スマホやモバイルバッテリー、ワイヤレスイヤホンなど私にとって身近な製品に存在しているリチウムイオン電池による火災事故が起きています。 2025年2月25日放送のNHK「クローズアップ現代」では、増加するリチウムイオン電池火災の背景や対策について特集が組まれました。
リチウムイオン電池の発火事故が10年で5倍に増加!池谷知彦氏が警鐘
リチウムイオン電池は小型で高性能という特徴から、多くの携帯機器に利用されています。 しかし便利な反面、リスクも存在します。
電力中央研究所特任役員の池谷知彦氏によると、市場に出ている製品の数と比較すれば事故の発生率は低いもので、一度事故が起きれば大きな被害につながる可能性があるため、メーカー側と利用者双方が気をつける必要があるとのことである。
実際の事例として番組では、大阪府に住んでいる田中さんの家族のケースが紹介されました。 インターネットで購入し2年ほど使っていましたモバイルバッテリーが充電中に突然発火しました。 家族が在宅中だった大事には至りませんでしたが、「寝ている時や外出時だったら火事になってるかも知れません」という恐怖を感じて話していました。
また、都内のホテルで宿泊客のスマートフォンが充電中に発火し、部屋の一部に被害が及び、修理費約37万円を救済することになったケースも紹介されました。
スマホやモバイルバッテリーが突然発火する原因とは?
番組によると、リチウムイオン電池は使用を続けて劣化し、内部に可燃性のガスが溜まる場合がある。
- 強いや衝撃があった場合: 瞬間強いや圧迫により内部の部品が破損した場合、短くして発火する可能性があります。
- 充電しすぎた場合:過充電により電池内部に負荷がかかり、発熱することがあります。
- 高温環境に置かれた場合: リチウムイオン電池は熱に弱く、暖房器具の近くや夏の屋外など高温環境に置かれると危険です。
- 劣化した電池を使用し続けた場合: 使用期間が長く劣化が進んだ電池は、膨張するなどの異常が見られることがあり、このような状態で使用を続けると発火リスクがあります。
東京消防庁も警戒を呼びかけており、電動アシスト自転車から突然火が出たケースや、携帯型の扇風機が無い人の事務所で充電中に発火し室内が大きく燃えた事例なども紹介されています。
リチウムイオン電池の正しい使い方 – 専門家・池谷知彦の注意点
池谷知彦氏は、リチウムイオン電池のリスクを軽減するための適切な使用方法として以下のポイントを挙げています。
- 衝撃を与えない:落としたりとかしたりすると内部の部品が壊れて発火する危険がございます。
- 高温環境を気に: 暖房器具の近くや夏の屋外など、高温になる場所での使用・保管は避けましょう。
- 就寝中や外出時の充電に注意: 事故の多くは充電中に起きているため、人がいない状況での充電は控えることが肝心です。
- 充電中をおすすめします: 池谷氏によると、充電しながら機器を使用すると、機器からの熱も発生するため温度が上がりやすくなります。
- 使用期間に注意する: 説明書や箱に記載されている使用回数を目安に買い替えを検討しましょう。 利用時間が短かったり、充電時間が長くなった場合、または電池が膨張らんできた場合は、買い替え時期のサインと考えてください。
- 古い製品は保管せずに適切に処分: 使わずに廃棄した古い製品を保管し続けると、自己放電や過放電を起こす危険が高まるため、早めに適切な方法で処分することが重要です。
番組で紹介された視聴者からの体験として、「スピーカーが充電中に突然煙を出してが融解した」「ワイヤレスイヤホンが充電中に焦げてぐにゃぐにゃになった」などの事例がありました。
なお、やパソコンについては、過充電に対する保護装置が十分にあるため、就寝中の充電なども比較的安全であるスマホという点も池谷氏は付け加えています。
モバイルバッテリーやワイヤレスイヤホンの安全な充電方法
モバイルやバッテリー、ワイヤレスイヤホンなどの充電式小型機器は、特に注意が必要です。これらの製品を安全に充電するためのポイントをまとめます。
- 純正の充電器を使用する: 製品に付属の充電器や、メーカー推奨の充電器を使用しましょう。安価な互換品は保護回路が万が一な場合があります。
- 就寝中や外出時の充電を気にする: 充電中のトラブルに即座に対応できるよう、目の届く範囲で充電することが理想的です。
- 長時間の充電を気に: 充電が完了しましたら、電源から外しましょう。
- 高温・多湿の場所での充電を控えてください: 長時間日光の当たる場所や暖房器具の近くなど、高温になる場所での充電は避けてください。
- 充電中は可燃物から離れる: いつかの発火に、紙や布などの可燃物から離れた場所で充電しましょう。
- 充電中の使用を控える:特にモバイルバッテリーは、充電しながら他の機器に給電する「パス充電」を長時間行うと発熱が進むため注意が必要です。
番組内では、実際に火事事故が起きた製品の多くが充電中だったことが報告されています。就寝中や外出中の充電は避け、充電完了後はすぐに電源から外すという習慣をつけることが重要です。
