年を重ねると誰もが気になる認知機能の低下。しかし、最新の研究で認知機能は改善できることが実証されました。NHK「クローズアップ現代」(2024年11月25日放送)で話題となった4つの対策と認知症予防の最新情報をお届けします。運動、食事、生活習慣の改善など、具体的な実践方法から、画期的な新薬「レカネマブ」の情報まで、第一線の専門家による最新知見をわかりやすく解説。あなたの認知機能改善をしっかりサポートします。
認知機能改善に効果的な4つの対策とは?最新研究で実証された予防法を解説
2024年、認知症への関心がますます高まっています。特に注目を集めているのが、神戸大学が今年9月に発表した画期的な研究結果です。この研究では、65歳から85歳の約200名を対象に、一年半にわたる包括的なプログラムを実施。その結果、4つの対策を組み合わせることで、認知機能が顕著に改善することが実証されました。
具体的な4つの対策とは、以下の通りです。
- 定期的な運動:週1回、50分間の筋力トレーニングと有酸素運動を実施
- 食生活の改善:10種類の食材分類から7種類以上を毎日摂取
- 脳を鍛えるゲーム:週4日以上実施
- 生活習慣の管理:歩数や睡眠時間の記録
特筆すべきは、このプログラムに参加した方々の認知機能の数値が、参加しなかった方々と比較して4割も高かったという点です。神戸大学大学院保健学研究科の古和久朋教授は、「複数の対策を組み合わせて長期的に取り組むことで、認知症の予防につながる」と指摘しています。
認知症予防の切り札!二重課題運動「コグニサイズ」の効果と実践方法
4つの対策の中でも、特に注目を集めているのが「コグニサイズ」と呼ばれる二重課題運動です。これは「認知(Cognitive)」と「運動(Exercise)」を組み合わせた造語で、日本の国立長寿医療研究センターが開発した独自の運動プログラムです。
コグニサイズの具体的な実践方法の1例をご紹介します。
基本的な運動例:
- 両足を揃えて立ち、右足を横に出して戻す
- 左足を横に出して戻す
- これらのステップを続けながら、3の倍数で拍手を入れる
このような運動を20分程度継続することで、脳と体に適度な刺激を与えることができます。京都大学大学院の木下彩栄教授によると、「コグニサイズには歩きながら計算をしたり、しりとりをしたりするバリエーションもあり、それぞれの方に合ったやり方で継続することが重要」とのことです。
実際の研究参加者からも、「頭が元気になっている」「記憶力の低下が止まっている」といった前向きな声が報告されています。
・その他詳しいコグニサイズはこちら
認知機能の低下を防ぐ!専門家が推奨する食事と生活習慣の改善ポイント
認知機能の維持・改善には、適切な食事管理が欠かせません。研究で実証された効果的な食事法は、10種類の食材分類から1日7種類以上を摂取するというものです。(7種類とは、「魚介類、「肉」、「卵」、「牛乳」、「大豆・大豆製品」、「野菜」、「海藻類」、「いも」、「果物」、「油脂」)
推奨される食材の具体的な摂取量の目安は
- 魚介類:手のひら1枚分
- 大豆・大豆製品:手のひら1枚分
- その他の食材も同様の感覚で計量可能
ただし、木下彩栄教授が指摘するように、「個々の栄養素単体での効果は限定的で、むしろ複数の食材をバランスよく組み合わせることが重要」です。例えば、研究参加者の中には納豆が苦手で黒豆に代替した方もいましたが、継続的な摂取を心がけることで効果を実感できています。
生活習慣の改善については、以下の点に特に注意を払う必要があります。
- 適切な睡眠時間の確保
- 日々の歩数の記録
- 規則正しい生活リズムの維持
認知症の新薬「レカネマブ」とは?治療効果と投与条件を徹底解説
2023年12月から保険適用となった新薬「レカネマブ」は、認知症治療に新たな光明をもたらしています。この薬剤の特徴は、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβ(ベータ)を脳内から除去する世界初の治療薬という点です。
投与条件と効果
- 対象:軽度認知障害またはアルツハイマー型の軽度認知症の患者
- 投与方法:2週間に1回の点滴
- 治療期間:1年半
- 自己負担額:約1万円~10万円
- 効果:認知機能の悪化を約5ヶ月遅らせる
東京大学大学院教授の岩坪威氏によると、2024年までに約5,000人の患者さんが治療を受けており、治療効果の検証が進んでいます。また、新たに「ドナネマブ」という同様の作用機序を持つ薬剤も承認され、治療選択肢が広がっています。
ただし、現時点での課題も存在します。
- 医療機関の受け入れ体制の限界(全国で約900カ所)
- 専門医の不足
- 点滴スペースや看護師の確保の問題
岩坪威教授と木下彩栄教授が語る!認知機能低下の早期発見と対処法
認知機能の低下は早期発見が重要です。木下彩栄教授は外来診療で以下の3つの質問を活用し、軽度認知障害の兆候を見分けています。
- 自身の年齢
- 最近気になったニュース
- 今日の日付
これらの質問に対して、以下のような反応が見られる場合は要注意です。
- 年齢を即答できず、生年月日を答えてしまう
- 「最近はテレビや新聞を見ないのでわからない」と回避する
- 日付を曖昧にごまかす
また、簡単なセルフチェック方法として、1分間で動物の名前をいくつ言えるかというテストがあります。11~12個以下の場合は、軽度認知障害の可能性があるとされています。
早期発見後の相談窓口については、以下の順序での受診が推奨されています。
- かかりつけ医や認知症サポート医への相談
- 必要に応じて物忘れ外来や認知症疾患医療センターでの精密検査
- 地域包括支援センターでの相談(医療機関の紹介を含む)
まとめ:認知機能改善と認知症予防の最新情報をチェックしよう
2024年現在、日本の認知症患者数は約450万人、軽度認知障害の方は約550万人と推計されており、まさに1000万人時代を迎えています。しかし、最新の研究成果や治療法の進展により、認知機能の改善や維持に向けた具体的な対策が示されています。
重要ポイントをまとめると、
- 4つの対策(運動・食事・脳トレ・生活管理)の組み合わせで認知機能改善が実証
- 日本発の「コグニサイズ」による二重課題運動の効果
- バランスの取れた食生活と生活習慣の重要性
- 新薬「レカネマブ」による治療選択肢の拡大
- 早期発見・早期対応の重要性
岩坪威教授が指摘するように、2023年に制定された認知症基本法のもと、誰もが希望と尊厳を持って生活できる共生社会の実現に向けた取り組みが進められています。認知機能の低下は誰にでも起こりうることですが、適切な予防と対策により、その進行を遅らせることが可能です。
気になる症状がある場合は、躊躇せず医療機関に相談することをお勧めします。最新の研究成果を活用し、一人一人に合った予防・改善策を見つけていくことが、認知機能の維持・向上への第一歩となります。
※本記事は、2024年11月25日放送のNHK番組「クローズアップ現代」を参照しています。
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