2025年3月9日にTBS系列で放送された「がっちりマンデー!!」で特集された日本冶金(にっぽんやきん)工業株式会社。創業100周年を迎えた今なお、多くの人には知られていないこの会社が作り出す「スーパーステンレス」の実力とは?番組内容を詳しくご紹介します。
日本冶金工業とは?100年続く知られざるステンレス鋼のプロフェッショナル
日本冶金工業株式会社は、1925年(大正14年)に創業し、今年2025年で創業100周年を迎えた企業です。社名だけを聞くと何を製造している会社か分かりにくいかもしれませんが、その実態は私たちの生活に欠かせない「ステンレス鋼」を製造する専門メーカーです。
一般的なステンレスは錆びにくく、熱に強いという特性を持っていますが、日本冶金工業はそれをさらに進化させた「より錆びにくく、より高温に耐えうる」特殊なステンレス鋼を製造しています。年商は1540億円にも上る、まさに知る人ぞ知る優良企業なのです。
しかし、日本冶金工業取締役専務執行役員の山田恒さんが番組内で語ったように、これほどの実績を持ちながらも「知名度が非常に低い」という課題を抱えています。それは、一般消費者向けではなく産業向けの製品がメインであることが一因といえるでしょう。
がっちりマンデー特集!日本冶金工業の巨大工場に潜入
「がっちりマンデー!!」の取材班は、神奈川県川崎市にある日本冶金工業の製造拠点「川崎製造所」に潜入。ここで驚くべき事実が明らかになりました。
まず驚かされたのは、その敷地の広さです。川崎製造所は羽田空港と川を挟んだ場所に位置し、その広さは東京ドーム9個分という驚異的な規模を誇ります。これほどの広大な土地を川崎という都心近くに持っていること自体、100年の歴史を持つ企業だからこそ可能なことです。
番組では、入社2年目の奥本茉希子さんや、ステンレス製造40年のベテラン・山田恒さんの案内のもと、普段は見ることのできない巨大工場内部が詳しく紹介されました。敷地が広すぎるため、工場内の移動には車を使用するほどの規模感に、番組スタッフも驚きを隠せない様子でした。
一般のステンレス鋼を超える日本冶金工業の技術力
一般的なステンレスは鉄にクロムという金属を混ぜることで「錆びにくい」という特性を持ちますが、日本冶金工業のステンレスは一般品とは一線を画します。
特に注目すべきは「ポルカプレート」と呼ばれる特殊な床板です。一般的な工場や屋外の階段などでよく見かけるチェッカープレートは、掃除する際に溝に汚れが溜まりやすく清掃が困難でした。しかし、日本冶金工業の「ポルカプレート」は、一点に水を流すだけで汚れが簡単に流れ、なおかつ滑りにくいという特性を持っています。
このような特殊性から、食品工場や化粧品工場など、特に衛生管理が重要な現場で採用されているそうです。
また、醤油工場で使用されているタンクには「スーパーステンレスNAS254N」が使用されており、その耐久性は100年にも及ぶ可能性があるとのこと。「100年経っていないので強く『はい』とは言えない」と正直に答える山田さんの姿勢からも、製品に対する自信と誠実さが伝わってきます。
山田恒が語る「スーパーステンレス」の秘密とニッケルの役割
日本冶金工業のステンレス鋼が「スーパー」と呼ばれる秘密は、ニッケルにあります。山田恒さんが案内した工場では、まず最初にニッケルの原料が紹介されました。
ステンレスは基本的に鉄にクロムを混ぜて作られますが、ここにニッケルという金属を追加することで、より錆びにくく、より高温に耐えられるようになります。さらに、このニッケルの量を増やすことで性能が向上するのです。
ただし、ニッケル自体が高価な素材であるため、通常のステンレスが1トンあたり約60万円であるのに対し、日本冶金工業の高級「スーパーステンレス」は最高で10倍の1トン600万円にも達します。高価ではありますが、その性能の高さから特殊な環境で使用される機器や設備には欠かせない素材となっています。
川崎製造所の驚異的な設備 – 連続鋳造機と仕上げ圧延機の実力
