身の回りにあるスマートフォンやオフィスビルの消火設備。私たちの生活に欠かせないこれらの製品には、思いもよらない元素「ビスマス(Bi)」という金属が活躍しています。「がっちりマンデー」(2024年2月18日放送(TBS系))で儲かる元素として紹介された「ビスマス(Bi)」は、低い温度で溶ける特性を生かして電子部品を壊さずに接合したり、火事を感知して放水を開始したりと、ビスマスなくしては存在し得ない機能が数多くあるのです。
「ビスマスって何?」という疑問にこたえつつ、その意外な用途と活躍ぶりを知れば、改めて近年注目されるこの素材の可能性が見えてきます。ぜひこの記事をお読みいただき、ビスマスへの関心と理解を深めていただければ幸いです。
スマホ内部に欠かせないビスマス
2024年現在、世界的なスマートフォンメーカー各社の製品には、ビスマスが欠かせない存在となっている。スマートフォンの基板上には、熱に弱い微細な電子部品が数多く実装されているが、それらを壊さない低温はんだにビスマスは不可欠な材料として含まれているのだ。
大阪の石川金属株式会社で製造しているビスマス入りはんだは、業界内でも特に品質が高く評価されていることから、「某リンゴマークの会社」をはじめとする世界的IT企業のスマートフォン製造に幅広く採用されているそうだ。同社によれば、スマートフォンの電子部品は熱に非常に弱いため、低温で溶解するビスマスの性質が欠かせないのだという。
溶けやすいビスマスで電子部品を壊さないはんだ
一般的に使われている銅や鉄といった金属は、その融点が1000度以上と高温である一方、ビスマスは金属の溶ける温度を下げる性質があります。このビスマスの特性を利用し、大阪の石川金属株式会社では90年近くにわたって、電子機器のはんだ付けに使用する低温溶解型のはんだを製造している。
同社が開発したビスマス入りはんだを使用することで、はんだ付け時の温度を下げておくことが可能となり、熱に弱い電子部品を壊すリスクを軽減できる。実際に、ビスマス入りと非入りのスプーンを湯船に入れて比較したところ、前者だけがたちまち崩壊を始める様子が確認されている。
この高機能はんだづくりで、同社の年商は現在17億円に登りつめている。
ビスマス入りはんだが消火栓を作動させる
和歌山県にあるアイエススプリンクラー株式会社は、建物内に設置する消火栓の開発メーカーである。この消火栓にもビスマスは欠かすことができない。
同社が開発した消火栓の中で、流れてくる水を止めているストッパーの部分に、72度で溶解する特殊ビスマス入りはんだが使われている。これが火事の熱で溶け出すと、ストッパーが外れて放水が始まる仕組みとなっているのだ。このビスマス入りはんだ部分が瞬時に溶け出し、放水を開始させる様子をスローモーションで見ることができた。
火災時に電気系統が損傷した場合でも、確実にビスマスによって放水を始動できるこの消火栓は、高層ビルをはじめ大規模施設には欠かせない存在として、多数設置されている。
まとめ
元素記号Biで表されるビスマスは、一見すると地味な金属元素だが、その特性を活かして私たちの生活にさまざまな形で活用されていることがわかった。スマートフォンへの実装はもちろん、建物内の消火栓から飛び出す水を作動させる上でも、ビスマスの力は大きい。 低い温度で融解する電子部品を壊さずに接合できるはんだから、火事の熱で確実に溶け出すはんだまで、ビスマスの可能性と活躍の場は広がり続けている。
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