リチウムイオン電池が膨らんだ時の対処法
リチウムイオン電池が膨張している場合は、すでに危険な状態のサインです。池谷知彦氏は、膨張を発見したらすぐに使用を中止し、交換することを強く推奨しています。
膨張したリチウムイオン電池の対処法として、番組では以下のアドバイスが紹介されました。
- 使用を直ちに中止する: 当面熱を持っていなくても、膨張は内部の異常を示すサインです。
- 蓋のある鍋や空き缶に入れる: 発火した場合に火が周囲に広がるのを防ぐため、金属製の容器に入れて隔離します。
- 発火や煙が出た場合の対応:消火器があれば使用し、必要に応じて大量の水をかけ冷却します。
水素爆発の議論について質問された池谷氏は、リチウムイオン電池に水をかけても発生する水素の量はわずかであり、屋外などの開放空間であれば問題はないと答えています。
「熱暴走」と呼ばれる連鎖反応を止めるためには、とにかく熱がかかることが最優先事項です。
知らないと危険! リチウムイオン電池の正しい捨て方
リチウムイオン電池の廃棄方法は自治体によって異なります。番組では、適切な廃棄方法について以下のポイントが紹介されました。
- 自治体のルールを確認: お住まいの自治体のホームページや分別表で、リチウムイオン電池の廃棄方法を必ずご確認ください。
- 専用の回収ルート:有害ごみや電池類として、自治体が定めた方法で分別する必要があります。
- 回収していない自治体の場合: 国内の約4割の自治体ではリチウムイオン電池を回収しているのでないとのこと。 その場合は、家電注目店などに設置されている「リサイクル団体が設置した黄色い回収ボックス」を利用します。
- 電池の取り出し: 回収ボックスに入れる際は、可能であれば機器から電池だけを取り出してください。
注意点として、メーカーによっては回収できない製品がある場合や、膨張・破損した電池は回収ボックスで受け付けられない場合があります。そのような場合は自治体やメーカーに相談することが推奨されています。
番組では、膨張らんだモバイルバッテリーの回収先が決まらず、自治体、家電量販店、不要品回収業者のいずれにも断られたという視聴者の声も紹介されました。
安全なリチウムイオン電池製品の選択 – PSEマークの重要性
安全なリチウムイオン電池製品を選ぶためのポイントとして、番組では以下が紹介されました。
- 非純正品や意外に安い製品に注意: 事故の原因調査を行う専門機関NITEのデータによると、過去10年間に起きた事故のうち、製品自体に問題があった、あるいはその可能性があった事例は半数を超えています。 特に安価な製品では、保護回路などの安全機能が十分ない場合があります。
- リコール・事故情報を確認: 消費者庁が公開している情報を「リチウムイオン電池事故」などのキーワードで検索し、購入前に確認しましょう。
- PSEマークを確認: PSEマークは法律で決められた安全基準を満たすことを証明するものです。 一定容量以上のモバイルバッテリーなど、このマークを付けることが義務付けられています。重要なのは、マークの近くに企業名が表示されているかどうかも確認することです。
池谷氏は、製造責任を追える信頼できるメーカーの製品を選ぶことの重要性を強調しています。お問い合わせができるかどうかも製品選びの重要なポイントです。
番組では実際に市場で販売されている製品のX線検査が行われ、5つの製品にリスクがあると指摘された。 めちゃくちゃに安い製品は安全機能が省略されている可能性があり、「安いには安い理由がある」ということを考えてみるべきだと思うNITEの専門家は警告しています。
また、大手メーカーの製品でも発火事故は起きていますが、多くの製品には電圧や温度の監視など発火を防ぐための保護機能が複数取り付けられていることも紹介されました。
まとめ:リチウムイオン電池との付き合い方 – 池谷知彦氏のアドバイス
番組の最後で池谷知彦氏は、リチウムイオン電池と上手に付き合うためのアドバイスをまとめています。
- リチウムイオン電池を「友達」として扱う: 携帯機器は私たちの友達であり、大切に扱うことが重要です。とんでもない高温や低温の環境に置かないよう注意しましょう。
- 特にモバイルバッテリーを大切に:多くの人がモバイルバッテリーを大切に扱いがちですが、正しい取り扱いを心がけましょう。
- リサイクルの重要性:適切な廃棄からリサイクルへの循環を創ることが大切です。資源として有効活用するためにも、正しい処分方法を守りましょう。
リチウムイオン電池はこれからのカーボンニュートラル時代やDX時代に欠かせない技術です。安全に使いこなすためには、製品の選び方から使い方、そして捨て方まで、私たちには正しい知識を、「賢く使う」ことが重要だと池谷氏は強調しています。
リチウムイオン電池の事故は増加傾向にありますが、適切な使い方や管理、廃棄を行うことで、そのリスクを大幅に軽減することができます。
※本記事は、 2025年2月25日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。
コメント