飲料自動販売機はただの販売機ではありません。2024年3月16日放送(テレビ東京系)の「知られざるガリバー~エクセレントカンパニーファイル~」で紹介された、総合飲料メーカー「ダイドー」は、自動販売機こそが自社の”移動販売店”だと位置付け、進化を続けてきました。お客様のニーズにあわせて、さまざまな商品を取り揃え、おもてなしの心を込めた接客を提供しています。自動販売機ビジネスを核に、AI技術の活用やコラボ商品の開発、社会貢献などにも積極的に取り組むダイドーの実態を知れば、これからの自動販売機の未来が垣間見えてくるはずです。
ダイドーの自販機戦略 – 進化し続ける”移動販売店”
ダイドーは創業以来、自動販売機を”自社の店舗”と位置づけ、ビジネスを展開してきました。2023年の売上比率を見ると、自販機からの売上が約80%を占めていることからも、その重要性が窺えます。
単なる販売機ではなく、接客やおもてなしの機能を備えた”移動販売店”として進化を遂げてきたダイドーの自販機。その戦略の一つが、顧客ニーズにあわせた他社コラボ商品の展開です。基礎化粧品ブランド「肌美精」とのコラボ商品のほか、ベビー向けの紙おむつや生理用品など、その場所や時間帯に応じた商品を揃えています。
また、AI技術の活用で自販機運営を効率化しています。過去の販売データを分析することで、補充が必要な商品本数を最適化。一度に多くの自販機を回ることができ、無駄のない作業が可能になっています。
ダイドードリンコの秘密 – コーヒー豆の本然の味わいを最大限に引き出す製法
ダイドーを代表する商品は、創業以来の看板商品であるコーヒーです。缶コーヒーのロングセラー商品は、1973年の発売以来、約50年間味を変えずに製造されています。
その秘密は、コーヒー豆の抽出方法にあります。一般家庭と同様の製法で、コーヒー豆の持つ本来の味わいを最大限に引き出しています。挽いた豆を湯と合わせてじっくりと抽出した後、厳選した原料とブレンドすることで、深みとコクのある風味を実現しているのです。
“変わらない味”への拘りとともに、新商品開発にも注力しています。2023年に発売した「カニ鍋スープ雑炊仕立て」は、お米を焙煎して食感を残す等の工夫が凝らされています。
「おしゃべり機能」で観光客をおもてなし – 地域に根ざした自販機
ダイドーの自販機には、音声によるおもてなし機能が備わっています。全国18の方言で挨拶をするなど、地域に根差した対応ができるようになっています。
訪日外国人観光客の増加に伴い、おしゃべり機能を活用した取り組みも行われています。多言語対応により、来訪地の観光情報などを提供し、外国人観光客の利便性向上に貢献しています。
夜間は防犯の観点から、声かけに注意を促すメッセージを流すなど、地域の安全・安心にも配慮した運用を行っています。
AIで最適化された自販機補充作業 – 効率的なオペレーション
自販機への補充作業の効率化にも、AIが活用されています。過去の販売データから各自販機で必要な補充本数を算出し、作業員に指示を出すことで、無駄のない最適化を実現しています。
例えば、ある商品が売り切れだった場合、最大で18本補充できるところをAIが10本と判断すれば、その数だけ補充すれば良いのです。このように、AIの活用で自販機1台当たりの作業時間を大幅に短縮できます。
作業前にAIから最適な補充数を指示されることで、計画的かつスムーズな補充作業が可能になり、作業の効率化が図られています。
「肌美精」コラボレーション商品 – 他社との連携で新たな価値創造
ダイドーは、自販機の新たな価値創造に向けて、他社とのコラボレーションにも積極的に取り組んでいます。
2022年には基礎化粧品ブランド”クラシエ”の「肌美精」とコラボレーションした飲料商品を発売しました。この商品は「肌美精」が企画・監修を行い、女性の”美”への高い関心に応えたラインナップとなっています。
自社の強みであるドリンク開発力と、他社の専門性を組み合わせることで、双方の魅力を最大化するシナジー効果を生み出しています。コラボ商品の展開を通じて、より多様化する消費者ニーズへの対応を図っているのです。
“カニ鍋スープ雑炊仕立て”の開発秘話 – 常に新しい挑戦
