこの技術は、今後ますます重要性を増していくのではないでしょうか。
まとめ:位置情報AI解析が切り拓く未来と柴崎亮介のブレイクスルー
2026年2月21日放送のブレイクスルーでは、東大発スタートアップ・ロケーションマインドのCTO柴崎亮介さんが、位置情報AIの可能性を多角的に見せてくれました。
番組で紹介された内容を整理すると、ロケーションマインドの事業は大きく3つの柱で構成されています。第1にAIによる位置情報の高精度化と、商業施設の集客や広告最適化への活用。第2に物流やインバウンドなどの社会課題解決と海外市場への展開。そして第3に、みちびき衛星を活用した位置偽装対策という安全保障分野です。
番組の最後に柴崎さんが語った「ブレイクスルーとは何か」への答えが、すべてを象徴していました。
「見てわかる確実なデータを使って、社会システムを変えて、課題解決につなげること」
位置情報は特段目新しいテクノロジーではありません。しかし、その価値を掘り起こし、AIで純度を高め、ビジネスや安全保障にまで活用の幅を広げる。この一連の取り組みこそが、柴崎さんにとっての、そして私たちの社会にとってのブレイクスルーなのだと、番組を通じて強く感じました。
都市開発、物流、インバウンド、安全保障と、位置情報AIが関わるフィールドはこれからもどんどん広がっていきそうです。今後のロケーションマインドの動向から、ますます目が離せませんね。
※ 本記事は、2026年2月21日放送の人気番組「ブレイクスルー」(テレビ東京系)を参照しています。
※ロケーションマインド( LocationMind株式会社 (LocationMind Inc.))の公式サイトはこちら




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