2025年7月26日にテレビ東京系で放送された「ブレイクスルー」で注目を集めたのが、JAXA発ベンチャー「ペネトレータ」の阿久津岳生CEOです。衛星データとAI技術を駆使して不動産業界に革命を起こそうとする彼の挑戦は、多くの視聴者に衝撃を与えました。番組では、従来の人脈頼りの不動産取引から脱却し、宇宙技術を活用した全く新しいアプローチで割安物件を発掘する様子が詳しく紹介されました。
ペネトレータ阿久津岳生とは？JAXA発ベンチャーが挑む不動産流通革命
ペネトレータの阿久津岳生CEO （引用：「ブレイクスルー」より）
阿久津岳生氏は、福岡で不動産会社や建設会社を経営していた異色の経歴を持つ起業家です。会社は順調に成長していたものの、「世界を変えたい」という強い思いから、2022年に宇宙技術を活用した新たな道へと転身しました。彼が選んだのは、世界の1つ上の視座である「宇宙」からのアプローチでした。
ペネトレータの今川裕喜CPO （引用：「ブレイクスルー」より）
JAXAの大学院で研究生として学んだ阿久津氏は、そこで現在のペネトレータCPO（Chief Product Officer）を務める今川裕喜氏と出会いました。この出会いが、後に不動産業界に革命をもたらすサービス「WHERE（ウェア）」の開発につながったのです。
2022年 ペネトレータ起業 （引用：「ブレイクスルー」より）
ペネトレータは、35年前からJAXAが研究開発してきた貫入型惑星探査機「ペネトレータ」の技術を応用したJAXAベンチャー企業として、2022年2月に設立されました。世界に類を見ない宇宙技術を地球上のビジネスに応用する、まさに革新的な取り組みを行っています。
ブレイクスルー番組で話題！衛星データとAIで割安物件を発見する「WHERE」
不動産検索ソフト「WHERE」 （引用：「ブレイクスルー」より）
番組で詳しく紹介された「WHERE」は、衛星画像とAI技術を組み合わせた革新的な不動産検索ソフトです。利用料は月額55万円からと決して安くありませんが、その価値は圧倒的です。従来、不動産業者が3人の担当者で現地を回って行っていた物件探しが、わずか3分で100件の候補を発見できるまでに効率化されています。
番組では、東京文京区での実際のデモンストレーションが印象的でした。一見すると建物が密集した普通の街並みでも、WHEREを使用すると建物の裏側に隠れた空き地を瞬時に発見できる様子が紹介されました。これは従来の目視による調査では絶対に見つけることができない、まさに「眠っている割安物件」の発掘といえるでしょう。
さらに注目すべきは、単に空き地を見つけるだけでなく、法務局データとの連携により所有者情報や持ち分比率まで即座に取得できる点です。この一連の仕組みで特許も取得しており、技術的な優位性も確立されています。
阿久津岳生が開発した古家AI技術｜衛星画像から空き地・古家を瞬時に特定
WHEREの核心技術の一つが、数万枚の衛星画像を学習させて開発した「古家AI」です。このAIは、屋根の劣化具合や庭の荒れ果て具合を解析し、売買に発展する可能性がある古い家を自動的に識別します。番組では、目黒区青葉台での実際の検索結果として、110件もの空き家や空き地が見つかった様子が紹介されました。
この技術の革新性は、人間の目では判断が困難な微細な変化を、AIが客観的かつ高精度で分析できる点にあります。従来の不動産業界では、経験豊富な担当者の「勘」に頼る部分が大きかったのですが、WHEREはデータドリブンなアプローチで確実性の高い物件発見を可能にしています。
衛星画像は半年から1年に1回更新されますが、ペネトレータは変化があった箇所だけを抽出する独自技術も開発しており、建物の解体や相続による所有者変更なども自動的に検知できるシステムを構築しています。
ペネトレータの不動産検索ソフトの仕組み｜法務局データ連携で所有者情報も取得
WHEREの差別化ポイントは、衛星データだけでなく、様々な行政データとの連携にあります。法務局のデータと組み合わせることで、土地の所有者名、住所、持ち分比率といった重要な情報を瞬時に取得できます。さらに、国土交通省が公表する公示価格データとも連携しており、簡易的な価格試算も可能です。
番組で紹介されたアークフロンティアの南翔平社長は、5月からWHEREを導入したことで劇的な時間短縮を実現したと証言しています。従来の現地調査や外回りにかかっていた膨大な時間が削減され、より効率的な物件仕入れが可能になったのです。
現在、名だたるデベロッパーなど20社以上がWHEREを導入しており、大手小売や外食チェーンも注目しています。太陽光発電事業者からの問い合わせも多く、太陽光の強さデータとの組み合わせで、普通の空き地が一気に価値の高い発電用地として再評価されるケースも生まれています。
