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テレビ番組・情報

【クローズアップ現代】ノーベル賞W受賞!研究の最前線と「日本の課題」

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2025年12月10日放送のNHK『クローズアップ現代で、10年ぶりのノーベル賞日本人ダブル受賞の舞台裏が明らかになりました。坂口志文さんと北川進さんの革新的な研究の最前線と、受賞者自身が語った日本の研究環境の深刻な課題。この記事では、番組内容を詳しく解説し、未来を変える研究を支えるために何が必要なのかを考えます。


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2025年ノーベル賞日本人ダブル受賞の概要

2025年のノーベル賞は、日本にとって特別な年となりました。生理学医学賞を受賞した坂口志文さんと、

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化学賞を受賞した北川進さん                 (引用:「産経ニュース」より)

による、10年ぶりの日本人ダブル受賞という快挙です。

12月10日に放送されたNHK「クローズアップ現代」では、授賞式のわずか4時間半前という絶妙なタイミングで、2人の研究者の最前線に密着取材を行いました。番組では、がん治療や環境問題の解決など、私たちの暮らしを大きく変える可能性を秘めた研究内容を紹介するとともに、受賞者自身が語った日本の研究環境の課題についても深く掘り下げています。

この番組が注目を集めた理由は、単なる受賞の喜びだけでなく、研究者6000人へのアンケート結果をもとに、日本の研究力低下という厳しい現実を浮き彫りにした点にあります。

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坂口志文さんの受賞内容|免疫を制御する画期的発見

坂口志文さんが発見した「制御性T細胞」、通称Tレグは、私たちの体を守る免疫システムの中で重要な役割を果たしています。

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生理学医学賞を受賞した坂口志文さん               (引用:「産経ニュース」より)

免疫細胞は通常、ウイルスや細菌などの異物と戦いますが、時に誤って自分の組織まで攻撃してしまうことがあります。これが関節リウマチや1型糖尿病などの自己免疫疾患、さらには花粉症などのアレルギーを引き起こす原因となります。

Tレグの役割は、この暴走する免疫細胞の機能をコントロールすることです。番組では、青く着色されたTレグが緑の免疫細胞に接触し、その物質を取り込んで免疫機能を低下させる様子が映像で紹介されました。

特に注目されているのが、がん治療への応用です。逆転の発想で、薬などでTレグをあえて取り除くことで免疫細胞が活性化し、がんを攻撃できるようになるのです。

番組では、大腸がんステージ4と診断され、2年前からこの治験に参加している女性患者が登場しました。「治験で新しいお薬を試す以外に、積極治療ができない。本当に生きるチャンスです」という言葉が印象的でした。治験の第1段階では安全性に問題はなく、一部の患者でがんが小さくなったという結果も報告されています。

大阪大学医学部附属病院の佐藤太郎教授は、「標準治療があっても十分な満足のいく治療結果がもたらされない患者さんたちに対して、大きな可能性を提供できる」と期待を寄せています。製薬会社は2030年の実用化を目指しており、あと5年で新たな治療法が現実のものとなる可能性があります。

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北川進さんの受賞内容|未来を変える新素材MOF

北川進さんが開発した多孔性金属錯体、MOF(モフ)は、「デザインして作る科学」の結晶です。格子状の穴の部分に狙った物質を取り込むことができる画期的な新素材として、世界中で注目されています。

 

番組で紹介された応用例の一つが、地球温暖化対策としての二酸化炭素回収です。カナダのセメント工場では実証実験が行われており、MOFを組み込んだ装置によって工場から排出される二酸化炭素の9割以上を回収できるといいます。

また、アメリカの化学ベンチャー企業「ニューマット・テクノロジーズ」が開発したガスマスクも印象的でした。MOFが有害物質を吸収し、綺麗な空気だけを通すという仕組みで、警察官や消防隊員の利用が想定されています。創業者のオマール・ファルハさんは「25、30年後には、MOFは様々な産業分野で普及しているでしょう」と語り、その可能性の大きさを強調しました。

