2026年3月30日放送のNHK「クローズアップ現代」では、大リーグ開幕を迎えた大谷翔平選手の二刀流完全復活と、村上宗隆・岡本和真が直面する「内野手の壁」に密着しました。本記事では、番組で語られた大谷の投球スタイルの進化やドジャース3連覇の展望、そして日本人内野手が乗り越えるべき課題を詳しくお伝えします。今季の大リーグ観戦がもっと深く楽しめる内容です。
大谷翔平の二刀流「完全復活」へ――投球スタイルの進化とは
2026年のMLBシーズンで最大の注目ポイントは、やはり大谷翔平選手の二刀流完全復活でしょう。2023年8月に右肘を怪我して以来、投手としての出場が制限されてきた大谷選手ですが、今シーズンはいよいよ開幕から投打の両方でフル稼働します。
番組では、大谷選手自身が「ラスト2年くらいはリハビリメインのオフシーズンだったので、自分の能力値を上げる練習ができなかった」と振り返り、「通常通りのオフシーズンを過ごす中で、しっかりトレーニングできたのは良かった」と充実した調整ぶりを語っていました。
特に注目すべきは投球スタイルの変化です。2023年当時、大谷選手の決め球は全投球の35%を占めていたスイーパーでしたが、この球種は肘への負担が大きいと医師から指摘されていました。リハビリ最終段階に入った2025年9月以降のデータを見ると、スイーパーの割合は大きく減少し、代わりにカーブの割合がおよそ4倍に増加しています。
元メジャーリーガーの五十嵐亮太さんは番組で、「カーブはうまく抜くボールなので、タイミングさえ間違わなければ肩肘の負担は一番少ない」と解説。さらに「いろんなボールでストライクを取れることで、大谷選手の体の負担を減らしつつ、バッターに的を絞らせないこともできる。かなり進化している」と太鼓判を押していました。
オープン戦では160キロに迫るストレートを連発しつつ、スライダーやカーブで三振を奪う多彩な投球を披露。個人的に感じるのは、大谷選手が「ただ速い球を投げるピッチャー」から「あらゆる引き出しを持つ完成形の投手」へと進化しつつあるということです。スタジオゲストの松井稼頭央さんも「まだ誰も日本選手が獲れていないサイ・ヤング賞を狙える」と期待を寄せていました。打者としても2025年は55本塁打を放っており、投手としての自己ベスト(2022年・15勝、防御率2.33、219奪三振)と打者としての自己ベスト(2024年・打率3割1分、54本塁打、130打点)を両方超えるような、4年連続MVPの可能性すら見えてきます。
山本由伸と佐々木朗希――ドジャース3連覇を支える先発陣の現在地
ドジャースが史上26年ぶりとなるワールドシリーズ3連覇を達成できるかどうかは、大谷選手だけでなく先発投手陣の層の厚さにかかっています。
まず、2年連続で開幕投手を務めた山本由伸選手。開幕戦のダイヤモンドバックス戦では6回2失点の好投で勝利投手となり、エースとしての責任をしっかり果たしました。番組では、山本選手が試合中ベンチで何度もノートを見返し、配球や相手バッターの特徴を確認する姿が紹介されていました。捕手のダルトン・ラッシング選手は「学ぼうとする姿勢がだれよりもすばらしい。僕が知っている中で間違いなく最高クラスです」と絶賛。2025年のワールドシリーズではMVPに輝いた(3勝0敗・防御率1.02)だけに、今季はサイ・ヤング賞も射程圏内でしょう。
一方、メジャー2年目の佐々木朗希選手は新たな武器の習得に挑んでいます。キャンプではドジャースの投球ディレクター、ロブ・ヒル氏の指導のもとカットボールの習得を目指していました。佐々木選手本人も「カットボールがあるだけでピッチングの幅は広がる。より真っ直ぐとフォークが生きる」と手応えを語っています。
ただし、課題は明確です。オープン戦4試合の登板でフォアボールとデッドボールを合わせて17個と、制球が大きく乱れました。正直なところ、現時点では不安要素が目立ちます。しかし、デーブ・ロバーツ監督は「心配はしていない。彼にはその力があることが分かっている」と信頼を示しており、シーズンに入ってからの変貌に期待したいところです。佐々木選手の160キロを超えるストレートとスプリット、そして新球種のカットボールが噛み合えば、3連覇への大きな戦力になることは間違いありません。
岡本和真・村上宗隆が挑む「内野手の壁」とは何か
今季、もうひとつの大きな注目テーマが「内野手の壁」です。これまで日本人選手がメジャーで成功してきたのは、投手や外野手が中心でした。内野手として海を渡った選手たちは、メジャー特有の身体能力の高さに苦しむケースが多く、「日本とメジャーには内野手の壁がある」と言われてきたのです。
その壁に今年挑んでいるのが、ホワイトソックスの村上宗隆選手とブルージェイズの岡本和真選手。どちらも日本で本塁打王を3度獲得した強打者ですが、メジャーでの勝負は打撃だけでは成り立ちません。
村上選手はホワイトソックスで主にファーストを守りますが、自ら「あんまり自分に実力があると思ってない。運動神経が良かったらあんな守備しない」と率直に苦手意識を認めています。メジャーでは内野手が難しい体勢から強い送球をすることが多く、ファーストの捕球力がより問われます。村上選手はベースについてノックを受ける練習を繰り返し、内野手からの不規則な送球に対応する力を磨いていました。