夜間光データで経済ポテンシャル分析｜割安物件の新たな価値発掘法
ペネトレータが開発を進める次世代機能の一つが、夜間光データを活用した経済ポテンシャル分析です。夜の光の強さとその土地の経済力には相関があるという研究結果を実装し、光は強いが土地代がまだ安いエリアを「ポテンシャルのある不動産」として発掘する技術です。
番組では、東京23区は既に土地代が高くなってしまっているため黄色く表示されない一方で、千葉駅周辺の駅から少し離れたエリアが濃いオレンジ色で表示される様子が紹介されました。これは経済的な可能性を秘めながら割安なエリアを示しており、新たな店舗や施設を作るチャンスが眠っていることを意味します。
この技術は地方創生にも応用可能で、各国の地方自治体と連携しながら地域開発を行い、経済力向上や地方活性化につなげることも期待されています。実際に、2025年3月には神奈川県相模原市との共同実証実験で、衛星データと水道の開栓・閉栓データを組み合わせた空き家発見システムの有効性が確認されています。
12回の失敗を乗り越えた阿久津岳生の挑戦｜今川裕喜との出会いが生んだ技術革新
阿久津氏の起業ストーリーで最も印象的なのは、ペネトレータが13回目の挑戦だという事実です。過去12回の失敗を経験し、心が折れた時期もあったと率直に語る一方で、「また作りたいな」と思う気持ちが湧き上がることで立ち直ってきたといいます。
彼のモチベーションの源泉は歴史から学ぶ姿勢にあります。「当時の人たちは本当に命をかけて世界を変えようとしていた」という歴史的視点から、現代は「切腹しなくてもいい」平和な時代であり、「色々なことに挑戦したもん勝ち」だと考えているのです。
JAXA宇宙科学研究所で今川裕喜氏と出会ったことが、技術革新の大きな転換点となりました。今川氏がAIを使って月面画像のクレーターを解析する研究を行っていた技術が、地球上の不動産検索に応用されたのです。月に飛んでいる衛星は地球と比べて数が少なく、データ取得自体が珍しい環境で培われた高精度画像解析技術が、WHEREの核心技術となっています。
不動産流通革命の市場規模は10京円｜ペネトレータが目指す火星不動産探査
阿久津氏が描く市場規模は桁違いです。世界の不動産市場は約1000兆円といわれていますが、これは地球上の全不動産のわずか1%にも満たない取引で成り立っているといいます。残る99%の未開拓市場を10京円と試算し、この超巨大市場にファーストペンギンとして挑戦することを宣言しています。
しかし、阿久津氏の真の野望はさらに壮大です。2040年を目標に「火星の不動産探査」を目指しており、地球の不動産市場を変えることは、その準備段階と位置づけています。現在JAXAから委託を受けて新たなペネトレータを開発中で、地球での実験を重ねながら将来の惑星探査に備えています。
「人類の活動領域の拡大に挑戦すること」をブレイクスルーと定義する阿久津氏は、赤ちゃんがお母さんのお腹の中から部屋、そして世界へと活動領域を拡大していくように、人類全体の活動領域を宇宙まで広げることを使命としています。不動産も火星も全て繋がっているという彼の壮大なビジョンは、まさに次世代の開拓者精神を体現しています。
まとめ
ブレイクスルー番組で紹介されたペネトレータの阿久津岳生氏は、12回の失敗を乗り越えて宇宙技術を不動産業界に応用する革新的なサービスを生み出しました。衛星データとAIを活用したWHEREは、月額55万円からという価格設定にも関わらず20社以上の導入実績を誇り、不動産流通革命の先駆けとなっています。
従来の人脈頼りだった不動産業界において、データドリブンなアプローチで割安物件を発掘する技術は、10京円という未開拓市場への挑戦の第一歩です。夜間光データや水道使用データとの連携による新たな価値発見手法は、地方創生や空き家問題解決にも大きな可能性を秘めています。
そして何より印象的なのは、阿久津氏が最終的に目指す2040年の火星不動産探査という壮大なビジョンです。「人類の活動領域の拡大」という使命感に基づいた彼の挑戦は、単なるビジネスを超えた人類の未来への投資といえるでしょう。JAXAとの技術連携により培われた今川裕喜氏との革新的なAI技術は、地球から宇宙へと続く壮大な物語の始まりに過ぎないのかもしれません。
※ 本記事は、2025年7月26日放送（テレビ東京系）の人気番組「ブレイクスルー」を参照しています。
※ 株式会社Penetrator（ペネトレータ）のHPはこちら
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