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【クローズアップ現代】医療事故調査制度の課題「再発防止へ長尾能雅が語る」

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医療事故調査制度が開始されて10年、NHKの「クローズアップ現代」は100件を超える告発をもとに制度の課題を鋭く指摘しました。名古屋大学医学部附属病院副病院長の長尾能雅氏が語る問題点と改善策とは? 医療事故の定義の曖昧さや遺族への情報開示不足など、多くの課題が明らかになっています。真の再発防止に向けて、透明性のある医療事故調査制度の実現にはどのような変革が必要なのでしょうか。

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医療事故調査制度の現状と100件を超える告発の実態

2025年4月21日に放送されたNHK「クローズアップ現代」では、医療事故調査制度の課題について特集が組まれました。この番組では、医療事故を繰り返す医師について取り上げた昨年11月の放送後、NHKに寄せられた100件を超える医療事故の告発について掘り下げています。

医療事故調査制度は再発防止を目的に2015年に始まりましたが、制度開始から10年が経過した現在、多くの課題が浮き彫りとなっています。患者や家族を支援する団体の代表者は「声を上げられる人は本当に少なくて、被害にあった人たちが圧倒的に泣き寝入りしている」と語り、制度の限界を指摘しています。

特に注目すべきは、医療事故の原因を調査する制度があるにもかかわらず、実際には病院側が「これは医療事故ではない」と主張することで調査が行われないケースが多いという実態です。こうした現状に対し、医療関係者や患者からは制度改革を求める声が高まっています。

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遺族の悲痛な叫び – 医療事故調査制度に対する信頼の低下

番組では、20歳で亡くなった今井杏海さんの両親のケースが紹介されました。都内の大学病院で伝染性単核球症と診断され入院した杏海さんは、母親が退院延期を希望したにもかかわらず退院させられ、その後急変し亡くなりました。

病院は医療事故調査制度に基づき調査を進めると説明しましたが、1年以上経過した現在も遺族に対する進捗報告や結果説明は行われていません。父親の和也さんは「娘の遺骨はそのまま。まだ本当に何も報告ができていない」と語り、納得できない状況に置かれています。

この制度では、遺族に対して調査の進捗を伝える義務はなく、病院の裁量に任されているという問題点があります。こうした状況が、医療事故調査制度に対する信頼低下の一因となっています。患者や家族を支援してきた宮脇正和さんは「当初の予想以上に遺族の失望感が広がっている。この制度は全然役に立たないという声をすごく聞く」と語っています。

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長尾能雅副病院長が指摘する医療事故調査制度の3つの課題

番組では、名古屋大学医学部附属病院の長尾能雅副病院長が解説者として登場し、医療事故調査制度の課題について詳しく語りました。長尾副病院長は患者の安全確保に長年携わってきた専門家です。

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長尾能雅氏                             (名古屋大学HPより)

長尾副病院長は制度の課題として以下の3点を指摘しています。まず第一に、制度が5年経過後に見直しを行うことになっていたにもかかわらず、「大きな変更はされないまま今に至る」という点です。第二に、医療事故の定義や判断基準が曖昧で、解釈にばらつきが生じやすいという点。そして第三に、調査対象が死亡事例に限定されている点です。

長尾副病院長は「遺族側が知りたい出来事がよくわからないということで、当然不満や不信感が強くなる」と指摘し、制度の運用面での難しさを強調しています。

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「医療事故」の定義と判断基準の曖昧さが引き起こす問題

医療事故調査制度の大きな課題の一つが、「医療事故」の定義と判断基準の曖昧さです。長尾副病院長によれば、「予期せぬ死亡」や「事前に説明されていた出来事は予期していたと言える」など、解釈にばらつきが生まれやすい制度となっています。

さらに問題なのは、最終的には病院長一人の判断で決定されるという点です。この仕組みが医療事故の認定や調査開始の判断にばらつきを生む原因となっています。

ある医師は「今の制度は『これは医療事故ではない』と言い張れば、言い張れちゃう。隠蔽しおおせちゃう」と語り、制度の抜け穴を指摘しています。また、ある50代の医療関係者は「教授が執刀する手術で大量出血があり患者が死亡。結局隠蔽されてしまいました」と証言しており、医療現場での隠蔽体質が明らかになっています。

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死亡事例に限定される調査対象 – 制度拡大の必要性

現在の医療事故調査制度では、調査対象が死亡事例に限定されているという大きな課題があります。死亡事例でなければ、深刻な医療事故であっても調査や再発防止につなげるハードルが高くなります。

番組では、兵庫県の病院で起きた医療事故の例が紹介されました。この病院では一人の医師が8件の医療事故に関わっていたことが3年前に公表され、その医師は昨年12月に業務上過失傷害の罪で在宅起訴されています。この事例がウェブ上の漫画「脳外科医竹田くん」を通じて広く知られるようになりました。

親族が被害にあった男性は、5年前の手術で脊髄の神経を切られ後遺症に苦しんでいましたが、死亡事例ではないため制度に基づく調査は行われませんでした。同様に、京都第一赤十字病院での脳腫瘍手術では、腫瘍と誤認して正常な脳組織を摘出するという重大ミスがありましたが、患者が死亡していなかったため制度の対象外となりました。

