創業400年以上の歴史を持つ綿半ホールディングスが、独自の経営理念「合才の精神」で躍進を続けています。2025年1月9日放送(テレビ東京系)の、「カンブリア宮殿」で紹介された同社の経営戦略と成功の秘密に迫ります。
綿半・野原勇社長が実践する「合才の精神」とは
綿半ホールディングスの野原勇社長(58歳)が2015年の社長就任後に打ち出した経営理念が「合才の精神」です。「力を合わせ、分かち合い、響き合う」という理念のもと、それぞれの社員が持つ異なる才能を組み合わせて新しい価値を創造する取り組みです。
この理念は、400年以上前から使われている「合」という漢字をシンボルにしています。「人が一口に集まる」という意味を持つこの文字は、店内の様々な場所や社員の制服にも配されており、企業文化として深く根付いています。
400年企業・綿半が実現した驚異の経営改革
1598年、織田信長の家臣であった中谷勘右衛門が信州飯田で創業した綿半。本能寺の変後、身の危険を感じて飯田に逃れた勘右衛門は、伊勢で盛んだった綿花栽培を地域に広めました。その後、歴代当主が綿屋半三郎を名乗ったことが、現在の社名の由来となっています。
野原社長の就任後9年間で、グループ全体の売上は約1.5倍に拡大。特筆すべきは、建設部門が7割を占めていた売上構造を、小売部門主体(6割)に転換させた点です。この戦略的な転換により、景気変動に強い企業体質を実現しています。
合才の精神が生んだ異色のスーパーセンター戦略
綿半の代表的な成功事例が、ホームセンターと食品売り場を融合させた「スーパーセンター」です。この業態転換により、同じ店舗面積で売上が4倍になるという驚異的な成果を上げています。
スーパーセンターで見る合才経営の3つの成功事例
一流シェフが手掛ける惣菜売り場
コロナ禍で職を失った一流ホテルやレストランのシェフ8名を採用し、デパ地下品質の惣菜を提供。20年の経験を持つイタリアンシェフ成田圭宏氏らが手掛ける本格的な料理が、新たな客層の開拓に貢献しています。
観賞魚の技術を活かした鮮魚売り場
店内のペット売り場で培った観賞魚の飼育技術を応用し、鮮魚売り場に生け簀を設置。独自開発の冷却装置で海水温度を16-18度に保つことで、内陸部の長野でも新鮮な魚を提供することに成功しています。
貿易部門と連携したワールドマーケット
2024年にオープンした「ワールドマーケット」では、貿易部門の強みを活かし、テラピアやハラル食品など、珍しい海外商品を提供。地域住民の新たな食文化創造にも貢献しています。
未来を見据えた林業×住宅事業への挑戦
綿半の革新は住宅事業でも顕著に表れています。同社は高品質な木材の一戸建て住宅を、一般的な無垢材住宅より2割ほど安く提供することに成功。その秘密は、グループ企業による効率的な生産体制にあります。
工場では、屋根パネルや床材を大きなパーツとしてあらかじめ組み立てることで、現場での施工時間を大幅に短縮。通常2-3日かかる作業を半日で完了できる工法を確立し、人件費の削減と品質の安定化を実現しています。
さらに2024年からは林業にも本格参入。長野県内の山林を管理し、将来的には自社住宅に使用する木材を自社で育てる「川上から川下まで」の一気通貫体制の構築を目指しています。すでに植林も開始しており、地域の林業復活と持続可能な木材供給体制の確立に取り組んでいます。
住まいづくりにも活きる合才の精神
綿半の住宅の特徴は、無垢材をふんだんに使用した快適な住空間です。床や天井、梁にいたるまで無垢材を使用することで、優れた断熱効果を実現。実際に購入した顧客からは「冬でも暖かく快適」「木の中にいると落ち着く」といった声が寄せられています。
野原社長は「出口を持っていると皆さん話を聞いてくださる」と語ります。住宅という出口があることで、林業関係者との協力関係も築きやすくなり、新たな産業育成にもつながっているのです。
この林業・住宅事業の展開も、魚や野菜の直接仕入れで培ってきた「出口から産業を育てる」という綿半流の合才経営の成果といえるでしょう。
野原勇社長が語る、地域に必要とされ続ける経営哲学
「地域で必要とされなくなったら、我々の会社はいらない」という野原社長の言葉には、400年企業としての矜持が表れています。「家業を守る」という意識よりも、時代とともに変化する地域のニーズに応えることを重視する経営姿勢が、綿半の長期的な成功を支えているのです。
この考えは、建設部門と小売部門のバランス経営にも表れています。野原社長は「建設で稼いだお金は全部小売業につぎ込む」と語り、好況期には建設部門の利益を小売部門の成長に投資。一方、コロナ禍など厳しい時期には、安定した小売部門が建設部門を支えるという、部門間の相互補完を実現しています。
さらに、海外との取引で培った知見を国内店舗に還元するなど、常に新しい価値創造に挑戦し続けています。「皆さんが楽しんでやってくれている」と野原社長が語るように、部門の垣根を超えた自由な発想と議論が、絶え間ない進化を可能にしているのです。
このように、地域への貢献を軸としながらも、時代の変化に柔軟に対応し、新しい価値を創造し続ける。それこそが、400年企業・綿半の真髄といえるでしょう。
まとめ:400年企業の底力と合才経営が導く未来
綿半の成功の核心は、「合才の精神」という理念のもと、異なる才能を持つ人材や部門を有機的に結合させ、新しい価値を創造し続けている点にあります。時代の変化に柔軟に対応しながらも、地域への貢献を軸とした経営を貫く姿勢は、老舗企業の新しいモデルケースとして注目されています。
※本記事は、2025年1月9日放送(テレビ東京系)の「カンブリア宮殿」内容を参照しています。
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