2025年8月21日放送のテレビ東京「カンブリア宮殿」で特集された森トラスト社長・伊達美和子氏。総資産1兆6000億円超の企業を率いる54歳の女性経営者が、わずか8年で売上を倍増させた驚異的な手腕に注目が集まっています。森グループ創業者の孫として、独自のホテル・リゾート事業戦略で日本の観光産業に革命を起こす伊達氏の経営哲学と成功の秘訣を詳しく解説します。
伊達美和子とは?森トラスト社長の経歴と手腕
伊達美和子氏は森グループ創業者・森泰吉郎の孫として生まれ、2016年に父・森章から森トラストの社長を引き継ぎました。44歳という若さで総資産1兆円超の企業トップに就任した伊達氏は、不動産業界では珍しい女性リーダーとして業界に新風を吹き込んでいます。
森トラストは港区を中心に60棟のオフィスビルを所有する不動産デベロッパーで、「港区の大家」とも呼ばれています。伊達氏が社長に就任してからの8年間で、同社の売上は倍増という驚異的な成長を遂げており、2025年3月期には営業収益が過去最高の2,816億円を達成。特にホテル・リゾート事業での躍進が目覚ましく、ホテル関係収益も過去最高を記録しています。
2025年には「東京ワールドゲート赤坂」の全体竣工を控え、日本初となる「1 Hotel Tokyo」の開業も予定されているなど、伊達氏の手腕は今後も注目を集め続けるでしょう。
森トラストのホテル・リゾート事業「伊達流勝つホテル作り」3つの戦略
カンブリア宮殿で紹介された伊達氏の成功戦略は、従来のホテル開発とは一線を画す独創的なアプローチです。「伊達流勝つホテル作り」として3つの核となる戦略が明かされました。
①「360度ニッポン」を活かした立地選定の極意
伊達氏が最も重視するのは「360度ニッポンを探せ」という立地選定の哲学です。これは、どの角度から見ても日本の魅力を感じられる場所を見つけ出すことを意味しています。
高山市での市場調査では、飛騨牛の串刺しなどの食べ歩きグルメから歴史的街並みまで、歩いているだけで日本文化に浸れる環境を重視している姿が映し出されました。「歩いていると、この街並みに溶け込む感じがする。360度見渡しても昔の街並みも楽しみながら、日常のお買い物も楽しめる場所は日本国内で限られている」と語る伊達氏の言葉からは、単なる観光地ではなく、生活感のある本物の日本体験を提供したいという想いが伝わってきます。
②歴史的建築を蘇らせる地域貢献型ホテル開発
「眠れる資源を地域の宝に」という戦略の下、伊達氏は歴史的建築の保存と活用に積極的に取り組んでいます。長崎のホテルインディゴでは、築120年超の修道院だった建物を2年半にわたる困難な工事で高級ホテルに生まれ変わらせました。
レンガの外壁を保存するため、壁を残したまま最新の注意を払って部材を組み上げる前代未聞の工事を実施。正面の石畳まで1枚1枚番号を振って元の位置に戻すという徹底ぶりでした。「地域に愛されてきたレンガ造りの建物を高級ホテルに生まれ変わらせることで次の時代に残していこう」という伊達氏の提案は、単なる開発事業を超えた文化継承の意味を持っています。
③外資系ブランドと日本文化の融合戦略
「最上級の日本×海外ブランド」という独自の組み合わせが、伊達氏の戦略の核心です。奈良の「紫翠」では、元県知事公舎という歴史的建物をマリオットの最高級ブランド「ラグジュアリーコレクション」として運営。昭和天皇が日米安全保障条約の批准書に署名した「御認証の間」という歴史の舞台を活用しています。
「自分たちが知ってるブランドで安心できるホテルに泊まりたいという需要と、地域らしさやローカルの良さが表現されてるホテルという両方の満足度を得ることができる」と語る伊達氏。グローバルブランドの安心感と日本独自の文化体験を同時に提供することで、海外富裕層から圧倒的な支持を獲得しています。
カンブリア宮殿で語られた成功事例と業績拡大の秘密
奈良「紫翠」- 県知事公舎からラグジュアリーホテルへ
奈良の「紫翠」は、宿泊施設が少なかった奈良に革命をもたらしたホテルです。2024年の奈良市宿泊者数は約204万人と過去15年で最多を記録し、このホテルの誕生が奈良観光の新たな可能性を切り開いています。
