2025年6月24日放送のテレビ東京系「LIFE IS MONEY ~世の中お金で見てみよう~」で特集された、ドン・キホーテのプライベートブランド「情熱価格」の戦略が大きな話題となりました。MC林修さんと池谷亨チーフコメンテーターの解説で明らかになった、年間売上1549億円を支える「固定概念破壊」の全貌をご紹介します。
ドン・キホーテ情熱価格の革新的プライベートブランド戦略とは?
ドン・キホーテが2009年から展開するプライベートブランド「情熱価格」は、日用品から食品、衣類、家電まで3000点以上の商品を取り揃えています。PPIH PB企画開発担当の渡辺友成さんが語る戦略の核心は「固定概念を破壊しながら他にはない唯一無二の商品を作る」こと。
番組で明らかになった売上実績は驚異的です。2024年7月から12月までの6ヶ月間で、前年同期比29%増という1549億円(※OEMを含む)を記録。この成長率は、従来のプライベートブランドの概念を大きく覆すものでした。
情熱価格の戦略には、他社では真似できない2つの核心的なアプローチがあります。一つ目は「思いもよらない大胆な省略で勝負」、二つ目は「常識をぶっ壊す」デザインと開発手法です。これらの戦略により、安さだけでなく独創性で顧客を魅了し続けているのです。
プライベートブランドといえば安さが魅力と思われがちですが、情熱価格はそれだけではありません。池谷亨チーフコメンテーターの解説によると、一般的なプライベートブランドは問屋などの仲介マージンを省くことで安さを実現していますが、情熱価格はさらに踏み込んだ独自の省略戦略を展開しています。
驚異のコストダウン術「大胆な省略」で常識をぶち破る
情熱価格の代表的な省略戦略が、自転車とドラム式洗濯機の事例です。ノーパンクタイヤ搭載の自転車「リアゼロ」は、通常4万円台の商品を3万2978円で販売していますが、その秘密は前輪の省略にありました。
渡辺友成さんの説明によると、実は自転車のパンクは後輪に集中しており、ドン・キホーテの独自調査では前輪に比べて後輪は3倍もパンクしやすいことが判明しました。そこで前輪は普通のタイヤ、後輪のみノーパンクタイヤにすることで、コストを抑えながら実用性を保った革新的な商品を生み出したのです。
さらに驚異的なのがドラム式洗濯機の事例です。通常15万円前後で販売される7kgドラム式洗濯機を、情熱価格では5万4999円という破格で提供しています。省略したのは乾燥機能で、この判断は顧客の声を直接反映した結果でした。
情熱価格の商品には「マジボイス」というダメ出し機能があり、顧客が商品に対して直接意見を投稿できるシステムを導入しています。このマジボイスで集められた顧客の生の声を商品開発に活かすことで、本当に必要な機能だけを残した商品を作り上げているのです。
ミックスナッツ売上20億円の黄金比率と世界情勢を読む商談術
情熱価格食品売上ランキング第1位を誇るのが「素煎りミックスナッツDX(デラックス)」で、年間売上はなんと20億円を超えています。この商品を手がけるのも渡辺友成さんで、「独断と偏見で配合から何まで決めさせてもらってます」と語るほどこだわりの一品です。
番組スタッフが実際に数えた結果、この黄金の究極比率はアーモンド44%、カシューナッツ34%、クルミ22%という配合でした。一般的なミックスナッツが300g入りで1000円程度のところ、情熱価格では863円に抑えられており、このグレードでこの価格は「相当安い」と渡辺さんも自信を見せます。
しかし、この価格維持には大変な努力が隠されています。番組では横浜にあるドン・キホーテの運営会社で行われている商談の現場を密着取材。ナッツの輸入を取り扱う商社リンク・リソースの五十嵐聡社長との真剣勝負が展開されました。
アメリカの天候不順により、アーモンドの一般的な相場は1kgあたり1100円から1200円と2割から3割も値上がりしていました。しかし渡辺さんは世界情勢を読み、ベトナムからの耳寄り情報を活用。トランプ関税の影響でアメリカ向けカシューナッツが大量キャンセルされた情報をキャッチし、元々の価格より2割安くベトナム産カシューナッツを調達することに成功しました。
このような世界規模の情報収集と柔軟な調達戦略により、アーモンドが高騰した分をカシューナッツの安価調達でトントンに調整し、黄金比率と価格を両立させているのです。
