現在、地球温暖化対策として注目を集めているCO2削減。年間300億トン以上排出されているCO2の削減は、人類共通の課題となっています。2025年1月25日にテレビ東京系で放送された「ブレイクスルー」では、CO2を資源として活用する革新的な取り組みが紹介されました。
CO2資源化研究所の水素菌が切り開く未来とは
東京・港区に本社を構えるCO2資源化研究所で、画期的な研究開発が進められています。その主役となるのが「水素菌」と呼ばれる特殊な微生物です。この水素菌は、世界中の温泉に生息している微生物で、CO2を取り込んで自身の体を作り出すという特徴を持っています。
通常の植物は太陽光をエネルギー源として光合成を行いますが、水素菌は水素をエネルギー源としてCO2を吸収し、驚異的なスピードで増殖します。わずか24時間で1グラムから16トンにまで増える能力を持っているのです。
湯川英明が追求する水素菌の可能性
CO2資源化研究所の社長である湯川英明氏は、77歳という年齢を感じさせない情熱で研究開発を率いています。東京大学卒業後、三菱化学や国の研究機関で微生物研究に携わってきた湯川氏は、2015年、68歳という年齢で現在の会社を設立しました。
湯川氏は、水素菌の研究を通じて、エネルギー問題と食糧問題という2つの社会課題の解決を目指しています。国際的な賞を受賞するなど、この分野における第一人者として知られています。
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水素菌がもたらす3つのブレイクスルー
水素菌の活用によって期待される革新的な成果は、主に以下の3つです。
- エネルギー分野:遺伝子組み換えによって、エタノールを生産する水素菌の開発に成功。このエタノールは、航空機用のSAF(持続可能な航空燃料)や自動車燃料として活用が期待されています。
- 食料分野:水素菌は重量の85%がタンパク質で、これを加工することで代替肉などの食品開発が可能です。まずは家畜や養殖業の飼料として、その後人間の食料としての利用を目指しています。
- 化学品分野:日用品大手ライオンとの協力により、洗剤の界面活性剤の原料としても活用を検討中です。
CO2資源化研究所の最新研究開発状況
現在、同研究所では複数の企業とパートナーシップを結び、1000平米の研究開発スペースで試作品の製造に取り組んでいます。化学、食品、石油、エネルギー関連など、様々な企業から28億円の資金調達にも成功し、実用化に向けた開発が加速しています。
水素菌技術の実用化への道のり
実用化に向けた最大の課題は水素のコストです。現在、水素の価格はガソリンの約3倍と高価ですが、湯川氏は2030年代には汎用的な化学品・エネルギーを作れる水準まで価格が下がると予測しています。
特に注目されているのが、中東やオーストラリアの砂漠地帯での太陽光発電を活用した水素製造です。これにより、水素の大量生産とコスト削減が可能になると期待されています。
まとめ|水素菌が創る持続可能な未来への挑戦
湯川氏は、「失われた日本の経済30年で将来に不安を持つ若い人たちに希望を示したい」と語っています。CO2資源化研究所の挑戦は、環境問題の解決だけでなく、日本の技術力の復権と、次世代を担う若手人材の育成にも貢献することが期待されています。
今後5年以内にエタノール生産工場の実用化を目指すなど、具体的な目標も掲げられています。水素菌を活用した技術革新は、持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩となるでしょう。
※本記事は、2025年1月25日にテレビ東京系で放送された「ブレイクスルー」を参照しています。
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