MOFの最大の特徴は、穴の構造を自由にデザインできる点にあります。番組では北川さんが科学顧問を務める神戸の企業「アトミス」の浅利大介CEOが、「目的によってこの穴をデザインできるというところが、これまでの材料とは根本的に違う」と説明していました。

金属イオンと有機分子の組み合わせ方を変えることで、水を取り込むのに適したデザイン、レアアースを回収するデザインなど、用途に応じた最適な構造を作り出せるのです。形状もペレット状やシート状など様々に加工でき、砂漠で空気中の水を集める研究や、半導体製造に欠かせないレアアースを廃水から回収する研究など、多様な分野で実用化が進んでいます。

北川さんは「役に立たなくなったら捨てるのではなく、もう1回使えるようにする流れを作っていく」と語り、限りある資源を再利用する循環型社会の実現を目指しています。

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日本の研究環境の課題|受賞者2人が語った危機感

しかし、番組の後半では、こうした素晴らしい研究成果の裏にある深刻な問題が浮き彫りになりました。受賞後の共同会見で、坂口さんと北川さんの両名が日本の研究環境の悪化に強い危機感を示したのです。

坂口さんは「研究者が研究に使う時間が少なくなってきている。研究に対するサポートをもう少し考えていただきたい」と訴えました。北川さんも「基盤的な経費、運営費交付金が少ないために資源がない。自由な発想で研究できる環境づくりが重要」と述べています。

2人がノーベル賞につながる研究を発表したのは今から20年以上前。当時と比べ、大学の研究環境が大きく悪化していることへの憂慮が感じられます。

NHKが実施した研究者およそ6000人へのアンケートでは、衝撃的な結果が明らかになりました。改善が必要と考える分野として最も多かったのが「研究に割ける時間」で、次いで「予算」でした。自由記述欄には、「授業、会議などで時間が埋まり、論文は通勤時間の30分で小間切れに書くしかない」「研究費がほとんどないので、安価で成果を得やすいテーマに移らざるを得なかった」といった切実な声が寄せられています。

さらに深刻なのは、日本の科学研究力の低下を感じている人が全体のおよそ9割に上ったという事実です。

番組では、九州大学で地球惑星科学を研究する岡崎裕典教授の事例が紹介されました。岡崎さんの研究室は20年前には3名の教員がいましたが、今は岡崎さん1人だけ。所属する学科では教員が2割ほど減少し、授業や学生指導の時間が増加した結果、研究に割ける時間は勤務時間の3割以下になっているといいます。「研究するには集中できる時間と多少の余力が必要。今はもう余力がなくなった状況」という言葉が、現場の厳しさを物語っています。

この背景には、国の政策の変化があります。国立大学には教員の人件費などに使える運営費交付金が国から配られていますが、ここ20年あまりで約1600億円が削減されました。一方で、成果が期待される研究への競争的資金は増やされました。その結果、多額の資金を獲得できる一部の研究者がいる一方で、多くの大学は人件費や設備の縮小を余儀なくされているのです。

坂口さんは「100m競走のように目的が単純である場合はいいが、何に役立つか分からないけれども広くサポートして、いろんな研究がなされていって、面白いものがポツポツと出てきたら、そこに初めて少し手厚くサポートする」と語り、すぐに成果が出るか分からない研究への長期的なサポートの必要性を訴えました。

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研究現場の最前線|国際卓越研究大学制度の挑戦

こうした課題に対し、国は2025年から新たな試みを始めています。それが「国際卓越研究大学制度」です。世界最高水準の研究環境を目指す大学を集中的に支援するもので、年間数百億円を最長25年間投じるという、これまで例を見ない大型支援です。

申請した10大学から、2024年に唯一認定されたのが東北大学です。番組では、豊富な支援を元に変化が生まれている現場が紹介されました。

肺がんの発症メカニズムを研究する渋谷里紗講師のもとには、新しく2人のスタッフがついて研究費獲得の申請書作成などをサポートしています。大学は5年間で同様のスタッフ400人の採用を予定しており、研究者が研究に集中できる環境づくりを進めています。