長尾副病院長は「制度の発足時はさておき、10年経ちますので例えば失明した事例や聴力を失う、下半身が動かなくなってしまうといった重篤な後遺障害案件に関しても、調査の対象から外すということはなかなか説明つけにくい」と述べ、制度の対象拡大を視野に入れるべきだと提言しています。

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医療事故の再発防止に成功している病院の取り組み事例

番組では、医療事故の再発防止に向けた独自の取り組みを行っている好事例として、神奈川県立病院機構が紹介されました。同機構は5つの病院を運営しており、去年から新たな体制で医療安全に関する改革を進めています。

きっかけは4年前、県立病院に入院中の患者が死亡した医療事故について、調査結果の公表が事故から2年後だったことで厳しく批判されたことでした。新たに打ち出したのが医療事故を公表する際のルールの明確化です。

これまでは過失のある場合のみ公表の対象でしたが、去年からは過失の有無に関わらず事故があったことを迅速に公表するというルールに変更しました。神奈川県立病院機構の阿南英明理事長は「過失の有無を判断するのに、判断する人の思い考えが入ってきてしまう。ついついブレーキをかけがちになるところを、もうとっ払ってしまう。嘘はつかないね。隠さないね。そういう関係を内部でも外に対しても作っていくということが医療安全では最も基本的な一番最初のベース、スタートラインだと思うんですね」と語っています。

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遺族との情報共有が信頼回復と再発防止につながった成功例

医療側が積極的に情報を共有する姿勢が遺族の理解につながった好事例として、岩手県の笹川さん夫妻のケースが紹介されました。2年前に19歳だった息子の健太郎さんを医療事故で亡くした笹川さん夫妻は、当初「何で死ななきゃいけないの?」と納得できない思いを抱えていました。

事故が起きたのは岩手医科大学付属病院です。重い障害があり幼い頃から気管孔からの痰の吸引が日常的に必要だった健太郎さんは、感染症で入院中、母親が病院に気管孔からの痰の吸引の必要性を伝えていたにもかかわらず、吸引は鼻や口からしか行われず亡くなりました。

その後、病院は笹川さんからの説明要求に応じ、調査結果が出る前の段階から情報を開示。気管孔からの吸引についてスタッフの間でも十分に確認できていなかったことなどを回答しました。また、2週間に1度連絡を入れ調査の進捗を伝えるようにしたことで、遺族の理解を得ることができました。

母親の純子さんは「まずちゃんと(事実を)知りたかったので。全部私たちに隠さないで伝えているな」と感じ、病院の対応に一定の理解を示しています。岩手医科大学付属病院の肥田圭介副院長は「医療的なことを病院で話し合うと、遺族との事実確認や連絡がちょっと置いてかれる。今か今かと待っているのは事実だと思っていたので、そのような対応を皆で話し合ってした」と説明しています。

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長尾能雅が提言する医療事故調査制度の改善点と今後の展望

長尾副病院長は医療事故調査制度の改善点として、第三者機関がより積極的に病院の判断を支援したり介入したりする権限を与えるアイデアを提案しています。「院長の判断や病院の判断を支援したり介入したりといった権限などを与える」という具体的な提言は、現在の制度を改善する上で重要なポイントとなっています。

また長尾副病院長は、自身が副院長を務める名古屋大学医学部附属病院のデータを示し、重大事故の件数が5年ごとの年平均で減少していることを紹介しました。この背景には、事故につながりかねないヒヤリハットも含めて積極的に報告するようにしたことがあります。

長尾副病院長は「報告が増えてきて初めてそういったことが明らかになってくる。それ以前も調査や重大事故は経験しているわけですけれども、本当にそれが信憑性のあるデータかどうかはよく分からない時代が長く続いていた」と指摘し、報告行動の活性化と外部専門家を交えた調査の重要性を強調しています。

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まとめ:医療事故の再発防止に向けた制度改革と意識改革の重要性

医療事故調査制度が始まって10年が経過しましたが、制度の抱える課題は依然として多く存在します。「医療事故」の定義や判断基準の曖昧さ、調査対象が死亡事例に限定されていること、病院長一人に判断が委ねられていることなど、多くの問題点が指摘されています。

一方で、積極的な情報公開や遺族とのコミュニケーションを重視する病院の取り組みは、医療への信頼回復と再発防止に効果を上げています。神奈川県立病院機構や岩手医科大学付属病院の事例は、今後の医療安全対策のモデルケースとなるでしょう。

長尾能雅副病院長は「国民がその制度を自分たちのものとしてはぐくんでいく時に、いかにその胸を張れる制度であるかということは重要」と述べ、制度の透明性と信頼性の向上が必要だと強調しています。

医療事故の再発防止には、制度の改革だけでなく医療現場の意識改革も不可欠です。起きた事故から真摯に学び、改善につなげる文化を醸成することが、医療の安全と質の向上につながるのです。遺族が泣き寝入りすることがない、真に再発防止に役立つ医療事故調査制度の実現に向けて、さらなる議論と取り組みが求められています。

※ 本記事は、2025年4月21日に放送された番組 NHK「クローズアップ現代」を参照しています。

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