旅行と仕事を組み合わせた新しいスタイル「おてつたび」をご存知ですか?2025年5月1日放送のカンブリア宮殿で紹介された永岡里菜CEOが仕掛けるこのサービスは、宿泊費0円で報酬まで得られる画期的な仕組みです。人手不足に悩む地方と旅を楽しみたい人をマッチングする「三方良し」のビジネスモデルは、これからの旅行の新たな選択肢になるかもしれません。あなたの次の休暇は「おてつたび」で特別な体験をしてみませんか?
「おてつたび」とは?永岡里菜CEOが提案する新たな旅のスタイル
「おてつたび」は、「お手伝い」と「旅」を掛け合わせた新しい旅行スタイルを提供するサービスです。2025年5月1日に放送されたテレビ東京系「カンブリア宮殿」では、このサービスを展開する永岡里菜CEO(34歳)が登場し、注目を集めました。
このサービスの最大の特徴は、宿泊費0円でありながら、さらに報酬までもらえる点です。旅行者は旅先の旅館やホテル、農家などで短期間働きながら、その地域の魅力を体験できます。2025年は日本人国内旅行数が過去最高の延べ約3億2000万人を見込み、訪日観光客数も初の4,000万人超えが予測される中、こうした新たな旅のかたちが大きな注目を集めています。
利用者は朝と夜の合計8時間程度働き、それ以外の時間は自由に観光や温泉などを楽しむことができます。また、働いた分の報酬も得られるため、お金の心配をせずに長期滞在することも可能です。番組で紹介された例では、約20日間の滞在で17万円ほどの報酬を得られたケースもありました。
永岡CEOは「利用者が旅を楽しみ、受け入れる事業者も助かり、さらには地域まで元気になる」という「三方良し」の精神を大切にしています。2018年のサービス開始以来、会員数は右肩上がりに増加し、現在は7万5000人に達しているとのことです。
カンブリア宮殿で紹介された「おてつたび」の成功事例と三方良しのビジネスモデル
「カンブリア宮殿」の番組内では、「おてつたび」を利用した様々な成功事例が紹介されました。特に印象的だったのは、利用者、事業者、そして地域全体にとって良い結果をもたらす「三方良し」のビジネスモデルです。
永岡CEOがこのビジネスモデルで実現しようとしているのは、「アルバイト代を得ながら、旅費を気にせず、いろんな地域に行くことができて、受け入れ先の方からすると人手不足も解消できている。で、地域にとってもですね、人が訪れるきっかけを作れますので、ウインウインウインを目指す」という考え方です。
このビジネスモデルでは、受け入れる事業者がその地域の最低賃金以上で時給を設定し、利用者が働いて稼いだアルバイト代に応じた手数料を、事業者が「おてつたび」に支払う仕組みになっています。事業者の登録料や掲載料は一切かからず、マッチングが成立した時のみ成果報酬として手数料が発生します。
利用者側にとっては、普段体験できないような仕事や地域の魅力に触れられるメリットがあります。例えば、和歌山でのみかん収穫や、宮古島でのマグロの一本釣り漁など、通常の旅行では体験できない貴重な経験ができます。さらに、長い間使っていなかったスキルを活かす機会にもなります。番組では、15年ぶりに英語を使う機会を得た利用者の例も紹介されていました。
おてつたびの独自の魅力:宿泊費0円&報酬がもらえる仕組み
「おてつたび」の最大の魅力は、宿泊費が0円でありながら、さらに報酬までもらえる仕組みです。番組で紹介された具体例では、和歌山県那智勝浦町の「わたらせ温泉 ホテルささゆり」に滞在した鳥取出身の坂口桃佳さんのケースがありました。
通常、この旅館は1泊2食付きで3万円以上するワンランク上の温泉宿ですが、坂口さんは約1ヶ月間滞在し、宿泊費も食費も0円でした。その秘密は、朝と夜の4時間ずつ、レストランでの配膳などの業務を担当していたからです。それ以外の時間は自由に温泉に入ったり、丸1日休みの日には観光したりすることができました。
坂口さんが宿泊したのは従業員の寮で、食事も3食ついており、食費もかかりませんでした。さらに、20日間働いて約17万円のアルバイト代を稼ぐことができたそうです。この事例では、時給1200円で8時間、18日間の労働で約17万円を得られたことになります。
