2025年12月25日放送の「カンブリア宮殿」では、創業50周年を迎えたローソンの竹増貞信社長が登場。KDDIとの資本業務提携で加速する「Real×Tech LAWSON」構想や、過疎地への出店戦略、そして地域コミュニティの再生を目指す「ハッピー・ローソンタウン」まで、コンビニの未来像が語られました。この記事では、番組内容を詳しく解説し、ローソンが描く新たな挑戦の全貌をお届けします。
ローソン竹増貞信社長が描く「新たなコンビニの形」とは
2025年、ローソンは1号店オープンから50周年という節目を迎えました。1975年6月14日、大阪府豊中市に誕生した「ローソン桜塚店」から始まった歴史は、半世紀にわたってマチの暮らしを支え続けてきたのです。
そんな記念すべき年に、ローソンは大きな変革を遂げています。2024年2月にKDDI、三菱商事との3社で資本業務提携契約を締結。その後、KDDIによるTOB(株式公開買い付け)を経て、三菱商事とKDDIが議決権を50%ずつ保有する共同経営体制へと移行しました。
竹増社長が推進するのは「Real×Tech LAWSON」という新たなコンセプトです。これは、リアル店舗の温かさとデジタル技術の利便性を融合させた「未来のコンビニ」を目指す取り組み。人手不足や食品ロスといった社会課題をテクノロジーで解決しながらも、その根底には「人の温かさ」があるというのが竹増社長のこだわりです。
業績面でも好調さが際立ちます。コンビニの実力を示す指標である日販(1日の売り上げ)は初めて60万円を突破し、伸び率はコンビニ業界でトップに。ファミリーマートを抜いて業界2位に躍り出るなど、着実に成果を上げています。
「業界を見ることは過去を見ること。お客様を見ることが未来を見ることなんです」
番組内で竹増社長はこう語りました。5年前の出演時から一貫して「セブン-イレブンの背中は追わない」と明言し、競合他社ではなく顧客と社会のニーズに向き合い続ける姿勢。それこそが、ローソン躍進の原動力といえるでしょう。
「盛りすぎチャレンジ」で来店客5%増!ローソンの攻めの戦略
番組冒頭で紹介されたのは、SNSで大きな話題を呼んでいる「盛りすぎチャレンジ」キャンペーンです。
プレミアムロールケーキのクリームが山盛りに増量され、重さは通常の50%増。カツカレーにはカツが2枚載り、焼きそばはほぼ3人前となる650g。それでいて価格は据え置きという、まさに「常識外れ」の企画です。
「これはないだろう」と竹増社長自身が思うほどの商品が、発売と同時に飛ぶように売れていきます。ある店舗では入荷からわずか1時間で完売するほどの人気ぶり。キャンペーン期間中は来店客が1日平均5%も増加するといいます。
物価高が続く中、「いろんなものが高くなってるのに50%も増やしてくれるの?」というお客様の声は、ローソンへの信頼と親しみを如実に表しています。
もちろん、これだけのサービスには相応のコストがかかります。しかし竹増社長は「お店全体でお買い物いただけるような工夫」を施すことで、キャンペーンを成立させていると語ります。話題性で集客し、ついで買いを促進する。SNS時代ならではのマーケティング戦略といえるでしょう。
また、コロナ禍を経てローソンの来店目的は大きく変化しました。以前は「お出かけのついでに立ち寄る」需要が中心でしたが、巣ごもり生活を経験したお客様から「冷凍食品がない」「新鮮な野菜がない」といった声が多数寄せられたそうです。これに応える形で品揃えを拡充し、日常生活に欠かせない店舗へと進化を遂げてきました。
AI活用で発注・値引きが革命|コンビニ運営の未来
ローソンのテック戦略を象徴するのが、2025年6月にオープンした「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」です。KDDIが本社を構える高輪ゲートウェイシティ内に設けられたこの店舗は、「Real×Tech LAWSON」の1号店として数々の最新技術が導入されています。
店内には至る所にモニターが設置され、近未来的な雰囲気が漂います。ローソン仕様のロボットが店内を移動しながら清掃を行い、レジではアバター店員が遠隔で接客。バックヤードでは「AI品出しロボット」が活躍し、曜日や時間ごとの販売実績を分析して、最適なタイミングで飲み物を補充しています。
「朝はこの2リットルの水がよく売れる」「この時間帯はお茶はあまり売れない」といった判断をAIが自動で行い、効率的な品出しを実現。店長も「私より全然頭がいい」と太鼓判を押すほどです。
特筆すべきは、デジタルサイネージによる「合わせ買い」の提案機能です。天井や商品棚に設置されたカメラがお客様の動きを認識し、おにぎりを手に取れば「味噌汁はいかがですか」、野菜が足りなければ「スムージーは?」とサイネージが提案。この仕組みにより、1人当たりの購入点数が他店より多くなっているといいます。
一方、全国の店舗では「AI.CO(アイコ)」と呼ばれるAIシステムが発注・値引きを担当しています。在庫状況や販売実績、天候など100以上の要因を分析し、発注数量や値引き商品・値引き額を自動で算出。千葉県で12店舗を経営するオーナーの宮内さんは「発注の負担が減って、他の仕事にも時間を使えるようになった」と、その効果を実感しています。
