韓国大統領選でイ・ジェミョン氏が勝利しましたが、選挙結果の背景や社会への影響について詳しく知りたいと思いませんか?この記事では、NHK「クローズアップ現代」の詳細な取材に基づき、イ・ジェミョン氏とキム・ムンス候補の対立構図、非常戒厳が変えた韓国社会、そして今後の日韓関係への影響まで徹底解説します。この記事を読むことで、韓国政治の現状と今後の動向を正確に理解し、東アジア情勢の変化を見通すことができるようになります。
韓国大統領選挙結果:イ・ジェミョン氏が勝利を確実に
2025年6月3日に実施された韓国大統領選挙で、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン前代表(60)の当選が確実になりました。中央選挙管理委員会の開票結果によると、開票率73%超の時点でイ・ジェミョン氏は48.46%の得票を獲得し、与党「国民の力」のキム・ムンス候補(42.95%)に約5.5ポイントの差をつけて首位に立ちました。これにより、3年ぶりに保守系から革新系への政権交代が実現することとなります。
当選確実と報じられた後、イ・ジェミョン氏は仁川市の自宅を出て国会方面に向かい、報道陣に対して「韓国国民の偉大な決定に敬意を表す。私に与えられた大きな責任と使命を国民の期待に反しないよう、最善を尽くして遂行する」と語りました。この選挙は、2024年12月3日のユン・ソンニョル前大統領による非常戒厳宣言とその後の弾劾による前倒し選挙として実施され、韓国政治史に新たな節目を刻みました。
クローズアップ現代が捉えた選挙戦の全貌
2025年6月3日放送のNHK「クローズアップ現代」では、この歴史的な韓国大統領選挙の背景と社会の変化を詳細に取材しました。番組では、非常戒厳によって混乱に陥った韓国社会で、次期大統領には混乱を収束させ新たな道筋をつけることが求められていると分析されました。
選挙戦では、世論調査で先月12日からの選挙戦終盤まで、革新系のイ・ジェミョン候補が保守系のキム・ムンス候補をリードし続けました。同志社大学の浅羽祐樹教授によると、韓国の大統領は5年任期のため、今回選ばれた新大統領は2030年6月まで韓国の舵取りを託されることになります。これは将来への期待というより、非常戒厳から半年間の各候補の行動を韓国有権者が政治的に判断する選挙となったと解説されています。
イ・ジェミョン候補 vs キム・ムンス候補の対立構図
選挙戦の中心となったのは、イ・ジェミョン候補とキム・ムンス候補の対立でした。イ・ジェミョン氏は貧困家庭で育ち、中学や高校に通えず少年工として工場で働きながら家計を支えた苦労人です。苦学の末に弁護士となった後、45歳で市長になり政治の世界に入りました。支持者からは、その政治手腕が今の韓国社会を変えてくれると期待されています。
一方、キム・ムンス候補は保守系与党「国民の力」の公認候補として選挙戦に臨みましたが、党内の候補選出過程で混乱が生じました。公認候補の選出で党内が混乱し、選挙戦開始の直前に一度公認を取り消されたキム・ムンス氏が再び公認候補に選ばれるという異例の事態となったのです。
番組で取材された有権者の中には、過去2回の大統領選挙で保守系候補に投票してきたものの、今回は投票日まで残り2週間を切っても決めきれない人もいました。候補者討論会では個人攻撃や批判合戦に終始し、政策論議が不十分だったことも有権者の迷いに拍車をかけました。
非常戒厳が変えた韓国社会と有権者の心境
2024年12月3日の非常戒厳は、韓国社会と有権者の政治意識に大きな変化をもたらしました。番組で紹介されたキム・ソウルさん(38)は、これまで保守よりの考えを持っていましたが、非常戒厳をきっかけに80回以上集会に参加し、今回はイ・ジェミョン氏の支持に回りました。
キムさんは非常戒厳の夜について「軍人たちが市民に銃を向け押し倒し、後ろから引っ張ることもありました。非常戒厳で国が本当にリアルタイムで崩れていくのを見て、見るだけで何もしないわけにはいかないと思いました」と証言しています。恐怖のあまり非常戒厳が解除されるまで一睡もできなかったといい、大統領が軍を動かしたことに大きなショックを受けたと語りました。
