あなたの大切なコレクションは本物ですか?この問いかけがとても重みを持つ時代になっています。NHK「クローズアップ現代」(2024年12月11日放送)で報じられた「偽物コレクション問題」について、最新の実態と対策を詳しく解説します。
偽物コレクションが社会問題化する背景と最新事例
近年、コレクション市場における偽物の氾濫が深刻な社会問題となっています。特に注目を集めているのが、スポーツ選手のサイングッズや美術品の分野です。インターネット取引の拡大に伴い、その被害は個人コレクターから公的機関にまで及んでいます。
偽物コレクションの市場規模は正確な把握が難しいものの、サイン鑑定の専門家によると、1日に数十人、時には100人近くもの人々が偽物の被害に遭っているとされます。この状況について専門家からは「日本でこれだけ堂々とまかり通っている詐欺はなかなかない」との指摘もあります。
大谷翔平のサインボールに見る偽物コレクションの実態
2024年現在、最も偽物が出回っているのが大谷翔平選手のサインボールです。サイン鑑定会社の松本明憲氏(シードスターズ)によれば、月間100件を超える鑑定依頼があり、その多くが大谷選手の品々だといいます。
特に注意が必要なのは、精巧な偽造手法です。実際の被害事例では、約28万円で購入したサインボールに、アメリカの大手鑑定会社の識別番号まで付されていました。さらに出品者の評価も1521件で100%ポジティブという、一見すると信頼できる取引に見えたケースもありました。
本物を見抜く力が問われる美術品の世界
美術品分野では、より深刻な事態が起きています。ドイツの贋作師ヴォルフガング・ベルトラッキ氏の存在は、美術界に大きな衝撃を与えました。彼は14点の贋作により10億円以上を騙し取り、懲役6年の判決を受けています。
特筆すべきは、その巧妙な手法です。ベルトラッキ氏は「私が描くのはコピーではない、新しい絵を生み出すのだ」と語り、20世紀前半の絵具を蚤の市で探し出し、画家の生活環境まで研究するという徹底ぶりでした。その結果、高知県立美術館が1800万円で購入した作品を含む、複数の美術館所蔵作品に贋作疑惑が持ち上がっています。
偽物コレクションに騙されないための2つの対策
帝京大学名誉教授の岡部昌幸氏は、偽物に騙されないための重要なポイントを2つ挙げています。
- 偽物の流行を把握すること 美術史研究や収集にはトレンドがあり、贋作師はその動きを素早くキャッチして悪用します。最新の流行や市場動向を知ることが重要です。
- 感情の盲点を認識すること 「恋は盲目」という言葉通り、コレクションへの情熱が冷静な判断を妨げることがあります。この感情の脆さを自覚することが大切です。
AI鑑定は偽物を見抜く切り札となるか
最新の対策として注目を集めているのが、AI鑑定技術です。カリーナ・ポポヴィッチCEOが率いる企業では、すでに500件以上の鑑定実績があり、審議不明だったゴッホの自画像を本物と見抜くなどの成果を上げています。
AIは3000枚近い絵を学習し、色合いや筆使い、構図を精密に分析。60%を超える確率で偽物と判定された場合、贋作と判断される仕組みです。しかし、専門家からは「AIと人間の知見を組み合わせた総合的な判断が重要」との指摘もあります。
まとめ:本物を見分ける力を身につけるために
偽物コレクション問題は、もはや一部の専門家だけの問題ではありません。大衆化された現代のコレクション市場では、私たち一人一人が本物を見分ける力を養う必要があります。
専門家の知識と慎重さを学び、最新のAI技術も活用しながら、感情に流されない冷静な判断力を身につけることが求められています。まずは自分の興味のある分野で、本物の特徴をしっかりと学んでいくことから始めましょう。
※本記事は、2024年12月11日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。
コメント