県知事公舎だった歴史的建物をマリオットの「ラグジュアリーコレクション」として再生したこの事例は、伊達氏の戦略が見事に結実した象徴的なプロジェクトです。宿泊客からは「満足度は圧倒的に高い。ホテルにいても奈良をすごく感じられた」という声が寄せられ、外資系ブランドでありながら地域性を強く感じられる空間づくりが高く評価されています。
京都嵐山「翠嵐」- 6年連続1位の世界的評価
京都嵐山の「翠嵐」は、アメリカの権威ある旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー誌」で6年連続日本のトップホテル1位を獲得する快挙を成し遂げています。川崎重工創業者の別荘など築100年以上の歴史的建築を改修し、かつて天皇の離宮があった「亀山殿」という特別な立地を活かしています。
「元々こちらが亀山殿と呼ばれる天皇の離宮があった場所なので、時期折々の景色を一番楽しめる」と伊達氏が語るように、嵐山の四季の変化を最も堪能できる場所に位置し、360度嵐山を味わえる立地が世界から高い評価を受けています。
万平ホテル再生 – 創業130年の老舗に新たな客を呼ぶ改革
1894年創業の万平ホテルは、ジョン・レノンが愛したホテルとして有名ですが、伊達氏の手により大規模なリニューアルが実施されました。2024年にグランドオープンした万平ホテルでは、「創業130年に新たな客を呼べ」という戦略の下、様々な改革が行われています。
最も注目すべきは冬季の課題解決です。「軽井沢は夏はいいが冬はダメ。黒字にならない」という長年の課題に対し、洋風建物でありながら全客室に温泉を導入。この施策により、2025年2月には森トラストが関わって初めて2月が黒字になったという驚異的な成果を上げました。
ジョン・レノンが厨房に入ってレシピを伝授したという「ロイヤルミルクティー」や「伝統のアップルパイ」も健在で、歴史と伝統を守りながら新たな価値を創造する伊達氏の手腕が光っています。
父から受け継いだ経営の極意「水晶の玉」理論
伊達氏の経営哲学の根底にあるのは、父・森章から教わった「経営は水晶の玉である」という考え方です。「水晶はいろんな光が当たった時にいろんな色になる。答えは本当はないんだ。どの見方をするかで答えは変わるし、答えは結局自分が見つけなきゃいけない」という教えは、常に変化する経営環境の中で柔軟な発想を持ち続ける重要性を示しています。
小学生時代に父が手がけた修善寺のリゾート開発を目の当たりにした経験も、伊達氏の経営観に大きな影響を与えています。「毎年行くと何か次の建物ができて、また次の建物、次の建物って毎年変化する。何かに付加価値を投じればそこは変わるということをそこで学んだ」と振り返る伊達氏。継続的な投資と改善によって価値を創造し続けるという考え方は、現在のホテル事業での成功にもつながっています。
観光産業への提言 – 地域創生と観光立国実現への道筋
カンブリア宮殿で村上龍氏から「観光立国実現には何が必要か」と問われた伊達氏は、地方創生の重要性を強調しました。「75%以上が首都圏に集中している現状では、地方創生の一産業としての価値まで生み出すことができない。インフラ整備や駅の改良など、地方での取り組みが必要」という指摘は、真の観光立国実現への課題を浮き彫りにしています。
2025年秋に開業予定の東京ワールドゲート赤坂では、1階に江戸時代から伝わる山車を修復・展示するミュージアムを設置。「地域にあったらいいだろうと求められる施設を造ることによって、地域の活性化にもつながるし、観光資源の一つにもなる」という伊達氏の考え方は、単なる利益追求を超えた地域貢献への強い意識を表しています。
まとめ
伊達美和子氏が率いる森トラストの成功は、単なるホテル開発事業を超えた文化継承と地域貢献の側面を持っています。「360度ニッポン」「歴史的建築の再生」「外資系ブランドとの融合」という3つの戦略により、わずか8年で売上を倍増させた手腕は、日本の観光産業に新たな可能性を示しています。
父から受け継いだ「水晶の玉」理論に基づく柔軟な経営観と、地域への深い愛情が結実した伊達氏の取り組みは、真の観光立国実現への道筋を照らしています。2025年の東京ワールドゲート赤坂全体竣工、1 Hotel Tokyo開業など、今後も伊達氏の挑戦は続き、日本のホテル・リゾート業界に新たな価値を創造し続けることでしょう。
※ 本記事は、2025年8月21日放送(テレビ東京系)の人気番組「カンブリア宮殿」を参照しています。
※ 森トラスト株式会社のHPはこちら
コメント