物流の課題に悩まされている方も多いはず。「儲かる貨物」を運ぶには、従来の高額な輸送コストがネックでした。しかしANAカーゴの取り組みにより、驚きの「新しい物流の形」が切り開かれようとしています。本記事では、「がっちりマンデー!」(2024年5月19日放送-TBS系)で取上げられた、ANAカーゴが導入した革新的な「国内線のコンテナバリュー運賃サービス」について、その具体的な内容とメリットをご紹介します。これにより、安価で新鮮な輸送が可能になり、お客様の満足度向上と新規ビジネスチャンスの創出が期待できるのです。
ANAカーゴが始めた国内線の「コンテナバリュー運賃サービス」とは?
ANAカーゴは2024年4月から、国内線で新しい「コンテナバリュー運賃サービス」を開始しました。このサービスでは、従来の航空貨物輸送よりもグンと安価な料金設定となっています。
通常、航空貨物の輸送は、貨物専用機や客席下の空きスペースを利用して行われます。貨物はコンテナに詰め込まれ、例えば羽田空港から福岡空港や新千歳空港までの輸送では、1コンテナ約20万円の運賃がかかっていました。しかし新サービスでは、その運賃が1コンテナ2万円にまで値下げされています。実に1/10の価格です。
この大幅な値下げが可能になった理由は、「昼間の時間帯限定のプラン」だからです。ANAカーゴ末原聖常務は「昼間の時間帯の豊富な貨物スペースの利用率は20パーセントにとどまっています」と指摘します。つまり、夜間には多くの貨物運ぶ一方で、日中の便はガラガラだったのです。この空いた貨物スペースを活用することで、低価格化を実現できたのです。
高すぎた航空貨物運賃が1/10に!?ANAカーゴの「昼間の時間帯限定プラン」
従来の航空貨物運賃は確かに高額でした。一般的には、貨物会社が日中に集荷し、空港に運びコンテナへの積み込みを行います。しかしその作業が済むころには既に夜となり、実際に飛行機に載せられるのは翌朝になってしまうのです。そのため、スピーディーな輸送が求められる荷物には不向きでした。
そこでANAカーゴは、この課題を解決すべく新しいプランを考案しました。田部敏之取締役は「今まで狙っていなかったお客様をターゲットにしてみよう」と着眼しました。具体的には、「空港まで荷物を朝早くから持ってきてくれる荷主さん」を狙い目にしたのです。
そうした新規顧客が朝から荷物を搬入してくれれば、ガラガラだった昼間の便の空きスペースを有効活用できます。これにより大幅な値下げが可能になり、スピード輸送も実現できるというわけです。
このサービスの第1号顧客となったのが、北海道の大手コンビニ「セイコーマート」でした。丸谷智保会長は「もともと航空便で運びたいと思っていた」と語っています。
北海道セイコーマート「セコマの乳製品」が沖縄に空輸される理由
セイコーマートが航空便で運びたかったのは、同社の「セコマの乳製品」です。具体的には牛乳やヨーグルトなどの乳製品で、生産地は北海道の稚内です。
通常の物流ルートでは、稚内から苫小牧の港までトラックで6時間、苫小牧から大洗までフェリーで19時間、さらにそこから大阪までトラックで行き、再び船で沖縄へと輸送されます。つまり実に5日以上もの日数を要していたのです。
一方、航空便を使えばその日のうちに沖縄へ届けられます。丸谷会長は「消費期限を考えると(船便では)かなり難しい。物のおいしさは鮮度によるところが大きい」と語っています。
実際、翌日に沖縄に到着したセコマの乳製品は、地元スーパー「ユニオン」で人気を博しています。沖縄県民からは「北海道の牛乳って食べたことがない」「めちゃくちゃ美味しかった」との声が上がっているそうです。
丸谷智保会長が解説する「鮮度」と「物流」の関係
セイコーマートの丸谷会長は、この新しい空輸ビジネスへの参画理由について、「鮮度」と「物流」の関係を強調しています。
朝、稚内工場で搾りたての生乳からヨーグルトなどを作り、すぐにトラックで30分で稚内空港へ。そこから13時の便に乗せれば、その日のうちに沖縄に届けられるというわけです。
「ひょっとすると沖縄の人の方が、北海道の人より新鮮な牛乳を飲めるかもしれません」と丸谷会長は言います。
新鮮な状態で届けられた乳製品は、当然おいしさも違ってきます。物流の仕組みが、「鮮度」つまり「おいしさ」を左右するのです。生産者の思いを沖縄の人々に届けるために、この新サービスは大きな役割を果たしています。
航空会社×小売業の新たな「お昼の隙間時間輸送ビジネス」誕生
ANAカーゴとセイコーマートの取り組みから浮かび上がるのは、まったく新しい「お昼の隙間時間輸送ビジネス」の形です。
航空会社とコンビニ業界が組んで、これまで活用されていなかった「昼間の貨物スペース」を利用し、新たな付加価値を生み出したわけです。
コメンテーターの森永卓郎氏は「この帰りの便もまだ空いている」と指摘します。すでに沖縄からの「パイナップルを北海道に運ぶ」という構想も持ち上がっているそうです。
MC加藤やゲストだったマジカルラブリーの二人は「海ぶどう、ゴーヤとかも北海道に運べるかもしれない。北海道の海鮮を沖縄に空輸して新鮮なお造りを楽しむ、なんてこともできるかもしれません」と期待を見せています。
お互いの得意分野を生かしながら、新しいビジネスチャンスを切り開いた好例と言えるでしょう。
ユニオンの反応は?沖縄の人気が高い「セコマの乳製品」
沖縄で展開するスーパーマーケットチェーン「ユニオン」の国場十字路さんは、セコマの乳製品の人気ぶりをこう語っています。
「100円ほど通常の牛乳より高いですが、それでも売れ行きは上々です。もっともっとあれば、もっと売れるでしょう」
つまり、多少値が張っても美味しければ売れる、ということです。逆に言えば、品質の良さが評価されている証しでもあります。
ユニオンでは約20店舗でセコマの乳製品を取り扱っていますが、今後さらに扱い店舗を増やす可能性もあるようです。沖縄に根強い人気があることがうかがえます。
地元の人からも「北海道のネームに惹かれて」「北海道のヨーグルトって食べたことがない」など、珍しさや食べてみたいという気持ちがうかがえます。
まとめ: ANAカーゴの挑戦が切り開く「新しい物流の形」とは
ANAカーゴが導入した「国内線のコンテナバリュー運賃サービス」は、これまでの航空貨物輸送の概念を根本から変えるサービスと言えるでしょう。
従来は高額すぎる運賃が課題でしたが、「昼間時間帯限定」というユニークな切り口で、10分の1の価格を実現しました。さらにセイコーマートのように、朝から空港に搬入できる荷主企業とタッグを組むことで、短時間での新鮮輸送も可能になったのです。
生鮮食品に限らず、スピード輸送を求める荷物には大きな恩恵があります。さらに荷主企業とのWIN-WINの関係が築けるのも魅力です。安価で早い輸送サービスは、新規顧客開拓にもつながりそうです。
今後、ANAカーゴはさらなるビジネスチャンスを探っていくでしょう。既に沖縄の特産品を北海道へ運ぶ構想も出ているようです。見逃されてきた「昼の便」の価値を掘り起こし、まったく新しい物流の形を生み出しつつあります。
航空会社の新たな挑戦から、ユーザーへの付加価値が次々と生まれていくことでしょう。
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