2026年1月22日放送のカンブリア宮殿に、外食業界の”異端児”と呼ばれるバルニバービ会長・佐藤裕久氏が登場しました。人通りの少ない場所にあえて出店する「バッドロケーション戦略」で繁盛店を次々と生み出し、今や大手デベロッパーから出店依頼が殺到しています。この記事では、佐藤会長の経歴や常識破りの出店戦略、そして食から始まる地方創再生の取り組みまで、番組内容を詳しくお伝えします。
バルニバービのバッドロケーション戦略とは?繁盛店を生む逆転の発想
バルニバービが実践する「バッドロケーション戦略」とは、飲食店には不向きとされる人通りの少ない場所にあえて出店し、その土地ならではの魅力を最大限に生かして繁盛店を作り上げる手法です。
一般的に飲食店の出店といえば、駅前や繁華街など人の流れが多い場所が定石とされています。しかし佐藤会長は、この常識に真っ向から挑んできました。
番組で紹介された東京・文京区の店舗は、駅から徒歩10分という住宅街の中にあります。もともと印刷工場だった建物を改装したこの店は、昼時になると大行列ができるほどの人気ぶり。天井が高く開放的な空間で、都心の喧騒を忘れられる雰囲気が多くの客を惹きつけています。
また、足立区・北千住にある2店舗も同様です。駅から徒歩10分、バスも通らない立地にもかかわらず、週末は多くの客で賑わっています。もともと古いそば店とガレージだった場所を改装し、直火焙煎のコーヒーが楽しめるカフェとイタリアンレストランに生まれ変わらせました。
佐藤会長がこの戦略を重視する理由は明確です。「人通りが少なくても、わざわざ来てもらえるお客さんがいれば商売は成り立つ。しかも家賃が半額以下になるので、同じ予算で倍の面積を借りられる」と語っています。
つまり、バッドロケーションだからこそ、ゆったりとした空間設計が可能になり、それが逆に店の魅力となって集客につながるという逆転の発想なのです。私個人としては、この「弱みを強みに変える」思考法は、飲食業に限らずあらゆるビジネスに応用できる普遍的な知恵だと感じました。
佐藤裕久会長の経歴|阪神大震災が飲食業への転機に
バルニバービ会長・佐藤裕久氏は1961年、京都市西陣の和菓子店に生まれました。祖母がレストランのシェフ経験者で、幼い頃から料理を教わり、小学3〜4年生の頃にはハンバーグを作れるほどだったそうです。料理を作ると家族が喜んでくれた原体験が、後の人生に大きな影響を与えることになります。
最初の起業は24歳のとき。アパレル会社を立ち上げ、フランスのブランドと独占販売契約を結びました。初年度から2億円を売り上げるなど順調なスタートを切りましたが、3年後にそのフランスの会社が倒産。佐藤氏の事業も行き詰まり、多額の借金を背負うことになります。
「お金持ちになりたいという目標でやっていたが、そういうものは行き詰まる」と当時を振り返る佐藤会長。寝る間を惜しんで働き、5年かけて借金を完済しました。
人生の転機となったのは1995年1月の阪神淡路大震災です。大学時代を過ごした神戸が被災し、佐藤氏は炊き出しのボランティアに参加しました。塩とごま油だけで味付けした質素なお粥を配ると、被災者たちは「ありがとう、おいしい」と涙を流して喜んでくれたそうです。
「食べ物ってこんなに人を勇気づけられるんだ。人を幸せにして、それを見ている自分も幸せになる。これが人生の目標だと気づいた」
この経験が、佐藤氏を飲食業へと導きました。同年12月、大阪・南船場に1号店「アマーク・ド・パラディ」をオープン。当時の南船場は人通りの少ない問屋街でしたが、材木店のショールームだった天井の高い物件に可能性を感じ、自らペンキを塗って店を作り上げました。
この1号店は今も営業を続けており、約30年経った現在も多くのお客さんで賑わっています。「短期のトレンドに左右されない店づくりができている」という佐藤会長の自信は、この実績に裏打ちされているのです。
外食「異端児」バルニバービの常識破り出店戦略3つ
番組では、バルニバービの「常識破りの戦略」として3つのポイントが紹介されました。
1つ目は「バッドロケーションにあえて出店」
前述の通り、人通りの少ない場所を逆手に取り、その土地ならではの魅力を生かした店づくりを行います。印刷工場跡、古いそば店、ガレージなど、飲食店として使われてこなかった物件を改装し、唯一無二の空間を作り上げるのが特徴です。
2つ目は「同じ店名でもまるで違う」
バルニバービでは、チェーン店のようなメニューやレシピの統一がありません。都内で7店舗を展開する「グッドモーニングカフェ」も、店ごとにシェフが独自のメニューを開発しています。
番組では、中野セントラルパーク店のシェフが新メニューを試作する様子が紹介されました。大分産のブランドブリを藁焼きにし、富山県産の魚醤でソースを作るなど、シェフの出身地や得意分野を生かした料理が生まれています。「料理に対する評価は自分たちで負わなければいけない」という責任感が、各店舗の個性につながっているのです。
3つ目は「極上食材との新たな出会い」
グループの総料理長・大筆秀樹氏が全国を飛び回り、まだ使っていない極上食材を探しています。番組では徳島県を訪れ、メス牛だけを育てる「阿波牛」の牧場や、アワビのような食感を持つブランドシイタケ「天恵菇(てんけいこ)」の生産者を視察する様子が放送されました。
