スポンサーリンク
テレビ番組・情報

【クローズアップ現代】iPS細胞「治せない病気が治る」山中伸弥が語る実用化の今

closeup-gendai-ips-yamanaka
スポンサーリンク

2025年9月29日に放送されたNHK「クローズアップ現代」では、iPS細胞を使った再生医療の最前線が独自取材で明らかになりました。山中伸弥教授がiPS細胞の作製を発表してから19年。「治せない」とされてきた病気や怪我に光が差し込み、実用化まであと一歩というところまで来ています。この記事では、番組で紹介された患者の劇的な回復事例から、実用化に立ちはだかるハードル、そして日本が世界競争で勝ち抜くための戦略まで、詳しく解説していきます。


スポンサーリンク

iPS細胞治療の実用化はどこまで進んだ?2025年最前線レポート

山中教授は番組の中で、iPS細胞治療の実用化について「マラソンで言うと、早いもので30km、35kmくらいまでは来た」と表現しました。つまり、ゴールは見えてきたものの、これから最も厳しい急坂が待ち構えているということです。

yamanakasinya

京都大学iPS細胞研究所名誉所長 山中伸弥教授                      (引用:「NHK」より)

現在、iPS細胞を使った治療の研究開発は5つの段階に分けられます。動物実験などを行う非臨床研究から始まり、人を対象に安全性や有効性を確かめる臨床研究、そして実用化に向けた治験、国への承認申請、そして実用化という流れです。

注目すべきは、2025年4月にクオリプス社が世界初となるiPS細胞由来の心筋細胞シートの承認申請を完了したこと。承認されれば、世界で初めてiPS細胞を使った治療が実用化されることになります。さらにパーキンソン病治療も承認申請の準備段階にあり、合計19のプロジェクトが着実に前進しています。山中教授が「全員が順調に走りきっている」と誇りを持って語る通り、日本発の再生医療が実を結ぼうとしているのです。


スポンサーリンク

独自取材で明らかに!治療を受けた患者の劇的回復事例

番組では、iPS細胞治療を受けた患者が初めてカメラの前でその体験を語りました。その回復ぶりは、まさに医療の常識を覆すものでした。

脊髄損傷からの奇跡的な回復

2年前、転倒で脊髄を損傷し、完全麻痺と診断された60代の男性。医師から「もう自由には動けない」と告げられ、絶望の淵に立たされました。しかし、慶応大学の中村雅也教授が率いる研究チームによる臨床研究に参加し、iPS細胞から作った神経の元となる細胞を損傷部位に移植。その結果、足や腕が動くようになり、上半身全体も動かせるように。「動いたよって。本当か、本当に動いてるんか?ってビデオまで撮ってもらって。本当に嬉しかった」と涙ながらに語る姿が印象的でした。

nakamuramasaya

慶應大学の中村雅也教授                                  (引用:「Yahooニュース」より)

研究に参加した4人のうち2人で運動機能が大きく改善。中村教授は「中枢神経は一度傷つくと二度と再生しない、これが100年以上ずっと信じられてきた。まさに大きなパラダイムシフトが起ころうとしている」と、医学の歴史が変わる瞬間を目撃していると語りました。

心臓病からの社会復帰

虚血性心筋症で「治る可能性は今の医学ではない」と告げられた大塚克典さん(62歳)。慢性的な息切れや疲労感に苦しみ、仕事にも支障が出ていました。大阪大学発のベンチャー企業クオリプスが開発した心筋細胞シートの治験に参加し、厚さ0.1mmのシート3枚を心臓に貼り付ける手術を受けました。その後、息切れなどの症状が出ないレベルにまで回復し、趣味のゴルフも楽しめるように。治験に参加した8人全員で疲労感や動悸などの症状が軽くなり、半数以上で心機能の改善が確認されたのです。

これらの事例は、単なる症状の緩和ではなく、失われた機能の再生という、従来の医療では不可能だった根本治療が実現しつつあることを示しています。


スポンサーリンク

承認申請完了:心筋シートとパーキンソン病治療の最新状況

実用化に最も近いのが、先述の心筋細胞シートです。クオリプス社は2025年4月に厚生労働省への承認申請を完了し、承認されれば1年以内にも実用化が期待されています。開発責任者の澤芳樹教授(大阪大学特任教授)は「心臓病では死なない世界も不可能ではない。日本初の技術を世界に普及させたい」と意気込みます。

sawayosiki

大阪大学の澤芳樹特任教授                             (引用:「NHK」より)

