2025年7月29日放送のテレビ東京系「LIFE IS MONEY」で注目を集めた栗本鐵工所。従業員の夏のボーナスが平均150万円、前年から20%もアップしたという驚異的な数字で話題となりました。一体この会社は何をしている企業なのでしょうか。創業100年を超える老舗企業の実態と、大幅なボーナスアップを実現した秘密に迫ります。
栗本鐵工所とは何の会社?インフラ製造で創業100年超の老舗企業
栗本鐵工所は1909年(明治42年)に創業した、日本を代表するインフラ製造企業です。大阪府大阪市西区北堀江に本社を構え、東証プライム市場に上場する歴史ある会社として知られています。
同社の主力事業は、私たちの生活に欠かせない水道管やガス管などのインフラ製品の製造です。特に鋳鉄管の分野では、業界大手のクボタに次ぐ国内第2位のシェアを誇っています。2025年3月期の連結売上高は1,266億円、従業員数は連結で2,182名という規模を持つ企業です。
創業者の栗本勇之助氏が大阪府大阪市大正区千島で水道やガス用の鋳鉄管製造を始めてから116年。現在でも鋳鉄管が主力製品ですが、時代のニーズに合わせて事業領域を拡大し続けています。上下水道管から電力ケーブルの保護管、空調のダクトまで、社会インフラを支える幅広い製品を手がけているのが特徴です。
興味深いのは、同社の製品は日常生活では見えにくい「縁の下の力持ち」的な存在だということ。しかし、まさにそれこそが現代社会の基盤を支える重要な役割を果たしているのです。番組で林修先生が「めっちゃ強い。すごく大切な会社です」とコメントしたのも、この社会的意義の大きさを理解してのことでしょう。
ボーナス20%アップの驚異的な理由「過去最高益を達成」
番組で最も注目を集めたのは、従業員の笑顔がこぼれるほどの夏のボーナス支給でした。組合員1,135人に対して、1人当たり平均150万円という金額は、多くの視聴者を驚かせたことでしょう。
この150万円という数字は、前年の125万円から25万円の大幅増額で、実に20%のアップを実現しています。入社5年目の深澤康孝さんが「去年からだと2割ぐらいは上がってると思います」と語った通り、従業員にとって実感できる大きな変化となりました。
このボーナスアップの背景にあるのは、同社が2024年度に達成した過去最高益です。人事部の林誠部長は「昨年、当社は最高益を達成することができました」と説明し、業績連動型の賞与制度により、この好業績が直接従業員の処遇改善につながったことを明かしています。
番組に登場した従業員たちの使い道も印象的でした。入社4年目の林真子さんは推しのJO1金城碧海さんが愛用するカルティエの時計(50~60万円)を、入社6年目の木澤麻衣子さんはマイホームのバルコニーに屋根(約40万円)を、入社8年目の藤本行介さんは妻と一緒にスイス旅行(約40万円)をそれぞれ計画。若い社員でも高額な買い物や海外旅行を躊躇なく計画できるほどの余裕があることが伺えます。
この業績連動型の賞与制度は、従業員のモチベーション向上と会社の成長を連動させる優れた仕組みといえるでしょう。従業員が会社の成功を直接実感できることで、さらなる業績向上への意欲も高まるという好循環を生み出しています。
日本で3社しか持たない技術「GX形ダクタイル鉄管」の強み
栗本鐵工所の業績好調を支える技術的な優位性の核心は、「GX形ダクタイル鉄管」にあります。この製品は通称”100年鉄管”と呼ばれ、日本で3社しか製造できない特殊な技術を要する高付加価値製品です。
従来の水道管の寿命は40年から50年とされていましたが、このGX形ダクタイル鉄管は通常のダクタイル鉄管よりも高い耐食性を持つ特殊な塗装を施すことで、大幅な長寿命化を実現しています。パイプシステム事業部の柳谷仁志さんは「入替えの期間を伸ばすことができる」と説明し、インフラ更新コストの削減に大きく貢献する画期的な技術であることを強調しています。
この技術の価値は、単に製品の耐久性向上にとどまりません。自治体や企業にとって、インフラの更新頻度を下げられることは、長期的な維持管理コストの大幅削減を意味します。特に日本全国で進行する水道管の老朽化問題に対する根本的な解決策として、大きな期待が寄せられているのです。
さらに注目すべきは、この技術が同社の差別化戦略の柱となっていることです。競合他社が簡単に真似できない技術的優位性を持つことで、価格競争に巻き込まれることなく、適正な利益を確保できる体制を構築しています。これこそが、従業員への大幅なボーナス支給を可能にした収益力の源泉といえるでしょう。
甲子園球場4個分の巨大工場でキュポラが1日160トン製造
栗本鐵工所の製造能力の高さは、その生産設備の規模からも理解できます。同社の工場は15.4万平方メートルという広大な敷地を有し、これは甲子園球場4個分に相当する巨大な規模です。
この工場の心臓部にあるのが、高さ12.7メートルのキュポラと呼ばれる溶解炉です。ここではスクラップと燃料のコークスを交互に投入し、1500度もの高温で鉄を溶かしています。1日の溶湯生産量は160トンという大規模な製造体制で、上下水道管から電力ケーブルの保護管、空調のダクトまで多様な製品を生産しています。
このキュポラでの製造工程は、まさに職人技と最新技術の融合といえます。溶けた鉄を取鍋で型に流し込み、精密な水道管の形に仕上げていく過程は、100年を超える歴史の中で培われた技術の結晶です。
製造規模の大きさは、同社の市場での存在感を物語っています。大量生産体制により製造コストを抑制しながら、品質の安定性を保つことで、公共事業から民間企業まで幅広い顧客ニーズに応えることが可能になっているのです。
また、この巨大な生産能力があることで、急激に高まるインフラ更新需要にも迅速に対応できる体制が整っています。これは競合他社に対する大きなアドバンテージとなり、受注機会の拡大にも直結しているといえるでしょう。
インフラ老朽化と半導体需要が業績押し上げの背景
栗本鐵工所の好業績を支える市場環境は、大きく2つの要因に分けて考えることができます。
第一は、高度経済成長期に整備されたインフラの更新時期到来です。1960年代から1970年代にかけて大規模に整備された水道管やガス管が、設計寿命の40~50年を迎え、更新需要が急激に高まっています。人事部の林誠部長が説明した通り、「過去に施工したパイプが非常に老朽化してきて、それを取替える」というニーズが全国的に拡大しているのです。
この老朽化問題は、番組でも触れられていた通り、最近のニュースで度々話題となっている水道管破裂事故の多発という形で社会問題化しています。自治体にとって、インフラの計画的な更新は喫緊の課題となっており、同社のような専門企業への需要は今後も継続的に増加していくことが予想されます。
第二の要因は、半導体工場やデータセンターの新設ラッシュです。デジタル化の進展とAIブームにより、これらの施設建設が全国で活発化しており、上下水道管や空調のダクト、電力ケーブルの保護管などの需要が急増しています。
特に注目すべきは、これらの新規需要が従来の公共事業中心のビジネスモデルから、民間企業向けの多様な案件へと事業の幅を広げていることです。これにより、景気変動や公共投資の動向に左右されにくい、より安定した収益基盤の構築が進んでいます。
林修先生が番組で「今、日本はインフラの入替需要が非常に高まってますから、それが栗本鐵工所の場合にはボーナスにも反映していた」と分析した通り、まさに時代の要請と同社の技術力が合致した結果といえるでしょう。
まとめ
栗本鐵工所は、創業116年の歴史を持つインフラ製造の老舗企業として、現代日本の社会基盤を支える重要な役割を果たしています。同社が実現した夏のボーナス20%アップ(平均150万円)は、単なる好業績の結果ではなく、日本で3社しか持たない「GX形ダクタイル鉄管」の技術的優位性と、インフラ老朽化・半導体需要拡大という市場環境の変化を的確に捉えた戦略の成果です。
甲子園球場4個分の巨大工場で1日160トンの製造能力を誇る同社は、今後も継続的に拡大するインフラ更新需要に対応する準備が整っています。業績連動型の賞与制度により、従業員と会社の成長が連動する仕組みも構築されており、持続的な発展への基盤が確立されているといえるでしょう。
「縁の下の力持ち」として日本の社会インフラを支え続ける栗本鐵工所の今後の動向は、我が国のインフラ政策や産業発展にとっても重要な指標となりそうです。
※ 本記事は、2025年7月29日放送(テレビ東京系)の人気番組「LIFE IS MONEY~世の中お金で見てみよう~」を参照しています。
※ 栗本鐵工所のHPはこちら
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