学生への授業や患者の診察もあり、去年まで研究時間がほとんどなかったという渋谷さんは、「心の余裕がやっぱり違う。心の余裕ができると、頭もちゃんと回るし、考えられるし、準備もできる」と語り、研究環境の改善がもたらす効果を実感していました。

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東京大学の横山広美氏                              (引用:「東京大学大学院」HPより)

しかし、東京大学教授の横山広美さんは、この制度に対して「大変羨ましい」としながらも、「ほとんどの大学がこうした支援を受けられないことはやはり問題」と指摘しています。ノーベル賞受賞者を輩出してきたのは、東京大学や京都大学だけでなく、北海道大学や徳島大学など地方大学も含まれます。大学間の格差が広がるような支援は、どこかで是正していく必要があるという意見です。

文部科学省は「採択された大学が全国の大学と連携を強めることで研究力の強化を目指す」としており、来年度の概算要求には前年度より633億円積み増しして1兆1416億円を計上しています。問題意識は共有されつつあるものの、具体的な解決策の実現にはまだ時間がかかりそうです。

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未来を変える研究を支えるために必要なこと

番組を通じて印象的だったのは、坂口さんと北川さんが語った2つの言葉です。北川さんは「無用の用」、坂口さんは「1つ1つ」

「無用の用」とは、一見無駄に見えるものにも意味があるという考え方です。すぐに経済的価値を生まないように見える基礎研究こそが、将来の画期的な発見につながります。北川さんの研究も、当初は実用化が見えない基礎研究でしたが、今では環境問題の解決につながる可能性を秘めた技術として世界中で注目されています。

坂口さんの「1つ1つ」という言葉は、すぐに評価されない実験や研究も積み上げていくことの大切さを表しています。Tレグの発見も、地道な研究の積み重ねがあってこそ実現したものです。

横山さんは「この20年ほどでの大学の疲弊ぶりは本当にものすごいもので、すでに限界を超えてしまっているのではないか」と述べ、研究は「四六時中考えていいアイデアを出していく」ものであり、時間が何より大事だと強調しました。

また、理想的な研究力は富士山のように裾野が広いものだと説明し、今は裾野が削り取られて役に立ちそうなものだけを伸ばそうとする状況になっていることへの懸念を示しています。経済的に役に立ちそうなイノベーションにつながるものだけに偏ると、将来芽が出るような幅広い研究を削いでしまうからです。

番組の最後には、自己免疫性肝炎と診断され、根本的な治療法がなく毎日14錠の薬を服用している男性患者が登場しました。「新薬は我々患者にとって希望の光、明るい光。すがりたいというところがやっぱりある」という言葉が、研究の意義を改めて教えてくれます。

坂口さんは「サイエンスは長い10年単位で物を見ると、やはり前へ進んでいく。そんなに遠くない将来に、制御性T細胞をターゲットにした治療法が普通の病院でも使えるようになる」と語り、できるだけ早く実現したいという決意を示しました。

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まとめ

2025年のノーベル賞日本人ダブル受賞は、日本の科学研究の底力を世界に示す素晴らしい出来事でした。坂口志文さんの制御性T細胞の発見と北川進さんのMOFの開発は、がん治療や環境問題など、人類が直面する課題の解決につながる可能性を秘めています。

しかし、「クローズアップ現代」が明らかにしたのは、受賞の喜びだけではありませんでした。研究者6000人へのアンケートが示した日本の研究環境の深刻な現実、運営費交付金の削減による大学の疲弊、研究時間の減少といった課題は、早急に解決すべき問題です。

国際卓越研究大学制度のような新たな取り組みは始まっていますが、一部の大学だけでなく、全国の研究機関が持続可能な環境を築くことが重要です。「無用の用」「1つ1つ」の積み重ね——経済的原理では測れない余白の先にこそ、未来を変える研究が生まれるのです。

新しい治療法を待っている患者さんたちがいます。環境問題の解決を必要としている地球があります。次のノーベル賞級の発見を生み出すためにも、今こそ日本の研究環境を立て直す時なのかもしれません。

※ 本記事は、2025年12月10日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

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