2025年11月30日放送の「がっちりマンデー!!」で紹介された鳥取県の「すなば珈琲」。村上和良社長が掲げる「お金をかけない」という常識破りの経営戦略は、なぜ年商3億円超の成功を収めたのでしょうか？この記事では、スタバの真逆を行く独自のビジネスモデルと、ピンチをチャンスに変えたアイデア勝負の実例を詳しく解説します。地元密着型喫茶店の成功の秘密を知れば、あなたのビジネスにも応用できるヒントが見つかるはずです。
すなば珈琲とは？村上和良社長が「スタバの真逆」で成功した鳥取の喫茶店
すなば珈琲は、鳥取県を拠点とする地元密着型の喫茶店チェーンです。2025年11月現在、11店舗を展開し、年商3億円から4億円を達成している、地域に根ざした儲かる喫茶店として注目されています。
この喫茶店の最大の特徴は、創業者である村上和良社長が掲げる「スタバの真逆を行く」という明確な経営方針です。世界的なコーヒーチェーンであるスターバックスが、洗練された店舗デザインや豊富なコーヒー豆の種類で勝負するのに対し、すなば珈琲は「お金をかけない」ことに徹底的にこだわっています。
すなば珈琲の村上和良社長 （引用：「がっちりマンデー」より）
村上社長によれば、スタバは1店舗の出店に約1億円をかけると言われていますが、すなば珈琲は100万円から150万円程度で出店を実現しています。この圧倒的なコスト削減により、「10年間はうちが勝つ」という自信を持って事業を展開してきました。
店舗では、コーヒーだけでなく、地元の食材を活かした充実したフードメニューも提供しています。鳥取砂丘をイメージした大山どりのカレー、和洋のボリューミーなモーニング定食、さらには鳥取そばやイカ一本の刺身定食など、まるでファミリーレストランのような品揃えが特徴です。
この「喫茶店の枠を超えたメニュー展開」と「徹底した低コスト経営」の組み合わせが、鳥取県民だけでなく観光客にも愛される理由となっています。朝から行列ができるほどの人気ぶりは、単なるコーヒーショップではなく、地域のコミュニティスペースとしての役割も果たしていることを示しています。
村上和良の「お金をかけない」経営戦略｜サイフォンと居抜き物件で低コスト実現
村上和良社長の経営戦略の核心は、「まずはお金をかけない」という一点に集約されます。この戦略は、単なるケチではなく、計算された差別化戦略なのです。
サイフォンでコスト削減と演出効果を両立
大手カフェチェーンが使用するドリップマシンやエスプレッソマシンは、最低でも100万円以上の初期投資が必要です。しかし、すなば珈琲では昔ながらのサイフォンを採用することで、一式2,000円から3,000円程度という驚異的な低コストを実現しました。
すなば珈琲はサイフォンを採用 （引用：「がっちりマンデー」より）
村上社長は「コーヒーと会話をしながら、儲けさせてくれ、儲けさせてくれと」と語り、一滴一滴丁寧にコーヒーを淹れる姿勢を大切にしています。この戦略は大当たりで、サイフォンで淹れるコーヒーの様子を「わざわざ見に来る人」まで現れるようになりました。若い世代にとっては、サイフォンという器具自体が珍しく、レトロでかっこいいという印象を与え、結果的にお店の魅力を高める演出効果まで生み出しています。
居抜き物件で内装費をゼロに
さらに徹底しているのが、店舗の出店方法です。すなば珈琲は基本的に居抜き物件を活用し、前のテナントの内装をそのまま使用します。新規に内装工事を行わないことで、莫大な初期費用を削減しているのです。
コーヒー豆は厳選した1種類のみ
スタバが多種多様なコーヒー豆を揃えることを売りにしているのに対し、すなば珈琲は厳選したブラジル豆1種類だけに絞り込んでいます。種類が多ければ在庫管理コストも増え、廃棄ロスも発生しますが、1種類に絞ることでこれらのコストを最小限に抑えています。
コーヒー豆は厳選したブラジル豆1種類を使用 （引用：「がっちりマンデー」より）
ただし、1種類だからこそ焙煎方法にこだわりを見せています。鳥取砂丘の砂を使った「砂焼き」という地元ならではの方法で焙煎することで、他店との差別化と地域性の演出を同時に実現しています。
この「お金をかけない」戦略は、決して品質を犠牲にするものではありません。むしろ、限られた資源を最大限に活かし、顧客に喜ばれるポイントに集中投資する、賢い経営手法と言えるでしょう。スタバが1億円かけて作る店舗に対し、150万円で勝負できる土俵を作ったことが、村上社長の最大の成功要因です。
平井伸治知事のダジャレから誕生｜すなば珈琲の名前の由来と創業秘話
すなば珈琲の誕生には、鳥取県知事のユーモアあふれる発言が大きく関わっています。今から13年前、2012年頃の出来事です。