4. 情熱価格の「偏愛めし」採算度外視で生み出すバズマーケティング
情熱価格にはもう一つ、異色のプライベートブランドがあります。それが「偏愛めし」シリーズです。PPIH偏愛めし開発担当の犬塚康太さんが手がけるこのシリーズは、「みんなの75点より誰かの120点」というコンセプトで展開されています。
代表的な商品が「アメリカンドッグのココだけ弁当」430円。アメリカンドッグの根元部分だけを集めた、まさに偏愛の極みとも言える商品です。他にも「新コリコリコリコリきくらげ中華丼」322円など、一見奇抜に思える商品が並びます。
実は偏愛めしシリーズは、犬塚さんが「採算度外視して商品は組み立てさせて頂いております」と明言するように、一部の刺さる人向けに作っているため数があまり出ず、採算が合わない商品群なのです。
それにも関わらずドン・キホーテがこれらの商品を作り続ける理由は、話題性によるバズマーケティング効果にあります。偏愛めしを「広告塔のような形で偏愛めしをフックにして、定番のお弁当であったりおにぎりであったり、お惣菜といったところの人気付けを行っております」と犬塚さんは説明します。
商品のユニークさやコアなファンからの支持が話題を呼び、SNSでも広く拡散されることで、弁当・惣菜コーナー全体の売上向上に貢献しているのです。
従業員の代わりをするパッケージデザインと内製化の威力
情熱価格の商品パッケージには、常識を覆す特徴があります。それは驚くほど多くの文字が詰め込まれていることです。ジャックフルーツの商品には「うまい。日本人が知らない美味しいフルーツが世界中にはある。マンゴーのようなパイナップルな感じのリンゴっぽい気もするけどバナナな雰囲気もある」など、合計125文字もの説明が書かれています。
この一見過剰とも思えるデザインには、明確な戦略があります。渡辺さんによると、「商品を説明しなくても何の商品か分かるっていうのを意識して、商品を説明する従業員の人件費っていうのも削減できる」のです。つまり、パッケージが従業員の代わりを果たしているのです。
さらに驚くべきは、これらのデザインがすべて内製化されていることです。「この文言を考えるにしても、こういったデザインを考えるにしても全て自社内で行ってますので外部に依頼するデザイナーの費用が一切かからない」と渡辺さんは説明します。通常1商品につき数十万円かかるデザイン費用を一切使わずに済んでいるのです。
ツナ缶の戦略も秀逸です。ラベルを省略し、国産表記も諦めることで徹底的なコストダウンを実現。日本近海で獲れたカツオをわざわざタイまで運んで加工することで、往復の輸送コストを考えても人件費の安さで十分にペイできる仕組みを構築しています。
渡辺さんは「他の日本の企業だと国産というのをブランドとして維持したいという部分で我々はタイ産だろうがそれで値段と味が満足してもらえるんだったら十分勝負できると考えてますんで」と、こだわりを捨てた戦略の効果を語っています。
まとめ
テレビ東京系「LIFE IS MONEY」で明かされたドン・キホーテ情熱価格の戦略は、プライベートブランドの常識を根底から覆すものでした。渡辺友成さんと犬塚康太さんが手がける商品開発には、単なる安さを追求するのではなく、顧客の本当のニーズを見極めた「大胆な省略」と「常識破り」の哲学が貫かれています。
売上1549億円という驚異的な成長を支えているのは、世界情勢を読み抜く調達力、顧客の声を直接商品に反映するマジボイスシステム、そして採算度外視でも話題性を重視する偏愛めしの戦略です。林修さんが番組で語った「情報こそ価値」という言葉が示すように、情熱価格の成功は情報収集力と斬新な発想力の結晶と言えるでしょう。
従来のプライベートブランドが価格競争に終始する中、情熱価格は独創性と話題性で消費者の心を掴み、小売業界に新たな価値観を提示し続けています。今後もドン・キホーテの「固定概念破壊」の戦略から目が離せません。
※ 本記事は、2025年6月24日放送(テレビ東京系)の人気番組「LIFE IS MONEY ~世の中お金で見てみよう~」を参照しています。
※ ドン・キホーテのHPはこちら
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