パーキンソン病治療も大きく前進しています。住友ファーマは2025年8月5日、日本国内での製造販売承認申請を完了したと発表しました。京都大学と共同で行った治験では、7人の患者のうち有効性を調べた6人中4人で運動機能の改善が見られ、移植から2年が経過してもドパミンを作り続けていることが確認されています。

さらに同社はアメリカでも治験を進めており、2025年6月には大阪で製造した細胞をカリフォルニア州の大学病院に輸送し、患者への移植を実施。日本からアメリカへのiPS細胞治療の輸送は初めてのことです。アメリカの患者数は約100万人と日本の3倍にも上り、木村徹社長(当時)は「日米合わせて1000億円を超える売上を見込んでいる」と語っていました。

さらに、高齢者の100人に1人が発症するとされる目の病気や1型糖尿病、卵巣癌など、合計19の研究開発プロジェクトが進行中。山中教授が特に期待を寄せるのは、角膜や血小板をiPS細胞から作る研究です。これらが実用化されれば、ドナー不足に悩む移植医療にも革命が起こるでしょう。

スポンサーリンク

実用化ハードルを山中伸弥教授が解説:3つの壁とは?

順調に見えるiPS細胞治療ですが、山中教授は「これから先は非常に厳しい戦い」と警鐘を鳴らします。実用化に向けて3つの大きなハードルが待ち構えているのです。

ハードル1:効果のばらつき

「人間の患者はばらつきが非常に大きい」と山中教授。個人差に加え、同じ病気や怪我でも程度が大きく異なります。動物実験では遺伝的にも均一で同じ条件でテストできますが、人間ではそうはいきません。このばらつきの中から科学的な効果をどう検証するかが、各プロジェクトの腕の見せどころなのです。

ハードル2:莫大な研究開発費

効果を確かめるには患者数を増やすしかありませんが、患者1人増やすごとにものすごい研究費がかかります。国は2013年から2023年まで1100億円もの研究費を投入してきましたが、20近いプロジェクトがあるため、1プロジェクトあたりでは基礎研究には十分でも、人を対象とした臨床研究や治験を行うには「まだまだ足りない」のが現状です。

ハードル3:ビジネスとしての成立

研究段階から実用化に向けて、プレーヤーが大学の研究者から企業へと変わります。国からの支援も投資へと変わるため、いかに投資を集めるかという経営的な手腕が求められるのです。一般的な医薬品でも臨床研究から実用化まで進むのは1割から2割程度。再生医療分野はさらに効果のばらつきがあり、開発コストも高いため、より困難だと指摘されています。


スポンサーリンク

なぜ日本で実用化すべきか?価格と患者アクセスの問題

山中教授は「是非日本で実用化させたい」と強調します。その理由は2つあります。

第一に、価格の問題です。アメリカでは企業が価格を決めるため、投資家のリターンを考えると価格がどんどん高騰し、1人あたり何千万円、場合によっては何億円という治療法が登場しています。アメリカで高い価格設定がされると、それが日本に逆輸入される際も高い価格になってしまうのです。

第二に、時間の問題です。アメリカから日本に入ってくるまで1年から2年の時間がかかり、その間日本の患者は治療を受けられません。「日本初の技術でもあるし、是非日本で完成させたい」という山中教授の言葉には、患者第一の姿勢が表れています。

実際、日本で先行して実用化されれば、国民皆保険制度のもとで比較的手の届きやすい価格設定が期待できます。これは患者にとって極めて重要な問題なのです。


スポンサーリンク

米中との競争激化:臨床研究件数で日本が抜かれた現実

しかし、国際競争は激化しています。番組では、臨床研究の実施件数でアメリカが日本を抜き、中国も迫ってきている現実が示されました。

アメリカでは、ブルーロック・セラピューティクスなどの企業がパーキンソン病、認知症、網膜疾患についてiPS細胞治療の開発を加速。CEOのセス・エッテンバーグ氏は「患者にこうした恩恵をもたらすことは確かなビジネスチャンスになる。我が社がこのイノベーションの最前線に立っている」と自信を見せます。

ハワイ州に暮らすパーキンソン病患者のグレン・ヒガさん(55歳)は、1日15錠の薬を2時間半おきに服用しなければならない生活を送っています。「自分の生活は自分でコントロールしたいのに、現実には薬に支配されている」と訴える彼は、iPS細胞治療に大きな期待を寄せています。

