2025年10月17日にBSテレ東で放送された「夢遺産」では、ピジョン社長・矢野亮氏の「未来に残したい夢」が紹介されました。世界シェア1位の哺乳器を持つピジョンを率いる矢野社長は、中学生向けの「赤ちゃんを知る授業」を通じて、育児に優しい社会づくりに挑戦しています。この記事では、番組で語られた矢野社長の想いと、ピジョンが目指す未来について詳しくご紹介します。
ピジョン矢野亮社長が語る「未来に残したい夢」とは?
2025年10月17日にBSテレ東で放送された「夢遺産」で、ピジョン社長の矢野亮氏が語った言葉は、多くの視聴者の心に響きました。「赤ちゃんはやっぱりこう人類にとって未来への希望なんですよね」――この一言に、矢野社長が企業として、そして一人の大人として抱いている使命感が凝縮されています。
矢野社長が今、最も力を入れているのが「社会の育児に対する意識改革」です。番組内で矢野社長は、「この社会のこの育児に対する意識改革っていうのは、私たちからでもできると、という風に考えておりますんで、ピジョンの力でこう社会をね変えていくっていうところを全社一丸でやっていきたいなという風に考えております」と力強く語りました。
この言葉の背景には、育児用品メーカーというだけでなく、社会全体を変えていく責任を担う企業としての覚悟があります。矢野社長の「未来に残したい夢」とは、単に優れた商品を提供することではなく、赤ちゃんに優しい場所を作り続けることで、日本の育児環境そのものを変革していくことなのです。
特に注目すべきは、中学生を「育児に対する社会の意識を変えてくための、とっても大事なパートナー」と位置づけている点です。未来を担う若い世代に、今から育児の大変さや喜びを知ってもらうことで、「将来大人になってった時に、より育児に優しい社会でありたいと、いう風に思っていただける」社会を実現しようとしています。この発想は、目先の利益ではなく、10年、20年先の日本社会を見据えた長期的なビジョンと言えるでしょう。
矢野亮社長のプロフィールと経歴
矢野亮社長は千葉県出身の52歳。番組では自身を「かなりぼうっとしていた子供だったようで、あの、普通に生活する大志を抱くこともない、そんな学生時代でした」と振り返っています。この率直な自己開示は、多くの人に親近感を与えるものでした。
転機が訪れたのは就職活動の時期です。矢野社長は「ご就職活動しなきゃいけないっていう時に、あの、ま、人生で初めて本気で悩むわけですよね。何のために、あの、あるいは働くのかと、こう働く目的って何だろうと」と、当時の心境を語っています。
この真剣な自問自答の末に導き出した答えが「社会貢献」でした。「誰かのために働いてその対価を得るっていうのを本気で考えて、それを実現するのがどこが良かったのかって考えた時にはもうダントツでピジョンだったなっていうのが当時の記憶ですね」という言葉からは、明確な信念を持ってピジョンを選んだことが分かります。
1997年に明海大学経済学部を卒業し、ピジョンに入社した矢野氏は、国内での営業や商品企画を経験した後、2010年には中国現地法人に赴任。急成長する中国市場で電子商取引分野に注力し、2017年には中国現地法人の社長に昇格しました。その後、2018年に執行役員中国事業本部長、2023年に取締役上席執行役員を経て、2025年3月27日に代表取締役社長に就任しています。
国内外での豊富な経験を積み重ねてきた矢野社長だからこそ、グローバルな視点と地域に根差した視点の両方を持ち合わせているのでしょう。
世界シェア1位の哺乳器を持つピジョンとは
ピジョンは、60年以上にわたり赤ちゃんの発達・発育を研究してきた育児用品の総合メーカーです。主力商品である哺乳器は世界シェア1位を誇り、その品質の高さは世界中の親御さんから信頼されています。取扱商品は哺乳器だけでなく、スキンケア用品、ベビーカー、ベビーフードなど、赤ちゃんとママ・パパの生活を支える幅広い育児用品に及びます。
矢野社長が実際に働き始めて感じた仕事のやりがいについて、番組では興味深い言葉が語られました。「ま、私たちのお多くの商品はですね、最終ユーザーが赤ちゃんなんですね。このものを言えないこの赤ちゃんがですね、あの、使う商品を徹底的に作り込んでいくっていうその過程と、最終ユーザーではない方々に買っていただくっていう、難しいなと思うのと同時に、ま、これは非常に面白いなっていうのを感じたのはよく覚えてます」
この言葉は、ピジョンのものづくりの本質を表しています。赤ちゃんは言葉で不満や要望を伝えることができません。だからこそ、赤ちゃんの行動や反応を丁寧に観察し、赤ちゃんにとって本当に良いものは何かを徹底的に追求する必要があります。一方で、商品を購入するのは親御さんです。赤ちゃんにとっての最適と、親御さんが求める価値をどう両立させるか――この難しさが、ピジョンのものづくりを支える原動力となっているのです。
