2025年11月9日放送の「がっちりマンデー!!」で、牛丼チェーン大手の吉野家がラーメンで世界制覇を目指す驚きの戦略が明らかになりました。そのカギを握るのが、京都の「宝産業」という会社です。この記事では、吉野家とラーメン界の黒子である宝産業の儲かるビジネスモデルと、120種類もの素材を手作りで提供する独自戦略について詳しく解説します。
吉野家がラーメンで世界制覇を目指す理由とは?
年商2500億円を誇る牛丼チェーン大手の吉野家ホールディングスが、実は2016年からラーメン事業に本格参入していることをご存知でしょうか。代表取締役社長の成瀬哲也氏は、がっちりマンデーのバラエティ初出演で「ラーメンで世界制覇をしようと考えている」と力強く語りました。
成瀬社長がラーメンビジネスに注目した理由は極めて明確です。過去に牛丼で海外進出した際、海外のラーメン店が日本円で1500円という高価格でも行列を作っている光景を目の当たりにし、「牛丼と違ってお金をいっぱい頂ける」と実感したのです。この経験から、「ラーメンなら世界がとれる」と確信したといいます。
現在、吉野家HDは濃厚豚骨魚介ラーメンの「せたが屋」をはじめ、「ウィズリンク」「キラメキノ未来」「全力の元」という4つの人気ラーメン店の会社を子会社化しています。2016年の参入から2025年でまもなく10年を迎え、成瀬社長は「儲かっていますし、これからもたっぷり儲けていきます」と自信を見せています。
ラーメン界の黒子・宝産業とは何をする会社?
吉野家HDの世界制覇戦略の中核を担うのが、京都にある食品製造会社「宝産業」です。吉野家HDはこの会社を買収し、ラーメンビジネスの強力な武器としました。
宝産業の社長、渡邉喜広氏は自社を「ラーメン店の黒子役の工場」と表現しています。この「黒子」という言葉には深い意味があります。表舞台には出ないものの、ラーメン店の成功を裏で支える存在という意味です。
具体的には、全国のラーメン店が必要とするタレ、具材、スープ、麺など、ラーメンを構成するありとあらゆる素材を製造し、お店に提供しているのです。まさにラーメン店にとってなくてはならない存在といえるでしょう。
番組で月刊食堂統括編集長の通山茂之氏は、「吉野家さんは単一のチェーンで全国展開しようとは考えておらず、地方地方にあるリージョナルチェーンを作って巨大なラーメンチェーンを作るという考え方。宝産業さんがいないとできないこと」と分析しています。つまり、地域ごとに異なる味を展開する戦略において、宝産業の存在は不可欠なのです。
宝産業が作る120種類のラーメン素材
宝産業の製造部長、白子史仁氏によると、同社の工場ではタレ、具材、香味油を作っており、その種類は実に120種類にも及びます。
驚くべきことに、宝産業ではカットねぎ、メンマ、麺、かえし、スープ、チャーシュー、背脂、煮卵まで、ラーメンを構成する全ての素材を自社で製造しています。つまり、ラーメン店は宝産業一社と取引するだけで、必要な素材を全て揃えることができるのです。
この「ワンストップサービス」が、人手不足や原材料費高騰で苦しむラーメン店にとって大きなメリットとなっています。個別に複数の業者と取引する手間が省け、コスト管理も簡単になるからです。
さらに、120種類もの豊富なラインナップがあることで、ラーメン店は自店の個性を出しながらも、調理の手間を大幅に削減できます。現在のラーメン市場規模は7900億円と過去最高を記録している一方で、閉店も激増しているという厳しい環境下で、宝産業のサービスは多くのラーメン店の救世主となっているのです。
「工場だけど手作り」宝産業のこだわり製法
宝産業の最大の特徴は、「工場だけど手作り感」を追求している点です。渡邉社長は「お店で作っているものを、実際我々の工場で手作り感のあるスープ、麺をお作りして、お店に提供している」と説明します。
多くのラーメン店にスープを作っている宝産業ですが、工場で大量に作るとどうしても味が均一で癖のないものになりがちです。しかし顧客には「これ工場で作ったスープ?」ではなく、「うーん、お店で作った味だね」と思ってもらいたい。そのために宝産業が選んだ方法は、徹底した手作業でした。