当時、鳥取県は日本で唯一スターバックスの店舗がない県として、全国的に話題になっていました。この状況に対して、平井伸治鳥取県知事が記者会見で放った一言が、すべての始まりでした。
「スタバはないけど鳥取には、日本一の『砂場（すなば）』がある！」
この発言は、スターバックス（スタバ）と鳥取砂丘（砂場＝すなば）をかけた、知事らしいユーモアあふれるダジャレでした。多くの人は、この発言を単なるジョークとして受け流したことでしょう。
鳥取県の平井伸治知事 （引用：「がっちりマンデー」より」）
しかし、この発言を聞いた村上和良社長は違いました。「せっかく喋ってくれたのに、ダジャレの先にも商売があるんだ」と、鋭いビジネスチャンスを見出したのです。
そして知事の発言からわずか2年後、村上社長は本当に「すなば珈琲」という名前の喫茶店を立ち上げてしまいました。この行動力とスピード感は、まさに起業家精神の真骨頂と言えます。
店名だけでなく、経営方針も「すなば」というネーミングに合わせて「スタバの真逆を行く」ことを明確に打ち出しました。大手チェーンの後追いではなく、あえて正反対の道を選ぶことで、独自のポジションを確立したのです。
この創業秘話が示すのは、チャンスは意外なところに転がっているということです。知事のダジャレという、誰もが聞き流してしまいそうな些細な出来事から、年商数億円規模のビジネスを生み出す。この発想の転換こそが、村上社長の起業家としての才能を物語っています。
また、地元の話題を巧みにビジネスに結びつけることで、最初から高い認知度とユニークなブランドイメージを獲得できたことも、大きな成功要因でした。「すなば珈琲」という名前を聞けば、多くの人が鳥取砂丘を連想し、さらにスタバとの対比も自然と思い浮かべます。この記憶に残りやすいネーミングが、宣伝費をかけずに口コミで広がる仕組みを作り出したのです。
スタバ進出のピンチをチャンスに｜「黒船来襲キャンペーン」のアイデアで勝負
すなば珈琲にとって最大の試練が訪れたのは、2015年のことでした。日本で唯一スタバがなかった鳥取県に、ついにスターバックス1号店がオープンすることになったのです。
「スタバがないから、すなば」という存在意義が揺らぐ、まさに大ピンチ。多くの経営者なら、強力なライバルの登場に意気消沈してしまうところでしょう。しかし、村上社長が打ち出したのは、予想を裏切る驚きのキャンペーンでした。
その名も「黒船来襲！大ピンチキャンペーン」。
黒船来襲！大ピンチキャンペーン！ （引用：「がっちりマンデー」より）
このキャンペーンのコピーは、なんとも謙虚で自虐的です。「いよいよ、この時がやって参りました」と、ほぼ諦めムードを漂わせながら、「3回に1回くらいは当店をご利用ください」というメッセージを発信したのです。
しかし、これは単なる弱気な姿勢ではありませんでした。キャンペーンの内容をよく見ると、実に巧妙な戦略が隠されていました。それが、「期間中にスタバのレシートを持参すると、すなばのコーヒーが半額になる」という特典です。
この施策の素晴らしい点は、Win-Winの関係を作り出したことにあります。スタバでコーヒーを飲んだ人が、「じゃあ、すなばも試してみようか」と足を運ぶ動機を作り出し、スタバの集客力を逆に利用してしまったのです。スタバの顧客を奪うのではなく、スタバが呼び込んだ人の流れに便乗する。この発想は、まさに「お金をかけない」戦略の延長線上にあります。
2代目の村上春希さんは「ビタ一文も使わず、がっちり！」と胸を張ります。実際、このキャンペーンに必要だったのは、チラシの印刷費程度。大規模な広告宣伝費をかけることなく、全国ニュースで取り上げられるほどの話題性を生み出しました。
この事例が教えてくれるのは、ピンチは見方を変えればチャンスになるということです。スタバの進出という誰もが「終わりの始まり」と思う出来事を、逆に認知度向上とユーモアあふれるブランドイメージの強化につなげた村上社長の発想力は、多くの経営者にとって学ぶべき点が多いでしょう。
また、大手に対して正面から戦うのではなく、共存の道を探る姿勢も重要です。プライドを捨て、ユーモアを武器にすることで、かえって消費者の心をつかむことができる。これは、小規模ビジネスが大手と競争する際の、一つの有効な戦略モデルと言えます。
村上春希（2代目）が語る父・村上和良の経営哲学
すなば珈琲の未来を担う2代目、村上春希さんの存在も見逃せません。番組では、父である村上和良社長の経営戦略について、息子の立場から率直な意見を語っています。
すなば珈琲 ２代目の村上春希さん （引用：「がっちりマンデー」より）
「親父の、このお金かけない戦略、息子さんからしてどうですか？」というスタッフの質問に対し、村上春希さんはこう答えました。
「まぁ、現場としては大変ですけど、でもそれで結局お客様が集まってくださってるので、正解だな、アイデアはすごいなと思います」
この発言からは、二つの重要な事実が読み取れます。
一つ目は、「お金をかけない」戦略は現場に負担をかけているという現実です。最新の機械を導入すれば効率化できる作業も、サイフォンで一杯一杯丁寧に淹れなければならない。居抜き物件を使うため、理想的なレイアウトではない店舗で工夫しながら営業する。こうした苦労が、現場スタッフには確実に存在します。
しかし二つ目として、それでも結果が出ているという事実を、春希さんは素直に認めています。「お客様が集まってくださっている」という成果が、すべての苦労を正当化している。この客観的な視点は、感情論に流されない冷静な経営判断ができる後継者としての資質を感じさせます。
「ビタ一文も使わず、がっちり！」という春希さんの言葉には、父親譲りのユーモアセンスと、コストを抑えながら利益を最大化するという経営哲学の継承が表れています。
事業承継は多くの企業が直面する課題ですが、すなば珈琲では創業者の独自性を尊重しつつ、次世代がそれを発展させていく健全な関係が築かれているように見えます。村上春希さんが現場の大変さを理解した上で父の戦略を評価していることは、今後のすなば珈琲の持続的成長にとって心強い要素です。
父の「ダジャレの先にも商売がある」という発想力と、息子の「現 場は大変だが結果が出ている」という現実主義。この二つが組み合わさることで、すなば珈琲はさらなる成長を続けていくことでしょう。
すなば珈琲の店舗数と年商｜鳥取で愛される地元密着型喫茶店の実績
2025年11月時点で、すなば珈琲は鳥取県内に11店舗を展開しています。年商は3億円から4億円の間で推移しており、1店舗あたりの平均年商は約2,700万円から3,600万円という計算になります。
この数字は、「お金をかけない」低コスト経営の成果を如実に示しています。1店舗の出店費用が100万円から150万円程度であることを考えると、投資回収期間が極めて短く、利益率の高いビジネスモデルであることがわかります。
すなば珈琲の店舗は、鳥取駅前の商店街をはじめ、道の駅など地域の要所に展開されています。朝から外まで行列ができるほどの人気ぶりは、単なる話題性だけではなく、実際の商品やサービスの質が地元民に支持されている証拠です。
また、番組で紹介された「写真詐欺」と呼ばれるアイスコーヒーのサイズ感も、顧客満足度を高める工夫の一つです。メニューの写真では正確な大きさがわからないようにデザインし、実際に提供されると「デカッ！」と驚くような演出。これも「お金をかけずに顧客に喜んでもらう」という村上社長の戦略の表れです。
地元密着型喫茶店として成功している要因は、鳥取という地域特性を最大限に活かしている点にもあります。鳥取砂丘という観光資源、地元の大山どりや海鮮といった食材、そして県知事のダジャレから始まったストーリー性。これらすべてが、すなば珈琲のブランド価値を高めています。
全国チェーンにはない、その土地ならではの魅力。それこそが、地元喫茶店が生き残り、繁栄するための重要な要素なのです。
まとめ
「がっちりマンデー!!」で紹介されたすなば珈琲は、村上和良社長の「お金をかけない」という明確な経営戦略と、ピンチをチャンスに変えるアイデア勝負で、年商3億円超を達成した成功事例です。
平井伸治知事のダジャレから生まれた店名、サイフォンと居抜き物件による徹底したコスト削減、スタバ進出時の「黒船来襲キャンペーン」など、すべてに一貫した哲学が貫かれています。それは、「大手の真逆を行く」「お金をかけずにアイデアで勝負する」という姿勢です。
2代目の村上春希さんも父の経営哲学を理解し、現場の大変さを認めつつも結果を出していることを評価しています。この事業承継の成功も、すなば珈琲の未来を明るくする要素です。
地元密着型喫茶店の成功モデルとして、すなば珈琲から学べることは数多くあります。限られた資源でも、発想の転換とユーモアがあれば、大手チェーンと共存しながら独自の地位を築くことができる。そんな希望を与えてくれる、がっちりな喫茶店なのです。
※ 本記事は、2025年11月30日放送（TBS系）の人気番組「がっちりマンデー！！」を参照しています。
※ すなば珈琲（(有)SUNABA COMPANY ）公式サイトはこちら
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