実際、ピジョンの哺乳器「母乳実感」は、赤ちゃんの口の動きや哺乳のメカニズムを長年研究し、母乳を飲むときと同じ口の動きができるよう設計されています。こうした徹底的な研究開発姿勢が、世界シェア1位という結果につながっているのでしょう。
中学生向け「赤ちゃんを知る授業」で育児の意識改革
矢野社長が社長として今最も力を入れているのが、中学生を対象とした「赤ちゃんを知る授業」です。この取り組みは2021年9月に開始され、2024年9月までに全国約410校、約34,000名の中学生が受講しています。
この授業では、学校の先生方が授業を実施するための教材を無料で提供するほか、一部の中学校にはピジョン社員が出向いて出前授業を行っています。授業内容は、赤ちゃん人形の抱っこ体験、妊婦ジャケットを装着しての妊婦体験、ベビーカーの走行体験など、体験型学習が中心です。生徒たちは実際に体験することで、赤ちゃんの重さや妊婦さんの大変さをリアルに感じることができます。
授業後に実施されたアンケート調査では、赤ちゃんに対する興味・関心があると答えた生徒の割合が約17ポイント上昇。さらに「赤ちゃんを見かけたときに、あなたが赤ちゃんにできることがあると思いましたか?」という問いには、90.1%の生徒が自分にもできることがあると答えています。
この数字は、授業が単なる知識の伝達にとどまらず、生徒たちの意識と行動を変えていることを示しています。実際、授業を受けた生徒からは「困っているママ・パパを助けたい」「声をかけるだけでも助けになると知った」といった前向きな感想が多数寄せられています。
矢野社長が中学生を「育児に対する社会の意識を変えてくための、とっても大事なパートナー」と表現するのは、まさにこの点にあります。未来を担う中学生に今から育児の実態を知ってもらうことで、将来彼らが大人になったとき、より育児に優しい社会を実現できると考えているのです。
この取り組みは高く評価され、2024年11月には第17回ペアレンティングアワード賞「コト部門」を受賞。また、文部科学省主催令和5年度「青少年の体験活動推進企業表彰」奨励賞も受賞しています。
「育児に優しい社会づくり」に込めた想い
なぜピジョンは、企業として中学生への教育活動にこれほど力を入れているのでしょうか。その背景には、現代日本が抱える深刻な社会課題があります。
日本では核家族化や少子化が進み、赤ちゃんや子育て中のママ・パパが身近にいない環境で育つ子どもが増えています。その結果、育児に触れる機会が少ないまま大人になり、育児の実態や赤ちゃんに対する知識が不足している人が多いのが現状です。
ピジョンが実施した調査によると、0〜3歳の子どもを持つママ・パパの多くが、「働いているとき」「公共交通機関を使ったとき」「スーパーやショッピングモール、お店に行ったとき」など、様々な場面で育児における不便を感じたり、周りからの理解や配慮が欲しかったと回答しています。つまり、「育児に対する周囲の理解不足」が、子育て世代を苦しめる大きな要因となっているのです。
矢野社長は番組内で、「育児に対する社会の意識改革っていうのは、私たちからでもできる」と述べています。この言葉には、育児用品メーカーという枠を超えて、社会課題の解決に取り組む企業としての強い決意が感じられます。
「ピジョンの力でこう社会をね変えていくっていうところを全社一丸でやっていきたい」――この言葉通り、ピジョンは商品開発だけでなく、社会全体の意識を変えるという壮大な挑戦を続けています。中学生への早期教育はその第一歩であり、10年後、20年後の日本社会を変えていくための種まきなのです。
まとめ
「夢遺産」で紹介されたピジョン社長・矢野亮氏の「未来に残したい夢」は、単なる企業理念ではなく、日本の未来を変えていく壮大なビジョンでした。
学生時代は「ぼうっとしていた」と振り返る矢野社長が、就職活動で「社会貢献」という明確な目的を見出し、ピジョンで働く中で「ものを言えない赤ちゃん」のための商品づくりの難しさと面白さを実感してきた軌跡。そして現在、世界シェア1位の哺乳器を持つピジョンのトップとして、中学生への「赤ちゃんを知る授業」を通じて育児に優しい社会づくりに挑戦している姿は、企業の社会的責任とは何かを教えてくれます。
「赤ちゃんは人類にとって未来への希望」という矢野社長の言葉は、少子化が進む日本において、改めて赤ちゃんの存在の大切さを私たちに気づかせてくれます。ピジョンが目指す「赤ちゃんに優しい場所を作り続ける」という夢は、私たち一人ひとりが育児に対する理解を深め、困っている親子に手を差し伸べることから始まるのかもしれません。
矢野社長とピジョンの挑戦は、企業の力で社会を変えられることを示す素晴らしい事例です。この「夢遺産」が、10年後、20年後の日本で花開くことを期待せずにはいられません。
※ 本記事は、2025年10月17日にBSテレ東で放送された「夢遺産」を参照しています。
※ ピジョン株式会社の公式サイトはこちら
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