2025年3月13日に放送されたテレビ東京系列「カンブリア宮殿」では、横浜家系ラーメン「壱角家」などを運営する株式会社ガーデンの川島賢社長が登場しました。自らを「外食の再生請負人」と称する川島社長が、赤字の飲食店を再生し、独自の戦略で急成長させた手法に迫る内容となりました。今回は、その番組内容をもとに、ガーデンの成功の秘訣を詳しく解説します。
ガーデン川島賢社長が語る壱角家の急成長戦略と再生請負人の手法
株式会社ガーデンは2024年11月に東証スタンダード市場に上場した外食チェーン企業です。ラーメンやうどんなど11ブランドを展開しており、川島賢社長(54歳)が率いています。特に「横浜家系ラーメン 壱角家(いちかくや)」は、関東を中心に約10年で128店舗(2025年2月現在)まで急成長。ラーメン業界の平均営業利益率が5.1%のところ、壱角家は22%という高収益を実現しています。
川島社長は「外食の再生請負人」として、業績不振だった外食ブランドを次々と買収し、繁盛店に再生してきました。その手法は、単に売上や店舗数を増やすことではなく、利益率と利益額を重視する点に特徴があります。
「当社は売上高と店舗数にあまり興味がないんです。売上と店舗数はくっつければいいだけの話であって、利益の率と額を高めていくことで、今まで外食企業がやれなかったことをやっていきたい」と川島社長は語ります。
横浜家系ラーメン「壱角家」はなぜ10年で128店舗に急成長できたのか
壱角家が急成長できた理由の一つに、独自の店舗運営方法があります。一般的な家系ラーメン店では、豚骨などを数時間かけて煮込み、醤油と合わせてスープを作ります。これは職人の手間と時間がかかる作業です。
しかし壱角家では、提携する家系ラーメン店から仕入れた「スープの元」を使用。それを寸胴のお湯に溶かし、豚の背脂を合わせて煮込むだけで、個人店では数時間かかるスープ作りが30分で完成します。また調理工程は全店でマニュアル化されており、職人でなくても一定品質のラーメンを提供できる仕組みになっています。
さらに、健康志向の客に向けた「ベジタブル家系」など、時代のニーズに合わせた商品開発も積極的に行っています。麺を使わず野菜だけをスープに入れた商品は、糖質を気にする顧客から支持を得ています。
川島社長は「美味しさを100点にすると、材料費や人件費がかかる。80点くらいを基準にすると、一番利益が出るバランスになる」と、現実的な品質と収益のバランスを重視しています。
ガーデン流繁盛店の作り方①:一等地の「居抜き」戦略で好立地を確保
壱角家急成長の秘密の一つが「一等地の居抜き戦略」です。2014年、ガーデンは業績不振に陥っていた「東京チカラめし」の63店舗を内装設備はそのままの「居抜き」で買収し、ラーメン業態に転換して壱角家を立ち上げました。
ガーデンの店舗開発部では、日々新しい物件情報を足で稼いでいます。特に角地で間口が広く、視認性の高い一等地を狙い、地元の不動産会社と密に連携して、まだ表に出ていない物件情報を早期に入手する努力をしています。
「一等地が表に出てしまうと、みんなが手を上げるので家賃が吊り上がる。アナログで足で稼いだり、表に出ていない物件を日々狙っていく」と川島社長は語ります。
さらに興味深いのは、一癖ある物件を工夫で繁盛店に変える手法です。例えば、新宿西口店は人通りが早すぎて客が足を止めず、以前は大手チェーンが入っても撤退を繰り返していました。しかしガーデンは、店の裏口側にある思い出横丁という飲み屋街からの客も取り込めるよう、裏にも入り口を設置。こうした小さな工夫の積み重ねで、より売上と利益を出せる店舗に変えていったのです。
ガーデン流繁盛店の作り方②:定番の進化でラーメン・うどンをアップデート
ガーデンが手掛けるもう一つのブランド「山下本気うどん」も、独自の戦略で成功を収めています。こちらは元々個人店だったものを8年前にガーデンが譲り受け、生まれ変わらせました。
讃岐うどんも強力なライバルが多く、美味しいだけでは客は来てくれません。そこでガーデンが仕掛けたのが、「白い明太チーズクリームうどん」のような新しい食べ方の提案です。ホイップクリームの下に明太子が絡んだうどんがあり、見た目はスイーツのようなビジュアルインパクトがあります。
この商品は特に女性客に人気で、多くの客がSNSに写真を投稿することで、バズって広く知られるようになりました。「ケールうどん」など健康志向の新メニュー開発も積極的に行っています。
川島社長は「しっかりとしたうどんにプラスアルファを付け加えることができれば必ずヒットすると思った」と語り、伝統的な食の価値を保ちながら新しい魅力を加える戦略の重要性を強調しています。
東京チカラめしからの大転換!63店舗を壱角家へと生まれ変わらせた再生術
2014年、ガーデンが東京チカラめしの63店舗を買収してラーメン店に転換した際、銀行からは「赤字の牛丼店を一気に60店舗も買うのは危険」と大反対されました。しかし川島社長には明確な勝算がありました。
「大手には勝てない。牛丼市場やハンバーガーの市場と違って、ラーメンには非常に強いトップがいない。市場を展開していく余地があるのがラーメンなんです」と川島社長は読みを語ります。
その読みは的中し、壱角家は大躍進。さらに2年前には新宿に「壱角タワー」と呼ばれる、雑居ビル1棟丸ごとをラーメン店にした象徴的な店舗も誕生させました。
川島社長は「元々外食の概念がないので、客観的な目線で見られる。ダメだと思わなければやってみないとわからない、の繰り返し」と、業界の常識にとらわれない発想を強みとしています。
カラオケ店から始まった川島賢社長のビジネス人生とガーデン創業秘話
川島賢社長のビジネス人生は、実はラーメンではなく1軒のカラオケ店から始まりました。1971年東京生まれの川島社長は、高校卒業後は職を転々としながら、知り合いの事業を手伝うフリーターでした。
「元々僕は人に使われるのが嫌いで、自分で思った通りにすればもっと良くなるのになという気持ちがあった」と当時を振り返ります。
転機となったのは、知人の伝で譲り受けた今にも潰れそうなカラオケ店。家具やカラオケ機材もそのままで使える「居抜き」でビジネスをスタートさせました。そこで平日の昼間は部屋代無しでドリンク代のみというサービスを始めたところ大当たり。半年後には月に1,000万円を売り上げる人気店となりました。
その後も赤字のカラオケ店を居抜きで買い取り10店舗を再生し、年商10億円にまで成長。しかし「居抜きではなく新しい物件に1〜2億円投資した」ことで倒産の危機に追い込まれるという失敗も経験しています。
この経験から「我々のビジネスモデルはお金を投資せずに増やしてきたカラオケだから、そこに立ち戻ろう」と学び、2003年に飲食業に参入。「ステーキの鉄板王国」の再生を手始めに、外食ビジネスの「再生請負人」としての道を歩み始めました。
働く環境の改善で外食チェーンの常識を覆す!ガーデンの人材戦略
飲食業界は慢性的な人手不足が課題ですが、ガーデンには同業他社からの転職組や新卒者が集まっています。その理由の一つが、働く環境の良さです。
ガーデンでは、アルバイト店員から正社員になり、さらに「独立支援制度」を使って店舗オーナーになるキャリアパスも用意されています。この制度では、ガーデンから店舗や設備を借りることができ、投資リスクを抑えながら独立が可能です。
また、サービス残業や休日出勤を断ち切る仕組みを導入し、冬季休暇・夏季休暇も気兼ねなく取れる環境を整えています。これにより「飲食業界は待遇が悪い」というイメージを覆し、優秀な人材の確保に成功しています。
川島社長は従業員に対して「まずは自分が大切、自分を大切に自分がハッピーになりましょう」と伝えているといいます。「自分がハッピーになれないと、心の中から本当にお客さんを大切にしようとできない」という考え方です。
「100点ではなく80点」を目指すガーデン式経営哲学とは何か
川島社長の経営哲学の一つに「80点主義」があります。「基本に100点を目指しすぎると色々コストもかかる。80点くらいのところを基準にすると、一番利益が出るバランスになる」と語ります。
この考え方は商品開発だけでなく、人材育成にも適用されています。「昔は完璧主義で、社員に対してもずっと『足りない』と思ってしまった。自分ができるから『このくらいみんなもできるでしょう』と求めてしまい、社員が育たない時期もあった」と振り返ります。
「自分自身も80点くらいにすることで非常にリラックスできますし、一番成果が出ているのが80点くらい」という言葉には、完璧を追求するよりも、現実的な目標設定とバランス感覚を重視する川島流の智恵が表れています。
また「従業員にはずっと同じことを1000回でも言い続ける」という教育方針も特徴的です。「言葉が刺さるタイミングは人それぞれ違う」と考え、諦めずに伝え続けることの大切さを説いています。
まとめ:再生請負人・川島賢が切り拓く外食業界の新たな可能性
カンブリア宮殿に登場した「外食の再生請負人」川島賢社長と株式会社ガーデンの成功事例は、日本の外食産業に新たな可能性を示しています。
壱角家の急成長の背景には、「一等地の居抜き戦略」「オペレーションの簡素化」「80点主義」「働きやすい環境づくり」など、様々な工夫と戦略がありました。特に注目すべきは、売上や店舗数ではなく「利益率」を重視する経営姿勢です。
ラーメン店の平均営業利益率5.1%に対し、壱角家の22%という数字は圧倒的。これは川島社長の「今まで外食企業がやらなかったことやできなかったことを、どんどんやっていく」という姿勢から生まれた成果と言えるでしょう。
フリーターから始まり、カラオケ店経営、そして外食チェーンの再生へ。失敗も経験しながら成長してきた川島社長の言葉「自分は外食事業に生かされている」には、外食産業への感謝と未来への決意が込められています。
「ガーデン」という社名には「12社以上買収してきたが、価値観も風土も違う会社が、庭で一緒に手を取り合って同じ目的を見ていこう」という意味が込められているそうです。その名の通り、多様な外食ブランドを育て、業界の常識を覆していく川島流経営は、これからも注目されるでしょう。
※本記事は、2025年3月13日に放送されたテレビ東京系列の人気番組「カンブリア宮殿」を参照しています。
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