2024年の日本経済再生にかける期待感が高まっています。しかし一方で、物価上昇に賃金が追いつかず実質所得が下がる「リーマンショック以来の深刻な実質賃金下落」「企業・消費者は物価上昇の恩恵を被り負担も」という報道もあり、国民生活への影響が懸念される状況です。
本記事では、「値上げ」「賃上げ」「利上げ」の行方を展望しつつ、実質賃金回復への道筋を考察します。エネルギーや食料品の値上げ鈍化、大企業中心の賃上げ、金融緩和縮小に伴う円高利上げ――。この「三上げ」次第で2024年日本経済の行方が左右されます。
参照動画:「値上げ、賃上げ、利上げ」の行方は? 2024年 日本経済浮揚のカギを探る【Bizスクエア】
2024年の日本経済は浮揚へ向かうのか
2024年の幕開け、日経平均株価は一時700円以上も下落し不安感が広がった。しかし、その後はバブル崩壊後の最高値を更新し3万5000円を超えるなど、日本経済の浮揚への兆しが見え始めている。
値上げの行方―エネルギー価格下落で一服感もサービス料金は高止まり
2024年の値上げについて、食料品は多少鈍化するものの、サービス料金の上昇基調が続く見通しだ。12月の東京23区では、エネルギーと生鮮食品を除くコアコア指数が前年比3.5%と高止まり。エネルギー価格の下落で全体の上昇ペースは落ち着いてきたものの、サービス料金は逆に上昇率2%と高騰が続いている。
為替次第だが、ドル円レートが現在の145円台から128円まで円高が進むと、10%以上の物価上昇圧力がかかる計算だ。輸入原料費の上昇を価格転嫁できなければ、デフレ脱却は遠のくことになる。
賃上げの行方―大企業主導で3%超も中小は追いつかず
2024年の春闘では、大企業を中心に前年比3%を超えるベースアップが期待される。ただし、全体の7割を占める中小企業の動向が懸念材料だ。連合に加盟する中小企業でも3%到達が難しく、非加盟の中小企業ではさらに厳しい状況が予想され、人手不足などを理由に賃上げに後ろ向きな動きも出始めている。
物価上昇率3%前後が定着している中、実質賃金をプラスに転換するには4%を超える賃上げが必要との指摘もある。中小企業への配慮から政府による全面型の賃上げ要請は現実的に難しく、大企業と中小企業の二極化が避けられない状況だ。
利上げの行方―4月にマイナス金利解除へ 円高でデフレ脱却に期待
日銀が2024年4月にもマイナス金利の解除に踏み切る可能性が高まってきた。政府・日銀がデフレ脱却を最優先課題と位置づける中、物価上昇率2%につけこむべく金融緩和策の正常化に向けたプロセスが始まろうとしている。
マイナス金利解除によって円高基調が強まれば、エネルギーや食料品などの輸入物価上昇圧力が弱まる効果が期待できる。実質賃金のプラス転換を後押しし、内需主導の経済成長も視野に入ってくるかもしれない。日銀の政策転換次第ではあるが、日本経済再生への期待感が高まってきた。
まとめ―高循環実現には「三上げ」が全てプラス必要
2024年の日本経済再生に向け、「値上げ」「賃上げ」「利上げ」のいずれもプラスの動きが不可欠だ。エネルギーや食料品の値上げ鈍化、大企業中心の賃上げ、金融緩和縮小に伴う円高利上げ――。この「三上げ」が外生的ショックを乗り切ることができれば、持続的な経済成長も夢ではない。一方で、中小企業の賃上げ抑制や円安基調の定着などが起きれば、デフレ脱却は先送りされかねない。2024年の行方は、まさにこの「三上げ」の行方次第といえるのかもしれない。
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