2025年5月24日に放送されたテレビ東京系「ブレイクスルー」では、栃木県足利市にある精密加工メーカー・エアロエッジの森西淳社長が取り上げられました。作家の相場英雄氏が取材したこの企業は、世界で唯一、チタンアルミ製のタービンブレードを製造する日本企業として注目を集めています。高校中退の元不良少年から東証グロース上場企業の社長となった森西淳氏の軌跡と、革新的な技術力について詳しく解説します。
エアロエッジ森西淳とは?リープエンジンのタービンブレード製造を担う唯一の企業
森西淳氏は、1970年生まれの現在55歳で、エアロエッジ株式会社の代表取締役社長兼執行役員CEOを務めています。番組では「高校中退の不良少年が一念発起」と紹介されたように、決して順風満帆な人生ではありませんでした。しかし、20代でものづくりの世界に飛び込み、菊地歯車株式会社で技術を磨き上げてきました。
エアロエッジは2015年9月16日に設立され、栃木県足利市寺岡町に本社を構える精密加工メーカーです。敷地面積はおよそ5000坪の最新鋭工場を有し、従業員数は約120人の企業です。2023年7月には東証グロース市場に上場を果たし、現在の証券コードは7409となっています。
同社の主力製品は、世界最大の航空機エンジンメーカーであるフランスのサフラン・エアクラフト・エンジンズ社向けのタービンブレードです。このタービンブレードは、世界で最も売れているエアバスA320neoやボーイング737MAXに搭載されるリープエンジンに使用される重要部品となっています。森西社長によると「世界で一番売れるエンジンで、2040年までは確実に飛ぶ」とのことで、長期的な成長が見込まれる事業分野です。
チタンアルミ加工技術の革新!サフラン社との10年契約獲得の軌跡
エアロエッジが製造するタービンブレードの素材は、チタンアルミという革新的な新素材です。この素材は従来のニッケル合金と比べて約半分の重さでありながら、高い強度と耐熱性を持つ画期的な材料です。しかし、常温では「お茶碗と同じぐらい」の脆さがあり、加工には極めて高度な技術が要求されます。
森西社長がサフラン社との契約獲得に向けて動き始めたのは2010年代初頭でした。当時、無名の町工場であったエアロエッジの前身企業が、世界的な航空機エンジンメーカーとの直接契約を目指すのは常識的に考えて無謀な挑戦でした。しかし、森西社長は確信を持っていました。
交渉の際、言葉の壁に直面した森西社長は、通訳を介さずフランスの技術者とやり取りを行いました。番組では「向こうのホワイトボードに私がこう手でフリーハンドで書いて、こういう風にやるんだと、説明も全部日本語で」と振り返っています。技術に対する情熱と確かな知識が、言語を超えた共通言語となったのです。
2013年、ついにサフラン社との間で日本企業では初となる10年の長期契約を締結しました。この契約は、エアロエッジの技術力が世界最高レベルで認められた証明でもありました。2022年には、サフラン社の「サプライヤー・パフォーマンス・アワード2022」を受賞し、世界約2000社の取引先の中から品質などの総合評価で優秀と認められた5社のみに贈られる栄誉を、日本企業として唯一獲得しています。
タービンブレード製造の技術力「世界で5社以内」の超精密加工とは
エアロエッジの技術力の核心は、チタンアルミという難削材の超精密加工技術にあります。森西社長によると「ジェットエンジンの世界では世界でやっぱり5社いないぐらいのプレイヤー」であり、日本国内では唯一の企業となっています。
タービンブレードの加工で最も困難なのは、厚さ1mm以下という薄さでの精密加工です。風を受ける面と流す面の厚みは1mm以下で、マイクロメートル単位の精度が求められます。チタンアルミは硬く丈夫な反面、常温では柔軟性に乏しく割れやすい特性があるため、わずかな加工ミスでも製品が台無しになってしまいます。
この課題を解決するため、エアロエッジでは工具から自社開発しています。市販の工具では適切な加工ができないため、およそ20種類のオリジナル工具を製造しています。例えば、刃に溝を掘ることで潤滑油の流れを最適化した工具や、削りくずの大きさまで計算して歯の間隔を調整した工具など、細部まで計算し尽くされた専用工具を使用しています。
