PTAは子供の健やかな成長を願って生まれた素晴らしい組織ですが、義務化による保護者への負担増加など、課題も顕在化してきました。そんな中、兵庫県の岡野小学校PTOでは、強制を排除し、保護者の自発性を尊重した活動が行われています。PTAは時代とともに進化し、PTOのような新しい形が望ましいのかもしれません。PTAの本来の理念に立ち返りつつ、現代の家庭環境に合わせた改革の手本となる取り組みをご紹介します。
PTAの歴史と現状課題
PTAは、戦後の教育改革の一環として1948年に発足しました。戦前は「PTA」の前身となる「家庭学校協会」が存在していましたが、戦時中は一時的に活動が停止していました。戦後、アメリカの影響を受けて、教育の民主化を図るために「PTAの設立」が提唱されたのです。
当初は、保護者と教師が協力して、子どもたちの良い環境づくりを目指す、任意の団体として発足しました。しかし、徐々に多くの学校で、PTAへの加入が義務化されるようになってきました。その結果、保護者にとって大きな負担となっているのが現状です。
特に2024年現在では、共働き世帯の増加など、家庭環境の多様化が進んでいます。保護者の生活スタイルの変化に合わせて、PTAの在り方も見直す必要があるのではないでしょうか。
PTAの義務化で保護者の負担が大きくなった実態
2024年4月17日に関西テレビの「newsランナー」で報じられたように、多くの学校のPTAでは、入学時に自動的に加入させられる”強制入会”が常態化しています。
「入学のとき、準備書類の中にPTAの封書が入っているので、自動加入だったんで、意思を確認することもないまま始まりました」と、ある保護者(Aさん)は話します。
さらに、PTAの役員を引き受けることも、強制的に求められることが多いようです。役員になることを引き受けない場合、「PTAを抜けたら地獄」といった圧力がかかるそうです。
実際、Aさんは指名委員から役員を引き受けるよう、強引に勧誘されました。その際、驚くべき”役員勧誘マニュアル”が存在することが明らかになりました。
このマニュアルには、初回訪問時に「PTAですって言われると断られたり出てもらえないからPTAですって手渡したい」と言って、玄関先に出てきてもらう方法や、2回目の訪問で複数人で行って「お願いできませんか?」と熱心に勧誘するなど、極めて強引な勧誘方法が記されていたのです。
こうした強制的な入会や役員勧誘の実態は、保護者の大きな負担となっています。共働き世帯の増加など、家庭環境の変化に合わせて、PTAの在り方を見直す必要性が高まっているのが現状です。
PTAの課題解決に向けた取り組み – 丹波篠山市岡野小学校PTOの活動理念
一方で、PTAの課題に取り組む学校もあります。兵庫県丹波篠山市の岡野小学校では、保護者有志が中心となって、PTA改革に取り組んでいます。その名も「PTOペアレントティーチャー応援団」です。
PTOでは、入会や役員就任の強制をなくし、完全な任意制を採用しています。入会には入会届への意思表示が必要で、それまでは100%だった入会率が73%まで下がっているそうです。
活動も、アプリでエントリーできる参加自由制を導入。参加者が集まらなければ、その企画は実施しないというスリム化を図っています。また、毎月の夜間会議も廃止するなど、物理的な負担も減らしています。
PTOの上本会長は「みんなができるときにできることをする活動を目指しています。強制とは無縁の、みんなが寄りやすい組織を目指しています」と話します。
校長の細見氏も「PTAが本当に必要なのかよくわかってきた。子どもや学校にとって必要なことだけに絞り込むことが大切」と、PTOの取り組みを評価しています。
PTO(PTA改革)が目指すべき方向性
このように、PTAの課題に取り組むPTOの活動理念は、3つの柱から成り立っています。
1つ目は、「入退会含め、完全任意」。PTAへの加入を強制せず、保護者の自由な意思を尊重することです。
2つ目は、「参加自由のエントリー制」。企画ごとに参加者を募り、参加者がいなければ実施しないというものです。
3つ目は、「無駄を排除しスリム化」。定期的な会議の削減など、保護者の負担を軽減する取り組みです。
PTAには、戦後の教育民主化の理念が込められていました。しかし、時代とともに変化する家庭環境に合わせて、PTAの在り方も見直す必要があります。
岡野小学校PTOの取り組みは、まさにその理想形と言えるでしょう。強制をなくし、保護者の自発性を尊重する。そして子どもたちのために必要なことだけに活動を集中させる。これこそが、令和時代のPTAの進化形なのかもしれません。
まとめ – PTAは時代とともに変わり、PTOが望ましい姿に
PTAは、戦後の教育民主化の過程で生まれた重要な組織です。しかし、時代の変化とともに、PTAの在り方も見直す必要が出てきました。
保護者の生活スタイルの多様化に合わせて、PTAは強制ではなく任意の組織となる必要があります。また、保護者の負担を軽減し、子どもたちのために必要な活動に集中できるよう、PTAの組織をスリム化していく必要があるのです。
そのような方向性を示しているのが、兵庫県丹波篠山市の岡野小学校で取り組まれているPTOです。PTOは、完全な任意制を採用し、保護者の自発性を尊重しながら、必要な活動に集中しています。
PTAは時代とともに変化し、PTOが望ましい姿となっていくのかもしれません。PTAという組織の本来の理念に立ち返りつつ、現代の家庭環境に合わせて進化していくことが重要だと言えるでしょう。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年4月17日放送の「PTA抜けたら地獄、役員勧誘マニュアルも、令和にあるべき形は?」を参照)
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