ダイドーは、従来の飲料に囚われることなく、常に新しい挑戦を続けています。2023年に発売された「カニ鍋スープ雑炊仕立て」は、そうした姿勢の賜物です。
お米を通常の加熱ではなく焙煎することで、スープ状の商品でありながらもお米の食感を残すことに成功しました。これは自販機業界でも初の試みであり、ダイドー独自の技術力の賜物です。
当初、社長から「本当にやるのか?」と疑問視される提案でしたが、従業員の英知を結集した末に商品化に至りました。新たな体験価値を生み出す商品開発力が評価され、瞬く間に人気商品に育ちました。
災害時にも役立つ自販機 – 社会貢献を果たす仕組み
ダイドーの自販機は、企業の社会的責任を果たすための機能も備えています。電気供給がストップした災害時でも、手動で発電機能を起動させることができます。
発電した電力で、無料で飲み物を提供したり、携帯電話の充電にも利用できます。こうした機能によって、避難所などで役立てられることが期待されています。
また、おしゃべり機能を利用して、災害時に避難に関する情報を発信したり、夜間の防犯にも役立てるなど、地域社会に貢献する取り組みを行っています。自販機を通じて、ダイドーは企業市民としての責務を果たしているのです。
長期利用を可能にするリユース – 環境対策への貢献
ダイドーは環境負荷の低減にも取り組んでいます。自販機のリユース(再利用)によって、機械の長期利用を可能にし、資源の有効活用を図っています。
従来の自販機の平均寿命は10年程度でしたが、リユース修理を施すことで寿命を最大15年まで延ばせるようになりました。長年の経験とノウハウを生かし、頻繁に故障しがちな部品の研究を進めたことで実現できた取り組みです。
自販機の新規投入を抑え、リユースを促進することで、CO2排出量の削減やプラスチックごみの削減など、様々な環境課題への対策に寄与することが期待されています。
顔認証決済サービス”KAO-NE” – 革新的な決済体験
キャッシュレス化の波を受け、2024年からダイドーの一部自販機で顔認証による決済が導入されました。この決済サービスの名称は”KAO-NE(カオーネ)”です。
事前に顔認証の登録を済ませておけば、お金や携帯電話を取り出す手間を加えずに購入できるため、スムーズで快適な買い物が可能です。貴重品の持ち込めないクリーンルームがある企業などでも評判が高く、導入が拡大しつつあります。
AIの活用で決済の高度化を図るとともに、キャッシュレス時代の利便性向上に寄与する、ダイドーの先進的な取り組みです。
未来の自販機 – AIやロボットとの融合で進化し続ける夢
ダイドーでは、AI技術の活用に加え、自動運転やロボティクスなど未来技術との融合による、夢のような自販機の姿を描いています。
脳波で操作できる自販機や、お客様の自宅まで自動で移動してサービスを提供する自販機。あるいは、注文内容を待たずに予測して適切な商品を提供する高度なAIシステムの搭載などが構想されています。
最先端技術と人的資源を結集させながら、「お客様に求められるものを手軽に提供する」という企業理念を具現化する革新的な自販機を生み出し続けることが、ダイドーの夢なのです。
まとめ
総合飲料大手ダイドーグループの自販機事業は、単なる販売機から”移動販売店”へと進化を続けています。
自社の店舗と位置付けた自販機では、売上の約8割を占める缶コーヒーをはじめ、お客様のニーズに合わせた様々な商品がラインナップされています。コーヒー豆の味わいを最大限に活かした飲料製造の技術力は、ダイドーの強みです。
常に新しい価値創造に挑戦し、他社とのコラボレーションや、AIなどの先端技術の活用を進めながら、革新的なサービスを次々と生み出しています。自販機を活用した社会貢献や環境対策へも積極的に取り組んでいます。
「移動販売店」としての自販機をベースに、お客様のあらゆるニーズや課題に挑み続けるダイドーの姿勢に、私たち消費者が感じる魅力があります。これからのダイドーの自販機事業から、どんな進化があるのか、さらに注目が集まりそうです。
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