廃棄ロスの削減にもつながるこのシステムは、まさに「革命的」。オーナーたちがハワイ旅行中でも安心して店舗を任せられるのは、こうしたテクノロジーの恩恵といえるでしょう。
稚内・龍神村への出店|ローソンの地域コミュニティ戦略
大手コンビニ3社で唯一、北海道稚内に出店しているのがローソンです。旭川の物流拠点から250キロ離れた地でありながら、2023年に初出店を果たし、現在は7店舗まで拡大しています。
なぜ大手が敬遠する過疎地に挑むのか。その背景には、2023年に全国展開した「エリアカンパニー制」があります。従来は本部が一括で出店を判断していましたが、この制度により各エリアに権限を委譲。「稚内のことをよく分かっている現場」がスピーディーに判断できる体制へと移行したのです。
稚内店舗では、冬の暴風雪で物流が止まることへの対策も万全です。通常1台の冷凍ストッカーを2台設置し、店内調理の「まちかど厨房」では炊飯器を2台稼働。物流がストップしても温かい食事を提供できる体制を整えています。
その結果、稚内のローソンは売り上げ好調。客単価は全国平均より300円も高いといいます。無印良品コーナーの充実や、24時間使えるATM、PayPayへのチャージ機能など、大手コンビニならではのサービスが地域住民に刺さっているのです。
さらに印象的なのが、和歌山県田辺市龍神村への出店です。人口わずか約2500人の過疎の村に、スーパーの跡地を活用してローソンがオープン。通常のコンビニ商品に加え、全国から取り寄せた鮮魚や精肉、地元農家が毎日届ける新鮮野菜まで揃う、まさに「スーパー顔負け」の品揃えです。
この店舗の名物が、小上がり式のイートインスペース。居酒屋のような雰囲気の中、地元住民が集い、明日のクリスマス会の打ち合わせをしたり、子育ての相談をしたり。「103歳まで生きるわよ」と笑顔で語り合う高齢者の姿は、まさにかつてのコミュニティの復活といえるでしょう。
「本当の地域社会になると、会話の場がローソンしかない」と竹増社長は語ります。そんな地域では精肉も鮮魚も、カット野菜だけでなく丸ごとの野菜も必要。地元の方々が「うちの野菜を使ってよ」と協力してくれる、助け合いの中でローソンは運営されているのです。
ハッピー・ローソンタウン構想|マチを丸ごと再生する挑戦
番組終盤で明かされたのが、ローソンによる壮大なマチづくりプロジェクト「ハッピー・ローソンタウン」構想です。
舞台は大阪府池田市の伏尾台地区。1970年代に開発されたニュータウンですが、現在は高齢化率が4割を超える「オールドニュータウン」となっています。ここにローソンを中心としたコミュニティを作り、マチ全体を活性化させようという計画です。
興味深いことに、竹増社長自身が大阪府池田市の出身。地元への思い入れもあってか、このプロジェクトに並々ならぬ情熱を注いでいます。
構想の内容は多岐にわたります。ローソン店舗にカフェスペースを併設して交流の場とするほか、野菜を育てる農地の設置、ドローンによる商品配送、さらには医療モールやケアセンターとの連携まで視野に入れています。パートナーの無印良品による団地のリノベーション、ローソン自身が運営する保育園「ハッピーローソン」の設置も検討中とのこと。
すでに愛媛県今治市のローソンでは「Pontaよろず相談所」がスタート。健康相談、保険契約、行政手続きなど、生活の中の悩み事をオンラインで専門家に相談できるサービスです。介護問題に直面した竹増社長自身の経験から生まれたこのサービスは、まさに「コンビニが生活インフラになる」という理念を体現しています。
2025年12月には、ローソン・池田市・KDDIの3者が正式に連携することが発表されました。池田市の瀧澤智子市長も「歩いてフラッと気軽に行ける場所ができれば、地域の皆さんのコミュニケーションが深まる」と期待を寄せています。
テクノロジーを活用しながらも、昔ながらのコミュニティの温かさを取り戻す。「テクノロジーがぐるぐる巻きにして、より便利だからみんなが集まって温かくなる」という竹増社長の言葉には、デジタルと人間味の融合を目指すローソンの哲学が凝縮されています。
まとめ|ローソンが目指すコンビニの未来像
2025年12月25日放送の「カンブリア宮殿」では、創業50周年を迎えたローソンの竹増貞信社長が、コンビニの未来について熱く語りました。
KDDIとの資本業務提携で実現した「Real×Tech LAWSON」、話題沸騰の「盛りすぎチャレンジ」、AI活用による発注・値引きの革命、過疎地への積極出店とエリアカンパニー制、そしてマチを丸ごと再生する「ハッピー・ローソンタウン」構想。いずれも「業界ではなくお客様を見る」という竹増社長の経営哲学に基づいた挑戦です。
番組の最後、竹増社長はこう語りました。
「お客様の価値観や社会の価値観は変わり続けている。それに臆することなくチャレンジし続けること。失敗も成功も考えずに、実行した結果から学んで次につなげていく。それが人としても企業としても成長することにつながる」
コンビニが単なる「便利な店」から「地域の生活インフラ」へ、そして「コミュニティの核」へと進化していく。その最前線に立つローソンの今後から、ますます目が離せません。
※ 本記事は、2025年12月25日放送(テレビ東京系)の人気番組「カンブリア宮殿」を参照しています。
※ ローソンの公式サイトはこちら


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