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【クローズアップ現代】ホスピス型住宅の質は?「終のすみか」の選び方

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人生の最期をどこで過ごすか、考えたことはありますか?2025年12月2日放送のNHK「クローズアップ現代」で取り上げられた「ホスピス型住宅」は、今注目の終のすみかです。しかし急増する中で質のばらつきや課題も明らかになりました。この記事では、番組で専門家が語った実態と、安心して選ぶための備え方をわかりやすく解説します。自分らしい終末期を過ごすための選択肢として、正しい知識を身につけましょう。


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ホスピス型住宅の質と課題:番組で明らかになった実態

2025年12月2日にNHKで放送されたクローズアップ現代では、急増するホスピス型住宅の実態が詳しく取り上げられました。番組では、ケアタウン小平クリニック名誉院長の山崎章郎医師と、日本社会事業大学教授の井上由起子氏がゲストとして登場し、専門家の視点から課題を指摘しています。

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ケアタウン小平クリニック名誉院長の山崎章郎医師                      (引用:「毎日新聞」より)

最も深刻な問題として浮き彫りになったのは、ホスピス型住宅におけるケアの質のばらつきです。番組で紹介されたアンケート調査では、訪問診療に関わった医師たちの評価が大きく分かれており、緩和ケアのスキルも急変時の対応も、施設によって対応力に大きな差があることが明らかになりました。

山崎医師は番組の中で「共通した基準がないため、ケアにばらつきがあり、中には名ばかりホスピスということがあるのではないか」と懸念を表明しています。本来、ホスピスとはWHOの緩和ケアの定義に基づいたケアを提供する療養場所を指しますが、ホスピス型住宅にはそうした統一された基準が存在していないのが現状です。

さらに深刻なのは、不適切な診療報酬請求の問題です。大手2社の事案では、数十秒から数分しか訪問していないのに約30分間訪問したとして診療報酬を請求する「短時間訪問」や、看護師一人での訪問なのに複数名で訪問したとして請求する「同行者不在訪問」が確認されています。

こうした課題が生まれる背景には、ホスピス型住宅特有の仕組みがあります。がんの末期や神経難病の患者は手厚いケアが必要とされるため、訪問看護事業所はより多くの訪問回数で診療報酬を請求することが認められています。さらに、訪問看護事業所とホスピス型住宅を同じ会社が運営しているケースも多く、不適切な請求で収益を上げることが可能な構造になっているのです。

山崎医師は「本来、訪問看護は地域の中に点在する患者宅を訪問するため移動時間がかかり訪問件数に制限がある。しかしホスピス型住宅では訪問回数が無制限に可能な仕組みになっており、制度を利用した形でのビジネスモデルになってしまっている」と指摘しています。


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ホスピス型住宅とは?急増する「終のすみか」の特徴

ホスピス型住宅は、病院でもなく自宅でもない、第三の選択肢として注目されている終のすみかです。番組によると、現在全国に600以上存在し、この10年で6倍に増加しています。

最大の特徴は、24時間対応の訪問看護と訪問介護を受けられることです。通常は街中に別々にある訪問看護事業所と訪問介護事業所が、ホスピス型住宅の中や同じ建物内に併設されており、個室がそれぞれ入居者の「自宅」として扱われています。このため、看護師や介護職がすぐに駆けつけることができ、24時間体制でのケアが実現できるのです。

費用面では、月額15~20万円程度が一般的で、これには家賃、食事代、医療費、介護費用などが含まれています。番組に登場した直腸がんで終末期を迎えた秋田正弘さんの場合、病院と比べると半額以下に抑えられたといいます。

個室を自宅としているため、家族は時間を気にせずいつでも会いに来ることができ、入居者はお酒を楽しむなど自由度の高い生活を送れます。秋田さんは番組で「3食、必ずアルコールがないとダメなんです」と笑顔で語り、ベッドで晩酌を楽しむ様子が紹介されました。

ホスピス型住宅が急増している背景には、国の政策も深く関係しています。医療費の増大を背景に、国が病院のベッド数を減らしてきた一方で、高齢化が進み亡くなる人は年々増加しています。病院では治療ができないと退院を促され、自宅で過ごしたいが家族の負担にはなりたくないという人々の受け皿として、ホスピス型住宅が注目されているのです。

番組では、末期の胃がんを患う父を見舞う工藤仁恵さんの事例も紹介されました。仁恵さんは、去年亡くなった母を自宅で10年近く介護した経験から、父のケアを自宅で続ける自信が持てず、ホスピス型住宅を選択しました。「心身ともにくたびれていたこともあり、自宅で介護しますとは言えなかった」という言葉には、介護を担う家族の切実な思いが込められています。


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課題①不適切な診療報酬請求問題の実態

ホスピス型住宅における最も深刻な課題の一つが、診療報酬の不適切請求問題です。番組では、大手2社の事案について第三者委員会が調査した報告書の内容が詳しく紹介されました。

