【クローズアップ現代】ラーメン文化が危機！倒産急増と1000円の壁「伝統の味が消える」

日本の食文化を代表するラーメン。しかし、その文化が今、深刻な危機に直面しています。2024年のラーメン店の倒産件数は過去最多を更新し、各地で店舗の閉鎖が相次いでいます。国民食として、また観光資源としても重要な日本のラーメン文化の現状と課題について、詳しく見ていきましょう。

【目次】

なぜ今、ラーメン店の倒産が過去最多を更新しているのか

2024年、ラーメン業界を襲った倒産の波は、特に従業員5人未満の個人店に大きな影響を与えました。全体の約9割が個人経営の小規模店であり、その背景には複数の要因が重なっています。

最も大きな要因は、原材料費と光熱費の急激な高騰です。多くの店舗で経費が3割以上も増加し、経営を圧迫しています。フードジャーナリストの山路力也氏によれば、特にコロナ禍からの回復期に重なった原価高騰と人件費上昇は、店舗経営に「トリプルパンチ」となったといいます。

ラーメン店が直面している大きな課題の一つが「1000円の壁」です。調査によると、1000円を超えるラーメンを「高い」「やや高い」と感じる消費者は9割以上に上ります。この価格の壁は、戦後から続く「ラーメンは庶民の食べ物」というイメージに深く根ざしています。

東京都大井町で27年間営業していた「江戸一」の例は象徴的です。店主の荒木昌宏氏は、北海道産ブランド小麦を使用した手作り麺と時間をかけて煮込んだチャーシューにこだわり続けましたが、原材料費の高騰に直面しながらも、1000円以上への値上げをためらい、2025年初頭に閉店を決断しました。

現在、日本には180種類を超えるご当地ラーメンが存在しています。しかし、多くの地域で高齢化による担い手不足が深刻な問題となっています。

特に福島県喜多方市では、観光客の約7割がラーメン目当てで訪れる重要な観光資源となっているにもかかわらず、経営者の高齢化により店舗の休廃業が相次いでいます。

この危機に対し、各地域で独自の取り組みが始まっています。喜多方市では2024年4月に「喜多方ラーメン課」を設置し、地域おこし協力隊を活用した後継者育成を開始。元自動車メーカーのエンジニア、星智也氏（35歳）などが研修を受け、すでに4店舗のサポートを行っています。

栃木県佐野市では、「佐野ラーメン予備校」を設立し、地元店主たちが講師となって技術伝承を行っています。5年間で25人の卒業生を送り出し、9店舗の新規出店につながる成果を上げています。

山形市は3年連続でラーメンの年間消費量日本一を達成しています。この成功の背景には、行政と民間が一体となった取り組みがあります。市がポータルサイトを運営し、のぼりの作成支援を行うなど、積極的な振興策を展開。さらに、南陽市や酒田市など県全体でラーメン文化の発展を支援しています。

日本のラーメン文化を守るために、今私たちにできることは何でしょうか。フードジャーナリストの山路氏は、「価格帯の多様化を受け入れること」を提案しています。高級店から庶民的な店まで、寿司業界のように多様な価格帯が共存できる環境づくりが重要です。

また、落語家の林家木久扇氏は、「素ラーメン」という新しいコンセプトを提案。シンプルな具材構成で500円以下に抑えた商品開発など、新たな可能性も模索されています。

林家木久扇氏

伝統を守りながら革新を取り入れ、多様な形でラーメン文化を継承していく。それが今、私たちに求められているのではないでしょうか。

※本記事は、2025年2月10日放送（NHK）の「クローズアップ現代」の内容を参照しています。