さらに、すべての製品には個別のシリアルナンバーが刻印され、完全なトレーサビリティを確保しています。航空機の安全性に直結する部品のため、年に1回から2回、無作為にシリアル番号が指定され、48時間以内に製造履歴の全資料を提出する必要があります。このような厳格な品質管理体制も、エアロエッジの技術力の証明といえるでしょう。
年間で納入するタービンブレードは、ジェットエンジン635基分に相当し、1箱あたりの価格は「国産の中型車1台分」程度とされています。
材料内製化への挑戦!鋳造技術で9割の無駄を解決する革新的取り組み
現在、エアロエッジが取り組んでいる最大の挑戦は、チタンアルミ素材の内製化です。現在の製造工程では、厚い材料から1mm以下の薄いタービンブレードを削り出すため、材料の実におよそ9割近くが無駄になっているという深刻な問題があります。
この課題を解決するため、森西社長は素材の鋳造技術開発に着手しました。番組では特別に公開された鋳造炉で、溶けたチタンアルミが「カレーのルーみたい」な状態で型に流し込まれる様子が映されました。この技術により、削りくずの再利用が可能になるだけでなく、完成品のタービンブレードに近い形で材料を鋳造することで、破砕そのものをなくすことを目指しています。
現在の課題は、薄い形状への鋳造時にチタンアルミが冷え固まってしまうことです。しかし、森西社長は「材料を握ってるのがやっぱり一番強い」と語り、材料と加工の両方を手がけることで「オンリーワンの存在」になることを目標としています。
サフラン社も当初は懐疑的でしたが、エアロエッジが毎年レポートを提出し続けた結果、現在では開発資金の一部をサポートするまでになっています。森西社長は「加工やってる強みを生かしてる。材料メーカーは材料しか作ってないから加工のことなんて考えてない」と語り、加工経験を活かした材料開発の優位性を強調しています。
ブレイクスルー放送内容まとめ!次回予告と森西淳の今後の展望
今回の「ブレイクスルー」では、森西社長の人間的な魅力と技術者としての情熱が存分に描かれました。相場英雄氏も「ちょっと人間技じゃない」と感嘆するほどの技術力と、無名の町工場から世界企業への成長ストーリーは多くの視聴者に感動を与えました。
番組の最後には、エアロエッジの今後の展開についても触れられました。航空宇宙分野での技術をベースに、医療分野での人工骨開発や宇宙産業への進出も視野に入れているとのことです。実際に番組では、チタンアルミの柔軟性を示すデモンストレーションとして、ゴムボールのように弾む様子や高い強度を持つサンプルが紹介されました。
次回の放送は2025年5月31日に予定されており、「オンリーワン技術をさらに磨き町工場の可能性を広げる森西を相場英雄がさらに深掘りする」とのテーザーが流されました。材料内製化の詳細や、今後の事業展開についてより深い内容が期待されます。
エアロエッジは2025年現在も成長を続けており、直近の業績も好調を維持しています。リープエンジンの需要は2040年まで確実に見込まれており、同社の将来性は非常に明るいといえるでしょう。
まとめ
「ブレイクスルー」で紹介されたエアロエッジの森西淳社長は、高校中退の元不良少年から世界的な航空機部品メーカーの経営者へと成長した、まさに現代の立志伝中の人物です。チタンアルミという革新的素材のタービンブレード製造で世界唯一の技術を持ち、フランスのサフラン社から最高評価を受ける企業に育て上げました。
リープエンジンは世界で最も売れているエンジンであり、2040年まで需要が確実視されています。材料内製化という新たな挑戦により、さらなる競争優位性の確立を目指しており、今後の成長がますます期待される企業です。
次回放送では、森西社長の技術への情熱とビジョンがさらに深く掘り下げられることでしょう。日本の製造業の可能性を示す企業として、エアロエッジの今後の動向に注目が集まります。
※ 本記事は、2025年5月24日放送(テレビ東京系)の人気番組「ブレイクスルー」を参照しています。
※ エアロエッジ(AeroEdge)のHPはこちら
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