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【クローズアップ現代】分べんのできない空白地域「1000市町村に拡大」中井章人が警鐘

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2025年2月26日にNHK「クローズアップ現代」で放送された「”分べん空白”列島 赤ちゃんに危機が…」という番組をご覧になりましたか?全国の半数以上に当たる約1000の市町村で出産施設が「ゼロ」になり、分べんのできない「空白地帯」が広がっているという衝撃的な実態が明らかになりました。このままでは安全なお産が守れなくなるという危機感から、日本産婦人科医会副会長の中井章人氏が警鐘を鳴らしています。

この記事では、分べん空白地域の現状や原因、そして解決策について詳しく解説していきます。妊婦さんやこれから妊娠を考えている方にとって、これからの出産環境がどうなっていくのか、そして安全なお産をどう確保していくべきなのかを考えていきましょう。

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分べん空白地域とは?全国1000以上の市町村でお産ができない現状

分べん空白地域とは、病院や診療所などの出産施設が一つもない市町村のことを指します。NHKの取材によると、現在日本の全市町村の約6割に当たる1000以上の市町村で出産施設がゼロという状況になっています。北から南まで、日本全国の多くの地域でこの「空白」が広がっているのです。

番組内では白い地図で示されたこの空白地域の広がりを視覚的に確認することができましたが、その範囲の広さに驚かされます。特に地方の町村部では出産施設の撤退が進み、妊婦さんは遠方の病院まで通わなければならない状況になっています。

このような状況が続くと、妊婦さんや赤ちゃんの安全が脅かされるだけでなく、「産みづらくなる」「子供を考えづらくなる」という声も上がっており、少子化をさらに加速させる要因になる可能性もあります。

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分べん空白の原因と背景〜少子化による経営悪化と施設減少の加速

なぜ分べん空白地域が広がっているのでしょうか?その最大の原因は少子化による分娩数の減少と、それに伴う産科施設の経営悪化です。

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番組では静岡県下田市にある臼井医院の事例が紹介されました。この医院は伊豆半島南部で唯一出産できる施設でしたが、2025年2月に出産対応を終了しました。医院長の臼井文男さんによると、約20年前は年間300件を超えていた分娩数が、直近では100件を下回るようになったといいます。

1件の分娩で医院が得られる収入はおよそ50万円。しかし出産に対応するには、夜勤の看護師など24時間体制を維持する人件費が必要です。さらに分娩台や新生児の処置台などの医療機器は定期的な更新が不可欠で、それぞれ数百万円のコストがかかります。臼井医院では多い時には2000万円を超える赤字が経営を圧迫するようになり、最終的に出産対応をやめる決断に至りました。

日本産婦人科医会副会長の中井章人氏によれば、特に影響を受けているのは産科クリニックです。また、10年前は全国で年間約50件あった産科クリニックの新規開業も、直近では年間5、6件にまで減少しています。この傾向は少子化が改善しない限り今後も続くと予想されています。

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分べん空白地域で妊婦が直面する危険〜車内出産の実例と通院の負担

分べん空白地域の拡大により、妊婦さんはどのような状況に直面しているのでしょうか?番組では高知県香南市に住む小山智美さんの事例が紹介されました。

小山さんは車で30分ほどかかる高知市の病院に通っていましたが、出産予定日の3週間前に破水し、父親の運転する車で病院に向かう途中で出産してしまいました。赤ちゃんは低体温症となり一時集中治療室に入院する事態となりました。

また、静岡県下田市の臼井医院が出産対応をやめたことで、伊豆半島南部の妊婦さんたちは車で1時間以上かかる伊東市か伊豆の国市の医療機関に転院することになりました。

番組では妊娠9ヶ月の笹本真琴さんの例も紹介されています。彼女は週1回、片道1時間半かけて検診に通っており、夫や親族は日中仕事があるため自分で運転せざるを得ない状況でした。突然の腹痛と吐き気に襲われた際には、姉の車でなんとかクリニックにたどり着きましたが、「本当の陣痛だったらもっと痛いので、そのピークの時が車だったら考えるとすごく怖い」と不安を語っています。

このように分べん空白地域では、長距離移動による妊婦さんの身体的・精神的負担の増大や、緊急時の対応の遅れなど、深刻な問題が生じています。

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中井章人医師が警鐘を鳴らす「このままでは安全なお産が守れない」

日本産婦人科医会副会長の中井章人氏は、この分べん空白地域の拡大について強い危機感を示しています。

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日本産婦人科医会副会長の中井章人氏

中井氏によれば、急激な少子化により多くの産科施設が経済的に苦しい状態にあり、特に産科クリニックへの影響が強く、分娩取り扱いを停止するクリニックが急激に増えているとのことです。

また、少子化が改善しない限り今後もこの影響は続くと予測しており、「減少するということを前提に新たな仕組み作り」が求められていると指摘しています。

特に問題なのは施設の減少速度だと中井氏は言います。「減少する速度を可能な限り緩やかにすれば、地域に住まれている妊産婦さん、利用者の皆さんもその変化を理解して、またそれを受け入れていく準備ができる」と述べています。そのためには、国や自治体が財政的支援だけでなく、話し合いの場を設けて急速な少子化に早急に取り組むべきだと主張しています。

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国が進める2つの対策〜医療の集約化・重点化とアクセス支援の現状

