中高年期に訪れる「ミッドライフクライシス」。NHK「クローズアップ現代」(2024年9月17日放送)で取り上げられたこの問題に、多くの方が共感しているのではないでしょうか。小泉今日子さんや専門家の熊代亨医師の言葉から、この危機を乗り越えるヒントが見えてきます。就職氷河期世代特有の悩みにも触れながら、心を軽くする実践法や新たな挑戦の可能性を探ります。この記事を読めば、あなたの人生の転機をポジティブに捉えるきっかけが見つかるはずです。
ミッドライフクライシスとは?熊代亨医師が解説
ミッドライフクライシスは、中高年期に訪れる心の危機を指します。NHKの「クローズアップ現代」で取り上げられたこのテーマについて、精神科医の熊代亨氏が詳しく解説しています。
熊代氏によると、ミッドライフクライシスは40代後半から50代にかけて多くの人が経験する現象です。この時期、人生の折り返し地点に立ち、これまでの生き方や将来への不安を感じる人が増えるのです。
最新の調査では、日本の45〜59歳の「幸福度」が過去最低を記録しました。この年代の多くが、「自分の人生はこれでよかったのか」と悩みを深めているのです。
熊代氏は、ミッドライフクライシスのチェックリストを作成しています。8項目のうち4つ以上当てはまる場合、ミッドライフクライシスの可能性があるとされています。特に注意すべき項目は、「老いや体の変化をうまく受け入れられない」「これらの悩みについて話せる相手がいない」の2つです。
小泉今日子が語る40代後半の葛藤と向き合い方
人気俳優の小泉今日子さんも、40代後半でミッドライフクライシスを経験しました。小泉さんは、自身の体験を率直に語っています。
「40代の時は、子供を産むチャンスがもう限られているじゃんって思った時はすごい悲しくなって、なんか本当にこう子供を抱いた人とすれ違うのもちょっと”かすって痛い”みたいな感覚で感じてた時がありました」と小泉さんは振り返ります。
しかし、小泉さんはこの経験を前向きに捉えています。「でもそのなんか痛みとか、そういうのも、なんか今となっては自分に必要だったかなと思えるんですよね」と語り、危機を乗り越えることで新たな気づきが得られる可能性を示唆しています。
小泉さんは現在、同世代の悩みに直接応える活動を行っています。雑誌のウェブサイトでの人生相談や、ラジオ番組での企画など、さまざまな形で中高年世代の心の支えとなっています。
就職氷河期世代が直面するミッドライフクライシスの特徴
1993年から2004年頃に就職期を迎えた「就職氷河期世代」が、現在ミッドライフクライシスの時期に差し掛かっています。この世代特有の問題も浮き彫りになっています。
熊代氏は、「氷河期世代はやっぱりあの若い頃からいろいろ不遇でしたから、そうなると人間関係でも、そのキャリアとか、お金でもやっぱり不利な方って多いと思うんですよね」と指摘します。
番組には、「氷河期世代で未だ非正規雇用から抜け出せません」「氷河期真っ只中の自分としては、この世代がずっと受けてきた不遇を年齢のせい今だけのせいにされたくはない」といった声が寄せられました。
これらの声は、単なる個人の問題ではなく、社会的な要因が大きく影響していることを示しています。熊代氏は、「中年危機は一人の問題であると同時に、その世代の問題、時代の問題という部分もある」と述べ、個人と社会の両面からアプローチする必要性を強調しています。
phaが描く「中年の始まり」と共感を呼ぶ理由
作家のpha(ファ)さん(45)は、「パーティーが終わって中年が始まる」という本を出版し、大きな反響を呼んでいます。2024年6月の出版以来、すでに2万3千部以上を売り上げました。
phaさんは1978年生まれの就職氷河期世代です。かつてはニートを自称し、自由な生き方を発信してきましたが、40代後半になり、自らの選択に行き詰まりを感じる心情を吐露しています。
本の中でphaさんは、「自分は一人でも寂しくないとか、何にもこだわりや執着がないとか。無敵を気取って言っていた昔の自分が恥ずかしい」と率直に語っています。
この本がこれほど共感を呼んでいる理由は、多くの中高年が感じていても言葉にできなかった思いを代弁しているからです。読書会の参加者からは、「言葉にしたことがないですし、ちょっと誰にも話せたことではないので、phaさんが言葉にしてくれたことによって、あの救われた人は多いと思います」といった声が上がっています。
心を軽くする3つの実践法:専門家が教える乗り越え方
熊代亨医師は、ミッドライフクライシスを乗り越えるための3つの実践法を提案しています。
- 髪形や服装を変える:イメージチェンジは、気分転換になり、新たな自分を発見するきっかけになります。
- 適度な運動(15から30分):特に散歩がおすすめです。日光を浴び、四季折々の景色を楽しむことで、セロトニンやドーパミンといった脳内物質が活性化されます。
- 人と話す:同世代の人と交流することで、自分だけが年を取っているわけではないと実感できます。また、異世代との交流も新たな気づきをもたらします。
熊代氏は、「その自分だけで年を取るっていうだけじゃなくて、まあ、いろんな人と歳をとっていくということもありますし、その何か補助輪になるものをまあ、昔から使えるものでもいいし、これから作っていくものでもいいんですけれも見つけていく」と助言しています。
自分らしく年を重ねるための新たな挑戦:小泉今日子の取り組み
小泉今日子さんは、中高年世代が心を和らげるきっかけを作ろうと、さまざまな取り組みを行っています。その一つが、朝8時から渋谷で開催されたライブイベントです。
200人以上が参加したこのイベントで、小泉さんは「もう夜のクラブで遊ぶのは辛いけど、朝なら楽しめる」という中高年世代の気持ちに寄り添いました。参加者からは、「ああもう心地いいですよね、自然に」「いろんなものが衰えるじゃないですか。体力的なものとかがすごいいやだったけど、ああやっぱ楽しいわと思って」といった声が聞かれました。
また、小泉さんは現在、NHKのドラマで55歳の大学講師役を演じています。当初50歳だった設定を55歳に変更し、「自然に年を重ねた中高年の姿を伝えよう」としています。
小泉さんは、「役作りじゃなくて、本当に普通にそうなってるだけですよ、みたいな感じなんですけど、ナチュラルに年を重ねることに対してポジティブに生きているので、あのそのまま映ればいいなって」と語っています。
まとめ:ミッドライフクライシスを乗り越え、豊かな人生を送るために
ミッドライフクライシスは多くの人が経験する人生の転機です。しかし、この危機を乗り越えることで、新たな自分を発見し、より豊かな人生を送ることができます。
専門家の熊代亨医師、俳優の小泉今日子さん、作家のphaさんの言葉から、私たちは多くのヒントを得ることができます。自分の感情に正直に向き合い、同世代や異世代の人々と交流し、新しいことに挑戦する勇気を持つことが大切です。
また、社会全体でミッドライフクライシスを理解し、サポートする環境づくりも重要です。特に就職氷河期世代など、社会的要因による影響を受けた世代への配慮が必要です。
一人一人が自分らしく年を重ね、人生の新たなステージを前向きに歩んでいくことができるよう、私たちは互いに支え合い、学び合っていく必要があります。ミッドライフクライシスは終わりではなく、新たな始まりなのです。
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