具体的には、実際には数十秒から数分しか訪問していないのに、約30分間訪問したこととして診療報酬を請求する「短時間訪問」、そして同行者がおらず看護師一人での訪問であるにもかかわらず、複数名で訪問したこととして診療報酬を請求する「同行者不在訪問」という事案が確認されています。両企業ともこうした請求を行ったことを認めています。

なぜこのような不適切な請求が起きるのでしょうか。その背景には、ホスピス型住宅特有の制度の仕組みがあります。ホスピス型住宅が主に対象としているのは、がんの末期や神経難病の患者です。こうした特例の患者の場合、手厚いケアが必要とされるため、訪問看護事業所はより多く訪問する、つまりより多くの診療報酬を請求することが認められています。

さらに問題なのは、訪問看護事業所とホスピス型住宅を同じ会社が運営しているケースが多いことです。このため、事業者によっては不適切な訪問看護を行って収益を上げることが可能な構造になっているのです。

山崎医師は、この問題を「最大の課題」と位置づけ、次のように説明しています。「本来、訪問看護は地域の中に点在する患者宅を訪問するので移動時間がかかり、訪問件数には制限があります。そのために介護報酬の体系を改善してきました。しかしホスピス型住宅では、がん末期や神経難病など訪問回数が無制限に可能な仕組みになっているため、制度を利用した形での利益を上げるためのビジネスモデルになってしまっているのではないか」

この指摘は、ホスピス型住宅の構造的な問題を浮き彫りにしています。本来は患者のために作られた制度が、一部の事業者によって利益追求の手段として利用されてしまっている現実があるのです。


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課題②ケアの質のばらつきが生じる理由

ホスピス型住宅のもう一つの大きな課題が、ケアの質のばらつきです。番組で紹介されたアンケート調査では、ホスピス型住宅で訪問診療に関わったことのある医師を対象に、緩和ケアのスキルと急変時の対応について質問したところ、評価が大きく分かれる結果となりました。

このばらつきが生じる最大の理由は、ホスピス型住宅には共通した基準が存在しないことです。山崎医師によれば、例えば日本ホスピス緩和ケア協会では緩和ケアの基準を作り、その実践を会員に求めており、さらに質を上げるための研修の機会も設けて質の担保をしようとしています。しかし、ホスピス型住宅にはそうした統一された基準がないため、施設によってケアの内容に大きな差が生まれているのです。

山崎医師は「中には名ばかりホスピスということがあるのではないか」と懸念を表明しています。本来、ホスピスとはWHOの緩和ケアの定義に基づいたケアを提供する療養場所を指しますが、その名前だけを使って、実際には十分な緩和ケアを提供できていない施設が存在する可能性があるということです。

さらに、事業が急拡大する中で、現場で働く看護師の緩和ケアのスキルにもばらつきがあります。番組では、ホスピス型住宅に勤めて2年目の看護師、矢木花南さんが紹介されました。それまでいた病院では緩和ケアに携わった経験がなかったという矢木さんは、「痛みのコントロールだったりとか、自分のやってることって合ってるんだろうか」と不安を感じていました。

このように、急速な事業拡大に人材育成が追いついていない現状も、ケアの質のばらつきを生む一因となっているのです。


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ホスピス型住宅の質を高める事業者の取り組み

こうした課題に対して、事業者自らが質の向上に取り組む動きも始まっています。番組では、二つの具体的な取り組みが紹介されました。

一つ目は、ホスピス型住宅の事業者が開催する終末期のケアに関する研修会です。参加者の多くは、ホスピス型住宅で働き始めて間もない看護師たちで、緩和ケアのスキルを底上げすることが狙いです。運営会社の酒井幸子さんは「経験してきている数にもよるし、力量に差があることも否めない。ただそれが現場でよしとはできない」と語っています。

研修では、末期のがん患者を事例にしたグループディスカッションが行われ、講師は痛みの原因を決めつけることなく、時には精神的な痛みに向き合うことも大切だと伝えました。「私たちの思い込みでケアをやりがちになるけれども、やっぱり一個一個確認していく作業がとても大事」という講師の言葉は、緩和ケアの本質を示しています。

二つ目は、ホームホスピスと呼ばれる住まいの取り組みです。入居者を少人数に絞り、終末期の暮らしを支えるこの形態では、200項目の基準を全国48の事業者で共有しています。最後まで口から食べることを大切にすること、季節ごとの習わしや個人の習慣を取り入れて日々の生活に変化を持たせることなど、具体的な基準が定められています。

特筆すべきは、定期的に第三者から評価を受ける仕組みになっていることです。番組では、全国ホームホスピス協会の理事長・市原美穂さんと副理事長・松本京子さんが施設を訪問し、日々のケアが基準に達しているかチェックする様子が紹介されました。今回指摘されたのは「聞き書き」という項目で、入居者が発する言葉に耳を傾け、本人らしい生活を支えるために大切なことですが、実践されていませんでした。