利用者のターゲット層も多様で、シニア層からも大人気です。子育てが一段落した人や、定年退職した人など、実にユーザーの4人に1人が50代以上とのことです。新たな経験や地域との交流を求める幅広い年齢層に支持されていることがわかります。
永岡里菜の原点:故郷・尾鷲への想いから生まれた地域活性化への挑戦
「おてつたび」を創業した永岡里菜CEOの原点は、愛知県名古屋市で育った彼女の幼少期にまで遡ります。幼い頃、長期休みの楽しみは祖父母の家がある三重県尾鷲市へ行くことでした。永岡CEOは「すごい覚えているのが、いつも帰る瞬間になった時にすごい帰りたくないと思うぐらい特別な場所だった」と語っています。
しかし、進学した千葉の大学で忘れられない出来事がありました。同級生に大好きな尾鷲について話した時、「尾鷲?どこそこ?何か有名なものってあるの?」と言われたのです。この時、自分が大好きな尾鷲の魅力をうまく伝えられない自分に歯がゆさを感じたといいます。
転機は25歳の時です。官民連携の事業に携わり全国を飛び回る中で、尾鷲のように知られていないだけで魅力的な地域がたくさんあると知りました。そうした場所に惹かれた永岡CEOは27歳の時に思い切って会社を辞め、住んでいたマンションも解約し、1人で夜行バスを乗り継いで有名ではない地方の街や村を巡りました。
この旅を通して、知られていない地域はインターネット上にもほとんど情報がないため、観光先として選択肢に上がりにくいという問題に気づきました。人が来ないと地域は元気を失い、より一層情報が少なくなるという負のスパイラルに陥っていたのです。
永岡CEOはこの経験から「知ってもらうことも大事だが、地域の方もちゃんと助かる形で知ってもらうこと。お互いがwin-winになる形で作る必要がある」と考え、知られていない地域へ働きに行くという動機付けをする「おてつたび」のアイデアを思いつきました。アルバイトと旅を掛け合わせることで、地域に人が集まり人手不足も解消できると考えたのです。
おてつたびが解決する日本の課題:人手不足と地方の衰退
「おてつたび」は、日本が直面する2つの大きな課題解決に貢献しています。それは「人手不足」と「地方の衰退」です。
人手不足に関しては、特に季節変動性の高い1次産業と観光業が全体の8割を占めています。地方の旅館や農家では、繁忙期に十分な人手を確保することが難しく、特に同じ産業が集中するエリアでは「人の取り合い」が起きていることもあります。「おてつたび」は、そうした状況を解決するために地域外から人材を呼び込み、一時的な人手不足を解消する役割を果たしています。
例えば、番組で紹介された奈良県川上村の老舗旅館「朝日館」では、「おてつたび」を利用して沖縄出身の女性が働きに来たことで、思わぬ展開が生まれました。その女性は旅館の息子と親しくなり、後に結婚して若女将となったのです。これは人手不足の解消だけでなく、後継者問題という地方旅館の深刻な課題解決にも繋がった例といえるでしょう。
また、地方の衰退に関しては、「おてつたび」が地域活性化の新たな可能性を生み出しています。徳島県鳴門市では、「おてつたび」と連携し、利用者や事業者を様々な面でサポートしています。例えば、宿泊施設を持っていない事業者には市の施設を無償で提供したり、移動用の自転車を無料で貸し出したりしています。
さらに、「おてつたび」をきっかけに実際に移住した例も紹介されました。都内大手製紙会社に勤務していた藤井隆行さんは、「おてつたび」を利用して鳴門市の銘産らっきょうの農家で2週間ほど働いた後、早期退職して鳴門市に移住し、らっきょうを販売する会社を起業しました。ハーブを使ったピクルスやらっきょうの食感を活かした餃子など、オリジナル商品を開発して市内の店舗で販売しているそうです。
離島開拓への新たな挑戦:尾花理絵と三宅島でのマッチング
「おてつたび」は現在、さらなる挑戦として離島地域への展開に力を入れています。番組では、少数精鋭の営業部隊の一人である尾花理絵さんが三宅島を訪れる様子が紹介されました。
三宅島は未来の日本の地方を映し出す場所と言われています。島の人口はピーク時から半数近くまで減少し、高齢者の割合は全国平均よりも1割多いおよそ40%です。この数字は今から45年後の2070年に予測されている全国平均とほぼ同じとのことで、離島を活性化させることが未来の日本の地方を救うヒントになると考えられています。
尾花さんは島内の民宿や農家を訪れ、「おてつたび」の仕組みを説明し、利用を検討してもらうよう働きかけていました。島の事業者たちは人手不足に頭を悩ませていましたが、どのように人材を募集すればよいのかわからないという状況でした。
特に課題となったのは、農家には宿泊施設がないケースが多いということです。そこで尾花さんは島のホテルを訪問し、空いている客室や従業員の寮を格安で事業者に貸し出せないかと提案しました。このように問題が見つかればすぐに解決策を探るのが「おてつたび」の営業の鉄則だそうです。
永岡CEOは「三宅島の課題に取り組むことが日本の、何より地方の明るい未来へと繋がる」と考え、今後も離島での取り組みを広げていく方針を示しています。
おてつたびの将来展望:教育機関との連携と旅のマッチングの可能性
「おてつたび」の将来展望について、永岡CEOは番組の中で興味深い展開を語っています。「最近は大学等中心とした教育機関さんとの連携が、いくつか生まれております」と述べ、特に観光系の大学との連携を進めていることを明かしました。
これらの大学の学生は「今後10年20年後観光業界を引っ張ってかれる担い手の皆さん」であると考え、共に様々な取り組みを行っているそうです。将来の観光業界を担う人材育成に「おてつたび」のノウハウが活かされていくことが期待されます。
また、永岡CEOは先行き不透明な時代のサバイバル術についても言及しています。「正解がないからこそ世の中もどんどん変わっていくスピードも早くなっている」と考え、「世の中と対話し続けて変化し続けられること」の重要性を強調しました。その上で「自分たちなりの哲学をしっかり持てるかどうか」が「より求められてくる時代なのかな」と述べています。
「おてつたび」の活動は、単なる旅行サービスの枠を超え、日本社会が抱える様々な課題に対する新たな解決策を提示しているといえるでしょう。今後も「旅のマッチング」という枠組みを活かしながら、さらに多様な展開が期待されます。
まとめ:新時代の「三方良し」ビジネスが切り拓く地域と旅の未来
「カンブリア宮殿」で紹介された「おてつたび」は、宿泊費0円でありながら報酬までもらえるという画期的な旅のスタイルを提供するサービスです。永岡里菜CEOが提唱する「利用者よし、事業者よし、地域よし」の三方良しのビジネスモデルは、日本が抱える人手不足や地方の衰退といった課題に新たな解決策を示しています。
2018年のサービス開始以来、会員数は右肩上がりに増加し、現在は7万5000人にも上ります。受け入れ先となる事業者も全国1900件以上にまで拡大しています。利用者の4人に1人が50代以上というデータからは、子育てが一段落した人や定年退職した人など、幅広い年齢層に支持されていることがわかります。
「おてつたび」がもたらす効果は多岐にわたります。利用者は新たな地域や仕事の魅力に触れる機会を得ることができます。事業者は人手不足を解消でき、場合によっては後継者問題の解決にも繋がります。そして地域は、これまで訪れる人が少なかった場所にも人が集まるようになり、中には移住や起業につながるケースも生まれています。
今後は離島地域への展開や教育機関との連携など、さらに活動の幅を広げていく方針です。永岡CEOが掲げる「正解がない時代だからこそ、世の中と対話し続けて変化し続けること」という理念は、先行き不透明な時代を生き抜くためのひとつの指針となるかもしれません。
「おてつたび」の挑戦は、これからの日本の旅行や地域活性化の新たな形を示す重要な事例といえるでしょう。夏休みや長期休暇の過ごし方として「旅行?それともおてつたび?」と選択肢に上がる日も、そう遠くないかもしれません。
※ 本記事は、2025年5月1日に放送された(テレビ東京系)人気番組「カンブリア宮殿」を参照しています。
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