2025年6月1日放送のTBS系「がっちりマンデー!!」で特集された古谷乳業の「ミルクの束縛ミルクコーヒー」が大きな話題となっています。年商139億円を誇る千葉県の老舗乳業メーカーが、ブランディング戦略によって起死回生を図った感動的なサクセスストーリーをお伝えします。
古谷乳業「ミルクの束縛」ミルクコーヒーとは?がっちりマンデーで話題の商品を徹底解説
古谷乳業の「ミルクの束縛ミルクコーヒー」は、生乳を75%も使用した濃厚なミルクコーヒーです。一般的なミルクコーヒーが生乳50%未満なのに対し、この商品は生乳、コーヒー、砂糖のみを原材料とし、脱脂粉乳や甘味料、香料などの添加物は一切使用していません。
「がっちりマンデー」の試飲コーナーでは、出演者のハリセンボン箕輪はるかさんが「すごくコーヒー感がすごいです。こんなにコーヒーを感じることもあんまないって言うぐらい」とコメント。加藤浩次さんも「若干ミルクが強い感じする。でもコーヒーがしっかり後から来る感じ。うまいこれ」と絶賛していました。
この商品は2023年10月3日の発売開始以来、番組放送時点で累計出荷本数が大幅に伸びており、2025年2月には公式に200万本突破を発表するなど、大ヒット商品となっています。価格は236円(税込)と一般的なコーヒー牛乳よりもお高めですが、その品質の高さが消費者に支持されています。
千葉県は「酪農発祥の地」と呼ばれる歴史ある酪農地域で、古谷乳業はその地で70年以上にわたって乳製品作りを続けてきました。同社の生乳へのこだわりは、美味しさの追求だけでなく、地域の酪農家を支援したいという強い想いから生まれています。
金谷敏が語る古谷乳業の課題「安売りからの脱却」がミルクの束縛誕生のきっかけ
古谷乳業事業開発部部長の金谷敏さんは、番組内で同社が抱えていた深刻な課題について率直に語りました。「量販店さんでかなりの量を販売はしてるんですが、価格が安く売られてましてですね。それが利益、収益を圧迫してるという問題がありまして」と説明し、ブランド力不足による安売りの悪循環に悩んでいたことを明かしました。
フルヤ牛乳は房総の牧場からの新鮮な生乳で作る美味しい牛乳でしたが、地元では「値段が安い」という理由で選ばれることが多く、200円台で販売されていた商品を300円、400円に値上げすることは、価格のイメージからかけ離れてしまい現実的ではありませんでした。
この状況を打破するため、古谷乳業は全く新しいアプローチを取ることを決意します。既存の牛乳の価格を上げるのではなく、高付加価値の新商品を開発し、ブランディングによって適正価格で販売できる商品を作り出そうとしたのです。
金谷さんは「古谷乳業はがっちりなんですけど、とは言え色々ありまして大変だったんです」と苦労を振り返りながらも、この課題こそが「ミルクの束縛」誕生の原動力となったと語っています。同社にとって、この新商品開発は単なる商品展開ではなく、会社の存続をかけた重要な挑戦だったのです。
石出卓也が手がけたミルクコーヒー開発秘話「生乳75%」へのこだわりとコーヒー豆選び
商品開発を担当したのは、古谷乳業商品企画・開発室の石出卓也さんです。金谷さんから「生乳とコーヒー砂糖だけで美味しく作って」という、石出さん自身が「ムチャぶりされました」と表現するほどの難しい要求を受けました。
生乳75%という高い配合率を実現するため、石出さんは世界中からコーヒー豆を探す作業に取り組みました。一般的なミルクコーヒーとは異なり、添加物に頼らず生乳の味わいを活かしながら、コーヒーの風味もしっかりと感じられるバランスを見つけることは、想像以上に困難な作業でした。
コーヒー豆の産地について番組スタッフが「アフリカ大陸ですか?」と質問すると、石出さんは「それは秘密です。密秘」と答え、金谷さんも「海外としか言わないですね。海外のどこかです」と企業秘密であることを明かしています。この徹底した秘密主義は、独自の味わいを守るための企業戦略でもあります。
開発過程では何度も試作を重ね、生乳の濃厚さとコーヒーの苦味、そして砂糖の甘みが絶妙に調和する配合を追求しました。添加物を使わないというシンプルな原材料だからこそ、それぞれの品質と配合比率が商品の成否を左右する重要な要素となったのです。
「ミルクの束縛」というネーミングの由来とパッケージデザインの工夫
商品名の「ミルクの束縛」は、実は当初予定されていた名前ではありませんでした。金谷さんによると、最初は「頂ミルクコーヒー」「極ミルクコーヒー」「正直ミルクコーヒー」といった、よくある商品名を検討していたそうです。