白子製造部長は「全て手作業で行っております」と明言しています。大きな鍋やタンクを使うと工場っぽくなってしまうため、あえて小さい鍋、小さい寸胴で手作業にこだわっているのです。
この製法は確かに効率は悪くなります。しかし、それによって実現される「手作り感」こそが、宝産業の商品が多くのラーメン店から支持される理由なのです。工場の生産力と手作りの温もりを両立させる、この絶妙なバランス感覚が宝産業の強みといえるでしょう。
宝産業のラーメン開発サポート体制
宝産業の強みは素材製造だけではありません。同社にはテストキッチンがあり、ラーメン店と一緒に新メニューを開発することもできるのです。
番組では、関西などで24店舗を展開する油そば「きりん寺」の安田翔梧取締役(株式会社KIRINJI)と安田敬祐専務取締役(株式会社GOLD-STAR)が、冬の限定メニュー開発を宝産業に依頼する様子が紹介されました。
試作品として出来上がった鶏出汁ベースのオマール海老みそラーメンを試食したキリンジ側から、「海老のジャリジャリ感を残したい」「豚骨バージョンも試したい」などの要望が出されました。
ここからが宝産業のすごいところです。西日本営業部長の山崎雄心氏は、「海老ふりかけありますよ」「豚骨スープありましたっけ?」と即座に代替案を提示。その場でレシピや材料を変えて試作することができたのです。
結果、「これや、これ、これ」「めっちゃいいかもしれない。今年はこれでいくんじゃないですか?」ときりん寺側は大満足。新メニューがその場で決定しました。
120種類もの素材を持っているからこそ、こうした柔軟な対応が可能になるのです。開発から製造、納品まで一貫してサポートできる体制は、ラーメン店にとって心強いパートナーといえるでしょう。
ラーメン業界のルールを守る宝産業の姿勢
興味深いのは、宝産業が業界のルールやマナーを重視している点です。
がっちりマンデーで加藤浩次さんが「隣の店の方が人が入ってるんだけど、あそこの味作ってくんねえか、みたいなことってないですか?」と質問したところ、山崎営業部長は「実際によくいただくことは多いです」と回答しました。
ラーメン店から「あそこの味をやりたい」「あそこ何使ってるのか」という相談を受けることは確かにあるそうです。そんな時、宝産業は実際にお店に足を運んで試食し、自社商品でどんな提案ができるか検討します。
しかし、加藤さんが「そこがもうすでに宝産業やってたとしたらどうするんですか?」と重ねて質問すると、山崎部長は「お断りします」ときっぱり答えました。「そこはちょっと、マナー、ルール違反なので」と。
この姿勢は、単に短期的な利益を追求するのではなく、業界全体の健全性や取引先との信頼関係を大切にしている証です。こうした誠実な対応が、長期的には宝産業の評判を高め、より多くのラーメン店から信頼される基盤になっているのでしょう。
まとめ:吉野家と宝産業が描くラーメンの未来
2025年11月9日放送のがっちりマンデーで紹介された吉野家のラーメン戦略は、従来の飲食チェーンの常識を覆すものでした。
吉野家HDの成瀬哲也社長が掲げる「ラーメンで世界制覇」という野望の裏には、京都の宝産業という強力な黒子の存在があります。120種類もの素材を「工場だけど手作り」で提供し、テストキッチンでの共同開発もサポートする。さらには業界のルールを守る誠実な姿勢。これらすべてが、吉野家の世界戦略を支える土台となっているのです。
日本のラーメン市場は7900億円と過去最高を記録する一方、原材料費高騰や人手不足で閉店も激増しています。こうした激動の時代に、吉野家と宝産業のタッグは新しいラーメンビジネスのモデルを示しています。地域ごとの味を大切にしながら、効率的な製造と柔軟な開発体制で全国、そして世界へ展開する。この戦略が成功すれば、日本のラーメン文化が世界でさらに花開く日も近いかもしれません。
※ 本記事は、2025年11月9日放送(TBS系)の「がっちりマンデー!!」を参照しています。
※ 吉野家ホールディングスの公式サイトはこちら
※ 宝産業株式会社の公式サイトはこちら






コメント