大筆総料理長が重視するのは「コストパフォーマンス」。こだわって生産されている食材を適正価格で仕入れ、お客さんにおいしいものを手頃な価格で届けることを目指しています。
この3つの戦略に共通するのは、「今の流行を追いかけない」という姿勢です。佐藤会長は「自分が行きたいか、居心地がいいか、どんな時間を過ごしてもらえるか。それを30年間ずっと取り組んできた」と語っています。
大手デベロッパーから出店依頼が殺到する理由
現在、バルニバービには野村不動産や三井不動産といった大手デベロッパーから出店依頼が殺到しています。「毎日のように依頼が来て、月間で何十件にもなる」と佐藤会長は語ります。
番組で紹介された店舗の一つが、野村不動産が運営する日の出ふ頭「Hi-NODE」内のレストラン。浜松町駅から距離があり、アクセスが良いとは言えない立地ですが、海が望める絶景ロケーションを生かしたテラス席が人気を集めています。
野村不動産の担当者は「環境の良さで選んでいただけて、居心地のいいレストランとおいしい食事を出せる事業者は、そうたくさんいない」とバルニバービを評価していました。
また、三井不動産が開発に関わった渋谷の「MIYASHITA PARK」にも出店。天井が高く開放的な空間で、薪を使った直火焼きのA5ランク和牛が楽しめる店として、平日でもほぼ満席の盛況ぶりです。
なぜこれほど引っ張りだこなのか。佐藤会長は「デベロッパーは今ブームの店も欲しいが、変わらない店も欲しい。1号店は30年経っても変わらず営業している。トレンドではないかもしれないが、ビル全体の構成からすると貴重な存在」と分析しています。
現在、バルニバービは全国に104の施設を展開し、売上高は143億円(2025年7月期)、社員数は約700名に成長しました。店舗運営を担う子会社は9社あり、「経営者のように頑張れ」ではなく「経営者として頑張れ」という方針のもと、意欲ある社員が独立して会社を率いる仕組みを整えています。
食から始まる「地方創再生」への挑戦|淡路島・伊予市の取り組み
佐藤会長が現在力を入れているのが「食から始まる地方創再生」プロジェクトです。「地方創生」ではなく「地方創再生」としているのには理由があります。
「地方創生というと、その土地の歴史や文化を否定しているように聞こえる。それぞれの地方には継承されてきたものがある。それを再生させるという意味で『創再生』と呼んでいる」と佐藤会長は説明します。
実際、淡路島ではコロナ禍で途絶えた地元の祭りを復活させるため、傷んでいた神輿の修理代をバルニバービが負担し、祭りを再開させたエピソードが紹介されました。
兵庫県淡路島の西海岸では、もともと地元の人も訪れない野原だった場所を開発し、飲食店や宿泊施設を展開。今では年間38万人が訪れる人気の観光スポットに成長しています。他にも島根県出雲市や兵庫県南あわじ市で開発を進めてきました。
次なるターゲットは愛媛県伊予市。市の中心部から車で30分ほどの海岸沿いの崖の上に、瀬戸内海を望むレストランや宿泊施設、さらには住宅まで作る計画です。
「何も人工の光がなかったら、どれだけ星がきれいに見えるか。空気がきれいで、食べ物がおいしい場所で人が暮らせたら幸せ」と佐藤会長は語ります。単なる観光拠点ではなく、人が住みたくなる街づくりを目指しているのです。
私はこの取り組みに、バッドロケーション戦略の究極形を見た気がします。「何もない場所」を「行きたくなる場所」に変え、さらに「住みたくなる場所」へと昇華させる。30年前に南船場で始まった挑戦が、今や地方の未来を変えるプロジェクトへと発展しているのです。
まとめ
2026年1月22日放送のカンブリア宮殿では、バルニバービ会長・佐藤裕久氏の「バッドロケーション戦略」と、その原点にある哲学が紹介されました。
ポイントを整理すると以下の通りです。
- バッドロケーション戦略:人通りの少ない場所にあえて出店し、低コストで広い空間を確保。その土地の魅力を生かした唯一無二の店を作る
- 佐藤会長の経歴:アパレル事業の失敗を経て、阪神大震災の炊き出し経験から飲食業へ。1995年に1号店をオープンし、約30年間営業継続中
- 3つの常識破り戦略:バッドロケーション出店、店ごとの独自メニュー開発、全国の極上食材発掘
- 地方創再生:淡路島、出雲市、伊予市などで、食を軸にした地域活性化に取り組む
「自分が行きたい店を作る」「お客さんが喜ぶ姿を見て、自分も幸せになる」という佐藤会長の信念は、30年間ブレることなく貫かれてきました。流行を追いかけず、本質的な価値を追求する姿勢こそが、大手デベロッパーからも支持される理由なのでしょう。
社名の「バルニバービ」は、ガリバー旅行記に登場する国の名前に由来しています。常識にとらわれない発想で新しい世界を切り拓く、まさにその名にふさわしい企業だと感じました。
※ 本記事は、2026年1月22日放送(テレビ東京系)の人気番組「カンブリア宮殿」を参照しています。
※ 株式会社バルニバービの公式サイトはこちら





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