2025年10月27日放送のNHK「クローズアップ現代」で取り上げられたオアシス再結成。なぜ15年ぶりの復活が世界中で社会現象となり、若い世代の心まで掴んでいるのでしょうか。この記事では、番組で明らかになったギャラガー兄弟の生き様と音楽の魅力、そして時代を超えて響く彼らの歌の秘密を徹底解説します。読み終える頃には、オアシスが国境も世代も越えて愛され続ける理由が、きっと腑に落ちるはずです。
オアシス再結成の全貌|ギャラガー兄弟16年ぶりの復活が社会現象に
2025年7月、イギリスでの復活ライブからスタートしたオアシスの世界ツアー「Oasis Live ’25」。2024年8月に発表された15年ぶりの再結成は、瞬く間に世界中を熱狂の渦に巻き込みました。
10月25日・26日の東京ドーム公演では、土日2日間で10万人を超えるファンが集結。会場の外には、チケットを確保できなかった人々が溢れ、代表曲を合唱する姿も見られました。世界12の国と地域で展開されるこのツアーは、まさに社会現象と呼ぶにふさわしい盛り上がりを見せています。
特筆すべきは、オアシスをリアルタイムでは知らないはずの若い世代の姿が目立つことです。会場周辺には10代や20代のファンが多数詰めかけ、「活動していなかったけれど、大好きになったよ」という声も。SNS上には、彼らの曲を歌う若者の動画が大量にアップされ、拡散され続けています。
バンドの中心は、ギタリストでソングライターの兄ノエル・ギャラガーと、ボーカルの弟リアム・ギャラガー。2009年の解散から15年以上、ついにファンの前に再び姿を現したこの伝説的な兄弟が、なぜここまで多くの人々の心を掴み続けるのか。その答えを、番組は丁寧に紐解いていきました。
なぜ若い世代の心に刺さるのか?オアシスの魅力を3つの視点で解説
①反骨精神と自由奔放な生き様がリアリティを生む
音楽ジャーナリストのパオロ・ヒューイット氏は、1994年のデビュー初期から間近でオアシスを記録してきた人物です。彼は若い世代に支持される理由を「やつらは本当にイケてる。誰にでも噛みつき、反骨精神がすごい」と分析します。
オアシスの代名詞、それは歯に衣着せぬ発言と自由奔放な振る舞いです。NHKに唯一残るインタビュー映像で、弟リアムは「最近またくだらないバンドがたくさん出てきてるけど、みんなさっさと消えちまえ。俺たちの上に誰かがいるのは許せない。いつだってオアシスが一番なのさ」と豪語しています。
兄ノエルも「でもそれがオアシスだろ。俺たちはいつまでも大口をたたく、マンチェスターのチンピラとしか見られないのさ」と、自らのスタイルを肯定。この取り繕わない姿勢こそが、情報過多で「何が本物かわからない」現代の若者たちに、強烈なリアリティを与えているのです。
②普遍的な歌詞とキャッチーなメロディの秘密
結成初期のオアシスを指導したグリフィス兄弟は、ノエルの作詞の速さに驚いたといいます。「ノエルだけ残してパブに行ったことがあったが、戻ってきたら歌詞ができていたんだ」。その日、周りで起きたことを自然に書いていく才能は、まさに天性のもの。「言葉が空に浮かんできて、拾い上げるだけ」とノエル自身も語っています。
2年前のインタビューで、ノエルはこう答えていました。「俺の歌は愛、喪失、悲しみ、天気、孤独、幸福、友情といった誰もが共感できる普遍的なことを書いている。俺の歌じゃなくて『俺たち』の歌なんだ」。
音楽専門誌「NME」編集者のアンドリュー・トレンデル氏は、キャッチーなメロディの重要性を指摘します。「分析すると『フック(ひっかかり)』が多い。曲は切り取られる意図で作られていないが、人々が切り取ってTikTokやXに投稿できる瞬間が山ほどある」。
代表曲「Live Forever」では、耳に残るメロディが何度も繰り返されます。SNS時代との親和性を、オアシス自身は意図していなかったかもしれません。しかし結果的に、彼らの音楽は現代の共有文化にぴったりとフィットしているのです。
③SNS時代に響く「信用できる本物」の存在感
番組ゲストのサカナクション・山口一郎氏は、現代の若者がオアシスに惹かれる理由を鋭く分析しました。
「今、どんな情報も簡単に手に入る時代じゃないですか。そういった時代の中で、リアリティってどこにあるのかっていうのが分からなくなっている気がするんですよ。でもオアシスって存在していた時ってインターネットがまだ出始めたばっかりの時で、情報っていうのはすごくリアルに包まれていて。そのバックボーンを持って現代でそのオアシスっていうものを見ると信じられるというか、信用できる」
山口氏は彼らを「本物の不良」「信用できる不良」と表現。取り繕ってない生き様が、SNSで表面的な情報しか見えない現代において、逆に際立って見えるのです。
ギャラガー兄弟の生い立ちと音楽への情熱|労働者階級からスターへ
オアシスの音楽を理解する上で、ギャラガー兄弟の生い立ちは欠かせません。
イギリス・マンチェスターの貧しい労働者階級の家庭に育った二人。幼い頃は父親の暴力にも苦しみました。過酷な境遇から逃れるためにのめり込んだのが音楽だったのです。
1994年にデビューした彼らは、瞬く間にスターダムに駆け上がります。デビュー2年後には、2日間で25万人を呼ぶネブワース公演を開催。労働者階級の若者たちが感じていた社会からの抑圧を、オアシスの音楽は解放してくれました。
デビューした年に発表された代表曲「Whatever」の歌詞は、「何をやっても大丈夫だ」とストレートに綴られています。パオロ・ヒューイット氏は語ります。「ノエルが常に歌詞に入れていたのは、人生は一度きりだ。なりたいものがあるなら掴み取れということ。そしてどんなに大変でも、夢を追い高みを目指す姿勢を強く後押しした」。
一方で、喧嘩をきっかけにライブをドタキャンするなど、衝突が絶えなかった兄弟。NHKのインタビューでノエルは「俺たちがうまくいくようになれたのはその緊張感のおかげなんだ。あいつは俺を越えたいと思っている。俺もあいつを越えたい。その緊張感が大事なんだ」と語っていました。この直後、二人は喧嘩をきっかけに突如解散。オアシスは姿を消しました。
しかし、その混乱すらも魅力だったとヒューイット氏。「『俺たちは仲がいいんだ』と取り繕うよりも、ずっと注目を集めた。オアシス以降の世代にとって、代わりになる存在がいないんだ」。
山口一郎(サカナクション)が語るオアシスの影響と魅力
「ワンダーウォール」が与えた衝撃とバンド結成のきっかけ
山口氏がオアシスと出会ったのは高校時代。テニス部の先輩に教えてもらったセカンドアルバム「モーニング・グローリー」から、自分の中に入ってきたといいます。
特に強い影響を受けたのが「ワンダーウォール」という曲です。「僕、そもそもフォークギターから音楽始めたんですよ。一人で完結していたのをアコースティックで始まっていくこの『ワンダーウォール』って曲がバンドサウンドに変わっていくという。自分がやってることもバンドだったらさらに大きく表現できるかもしれないっていう、そういうヒントを送ってくれた」。
この曲に影響を受け、山口氏は高校の自己紹介でバンドメンバー募集を宣言。後のサカナクション結成へとつながっていきます。山口氏の楽曲「フクロウ」は、「ワンダーウォール」の世界観に影響を受けた作品。ライブで演奏する際には、「ワンダーウォール」のマネをして咳を一つ入れてから歌うこともあるそうです。
現代の若者に刺さる理由|情報過多時代のリアリティ
山口氏は、オアシスの音楽の本質を次のように語りました。
「オアシスの曲って分かりやすいですよね。日本人ってやっぱりAメロBメロサビみたいな構成って好きじゃないですか。オアシスってちゃんとそういうしっかりとした構成があるんですよ。歌詞の世界観も、やはり不変的というか、誰もが自分の人生の中で感じてることであったり、それをちゃんと言い当ててくれてるっていうのはすごい」。
そして、メロディと歌詞が同時にできる曲について、「自分の中ですごく大事な曲になるケースが多い。きっとノエルは、そういった要素が常にある天才肌だったんじゃないか」と分析します。
オアシスの代表曲に宿る新たな意味|時代を超えて響く普遍性
「Whatever」が若者に勇気を与え続ける理由
オアシスをカバーする高校生バンドのメンバー、太田蓮哉さん。去年、動画サイトで「Whatever」に出会い、「メロディーも歌詞もすごく僕に刺さるものがあって、泣いてしまいました」と語ります。
常に周囲の目が気になり、やりたいことを躊躇してしまうという太田さん。希望するボーカルにも手を挙げられずにいました。「SNSの影響で、すぐに他人の評価とかが入ってくる時代やから。コメント読んだりとか、いいねの数とか、そういう結構気にしてしまいます」。
しかし「Whatever」に背中を押され、太田さんは自ら志願して初めてボーカルを務めました。「二人ともその自由奔放で周りの目を気にせずに。僕とは逆だなみたいな印象があって。自由にしていいって言われてるのに、聞いた後には頑張る気持ちになってる」。
1994年に発表された曲が、30年以上経った今も若者の背中を押し続けている。これこそ、オアシスの音楽が持つ普遍性の証明です。
「Don’t Look Back in Anger」がマンチェスターテロの追悼歌に
2017年、ギャラガー兄弟が生まれ育ったマンチェスターを悲劇が襲いました。コンサート会場の近くで起きた自爆テロで22人が犠牲になったのです。
直後に行われた追悼集会で、人々が自然に口ずさみ始めたのがオアシスの「Don’t Look Back in Anger」でした。「怒りで過去を振り返るな」と何度も繰り返すこの代表曲が、テロの恐怖に立ち尽くす人々を励まし支える曲になったのです。
アンドリュー・トレンデル氏は語ります。「『私たちは強い。憎しみや恐怖に負けない』という気持ちもみんなに芽生えさせた。人生に何が起きようとオアシスの曲は人々に寄り添うだろう」。
オアシス自身が意図していなかった意味を、人々が見い出していく。これは、彼らの音楽が持つ懐の深さを物語っています。
「Live Forever」など心を掴む名曲の数々
「Live Forever」「Supersonic」「Morning Glory」など、オアシスの楽曲は枚挙にいとまがありません。耳に残るメロディと、人生の普遍的なテーマを歌った歌詞。その組み合わせが、時代を超えて人々の心を掴み続けています。
グリフィス兄弟は、デビューシングル「Supersonic」について「あれは練習では身につかないよ。自然と出てくるもの。もし座ってすごく真面目に書いたら、それは物語であって、もはや歌ではない。深刻すぎるとダメなんだ」と振り返ります。
計算ではない、自然に生まれた音楽だからこそ、リスナーの心に素直に届くのでしょう。
国境も世代も越えるオアシスの音楽|彼らの意図を超えた広がり
オアシスの音楽は、彼ら自身の意図を超えて、新たな広がりを見せています。
Spotifyだけで月間3,200万人以上のリスナーを誇り、この数字は再結成発表から約50%増加。全プラットフォームでの再生回数は125億回近くに達しています。デジタルネイティブ世代が、90年代の音楽に熱狂している現象は興味深いものです。
世界ツアーでは、各国でチケットの争奪戦が発生。イギリスとアイルランドでは158か国から1,000万人以上のファンがチケット購入に殺到し、過去最大規模のチケット売上数を記録しました。
番組ゲストの山口氏は、オアシスの影響力について次のように語ります。「ミュージシャンって音楽を作る時、そんなに社会のことを意識して作ることってないと思うんですよ。でも出来上がったものが、その時代時代に捉えられ方が変わって、社会的な影響があるものになっていく。それミュージシャンの理想なんですよね。そういった影響持っていく曲っていうのは、やっぱ本当に名曲なんじゃないかな」。
写真家のジルー・ファーマノフスキー氏は、再結成ライブで撮影した一枚の写真について語ります。「顔が反対を向いているけれどつながってる。対立はあるけれど表裏一体の関係というか、美しいと感じる」。
兄弟の複雑な関係性すらも、オアシスの魅力の一部。それが音楽に深みを与え、多くの人々を惹きつけ続けているのです。
まとめ|クローズアップ現代が伝えたオアシス再結成の真髄
2025年10月27日放送の「クローズアップ現代」は、オアシス再結成の背景と彼らの魅力を多角的に描き出しました。
ギャラガー兄弟の過酷な生い立ち、反骨精神あふれる生き様、普遍的な歌詞とキャッチーなメロディ。そして何より、取り繕わない「本物」としてのリアリティ。これらすべてが組み合わさって、オアシスという唯一無二の存在を作り上げています。
サカナクション・山口一郎氏が番組で語った「正直に、リアルに作っていきたい」という言葉は、オアシスから受け継がれるべき姿勢を示しています。情報過多の時代だからこそ、嘘のない表現が求められているのです。
15年ぶりに再結成したオアシスのツアーは、単なる懐古イベントではありません。それは、音楽が時代を超えて人々に寄り添い、勇気を与え続けることができるという証明です。世代も国境も越えて、彼らの歌は今日も誰かの背中を押し続けています。
あなたも、オアシスの音楽に触れてみてはいかがでしょうか。そこには、きっと「俺たち」の歌が待っています。
※ 本記事は、2025年10月27日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。





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