指摘を受けた施設では早速スタッフでミーティングを開き、改善に取り組んでいました。代表理事の小林あす香さんは「その人の人生に寄り添えるかというケアだと思う。ほんま良かったわって言ってもらえるようなケアを目指していく」と語っています。

山崎医師は、これらの取り組みについて「教育研修は必要で、両方の取り組みとも非常に大切」と評価しつつ、ホスピス型住宅も「共通のケアの基準を作り、それを公表し、そのための基本的な研修を継続していくことによって、ケアの質が保たれる」と指摘しています。


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専門家が語る「終のすみか」選びの備え方

では、私たちはどのようにホスピス型住宅を選べばよいのでしょうか。番組では、井上由起子教授と山崎章郎医師が具体的なアドバイスを提供しています。

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日本社会事業大学の井上由起子教授                             (引用:「自治体議会政策学会」より)

井上教授は、終のすみかを選ぶことを「子どもの保育園を選ぶのと同じ」だと表現しています。複数の情報を集めて、いろいろ見学して決めていくというプロセスが大切だということです。

具体的な備え方として、井上教授は次の二つのポイントを挙げています。

まず、病院の医療ソーシャルワーカーや介護保険のケアマネージャーなどに、複数の住宅を紹介してもらうことです。一つの施設だけを見て決めるのではなく、複数を比較検討することが重要です。

次に、見学する際のチェックポイントです。井上教授は「そこが望むような暮らしができているのか、そういう場所なのかという視点で見るとよい」とアドバイスしています。具体的には、皆で過ごせるリビングがあるか、そこで食事を召し上がっている方がいるか、利用者やスタッフの表情や会話の様子などを確認することが大切です。

井上教授は「医療や看護については私たちプロではありませんから見ることできませんけれども、暮らしについては私たち全員がプロですから、自分の目を信じていい」と語っています。この言葉は、専門的な医療の知識がなくても、人間らしい暮らしができているかどうかは誰にでも判断できるということを示しています。

一方、山崎医師は、ご自身もがんを患っている立場から、終のすみかに求められるものについて語っています。「人間は突然死でない限り、必ず全ての人が人生の終末期には、例えば排泄など、誰かの力を借りなければならない場面が出てきます。これは人間の尊厳に関わることです。ですから、どんな時でも自分の尊厳は守られているんだというようなケアを受けられるようなところこそが、終のすみかになる」

この言葉は、ホスピス型住宅を選ぶ際の最も本質的な基準を示しています。設備や費用も大切ですが、最終的には「人間としての尊厳が守られるか」という視点が何より重要だということです。

また、国も対策に動き始めています。有料老人ホームのあり方について検討会を設け、2025年11月に議論を取りまとめました。事業開設時に登録制にするなど規制を導入することや、人員・施設・運営などに関する基準を設置することなどが提案されています。

検討会のメンバーでもある井上教授は「登録制を導入することで、事前に自治体が関与できるようになり、事業開始後も立ち入り検査ができるようになる。また有料老人ホームそのものに職員配置を求めていくところにも期待している」と評価しています。


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まとめ:自分らしく終末期を過ごすための選択

2025年12月2日放送のクローズアップ現代で取り上げられたホスピス型住宅は、病院でもなく自宅でもない新たな終のすみかとして注目されています。全国に600以上存在し、この10年で6倍に増加しており、月額15~20万円程度で24時間の看護・介護を受けられることが大きな魅力です。

しかし、急増する中で質のばらつきや不適切な診療報酬請求という課題も明らかになりました。共通の基準がないため、施設によってケアの内容に大きな差があり、中には「名ばかりホスピス」も存在する可能性があります。

こうした状況の中で、私たちにできることは何でしょうか。まず、事前の情報収集と複数施設の見学が不可欠です。井上由起子教授のアドバイスにあるように、利用者やスタッフの表情、会話の様子など、「暮らし」の質を自分の目で確かめることが大切です。

そして、山崎章郎医師が語った「人間としての尊厳が守られるか」という視点を忘れてはいけません。自分らしく終末期を過ごすためには、単に医療や介護を受けられるだけでなく、最後まで一人の人間として尊重されるケアを受けられることが何より重要です。

事業者による研修の充実や、国による規制強化の動きもあり、今後ホスピス型住宅の質は徐々に改善されていくことが期待されます。しかし、最終的に自分や家族の終のすみかを選ぶのは私たち自身です。しっかりと備え、納得のいく選択ができるよう、今から情報を集めておくことが大切です。

人生の最期をどこで過ごすかは、誰もが直面する問題です。お互いに支え合い、助け合える社会を目指しながら、一人ひとりが自分らしい終末期の過ごし方について考えていく必要があるでしょう。

※ 本記事は、2025年12月2日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

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