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【クローズアップ現代】「物が届かない!」物流危機とトラックドライバー労働規制の実態

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トラックドライバーの労働規制から1年が経過した今、「物流危機」はますます深刻化しています。2025年、引っ越しの荷物が送れない、商品の配送が遅れるなど、私たちの生活に直接影響が出始めています。NHK「クローズアップ現代」で放送された特集から、2024年問題の現状と課題、そして解決策を詳しく解説します。この記事を読めば、物流危機の本質と私たち消費者に何ができるのかが理解できるでしょう。

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2024年問題から1年、深刻化する物流危機の現状

2024年に導入されたトラックドライバーの時間外労働規制から1年が経過しました。この「2024年問題」と呼ばれる課題は、解決どころか更に深刻化しています。2025年4月7日にNHK「クローズアップ現代」で放送された「やっぱり『モノが届かない!?』~2025 高まる物流危機~」では、私たちの生活を支える物流現場の実態が詳しく報告されました。

放送では仙台から首都圏への転勤を命じられた男性が、引っ越し業者の手配ができず期日を過ぎても荷物を送れていないケースが紹介されています。これは特殊なケースではなく、引っ越し会社の社長も「引っ越しがしたい時にできないという状況は、多分年々加速していくんじゃないか」と懸念を示しています。

物流危機は単なる引っ越しの問題だけではありません。スーパーマーケットの品揃えや飲食店の材料調達、そしてEC通販で購入した商品の配送にも大きな影響を与えています。この状況は、まさに私たちの日常生活のあらゆる場面に影響を及ぼす社会全体の課題となっているのです。

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トラックドライバーの労働規制とは?2024年問題の背景

そもそも「2024年問題」とは何でしょうか。これは、トラックドライバーの過酷な労働環境を改善するために導入された時間外労働規制を指します。2024年に本格導入されたこの規制により、トラックドライバーの拘束時間は年間で原則3300時間に制限されました。

この規制自体は、ドライバーの健康や安全を守るために必要なものです。クローズアップ現代で取材された関西の運送会社では、1月末時点で既に2800時間以上働くドライバーがおり、制限を超えると荷物を運べなくなる状況に追い込まれていました。同社の社長は「守れるようにしたい」と話す一方で、「限界すれすれ」と現実の厳しさを吐露しています。

労働時間を減らせない大きな要因の一つが「荷待ち」です。番組では、朝5時から勤務していたドライバーの加藤さん(仮名)が、荷物の受け取りのために3時間16分も荷待ちをする様子が映し出されました。加藤さんの年間荷待ち時間は約600時間に上り、これが労働時間を減らせない大きな要因となっています。

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労働規制がもたらす「正直者が馬鹿を見る」構図

物流改革は国主導で進められ、岸田前首相も「持続可能な物流を実現するために全力を尽くす」と表明していました。トラックの代わりに船や鉄道を使うモーダルシフトや、複数のドライバーで分担するリレー輸送など様々な対策が推進されてきました。

しかし現実は厳しく、昨年度の「荷待ち」や「積み下ろし」にかかった時間は、目標の1運行あたり2時間以内を大幅に超え、平均3時間に達しています。また、ドライバーの多くは走った分だけ稼げる歩合制であるため、規制を守って労働時間を減らせば収入も減ってしまいます。番組で紹介された長距離ドライバーの藤田さん(仮名)は、規制を守ると毎月の手取りが7万円ほど下がると指摘しています。

さらに深刻なのは、「正直者が馬鹿を見る」構図です。関東の運送会社社長は、適正な運賃で働くために荷主と交渉を続けたものの断られ、「他の運送会社がある」と言われたと証言しています。ルールを守って高い運賃を設定する会社から仕事が奪われ、ルールを無視して安い運賃で請け負う会社に仕事が流れる悪循環が生じているのです。この会社も長年続けた仕事を撤退せざるを得なくなり、昨年度の売上は1700万円減少し赤字に陥る見込みだといいます。

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トラック・物流Gメンの活動と荷主への勧告

こうした状況を改善するため、国は「トラック・物流Gメン」と呼ばれる専門部隊を立ち上げました。Gメンはドライバーや運送会社の声を集め、荷主に改善の働きかけを行います。改善されない場合は国土交通省が勧告を出し、企業名の公表に踏み切ります。

番組では、Gメンが飲料メーカーを抜き打ち訪問し、運送会社に支払う運賃の見直しを呼びかける様子が紹介されました。しかし、メーカー側は「大手の値段に並んでしまうと売れなくなる」と難色を示し、「満額回答はできるだけ避ける」と本音を語っています。

また、Gメンがスーパーマーケットの物流担当者と対話する場面も紹介されました。このスーパーでは、冷蔵と常温の品を一度にまとめて配送するなど効率化を進め、運送会社への運賃を5%以上引き上げたといいます。しかし、それ以上の運賃上昇は商品価格への転嫁も検討せざるを得ず、「自分のところだけ(価格を)上げると売れなくなる」と担当者は苦悩を語りました。

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立教大学教授・首藤若菜が指摘する物流業界の課題

番組に出演した立教大学教授の首藤若菜氏(労働経済学・労使関係の専門家)は、トラックドライバーの労働時間について「二極化している」と指摘しています。大手企業のドライバーは労働時間を減らしている一方、中小企業はコストや人手不足で対策が打てず、労働時間を減らせていない実態があります。特に物流業界は9割が中小企業であり、「法律を守らないまま荷物が運ばれている」状況があるといいます。

立教大学 首藤若菜教授 (引用:「NHK」より)

首藤教授は「2030年度までに日本の輸送能力は34.1%足らなくなる」という予測を紹介し、「過酷なドライバーの労働実態のままでは新しい人が入ってこない」と警鐘を鳴らしています。

また、運賃が上がらない背景について首藤教授は、標準的運賃に法的拘束力がないこと、そして業界の過当競争を挙げています。1990年と2003年の規制緩和により、トラック事業者数は1.5倍に増加し、「安く早く」が業界の当たり前になってしまったといいます。

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物流危機への対策と国土交通省の新たな取り組み

物流危機に対する国の対応も強化されています。番組では、国土交通省が長時間の荷待ちが改善されていない企業に対して行った勧告の様子が紹介されました。勧告を受けたのは家電などを全国4万箇所に納品するNX/NPロジスティクスの金田吉生社長です。同社は2ヶ月後、改善に向けた取り組みを開始し、積み込みが集中する朝の対応や、トラックの出入り時間管理のデジタル化などを進めています。

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NX/NPロジスティクスの金田吉生社長                     (引用:「NX/NPロジスティクス」HP)より

国土交通省の三輪田優子課長(貨物流通事業課)は、「制度改正を行ってきたが、時代の変化や価値観の変化に対応しきれていない」と率直に認めています。その上で、2025年4月からは大規模な荷主に対して運送計画の作成と役員クラスの責任者選任を義務付けるなど、荷主への対策を更に強化すると説明しました。

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国土交通省 貨物流通事業課の三輪田優子課長                  (引用:「NHK」より)

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運賃値上げと標準的運賃の実態〜誰が負担するのか

物流危機の解決には運賃の適正化が不可欠です。国が目安として設定している標準的運賃は、事業者の半分以上が標準的運賃の7割以下しか支払われていないという実態があります。特に標準的運賃の5割未満という極めて低い運賃で運ばれている荷物も存在し、首藤教授は「法令を守って運送できているとは考えにくい」と指摘しています。

運賃の値上げは最終的に商品価格にも影響します。番組で紹介された調査では、物流コスト上昇による商品価格の上昇について、程度に差はあるものの約8割の消費者が「許容できる」と回答しています。首藤教授は「消費者は理由が分かれば納得感を得られる」とし、「物流は水道や電気と同じ社会インフラの一つ」だと述べています。

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まとめ:持続可能な物流を実現するために私たちができること

「クローズアップ現代」で取り上げられた物流危機は、2024年問題として終わらせるべき問題ではなく、今後も継続的に取り組むべき社会課題です。持続可能な物流を実現するためには、私たち一人ひとりができることもあります。

首藤教授は「従来は翌日配達が当たり前だと思っていたかもしれないが、2、3日かかることを前提に購入行動を変えていく」ことの重要性を強調しています。早めに注文して余裕をもって配達を待つことで、運送会社はまとめて運ぶことができるようになります。

また、再配達をできるだけ減らす工夫も重要です。宅配ボックスの利用や、確実に受け取れる日時を指定するなどの配慮が、ドライバーの負担軽減につながります。

物流危機は単なる業界の問題ではなく、私たちの生活に直結する課題です。トラックドライバーの労働環境改善と持続可能な物流システムの構築は、社会全体で考え、行動していくべき重要なテーマなのです。

※本記事は、2025年4月7日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

 

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