しかし、これらの名前では「なんか普通だな」ということで、あえて美味しさでお客さんを虜にするという意味を込めて「束縛」という言葉を採用しました。このユニークなネーミングは、面白法人カヤックとの協働によって生まれたもので、商品の個性を強く印象付けることに成功しています。
パッケージデザインも非常に特徴的で、番組スタッフからは「エヴァンゲリオンみたいな」と評価されました。金谷さんは「まさにそういったご評価いただいてます」と認めつつ、「よく見ていただけると中身を真面目に伝えてるんですね。成分だとか」と説明しています。
一見すると飲み物らしくないデザインですが、実は生乳、コーヒー、砂糖だけという原材料の特徴、「甘い誘惑」という甘さのアピール、生産地である千葉の素晴らしさ、こだわりの味わい方まで、商品の魅力がすべてパッケージに詰め込まれています。この情報量の多さと視覚的インパクトが、店頭での注目度を高める効果を発揮しています。
累計200万本突破の大ヒット!ファミリーマート進出で全国展開を実現
「ミルクの束縛ミルクコーヒー」は、2023年10月3日に千葉県のファミリーマート限定で発売されて以来、驚異的な売れ行きを記録しています。2025年2月には公式に累計出荷本数200万本突破を発表し、当初の予想を大きく上回る大ヒット商品となりました。
この成功の背景には、今までにないネーミングとパッケージデザインが注目を集め、コーヒー牛乳の原点に帰った独自の味わいという組み合わせが消費者の心を掴んだことがあります。特に、普通のコーヒー牛乳よりも高価格であるにも関わらず、その品質と個性が評価されたことは、ブランディング戦略の成功を示しています。
商品の人気を受けて、古谷乳業は販売エリアを段階的に拡大してきました。2023年11月には東京都に進出し、2024年3月には関東甲信越1都10県および静岡県の一部のファミリーマートで販売を開始。さらに2025年1月からは、埼玉県の森乳業株式会社への製造委託を通じて、東北、北陸、中部、関西エリアにも進出し、年内には本州全域での展開を目指しています。
この全国展開により、「ミルクの束縛」は地域限定商品から全国ブランドへと成長を遂げており、古谷乳業のブランド価値向上に大きく貢献しています。
古谷乳業のブランディング戦略「ぐうたら蜜バチ」も大成功
「ミルクの束縛」の成功に気を良くした古谷乳業は、同様のブランディング戦略を他の商品にも展開しました。売れ行きが良くなかったヨーグルトのパッケージを刷新し、「ぐうたら蜜バチ」という商品名で再デビューさせたのです。
この商品名は、ミツバチもぐうたらしちゃう美味しさという世界観を表現しており、「ミルクの束縛」と同様に絵本のタイトルのような親しみやすさを持っています。はちみつの優しい甘みを前面に出した商品特性と、ユニークなネーミング・パッケージデザインの組み合わせが功を奏し、こちらも大ヒット商品となりました。
現在、「ぐうたら蜜バチ」は生産が追いつかないほどの大変嬉しい状態が続いており、古谷乳業のブランディング戦略が他の商品でも効果を発揮していることを証明しています。
同社では2024年9月から「物語のあるヨーグルトシリーズ」として、生乳100%使用の「冬の入道雲」、脂肪0%のさっぱりとした「姫のひとくち」と合わせて3種類のヨーグルトを展開しており、”食べる絵本”をコンセプトとした商品開発を継続しています。
これらの成功により、古谷乳業は単なる地域の乳業メーカーから、独自のブランド価値を持つ企業へと変貌を遂げています。
まとめ
古谷乳業の「ミルクの束縛ミルクコーヒー」は、地方の乳業メーカーがブランディング戦略によって大成功を収めた素晴らしい事例です。金谷敏事業開発部部長と石出卓也商品企画・開発室の努力、そして面白法人カヤックとの協働により生まれたこの商品は、生乳75%という高品質と「ミルクの束縛」という印象的なネーミング、エヴァンゲリオンを彷彿とさせる独特なパッケージデザインで消費者の心を掴みました。
2023年10月3日の発売開始から2025年2月に200万本突破を達成し、千葉県から始まって現在では本州全域への展開を目指すまでに成長したこの商品は、日本の産業におけるブランディングの重要性を示しています。森永康平さんが番組内で指摘したように、「日本の産業っていいもの作ってるんだけど、ブランド化して売るっていうのが本当に苦手だった」という課題を、古谷乳業は見事に克服したのです。
「ぐうたら蜜バチ」をはじめとする関連商品の成功も含め、古谷乳業のブランディング戦略は他の業種でも参考になる貴重な事例となっており、がっちりマンデーで紹介されたこの成功ストーリーは、多くの企業にとって希望の光となることでしょう。
※ 本記事は、2025年6月1日放送(TBS系)の人気番組「がっちりマンデー!!」を参照しています。
※ 古谷乳業株式会社のHPはこちら
コメント