山中教授は「iPS細胞に関してはこれまでのところ、なんとかトップ2(アメリカ・中国)に肩を並べているが、この競争を維持できるかどうかはかなり大変」と認めます。世界で圧倒的なトップ2であるアメリカと中国との競争で、日本がどう優位性を保つかが問われているのです。


スポンサーリンク

日本の強みは「ワンチーム」:研究者の熱い思いが生む今後の可能性

厳しい状況の中で、山中教授は日本独自の強みを2つ挙げました。

強み1:横の連携

20近いプロジェクトが連携し、協力し合いながらここまでやってきた日本。主役が大学の研究者から企業に移っても、その横の連携を「ワンチーム」として続けていくことが重要だと言います。5年前に設立したiPS財団の役割の1つは、企業になってからも情報共有することです。

強み2:研究者の深い関与

日本では研究者がベンチャーを作ったり、企業の開発に深く入り込むケースが非常に多いのが特徴です。「研究者の熱い思い、自分の研究で患者を治すんだという思いが、企業にバトンタッチされてからもずっと生きている。単なるマネーゲームでなく、研究者のプライドと思いを込めて今後も協力しながら続けていく」と山中教授。

さらに、ある企業が研究開発をやめても、それを研究者が引き取って研究を続ける「しぶとさ」も日本の強みです。この粘り強さが、成功率1割2割を5割に増やし、「夢かもしれないけれども10割全部ゴールに行く。それは決して難しいけれども夢物語ではない」と山中教授は力強く語りました。

「客観的に見ると成功率は1割かもしれないが、負けると思って勝てる勝負はない」という言葉には、困難に立ち向かう決意が込められています。


スポンサーリンク

19の研究開発プロジェクト:再生医療が変える医療の未来

山中教授が最後に描いた未来像は「全員がピンピンコロリで健康寿命を伸ばして、ずっとやりたいことを続けられる」というものでした。

番組に登場した佐伯恵さん(62歳)は、視力の低下や視野が狭まる重い目の病気で「完全に目が見えなくなったら施設に入れてほしい」と絶望していました。3年前にiPS細胞の臨床研究に参加し移植を受けた彼女は、「一人でも多くの人のお役に立てたらすごく嬉しい。この治療が、たとえ研究であろうとも希望だった」と語ります。

神戸アイセンター病院の栗本康夫院長は「日本で開発することが一番日本の患者が受けやすい治療になる。治療を待ってる患者に早く届けたい」と述べました。

現在進行中の19のプロジェクトが全て実用化されれば、脊髄損傷、心臓病、パーキンソン病、目の病気、糖尿病、癌など、これまで「治せない」とされてきた多くの疾患に希望の光が差すことになります。大阪関西万博で展示された本物のように拍動するミニ心臓は、もはや近未来の技術ではなく、私たちの手の届くところまで来ているのです。


スポンサーリンク

まとめ

2025年9月29日放送の「クローズアップ現代」が伝えたiPS細胞治療の現状は、希望と課題が交錯する最前線でした。山中伸弥教授の発表から19年、マラソンで言えば30〜35km地点まで到達し、実用化の一歩手前まで来ています。

治療を受けた患者の劇的な回復事例は、医学の常識を覆す可能性を示しました。脊髄損傷で完全麻痺と診断された男性が再び歩けるようになり、重い心臓病で絶望していた患者がゴルフを楽しめるまでに回復。これらは単なる症状緩和ではなく、失われた機能の再生という革命的な治療です。

しかし実用化には3つの大きなハードルがあります。患者による効果のばらつき、莫大な研究開発費、そしてビジネスとしての成立。さらに米中との国際競争も激化しており、臨床研究件数では既に日本は抜かれています。

それでも日本には独自の強みがあります。20のプロジェクトが「ワンチーム」として連携し、研究者の熱い思いが企業にバトンタッチされた後も生き続ける。この粘り強さこそが、厳しい急坂を乗り越える原動力になるでしょう。

「全員がピンピンコロリで健康寿命を伸ばせる未来」を目指して、日本発の再生医療はゴールに向かって走り続けています。2025年4月に世界初の承認申請が完了した心筋シートをはじめ、19のプロジェクトが結実する日は、そう遠くないかもしれません。

※ 本記事は、2025年9月29日に放送されたNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

 

スポンサーリンク
スポンサーリンク
シェアする
スポンサーリンク

コメント

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました