2025年7月8日にテレビ東京系で放送された「LIFE IS MONEY ~世の中お金で見てみよう~」で、夏の風物詩である花火大会の驚くべきお金の仕組みが明かされました。番組のMCを務める林修さんや解説者の原田亮介さん(日本経済新聞 論説フェロー)らが、熱海海上花火大会を例に花火業界の経済構造を詳しく解説。そこには観光客がお金を使いたくなる巧みな戦略と、世界情勢に翻弄される花火業界の現実がありました。
熱海海上花火大会が生み出す驚異の経済効果とお金のヒミツ
熱海海上花火大会の経済効果は、多くの人が予想するよりもはるかに大きな規模となっています。番組で紹介された熱海市観光建設部の立見修司さんによると、1回の花火大会で熱海にもたらされる経済効果は1億7556万円に上ります。
開催費用が約1000万円であることを考えると、投資効果は実に17倍以上という驚異的な数字です。この経済効果の内訳は、花火大会1回につき約5000人の宿泊者が増加し、それらの人々が市内で食事や買い物をすることによって生まれる消費が主な要因となっています。
さらに注目すべきは、熱海海上花火大会が年間15回も開催されていることです。番組制作時点では年間15回の開催が予定されており、春夏秋冬を通じて計画的に開催されています。これは宿泊客の少ない時期を狙った戦略的な日程設定によるものです。
これにより、年間の経済効果は26億3340万円という巨大な市場を創出しているのです。熱海市にとって花火大会は、まさに地域経済の救世主的存在となっています。
花火一発の値段から見るお金のヒミツ【齋藤商店が明かす価格の内訳】
番組では、茨城県結城市の齋藤商店の齋藤浩明社長が花火の価格について詳しく解説しました。花火の値段は主に大きさによって決まり、代表的な10号玉(尺玉)であれば約10万円が相場だと明かされています。
具体的な価格体系は以下の通りです。
- 2.5号玉(直径50m):約6000円
- 4号玉(直径120m):約1万円
- 7号玉(直径200m):約5万円
- 10号玉(直径280m):約10万円
ただし、これはあくまでも花火代だけで、打ち上げの人件費やその他もろもろの初期費用が別途かかるとのことです。花火大会の規模や構成、場所などによっても総費用は大きく変動するため、実際の開催には花火の購入費以外にも多額の資金が必要になります。
プライベート花火についても番組で取り上げられ、齋藤商店ではお試しコースで50発30万円から受け付けているとのことです。実際にプロポーズ花火を行った群馬在住の鈴木さん夫婦のケースでは、70発ほどを打ち上げて場所代なども含め44万円かかったそうです。
熱海が仕掛けるお金を使いたくなる巧みな戦略
熱海海上花火大会の成功の裏には、観光客の行動心理を巧みに利用した戦略があります。熱海は一時期、バブルが終わって少しお客さんが離れていた時期があり、最盛期には年間500万人以上の宿泊客がいたものの、1990年代から激減し、2011年には半分の250万人以下にまで落ち込んでいました。
そんな状況を打開する起爆剤となったのが花火大会でした。特に注目すべきは開催日の設定です。熱海温泉ホテル旅館協同組合の森田金清理事長は、花火というのはあくまでも誘客目的でやっているので、多くのお客さんに来ていただきたいということで、あえて土曜日とか、お客さん来るですね、ゴールデンウィークとか、お盆は外してますと説明しています。
具体的には、3連休の最終日。最終日は次の日が、普通、仕事始まりますんで、お客さん来ないんですけど、そこのところで、もう1日満館(満室)を作りたくてという戦略を採用。実際の開催日を見ると、確かに宿泊客の減る日曜や連休の最終日が多く設定されており、この日程調整により多くの旅館が満室になるという効果を生んでいます。
財源面でも工夫が見られ、2025年4月に導入された宿泊税を活用しています。ホテルや旅館の宿泊者に一律200円の宿泊税を課し、その一部を花火大会の運営費に充てることで、持続可能な資金調達を実現しています。
花火大会開催費用が高騰する理由とお金の問題