浅羽祐樹教授が解説する韓国社会の深刻な分断
同志社大学の浅羽祐樹教授は、番組内で韓国社会の深刻な分断について詳しく解説しました。教授によると、革新と保守の支持者はそれぞれ固まっているものの、中道層が2対1の割合で革新支持に傾いており、これが選挙結果に大きく影響したと分析しています。
浅羽教授は、韓国社会では政治家だけでなく有権者・市民の間でも革新か保守かで分かれており、感情的な分極化が進んでいると指摘しました。「自分と支持する候補が違う陣営の人たちを単に異なるではなく誤っている、それはもう敵だと悪魔だという風に見立てて対話が成り立たないような状況になっている」と説明し、結婚をしない、同僚として迎え入れたくない、さらには一緒に食事もできないという状況まで進んでいると警鐘を鳴らしました。
ユン前大統領支持者とYouTuberが選挙に与えた影響
今回の選挙では、保守系YouTuberの影響力が注目されました。元予備校教師のチョン・ハンギルさんは、チャンネル登録者数150万人を超える人気YouTuberで、非常戒厳をきっかけにユン前大統領の弾劾反対を呼びかける動画を投稿し始めました。
平日夜8時のライブ配信では「イ・ジェミョン候補、見てるか!フェイクニュースで国民を扇動するな!こんな無知があるか、おい、しっかりしろ。大韓民国が滅びるぞ」といった激しい言葉で視聴者にアピールしていました。視聴者からは共感のコメントが次々と寄せられ、若者の政治参加にも影響を与えています。
大学生のパク・チュニョンさん(24)は、非常戒厳をきっかけに政治に関心を持ち、今年2月にはユン前大統領の弾劾に反対する保守系学生団体を結成しました。YouTubeについて「個人の考えを自由に発信でき、僕も見たい情報を見ています。保守系YouTuberなど僕の論理を正当化して強化できるニュースを見ています」と語っています。
選挙結果が今後の日韓関係に与える影響とは
イ・ジェミョン氏はこれまで日本に対して厳しい立場を取ってきました。かつては「日本は敵性国家だ」と発言し、福島第一原発の処理水放出については「核汚染水の放流は戦争の宣言だ」とまで言及していました。しかし、今回の選挙戦では「日本は重要なパートナーだ」「日本国民に好感を持っている」と変化を見せています。
この変化について、イ・ジェミョン氏の選挙公約作成に携わった元外交官のソ・ヒョンウォンさんは「野党の政治家として政権の外交政策に厳しく批判的な姿勢を持つことを『反日』と断定することは非常に政治的な歪曲で間違った認識だ」と説明しています。また、「トランプ政権の登場とともに関税問題によって各国が保護貿易主義に回帰しようとしており、それゆえ日韓間の協力は非常に重要になった」と分析しています。
浅羽教授は、韓国の大統領が変わると日韓関係が変わるのかという関心について、「もう古い二分法で理解はできない」と指摘し、イ・ジェミョン氏は国益重視・実用主義を外交の基本路線として掲げていると解説しています。
まとめ
2025年6月3日の韓国大統領選挙は、非常戒厳という異例の事態を背景に実施され、イ・ジェミョン氏の勝利で幕を閉じました。NHK「クローズアップ現代」の取材を通じて明らかになったのは、韓国社会の深刻な分断と、それでも新しいリーダーシップを求める国民の声でした。
新大統領には、分断された社会の統合、停滞した経済の回復、そして日韓関係を含む外交政策の再構築という重大な課題が待ち受けています。イ・ジェミョン新大統領が「寛容と自制、対話と妥協」という憲法裁判所の言葉を実践し、韓国社会の統合と発展を導けるかが注目されます。また、実用主義を掲げる外交政策が日韓関係にどのような変化をもたらすかも、今後の重要な焦点となるでしょう。
※ 本記事は、2025年6月3日放送のNHK人気番組「クローズアップ現代」を参照しています。
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