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【クローズアップ現代】反トランプ・マムダニ氏「家賃凍結」でNY市長に

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2025年11月5日放送の「クローズアップ現代」で取り上げられたニューヨーク市長選挙。反トランプを掲げる34歳のマムダニ氏が勝利した背景には、アメリカ社会の深刻な分断と物価高騰があります。本記事では、番組内容を基に、なぜマムダニ氏が支持されたのか、トランプ政権下のアメリカで今何が起きているのか、そして日本企業への影響まで詳しく解説します。


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マムダニ氏はなぜ勝てた?反トランプ掲げニューヨーク市長選で得票率50.4%

2025年11月4日に投開票されたニューヨーク市長選挙で、民主党のゾーラン・マムダニ氏が得票率50.4%で勝利しました。この結果は、アメリカ社会の大きな転換点を示すものとして注目を集めています。

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米ニューヨーク市長選で当選したゾーラン・マムダニ氏                   (引用:「日本経済新聞」より)

マムダニ氏は34歳という若さで、アフリカ・ウガンダでインド系の家庭に生まれたイスラム教徒という、アメリカでは異色の経歴を持つ政治家です。彼が掲げた「反トランプ」の姿勢と、市民の暮らしに直結する大胆な政策が、幅広い支持を集めました。

興味深いのは、当初支持率わずか1%の無名候補だったマムダニ氏が、選挙運動を通じて10万人を超えるボランティアを集め、「マムダニ旋風」と呼ばれるまでの現象を巻き起こしたことです。この熱狂的な支持の背景には、トランプ政権下での物価高騰に苦しむ市民の切実な願いがありました。

さらに注目すべきは、昨年トランプ大統領に投票した有権者の一部までもがマムダニ氏を支持したという点です。これは単なる民主党対共和党の対立を超えた、より根深い社会変化を物語っています。

同じ日に行われたニュージャージー州とバージニア州の知事選挙でも民主党候補が勝利しており、トランプ政権への批判票が明確な形で表れた選挙となりました。

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トランプ政権下の物価高騰が生んだ「マムダニ旋風」

昨年の大統領選挙でトランプ大統領は「インフレを終わらせる」と公約していました。しかし、実際にはこの1年で食費が3.1%、電気代が5.1%、住居費が3.6%上昇し、市民の生活は厳しさを増しています。

番組で取り上げられた10年ほどニューヨークで暮らすカサンドラ・レベイレさん(38歳)は、友人2人とアパートで同居して家賃を節約していますが、コーヒー1杯の価格が以前の11ドル(約1650円)から17~20ドル(約2550~3000円)に上昇したことを嘆いていました。「私たちの生活は、トランプ政権の政策の影響を強く受けています」という彼女の言葉が、多くの市民の実感を代弁しています。

物価高騰の大きな要因の一つが、トランプ政権の関税政策です。輸入品にかかる関税が消費者価格に転嫁され、特に低所得層ほど打撃が大きくなっています。エコノミストのベロニク・ド・ルジ氏は「関税は大部分が国民の負担になり、長期的にはインフレが大きな問題になる。低所得層ほど、打撃は大きくなる」と警鐘を鳴らしています。

生地店で働くムハマド・アゾムさんは、もともとトランプ大統領に投票した一人でした。しかし、関税の影響で商品の仕入れ値が3.75ドルから5ドルに上昇し、「トランプ大統領は選挙で当選したら何の心配もなくなると言っていたが、実際には全ての価格が上がっている」と失望を語ります。彼のように「共和党か民主党かは関係ない。手頃な価格の衣類、食料品、家賃が欲しい」と考える人々が、マムダニ氏を支持したのです。

こうした市民の不満は、先月アメリカ各地で同時に行われた700万人以上が参加した抗議デモにも表れています。トランプ政権への批判が、ニューヨーク市長選挙という具体的な選挙結果として現れた形です。

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家賃凍結・最低賃金30ドル・バス無償化|マムダニ氏の異例の公約とは

マムダニ氏は自らを「民主社会主義者」と位置づけ、「国民の尊厳ある生活のために国家が必要なものを提供する」という理念を掲げています。その具体的な政策は、アメリカの政治史においても異例の内容です。

最も注目を集めたのが、200万人以上のニューヨーク市民を対象とした4年間の家賃値上げ凍結政策です。ニューヨークでは賃貸物件の中央値が約3400ドルで、この5年で2割近く増加しています。「月の始めは多くの人々が恐れる家賃の支払い日」とマムダニ氏が訴えたように、家賃高騰は市民の最大の悩みとなっていました。

また、最低賃金を現在の2倍近い時給30ドルに引き上げる公約も掲げています。労働組合員の女性が「娘は『この街で生活する余裕がない』と別の州へ移住することを決めた。最低賃金を時給30ドルに引き上げてニューヨーカーをこの街にとどめてくれませんか」と訴えた場面は、多くの市民の共感を呼びました。マムダニ氏は「もちろんです。娘さんの話は多くのニューヨーカーの現実そのものです」と応じています。

さらに、市営バスと保育の無償化も公約に含まれています。これらの財源は、富裕層や企業への増税で賄うとしています。

一方で、不動産仲介事業を行うブレント・モーデンさんなど、富裕層や企業側からは「これはニューヨーク市にとって最悪の事態の1つとなる。特に資産を持っている人や不動産所有者にとって」「現実には無料なものはなく、常に代償が伴い、最終的には誰かが支払う」という強い批判の声も上がっています。飲食店の店長は「最低賃金時給30ドル。そんなの無理だよ」と困惑を隠しません。

トランプ大統領自身も、マムダニ氏を「共産主義の狂信者」と批判し、政策の実現可能性を疑問視する声が上がる中、選挙戦は白熱したものとなりました。

マムダニ氏は、こうした批判に対しても市民の声に耳を傾けることを重視しています。「今朝は私の話は控えて皆さんの声に耳を傾けたい」という姿勢が、多くの支持を集めた要因の一つでしょう。

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齋藤ジン氏が解説「マムダニ氏とトランプ氏の共通点」

番組で投資コンサルタントの齋藤ジン氏は、一見正反対に見えるマムダニ氏とトランプ大統領に実は共通点があると指摘しました。

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投資コンサルタントの齋藤ジン氏               (引用:「読売新聞オンライン」より)

齋藤氏によれば、過去30~40年間、世界は新自由主義的な市場原理や経済合理性を追求してきました。それは経済的には莫大な富を生み出しましたが、その富の分配に失敗し、大きな格差が生まれました。この格差への怒りが世界中、アメリカも含めて広がっており、その怒りをうまく掴んだのがトランプ大統領とマムダニ氏だというのです。

トランプ大統領は関税政策や海外投資の呼び込みによって、アメリカの労働者に仕事を戻す形、いわば「国家資本主義」的な解決策を提示しています。一方、マムダニ氏は富裕層への課税による再分配という手法を選んでいます。やり方は異なるものの、「現状のシステムを壊したい」という情熱は両者に共通しているというわけです。

ただし、齋藤氏はマムダニ氏の政策がアメリカ全体に広がる可能性については懐疑的な見方を示しています。なぜなら、アメリカ人、特にラストベルトの人々には「独立自営農民の発想」があり、政府による補助を非常に嫌う傾向があるからです。彼らが求めているのは「お金をくれ」ではなく「仕事をくれ」なのだと齋藤氏は説明します。

桑子アナウンサーが「お金をくれるよりも、仕事をくれという感じですか?」と確認すると、齋藤氏は「そうですね。その仕事をアメリカに戻すということは当然高いものになっちゃうわけですよね。安いものを中国とか東南アジアで作る代わりにアメリカでつくるわけですから。逆に言うとそれは、アメリカの労働者に対する所得の分配になる」と解説しています。

この分析は、同じ日に行われたニュージャージー州とバージニア州の知事選挙でも民主党候補が勝利したことの意味を考える上でも重要です。これらは「トランプ政権への批判票」「現政権に対する批判票」という形で現れた民意であり、必ずしもマムダニ氏の政策への全面的支持を意味するわけではないという視点は、今後のアメリカ政治を読み解く鍵となるでしょう。

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日米首脳会談で確認された対米投資80兆円|日本企業への影響は?

先週行われた日米首脳会談では、日本からAI、自動車、半導体など安全保障面で重要な分野で、約80兆円の対米投資をすることが確認されました。これは、トランプ政権の関税政策と投資呼び込み戦略の成果とも言えます。

齋藤氏は、関税という「壁」に守られたアメリカ市場への進出には大きなメリットがあると指摘します。新自由主義時代には、世界が1つであれば最も安い中国で生産することが当たり前となり、日本企業は価格競争、低価格競争を強いられてきました。しかし現在、アメリカは中国を除外したサプライチェーンをアメリカに戻そうとしており、そこに日本企業が入り込む余地が生まれています。

「アメリカだけでできるなら自分でやっている。できないから、関税という鞭を使って、投資を呼び込んだりして、特に安全保障に関連するものからアメリカに戻していこうとしている」という齋藤氏の分析は的確です。アメリカは安全保障に関連する産業から順に、政府補助金や買い取り価格の保証などの「飴」も今後供給していくため、この部分に関しては相当のメリットがあり、中国を除いたサプライチェーンの構築がアメリカにとってもう戻らないものであることから、その点においてはすごくメリットがあると齋藤氏は述べています。

一方、デメリットやリスクも存在します。齋藤氏が「どういう形でどうなるかがはっきりしない」と述べたように、トランプ大統領が「棍棒を振り回してぶち壊している」転換期であるため、早く入ってサプライチェーンの一部になって必ず勝てる場所を取る場合もあれば、逆に早く行ったがゆえに失敗するようなものもあります。リスクとリターンの双方がものすごく大きな環境、転換期だということです。

JETRO(日本貿易振興機構)ニューヨーク事務所の葛西泰介さんによれば、アメリカに進出すれば関税がないため外国の製品と比べて価格面で有利になる一方、原材料を輸入する場合にはその調達価格が上昇し、人件費の負担も割高になる可能性があります。冷静に状況を見極めて総合的に判断すべきだという指摘は、企業経営者にとって重要なアドバイスです。

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日本企業の北米での事業展開|ソフトバンク・いすゞの戦略

実際に日本企業の間では、アメリカへの投資が加速しています。

今、アメリカで加速しているのがAI関連のインフラ投資です。ソフトバンクグループは、アメリカのOpenAIなどと共に、今後4年間で総額70兆円あまりを巨大データセンターの整備に投じる計画を発表しました。孫正義社長は「これはアメリカで史上最大のインフラ投資です。私はこれが人類の未来につながると信じています。あらゆる産業を変えていくでしょう」と語っています。建設現場周辺では地元経済も活気づいており、あるレストランでは事業関係者などが訪れ、売り上げが昨年と比べて25%増加しました。マネージャーは「AIのデータセンターの建設が続けば、ビジネスはさらに盛り上がる。ワクワクするよ」と期待を寄せています。

日本経済の屋台骨とも言われる自動車産業でも、アメリカへの投資が拡大しています。大手トラックメーカーのいすゞ自動車は、約400億円を投じてアメリカ初となる自社工場の立ち上げを急いでいます。部品も現地で調達し、2027年からの稼働を目指し、年間5万台の生産量に対応できるスペースを確保しています。村上昇執行役員は「中期経営計画の中で北米市場を重点地域と位置づけて、その中で生産能力を強化していく。今足元で関税の影響もございますので、対応の選択肢が広がると考えております」と説明しています。

一方、トランプ大統領の関税政策にどう向き合うか見定めようとしている企業もあります。メキシコに拠点を構える大手機械部品メーカーのミスミでは、顧客の多くがメキシコの自動車産業など製造業の企業で、アメリカ市場向けに製品を輸出しています。そのアメリカがメキシコに対して25%の関税措置を発表し、それ以降も措置の内容を頻繁に変更しています。

加藤陽武社長は、今後の関税による影響の見通しが立たないため、一部の取引先から受注が減少していると話します。同じ悩みを抱える顧客との情報交換では「市場の動きが鈍っていてアメリカの取引先の判断が後回しになったり見送られたりしている」という声も。加藤社長は「アメリカからは見積もり請求ばかりなんですよね。注文はどこにいったんでしょうね」と困惑を隠しません。

もしアメリカに拠点を移せば、関税の影響を抑えることができます。しかし、人件費はメキシコの約4倍で、熟練した労働者を確保することも簡単ではありません。そのため、加藤社長は「単純にアメリカに製造業を移すのは難しいのは誰でも分かっているはずで、相当な経済的な合理性がないとしないはずだと思っています」と述べており、トランプ大統領の関税政策を理由に拠点を移す判断にはつながらないとしています。

このように、企業によって対応が大きく分かれているのが現状です。

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まとめ

ニューヨーク市長選挙でのマムダニ氏の勝利は、トランプ政権下の物価高騰に苦しむアメリカ市民の切実な声を反映したものです。34歳の新鋭が掲げた家賃凍結や最低賃金引き上げなどの異例の公約は、200万人以上の市民に希望を与えました。

齋藤ジン氏の分析が示すように、マムダニ氏とトランプ大統領は、アプローチは異なるものの、新自由主義がもたらした格差への怒りを掴んだという点で共通しています。アメリカは今、新たな冷戦構造への移行という歴史的転換期にあります。

齋藤氏は「新自由主義の以前に冷戦があった。新自由主義によって冷戦をすっ飛ばして、みんなで仲良くやりましょうと。それが先祖返りしてきちゃって、新しく冷戦構造に」なっていると指摘します。安全保障に関連している企業やビジネスは当然この冷戦に規定されるため、そこに戻っていくしかない。一方で、皿のものが2つできるわけではなく、1つだったものを割っていく過程であるため、当然その綺麗に分かれきらない。その中で安全保障に関係ない部分はどこに自分の立ち位置を取って、勝ちどころを見つけていくのかが経営者の勝負だと述べています。

日本企業にとっては、この変化がチャンスにもリスクにもなり得ます。安全保障に関連する分野ではアメリカのサプライチェーンに組み込まれるメリットがある一方、関税政策の不透明さや人件費の高さなど、慎重に判断すべき要素も多くあります。

重要なのは、自社がどこにいるのか、アメリカが何を求めているのかを見極め、製造業を戻して安全保障に関連するものを戻すという方向性の中で、自分がそこにいるのであればそれを取りに行き、そこにないのであれば中国、東南アジア、自社のマーケットを大事にするという、戦略的な判断です。

今回のクローズアップ現代が伝えた内容は、アメリカ社会の深層と日本への影響を考える上で、極めて重要な視点を提供してくれました。冷戦時代に戻る部分と戻らない部分を見極めながら、壮大な新しい秩序の中でどう考えていくかが問われています。今後もアメリカの動向から目が離せません。

※ 本記事は、2025年11月5日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

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