岡本選手はブルージェイズでサードを守ります。日本でゴールデングラブ賞を2度獲得した実力者ですが、番組では守備位置の見直しに取り組んでいる姿が紹介されました。ブルージェイズの球団スタッフで日米プレー経験のある加藤豪将さんの指導のもと、守備位置を後ろに下げることで守備範囲を広げる練習を行っています。「後ろに下がるから前に行ける」という逆転の発想で、強い打球に追いつきやすくなり、送球にも良い影響が出るというのです。
そして蓋を開けてみれば、結果は期待以上でした。村上選手は開幕から3試合連続ホームランを記録。これは日本選手として史上初、MLB全体でも過去に3人しか達成していない快挙です。岡本選手も3月29日のアスレチックス戦でメジャー1号を放ち、翌30日にも2号を放って日米通算250本塁打を達成しました。松井稼頭央さんも「逆方向にこれだけ打てたのが大きい。1年目とは思えないほどチームに溶け込んでいる」と高く評価していました。
松井稼頭央が語る日米の守備の違いと克服のカギ
番組のスタジオでは、日本人内野手としてメジャーに初めて挑戦した松井稼頭央さんが、実際にグラブとボールを使って日米の守備の違いを実演解説してくれました。
最も印象的だったのは「逆シングル」の考え方の違いです。日本では右サイドに打球が来たとき「まず正面に入りなさい」と教わることが多いのですが、アメリカでは最初からバックハンド(逆シングル)で入ることを求められます。
松井さんの説明によると、正面で入ると体重がファースト方向にかからず、強い送球が難しくなります。一方、逆シングルで入れば体の回転を利用して円を描くように送球でき、力強いスローイングが可能になるとのこと。さらに、正面で捕ることを優先すると「捕ること」だけに意識が向きがちですが、逆シングルだと「投げること」も同時に意識できるのだそうです。
松井さん自身も「アメリカに行ったとき、緩い打球でも回り込んで逆シングルで取って投げなさいと言われて衝撃的だった」と当時を振り返っていました。この証言は非常に重みがあります。日本で身につけた守備の「常識」が、メジャーでは通用しないという現実。その壁を越えるためには、日々の積み重ねしかないと松井さんは力を込めていました。
個人的に思うのは、村上選手と岡本選手がこの壁を乗り越えることは、単に二人の成績だけの問題ではないということです。村上選手本人も番組で「僕と岡本さんが両コーナーを守って内野手として活躍することで、今後日本からアメリカに来る人たちの評価を上げられるようにしたい」と語っていました。二人の成功は、将来の日本人内野手メジャー挑戦への道を大きく切り開くものになるでしょう。
大リーグ開幕2026――日本選手13人の挑戦と今季の展望
2026年シーズンのメジャーリーグには、13人もの日本選手が在籍しています。これはかつてないほどの人数で、それだけ日本人選手への評価と期待が高まっている証拠と言えるでしょう。
ドジャースの3連覇について、松井稼頭央さんは「2連覇でもすごいこと。でもドジャースだけが3連覇を目指せる唯一のチーム」と指摘。元々の主力に加えて今シーズンも選手を補強し、抑えのディアス投手も加入したことで「チームに安心感がある」と分析していました。大谷・山本・佐々木の日本人トリオに加え、ポストシーズンの経験豊富なロースターが揃うドジャースは、1998年〜2000年のヤンキース以来となる3連覇の大偉業に最も近いチームです。
一方で、松井さんが語った「夢から目標に変わった」という言葉も心に残ります。かつてメジャー挑戦は一部の選手だけの「夢」でしたが、今では多くの選手が具体的な「目標」としてメジャーを見据えている。その変化を支えたのは、先人たちの地道な積み重ねにほかなりません。
今シーズンは大谷選手の二刀流完全復活という歴史的なシーズンになる可能性を秘めています。同時に、村上選手と岡本選手が「内野手の壁」を打ち破れるかどうかも、日本の野球界にとって非常に大きな意味を持ちます。開幕直後の結果だけで判断するのは早計ですが、両選手の好スタートは今後に向けて非常に心強い材料です。
まとめ
2026年3月30日放送のNHK「クローズアップ現代」では、大リーグ開幕に合わせて日本選手たちの進化と挑戦が深く掘り下げられました。
大谷翔平選手は、スイーパーを減らしカーブを増やすなど投球スタイルを進化させ、肘の負担を軽減しつつ多彩なピッチングを実現。4年連続MVPやサイ・ヤング賞も視野に入る二刀流完全復活のシーズンに挑みます。山本由伸選手はエースとしての安定感を見せ、佐々木朗希選手はカットボールという新たな武器を磨いています。
そして村上宗隆選手と岡本和真選手は、「内野手の壁」という日本人選手にとっての長年の課題に真正面から挑んでいます。開幕からの好成績は、守備面での地道な努力があってこそのもの。松井稼頭央さんが実演で示した日米の守備思想の違いは、野球ファンにとっても非常に興味深い内容でした。
今シーズンの大リーグは、日本選手がこれまで以上に大きな存在感を示すシーズンになりそうです。一人ひとりの挑戦と進化から、今後も目が離せません。
※ 本記事は、2026年3月30日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。




コメント