こうした状況に対し、国は主に2つの対策を進めようとしています。それが「医療の集約化・重点化」と「妊婦のアクセス支援」です。

医療の集約化・重点化とは、お産の機能をそれぞれの市町村で維持するのではなく、地域の大きな病院に集めて医療の質を保っていこうという対策です。しかし中井氏によれば、この集約化は国の計画通りには進んでいないと言います。

元々この集約化は医師不足など医療資源の乏しい地域で、分散している病院を1つに集めて地域の医療の質を担保しようという意図で提案されたものです。しかし日本には様々な運営母体を持つ病院があり、例えば県立病院と市立病院では雇用体系も違うため、人的交流や合併は難しいというハードルがあります。

一方、妊婦のアクセス支援は、病院までの移動や事前の宿泊支援を強化しようというものです。しかし番組の取材によれば、この支援もまだ十分に広がっているとは言えない状況です。

2024年4月から国は出産時に病院に向かうためのタクシーなどの交通費や、病院の近くに事前に泊まるための宿泊費の補助を一部始めていますが、この支援事業を実際に行っているのは全市町村の1割ほどにとどまっています。背景には、市町村が地域内に支援が必要な妊婦さんがどれくらいいるのかというニーズ把握ができていないという課題があります。

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先進的な取り組み事例〜独自の救急搬送システムと「ステイアンジュ」

国の支援が十分でない中、独自の取り組みを始めた地域もあります。

岡山県高梁市では、12年前に分べん空白市町村となった際、救急車を積極的に活用して妊婦を出産施設に搬送する「ママ・サポート119」というシステムを始めました。市内の妊婦のほとんどが登録するこのシステムでは、出産予定の病院や持病の有無などを予め登録することで、救急隊員が妊婦の状況を把握し、緊急時や陣痛が起きた時に必要な処置を行いながら迅速に搬送することができます。

また、札幌市の天使病院では、2024年4月から病院の敷地内に「ステイアンジュ」という妊婦専用の長期滞在施設を設置しました。2部屋を用意し、キッチンや洗濯機などを完備、料金は1泊2000円で子供やパートナーと一緒に泊まることもできます。緊急時には医師や看護師が駆けつける体制も整えられています。

このように既存の救急システムの活用や病院独自の宿泊施設設置など、地域ごとに工夫した取り組みが行われています。しかし、個々の病院の努力だけでは限界があるため、国や自治体がこうした取り組みを主導して欲しいという声も上がっています。

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スウェーデンの先進事例から学ぶ〜行政主導の出産体制整備

分べん空白地域の対策として参考になるのが、スウェーデンの取り組みです。

スウェーデンでは、病院に隣接して妊婦が宿泊できるおよそ60部屋のホテルを整備しています。注目すべきは、これを整備したのが行政(日本で言う都道府県に当たる)だという点です。行政の予算で宿泊施設や搬送手段などを整備し、さらに助産院で妊婦健診などを担う体制を作りました。つまり、行政がお産のグランドデザインを描いているのです。

カールスタッド大学の講師で行政の医療体制に詳しいカーリン・エンゲビーさんは、「地域の人が安心を感じることが大切。そのためには(行政が)全体像を描き責任をとるべき」と述べています。

日本とスウェーデンでは医療制度が異なる点もありますが、行政が主導して出産体制の全体像を描くという姿勢は、日本でも参考になるでしょう。

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これからの日本における出産体制のあり方〜役割分担と地域連携の重要性

中井章人氏が今後の妊婦の負担を減らしていくための鍵として考えているのが、役割分担です。これは、お産を取りやめた施設に妊婦健診や産後ケアを担ってもらい、連携しながら地域のお産を支えていこうという仕組みです。

中井氏は東京の多摩地区でこの仕組み作りを行った経験から、「強いリーダーシップを発揮する人が必要」だと指摘します。また、「自分の施設だけじゃなくて地域全体を1つの病院に見立てて、その地域の中であればどこに行っても同程度の標準的な医療が受けられる」状況を作ることが大切だと述べています。これは「医療の標準化」と呼ばれ、地域の医療の質向上につながるのだそうです。

静岡県下田市の臼井医院のように、出産の対応を辞めた後も新生児の健診や産後のケアなどは続けて行くという形で、地域で安心して子供を生み育てていける環境づくりを模索する動きも始まっています。

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まとめ:分べん空白地域拡大に対する早急な対策と国の責任

NHK「クローズアップ現代」で明らかになった分べん空白地域の拡大は、妊婦さんや赤ちゃんの安全、そして日本の少子化対策にとって重大な課題です。

全国の約1000の市町村で出産施設がゼロとなっている現状は、少子化による分娩数の減少と産科施設の経営悪化が背景にあります。その結果、妊婦さんは長距離移動を強いられ、車内出産などのリスクにも直面しています。

国は医療の集約化・重点化と妊婦のアクセス支援という2つの対策を進めていますが、まだ十分に機能しているとは言えません。一方で、「ママ・サポート119」や「ステイアンジュ」のような独自の取り組みも生まれています。

スウェーデンのように行政が主導して出産体制のグランドデザインを描くこと、そして中井章人氏が提案する役割分担と地域連携の強化が今後の鍵となるでしょう。

日本産婦人科医会副会長の中井章人氏が指摘するように、施設減少の速度を緩やかにし、地域の妊産婦さんが変化を理解して受け入れる準備ができるよう、国や自治体には早急な取り組みが求められています。安心して子どもを産み育てられる環境づくりは、少子化対策の基盤となる重要な課題なのです。

 

※本記事は、2025年2月26日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

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