近年、全国各地で花火大会の中止や規模縮小が相次いでいますが、その主な原因は開催費用の高騰です。番組で紹介されたように、熱海においても花火大会にかかる経費は上昇しており、警備員の数も増やさなきゃいけませんし、人件費も上がってるというところで、大体2割程度上がってる状況となっています。
さらに深刻なのは、花火そのものの価格上昇です。静岡県藤枝市のイケブンを取材した結果、原材料が基本的に海外製のものだったりするので、そのあたりは特に、国内産のものよりも海外製品のものがかなり上がっている。世界情勢にもだいぶかかわってくることが判明しました。
番組の解説によると、花火に使う火薬と爆弾で使う火薬というのは同じ火薬ですから、材料の多くが一緒です。だから、戦争でも需要が増えると花火の材料が足りなくなって値上がりをするという構造があります。実際に、ウクライナやガザなどで紛争が増えている今、原料の価格は2019年の1.5倍になってるとのことです。
人件費についても、人件費の高騰で、警備費用が1.2倍になってる状況で、花火大会の安全確保のために必要不可欠な警備体制の強化が、運営費圧迫の一因となっています。
花火大会が直面するお金の課題と解決策
こうした費用高騰に対する解決策として、各地の花火大会で新しい取り組みが始まっています。番組で紹介された江戸川区花火大会の事例が参考になります。

引用:「第50回江戸川区花火大会」HPより
今年で50回を迎える江戸川区花火大会では、これまでは自治体からの補助金と民間からの協賛金で賄ってきましたが、今後も継続的に運営していくために、財源確保の手段として有料席を設けさせていただきましたとのことです。
江戸川区の石塚修さんによると、補助金と協賛金だけでは赤字になってしまうため、去年初めて有料席を導入し、最も安い席は2000円、4人で利用できる席は2万6000円で販売されています。
有料席については、かなり正面に、近くで見れるといいます。花火の醍醐味を一番味わえるところでもございますので、有料であってもご購入いただいておりますと、付加価値を提供することで観客の理解を得ているようです。
また、長岡花火大会のような大規模イベントでは、協賛金制度も充実しており、個人でも花火の協賛が可能になっています。こうした多様な収入源の確保が、花火大会の持続可能性を高める鍵となっています。
まとめ
「ライフイズマネー」で明かされた熱海海上花火大会のお金のヒミツは、地域振興の成功モデルとして非常に示唆に富んでいます。1回の開催費用1000万円に対して1億7556万円の経済効果を生み出し、年間26億円超の市場を創出する熱海の戦略は、単なる花火大会の枠を超えた地域経済活性化の手法として注目されます。
宿泊客の少ない日を狙った開催日程の設定や宿泊税の活用など、観光客の行動心理と財政面の両方を考慮した巧みな戦略が功を奏しています。一方で、世界情勢の影響による原材料費の高騰や人件費の上昇など、花火業界が直面する課題も浮き彫りになりました。
しかし、江戸川区花火大会の有料席導入事例に見られるように、新しいアプローチによって課題解決の道筋も見えてきています。花火大会は単なる娯楽イベントではなく、地域経済を支える重要な産業として、今後も持続可能な運営方法の模索が続いていくでしょう。
2025年夏、各地で開催される花火大会を楽しむ際には、その裏側にある経済効果や運営の苦労にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。一発一発の花火に込められた地域の想いと経済戦略を理解することで、花火大会の見方がより一層深くなるはずです。
※ 本記事は、2025年7月8日放送(テレビ東京系)の人気番組「LIFE IS MONEY ~世の中お金で見てみよう~」を参照しています。
※ 打ち上げ花火の製造会社 齋藤商店(茨城県結城市)のHPはこちら
※ 打ち上げ花火の製造会社 イケブン(静岡県藤枝市)のHPはこちら
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