「がっちりマンデー!!」の取材で明らかになったのは、日本冶金工業・川崎製造所が持つ最先端の製造設備です。その中でも特に注目されたのが、「連続鋳造機」と「仕上げ圧延機」です。
「連続鋳造機」は7階建てビルほどの高さを誇る巨大な設備で、上からドロドロに溶かしたステンレスを流し込み、重力を利用しながら下に落とし、板状に固めていきます。一般的なステンレス製造では横に流す方法が多いですが、その場合は曲げる際に折れるリスクがあります。日本冶金工業の連続鋳造機は、このリスクを排除し、高品質なステンレスを効率よく生産することができるのです。
もう一つの主力設備「仕上げ圧延機」は、コイル状の薄いステンレスを作る機械です。何度も圧力をかけて薄く伸ばしていくため、両サイドの巻き取り装置には温度を下げないための炉が組み込まれています。これにより、圧延中に温度が下がって加工が難しくなるのを防ぎ、効率的に高品質なステンレスコイルを製造できるのです。
この24時間稼働の製造ラインから生み出される製品は、他社では真似のできない品質を誇ります。
ポルカプレートからNAS254Nまで – 特殊ステンレス製品の用途と優位性
日本冶金工業の製品ラインナップは多岐にわたります。前述の「ポルカプレート」は、滑りにくさと水捌けの良さを両立した床板で、食品工場などの衛生管理が重要な現場で重宝されています。
また、「スーパーステンレスNAS254N」は、その高い耐久性から醤油工場のタンクなどに使用されており、100年近い耐用年数が期待されています。
これらの特殊ステンレス製品は、一般的なステンレスでは対応できないような過酷な環境や特殊な条件下でこそ、その真価を発揮します。例えば、高温多湿な環境、塩分や酸などの腐食性物質が多い環境、あるいは衛生管理が特に重要な食品工場や医療施設などで活躍しています。
普段私たちの目に触れることは少ないかもしれませんが、こうした特殊ステンレス製品が、私たちの生活の安全や快適さを縁の下で支えているのです。
100年企業の強み – なぜ日本冶金工業のステンレス鋼は真似できないのか
「100年も作り続けていると、技術が真似されないのですか?」という質問に対し、山田恒さんは「真似されただけでは同じものは作れない。設備と共にそれを使う技術力というのが必要になってくる」と答えています。
この回答には、100年にわたって技術を磨き続けてきた企業の揺るぎない自信が感じられます。技術というのは単に設備を持っているだけでは再現できず、それを使いこなす人の技術や経験、そして長年蓄積されてきたノウハウが必要なのです。
また、「がっちりマンデー!!」のゲストとして出演した森永浩平さんも指摘していたように、新興企業では羽田空港近くにあれだけの広大な土地を確保すること自体が不可能です。100年前から事業を継続してきたからこそ、立地の優位性も保持できているのです。
まとめ:がっちりマンデーが明かした日本冶金工業100年の技術力
2025年に創業100周年を迎えた日本冶金工業は、一般には知名度が低いながらも、特殊ステンレス鋼の分野では確固たる地位を築いています。「がっちりマンデー!!」の取材で明らかになったように、東京ドーム9個分という広大な川崎製造所での製造技術と、ニッケルを活用した特殊合金の開発力が、他社には真似のできない強みとなっています。
「ポルカプレート」や「スーパーステンレスNAS254N」などの特殊製品は、その優れた特性から特に厳しい環境下で活躍し、私たちの生活を縁の下から支えています。
100年という長い歴史の中で培われた技術と経験、そして広大な製造拠点を持つ日本冶金工業は、これからも日本のものづくりを代表する企業として、その技術力を発揮し続けることでしょう。「錆びない革命」を続ける彼らの次なる100年にも、大いに期待したいと思います。
※本記事は、2025年3月9日放送(TBS系列)の人気番組「がっちりマンデー!!」を参照しています。
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